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ストーカー女
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「今日もカッコイイね」
「朝から見れてラッキー」
数人の女子社員と、社内人気No.1梶木隼汰を見てワイワイと言う。
勿論これだけ騒いでるから、本人にんも気が付かれてる。
チラッと見られて、ああ、またいつものか…って顔をされてる?
それでもねー、やっぱりカッコイイもん。
見た目もいい男だけど、優しくって思いやりもある。
まだ私がこうなる前に、彼の優しさを目の当たりにして、完璧に惚れてしまった。
とは言ってもファンとしてだけどね。
私はもう、恋人はほしいと思わない。なぜなら…
「自分の妹でしょ?結婚式くらい出なさい!」
家に帰って留守電を聞くと母のメッセージ。
そうこれが原因。
もう、勘弁してほしい。
佐山奈緒、29歳。社内でカッコイイ男子を追っかけて半年がたつ。しかも相手は26歳の年下。
世にいう痛い女です。
でも、今はこうしないと割り切れない。
「狭山さーん、さっき梶木君と会ったんですけど…」
「ええ!!いいなぁー」
取り巻き軍団とワイワイ話す。
昼休み何度も電話が鳴る。
妹から…
「電話鳴ってるけどいいの?」
「いいの、いいの」
私はランチを食べてる同僚に笑顔で返した。
そして
「お姉ちゃん!」
「…由紀」
会社から少し歩いた所に車から出てきた。
そして
「…久しぶり」
…由紀の結婚相手の桐山太一、私の元婚約者。
早い話が、自分の婚約者を妹に寝取られた。ということ。
勿論両親も知っている。
「妹の結婚式に出ないなんて困るんだけど。太一の親のことも考えてよ!」
「…」
「奈緒、来てくれないかな?」
「…」
なんなんの?勘弁してほしい。
「急いでるんで」
と言って二人から離れる
「なによ!いい年してイジケ虫?恥ずかしくない!?」
!?
「お姉ちゃんは私に負けたのよ!太一は私を選んだ。それだけでしょ?」
…
「そんなのいつまでも気にしないで…」
「なに?どうしたの?」
!?
「か…」
梶木君!?
「俺の女が何かした?」
!?な、なに?
「!!?なに、この人…」
由紀は目を見開いてる
そりゃそうだ。こんなイケメンあまり見ないもん。
「何かあったの?」
「あ、いえ、あ…」
ビックリして声が出ない。
「俺の彼女が何かしました?」
「お姉ちゃんの彼氏!?」
「あー、なに?妹さん?それ言ってよー」
と、私を見て
「はじめまして!お姉さんとお付き合いをさせて頂いてます」
!?
「すいません、これからちょっと予定があってこれで失礼します。いずれまたご挨拶に…」
そう言って、梶木君は私に腰を回して
「いこっか!」
と言って一緒に歩き出した
「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん!」
しばらく歩いて角を曲がった。
腰からは手を離して
「この方がよかったですよね?」
「えっ!?」
もしかして助けてくれた?
私みたいな取り巻きに?
「な、なんで私みたいな…」
「だって、いつも俺をみてキャーキャー言ってる割には、いつも遠いい目してたから」
「えっ?」
「何か理由でもあるのかなっと、さっきの見て理解しましたけど」
「…」
「じゃ、失礼します」
いちよう私のが先輩なんで頭を下げて梶木君は駅に向かって行った。
…最悪だ。
こんなんじゃ、取り巻きのファンも出来ないじゃん!!
「えー、佐山さんファン辞めちゃっんですか?」
「あ、うん。梶木君のファンではあるけど、もういい歳だしね、これこらは現実見ます」
いつもキャッキャッ言い合ってる取り巻き軍団に声をかけられて
「えー、佐山さんと一緒に梶木君の話したの楽しかったのに」
「ハハハ、別に嫌いになったわけじゃないから、また話そう!」
私は取り巻きグループから引退した。
確かに梶木君の優しさに惚れたのはあるけど、実際には手が届かない人もだし、とは言っても恋愛はしたくないし。
今あるものと言ったら…
結局手短にある仕事。私は全ての雑務から面倒な仕事も引き受け、仕事に没頭した。
周りは梶木君!!って叫んでた私が急に仕事に没頭しはじめたので、引いてる人もいたり…
もう周りなんか気にせず、ひたすら仕事をした。
「ふー」
気づけば21時になっていた。
今日も1人か…
まぁ、好き好んで残業するなんて私くらいよね。
スマホをみると妹からの着信履歴。
留守電を前に聞いたら、あのイケメンと何処で出会ったんだとメッセージが入ってた。
「はぁー」
マジうざい。
妹とは8歳違う。
両親は妹には甘かった。
何でも買い与え、わたしのものでも欲しいと言えば、お姉ちゃんなんだからっと言って妹に渡していた。
そしてそれは大学のときに出来た彼氏でも
「お姉ちゃんの彼氏欲しい」
と言って高校生の妹はガンガンと攻めて、攻め落としてしまった。
太一とは付き合って4年。家族にはあまり交際のことは言わず付き合ってた。
そしてお互い結婚をすることを意識し、両親に挨拶に行こうとなったとき、妹は太一をみて、太一の会社の前で待ち伏せしたりと太一を攻め始めた。
妹の容姿は私と違い、可愛くってお人形さんみたいなパッチリした目。スタイルもいい。姉の私とは似つかない。
私は普通以下、平凡以下、スタイルもよくない。誰がどつみても姉妹とは思われない。
取り巻きをしなくなって1ヶ月がたったころ。
「佐山さん」
「へ?」
振り向くと梶木君がいた。
そういえば梶木君をしばらく見てなかったな。
まぁ、あんなの見られて会いづらいのもある。
「ちょっと、今日定時後いいですか?」
「え?」
な、なに?
私は訳もわからないままその日は珍しく定時で終えて、指定された場所に行った。
そこには…
「あっ、お姉ちゃん」
!!?
妹と梶木君がいた。
ど、どういうこと?
ビルの真ん中の広場のところに2人がいる。
もしかして、いや、まさか、だってもう太一とは結婚式だって…
「お姉ちゃん、私梶木さんのが好きになっちゃった」
!!?
「太一お姉ちゃんに返す」
「ちょっ、ちょっと何いいだすの?結婚式は来月…」
「あー、お母さん達になんとかして!って言っといた。なんならお姉ちゃんが代わりに花嫁でも」
あまりの出来事にめまいがした。
ここまで馬鹿な妹とは…
「あんた、何考えてるのよ!!」
私は大声で怒鳴った。
めったに怒ることもしないし、怒ろうとするといつも母に止められてた。可愛い妹なんだしって。
でも、これはひどすぎる!
「太一と結婚するのに、今更何を!!」
「だから、返すって言ったじゃん!しつこいな」
「ねぇ~、梶木さーん、梶木さんからも言って!」
そう言うと梶木君は私をチラッとみて
「そうだなー」
と、妹に微笑む
な、なに?嘘でしょう!?
また、太一のときにおこった出来事が蘇る。
「奈緒、ごめんな」
あの時、太一は私にそういった。
梶木君は私の恋人でもなんでもないけど、でもこんなのって…
「か、梶木君?」
嘘でしょ?
「いい加減にしてくれないか?」
と、私に向かって言う。
あっ…、うそ!
こんなことって…
妹は隣で嬉しそうにしている。
「ほんと、いい加減にしてほしいよ!」
そう言って腕を振りほどく
「えっ!?」
妹は今起こったことに理解出来ない顔でいた。
「マジうざい」
今度は妹に向かって言った。
「な、な、な…」
妹は言葉を詰まらせ
「あんた、毎回会社の前で待って、俺に媚び売ってどうするわけ?初めから俺そのきないって言ったよな?」
「ちょ…、今はそんなことないっていったじゃん!」
「そうだな、今はそんなことないな。あんたがキモくなった」
「なっ!!」
「そうやっていつも姉さんのを手に入れてたんだ。性格悪!」
「お、お姉ちゃんより私の方がみんないいって言うもん!」
「へぇー、そうなんだ。でもおれは全く思わないね」
そう言って私の所にきた。
「か、梶木君?」
「まぁ、人の家の事情はとやかく言いたくないけど、すげー妹」
「二度と俺の前に現れるな!それと君の姉さんのが魅力的だよ」
そう言って私の手を取って、歩きだした。
「私よりお姉ちゃんのがいいっていうの?あんたおかしいんじゃない!?」
後ろでそんな声を聞きながら。
「あの、ごめんなさい。まさか妹があそこまでとは…」
「あんなひどいストーカー初めて!しかも姉妹でされるとは…」
うっ
「ごめんなさい」
深々と頭を下げた。
「佐山さん、もっと自信もったらいいじゃないですか!」
「え?」
「俺は今の佐山さん、気になりますよ」
!?
「仕事に必死で、雑務も何でも皆のフォローして、まぁ急になったんでみんなびっくりしてましたけど、でも元々仕事出来る方なの知ってたので、自分の仕事以外でも全部こなす佐山さんは凄いと思ってました。」
「ち、違うの!そんなんじゃない!」
「何がです?」
「私…、何か集中したかっただけ。だから自己中なの。梶木君に妹はのこと知ってしまったし、前みたいに騒げないし、だからって次の恋愛なんかもする気が…、それで仕事に打ち込んでただけ!だから自分勝手なだけなの」
「…そういうことですか」
「そそ、そういうこと。だから私のこと気にすることなんてない」
「なるほど」
「ほんと姉妹で色々迷惑かけてゴメンナサイ」
「失礼な質問かと思いますが、ご両親、妹はさんとは今後は?」
「元々両親とは出ていってからは交流はなかったから。太一の…、元婚約者の挨拶で実家に1度帰ったけど、まさかそれであんなになるとは…、母も何も言わないし、昔からお姉ちゃんなんだから!だし、多分もう二度と連絡はしないかな。」
「佐山さんの気持ち考えないなら、ご両親には申し訳ないけどそれでもいいと思いますよ」
「俺が、その分考えますよ」
「な!?」
なに?考えるって
「佐山さんの気持ち考えますよ」
「か、梶木君?」
「これから、飯でもどうですか?」
「!?」
「だ、だから、私さっきも言ったように、自己中なだけで…」
「みんな自己中ですよ!出世のために頑張るのだって結局は自分のため。」
そうだけど…
「飯行きましょう!」
そう言ってその日は半強制的に一緒にご飯を食べた。
その後
「お姉ちゃんなんだから、太一さんとどうにか」
プチッ
母の留守電を切った。
来週には新しい電話番号に変わる予定。
そして、スマホの番号も既に変わっている。
ここに住んでるマンションの住所は知らないのでここに来るまでということはないだろう。
母の留守電の内容は、婚約破棄したことで太一が損害賠償請求をしたみたいで、私になんとか話してほしいという留守電。
そんなの勝手すぎる!
そして、妹が私の会社に何度か訪ねて来てると聞き、これ以上ご迷惑をかけられないと思い退職した。
といってもマイナスな考えではない。
元々退職しようと考えてた。
社内で、Webデザインをしてたのでそれをメインにした会社に行きたいと以前から思っていた。
再就職も決まったのでこのタイミングで退職をした。
梶木君とはあの時のご飯を食べただけだった。
今となってはいっぱい迷惑かけちゃったなーと反省。
何か言おうかとも思ったけど、だからといって特にこれと言って…
最終日、荷物をまとめて皆に深々と頭を下げて会社のビルを出た。
「俺に挨拶なしですか?」
振り向かなくってもわかる。
私は振り向かず
「梶木君には本当にお世話になっちゃって、元気でね」
「あのー」
不機嫌そうな声。
「気になるっていいませんでしたっけ?」
「あー、うん。でも…」
「ちなみに、俺彼女とかいませんよ」
「そ、そうなんだ。じゃあすぐ作れるよ」
「はぁー、姉妹なのになんで姉の方はこんなに…」
と言って腕を引っ張る。
「自信ないんですか?もっと積極的に攻めたらどうです?ストーカーでしょ?」
!!?
振り向いて彼の顔をみると、凄い嬉しそうな顔をしていた。
「とりあえず、連絡先教えて下さい」
「朝から見れてラッキー」
数人の女子社員と、社内人気No.1梶木隼汰を見てワイワイと言う。
勿論これだけ騒いでるから、本人にんも気が付かれてる。
チラッと見られて、ああ、またいつものか…って顔をされてる?
それでもねー、やっぱりカッコイイもん。
見た目もいい男だけど、優しくって思いやりもある。
まだ私がこうなる前に、彼の優しさを目の当たりにして、完璧に惚れてしまった。
とは言ってもファンとしてだけどね。
私はもう、恋人はほしいと思わない。なぜなら…
「自分の妹でしょ?結婚式くらい出なさい!」
家に帰って留守電を聞くと母のメッセージ。
そうこれが原因。
もう、勘弁してほしい。
佐山奈緒、29歳。社内でカッコイイ男子を追っかけて半年がたつ。しかも相手は26歳の年下。
世にいう痛い女です。
でも、今はこうしないと割り切れない。
「狭山さーん、さっき梶木君と会ったんですけど…」
「ええ!!いいなぁー」
取り巻き軍団とワイワイ話す。
昼休み何度も電話が鳴る。
妹から…
「電話鳴ってるけどいいの?」
「いいの、いいの」
私はランチを食べてる同僚に笑顔で返した。
そして
「お姉ちゃん!」
「…由紀」
会社から少し歩いた所に車から出てきた。
そして
「…久しぶり」
…由紀の結婚相手の桐山太一、私の元婚約者。
早い話が、自分の婚約者を妹に寝取られた。ということ。
勿論両親も知っている。
「妹の結婚式に出ないなんて困るんだけど。太一の親のことも考えてよ!」
「…」
「奈緒、来てくれないかな?」
「…」
なんなんの?勘弁してほしい。
「急いでるんで」
と言って二人から離れる
「なによ!いい年してイジケ虫?恥ずかしくない!?」
!?
「お姉ちゃんは私に負けたのよ!太一は私を選んだ。それだけでしょ?」
…
「そんなのいつまでも気にしないで…」
「なに?どうしたの?」
!?
「か…」
梶木君!?
「俺の女が何かした?」
!?な、なに?
「!!?なに、この人…」
由紀は目を見開いてる
そりゃそうだ。こんなイケメンあまり見ないもん。
「何かあったの?」
「あ、いえ、あ…」
ビックリして声が出ない。
「俺の彼女が何かしました?」
「お姉ちゃんの彼氏!?」
「あー、なに?妹さん?それ言ってよー」
と、私を見て
「はじめまして!お姉さんとお付き合いをさせて頂いてます」
!?
「すいません、これからちょっと予定があってこれで失礼します。いずれまたご挨拶に…」
そう言って、梶木君は私に腰を回して
「いこっか!」
と言って一緒に歩き出した
「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん!」
しばらく歩いて角を曲がった。
腰からは手を離して
「この方がよかったですよね?」
「えっ!?」
もしかして助けてくれた?
私みたいな取り巻きに?
「な、なんで私みたいな…」
「だって、いつも俺をみてキャーキャー言ってる割には、いつも遠いい目してたから」
「えっ?」
「何か理由でもあるのかなっと、さっきの見て理解しましたけど」
「…」
「じゃ、失礼します」
いちよう私のが先輩なんで頭を下げて梶木君は駅に向かって行った。
…最悪だ。
こんなんじゃ、取り巻きのファンも出来ないじゃん!!
「えー、佐山さんファン辞めちゃっんですか?」
「あ、うん。梶木君のファンではあるけど、もういい歳だしね、これこらは現実見ます」
いつもキャッキャッ言い合ってる取り巻き軍団に声をかけられて
「えー、佐山さんと一緒に梶木君の話したの楽しかったのに」
「ハハハ、別に嫌いになったわけじゃないから、また話そう!」
私は取り巻きグループから引退した。
確かに梶木君の優しさに惚れたのはあるけど、実際には手が届かない人もだし、とは言っても恋愛はしたくないし。
今あるものと言ったら…
結局手短にある仕事。私は全ての雑務から面倒な仕事も引き受け、仕事に没頭した。
周りは梶木君!!って叫んでた私が急に仕事に没頭しはじめたので、引いてる人もいたり…
もう周りなんか気にせず、ひたすら仕事をした。
「ふー」
気づけば21時になっていた。
今日も1人か…
まぁ、好き好んで残業するなんて私くらいよね。
スマホをみると妹からの着信履歴。
留守電を前に聞いたら、あのイケメンと何処で出会ったんだとメッセージが入ってた。
「はぁー」
マジうざい。
妹とは8歳違う。
両親は妹には甘かった。
何でも買い与え、わたしのものでも欲しいと言えば、お姉ちゃんなんだからっと言って妹に渡していた。
そしてそれは大学のときに出来た彼氏でも
「お姉ちゃんの彼氏欲しい」
と言って高校生の妹はガンガンと攻めて、攻め落としてしまった。
太一とは付き合って4年。家族にはあまり交際のことは言わず付き合ってた。
そしてお互い結婚をすることを意識し、両親に挨拶に行こうとなったとき、妹は太一をみて、太一の会社の前で待ち伏せしたりと太一を攻め始めた。
妹の容姿は私と違い、可愛くってお人形さんみたいなパッチリした目。スタイルもいい。姉の私とは似つかない。
私は普通以下、平凡以下、スタイルもよくない。誰がどつみても姉妹とは思われない。
取り巻きをしなくなって1ヶ月がたったころ。
「佐山さん」
「へ?」
振り向くと梶木君がいた。
そういえば梶木君をしばらく見てなかったな。
まぁ、あんなの見られて会いづらいのもある。
「ちょっと、今日定時後いいですか?」
「え?」
な、なに?
私は訳もわからないままその日は珍しく定時で終えて、指定された場所に行った。
そこには…
「あっ、お姉ちゃん」
!!?
妹と梶木君がいた。
ど、どういうこと?
ビルの真ん中の広場のところに2人がいる。
もしかして、いや、まさか、だってもう太一とは結婚式だって…
「お姉ちゃん、私梶木さんのが好きになっちゃった」
!!?
「太一お姉ちゃんに返す」
「ちょっ、ちょっと何いいだすの?結婚式は来月…」
「あー、お母さん達になんとかして!って言っといた。なんならお姉ちゃんが代わりに花嫁でも」
あまりの出来事にめまいがした。
ここまで馬鹿な妹とは…
「あんた、何考えてるのよ!!」
私は大声で怒鳴った。
めったに怒ることもしないし、怒ろうとするといつも母に止められてた。可愛い妹なんだしって。
でも、これはひどすぎる!
「太一と結婚するのに、今更何を!!」
「だから、返すって言ったじゃん!しつこいな」
「ねぇ~、梶木さーん、梶木さんからも言って!」
そう言うと梶木君は私をチラッとみて
「そうだなー」
と、妹に微笑む
な、なに?嘘でしょう!?
また、太一のときにおこった出来事が蘇る。
「奈緒、ごめんな」
あの時、太一は私にそういった。
梶木君は私の恋人でもなんでもないけど、でもこんなのって…
「か、梶木君?」
嘘でしょ?
「いい加減にしてくれないか?」
と、私に向かって言う。
あっ…、うそ!
こんなことって…
妹は隣で嬉しそうにしている。
「ほんと、いい加減にしてほしいよ!」
そう言って腕を振りほどく
「えっ!?」
妹は今起こったことに理解出来ない顔でいた。
「マジうざい」
今度は妹に向かって言った。
「な、な、な…」
妹は言葉を詰まらせ
「あんた、毎回会社の前で待って、俺に媚び売ってどうするわけ?初めから俺そのきないって言ったよな?」
「ちょ…、今はそんなことないっていったじゃん!」
「そうだな、今はそんなことないな。あんたがキモくなった」
「なっ!!」
「そうやっていつも姉さんのを手に入れてたんだ。性格悪!」
「お、お姉ちゃんより私の方がみんないいって言うもん!」
「へぇー、そうなんだ。でもおれは全く思わないね」
そう言って私の所にきた。
「か、梶木君?」
「まぁ、人の家の事情はとやかく言いたくないけど、すげー妹」
「二度と俺の前に現れるな!それと君の姉さんのが魅力的だよ」
そう言って私の手を取って、歩きだした。
「私よりお姉ちゃんのがいいっていうの?あんたおかしいんじゃない!?」
後ろでそんな声を聞きながら。
「あの、ごめんなさい。まさか妹があそこまでとは…」
「あんなひどいストーカー初めて!しかも姉妹でされるとは…」
うっ
「ごめんなさい」
深々と頭を下げた。
「佐山さん、もっと自信もったらいいじゃないですか!」
「え?」
「俺は今の佐山さん、気になりますよ」
!?
「仕事に必死で、雑務も何でも皆のフォローして、まぁ急になったんでみんなびっくりしてましたけど、でも元々仕事出来る方なの知ってたので、自分の仕事以外でも全部こなす佐山さんは凄いと思ってました。」
「ち、違うの!そんなんじゃない!」
「何がです?」
「私…、何か集中したかっただけ。だから自己中なの。梶木君に妹はのこと知ってしまったし、前みたいに騒げないし、だからって次の恋愛なんかもする気が…、それで仕事に打ち込んでただけ!だから自分勝手なだけなの」
「…そういうことですか」
「そそ、そういうこと。だから私のこと気にすることなんてない」
「なるほど」
「ほんと姉妹で色々迷惑かけてゴメンナサイ」
「失礼な質問かと思いますが、ご両親、妹はさんとは今後は?」
「元々両親とは出ていってからは交流はなかったから。太一の…、元婚約者の挨拶で実家に1度帰ったけど、まさかそれであんなになるとは…、母も何も言わないし、昔からお姉ちゃんなんだから!だし、多分もう二度と連絡はしないかな。」
「佐山さんの気持ち考えないなら、ご両親には申し訳ないけどそれでもいいと思いますよ」
「俺が、その分考えますよ」
「な!?」
なに?考えるって
「佐山さんの気持ち考えますよ」
「か、梶木君?」
「これから、飯でもどうですか?」
「!?」
「だ、だから、私さっきも言ったように、自己中なだけで…」
「みんな自己中ですよ!出世のために頑張るのだって結局は自分のため。」
そうだけど…
「飯行きましょう!」
そう言ってその日は半強制的に一緒にご飯を食べた。
その後
「お姉ちゃんなんだから、太一さんとどうにか」
プチッ
母の留守電を切った。
来週には新しい電話番号に変わる予定。
そして、スマホの番号も既に変わっている。
ここに住んでるマンションの住所は知らないのでここに来るまでということはないだろう。
母の留守電の内容は、婚約破棄したことで太一が損害賠償請求をしたみたいで、私になんとか話してほしいという留守電。
そんなの勝手すぎる!
そして、妹が私の会社に何度か訪ねて来てると聞き、これ以上ご迷惑をかけられないと思い退職した。
といってもマイナスな考えではない。
元々退職しようと考えてた。
社内で、Webデザインをしてたのでそれをメインにした会社に行きたいと以前から思っていた。
再就職も決まったのでこのタイミングで退職をした。
梶木君とはあの時のご飯を食べただけだった。
今となってはいっぱい迷惑かけちゃったなーと反省。
何か言おうかとも思ったけど、だからといって特にこれと言って…
最終日、荷物をまとめて皆に深々と頭を下げて会社のビルを出た。
「俺に挨拶なしですか?」
振り向かなくってもわかる。
私は振り向かず
「梶木君には本当にお世話になっちゃって、元気でね」
「あのー」
不機嫌そうな声。
「気になるっていいませんでしたっけ?」
「あー、うん。でも…」
「ちなみに、俺彼女とかいませんよ」
「そ、そうなんだ。じゃあすぐ作れるよ」
「はぁー、姉妹なのになんで姉の方はこんなに…」
と言って腕を引っ張る。
「自信ないんですか?もっと積極的に攻めたらどうです?ストーカーでしょ?」
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