幸せの証

詩織

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 一時帰宅はするものの、まだマンションを借りている。

 最近嬉しいことは、坂木先生とよくLINEをしている。手術は全て終わってるのでクリニックに行くことはないが、1人で生きてきてたのできっと気にかけてくれるだろう。

 クリニックにいってたときは、松田さんの送り迎えがあって雑談程度だったが話したりしていて、それも楽しみの1つだった。

 そろそろ自宅のマンションに戻ってもいいんじゃなきか?と思ってたときに眞鍋さんのフィアンセだった人がまた行動を起こした。

 今度は私に婚約破棄された原因として慰謝料を請求する内容が自宅の郵便に届けられていた。

 弁護士もいることから眞鍋さんに電話をして相談。眞鍋さんから弁護士さんを紹介してもらい、状況を話した。

「わかりました。あとはこちらでおまかせくだい」

 眞鍋さんから聞いてたこともあって、あとはこちらで対処してくれると言ってくれた。坂木先生にも近況報告としてLINEで報告していた。

「自宅に帰りづらいな」

 引っ越すかな。

 そんなこのを坂木先生にチャットをしていた。

『なら、うちにきませんか?』

「…えっ?」

 ど、どういうこと!?

『いえ、そんなご迷惑をお掛けするわけにはいきません』

 と、返事をすると

『今電話していいですか?』

 と、チャットがきて問題ないことを伝えるとすぐ電話がきた。

「浜谷さん、あの…」

 坂木先生は少し間をあけて

「一緒にすみませんか?」

「えっ!?でも妹さんが…」

「妹は実家に帰りました。今は1人です」

 それなら余計に…

「先生、それなら余計によくないかと。先生は思ってないかもですがいちよう女性なんです私」

「そんなの、解ってますよ!解ってて言ってます。俺は…、浜谷さんと一緒にいたいです」

 それって、いや、ドラマの見すぎか?恋愛初心者の私には刺激が強すぎた。でも坂木先生はそんなつもりないんだろうけど

「ごめんなさい。そこまで先生に甘えるわけには」

「…振られたってことかな」

「先生!?」

「これでも勇気絞って言ってるんですよね。俺は浜谷さんが好きです」

 恋愛は、中学生のときでストップしてる私にはとても刺激が強く、ましてや付き合ったこともないし、それ以上なんてことも一生ないと思ってた。

「あ、あの…、私、ずっと引きこもりだったから、そういうの経験なくって、その…」

「じゃあ、俺のことどう思ってますか?」

 先生のこと?

 LINE楽しみだし、先生をいい人だもん。

「嫌いですか?」

「い、いえ、そんなことは」

「じゃ、好きですか?」

「そ、それは…」

 考えたことないよー

「…解らないです」

「じゃあ、浜谷さん、俺とLINEしなくなったらどんな気持ち?」

「…寂しいです」

 そういうと

「じゃあ、まだ見込みあるかな?俺。」

「先生、でも私ですよ?もう少し考えた方が」

「何をですか?考えるも何も、俺は浜谷さんといたい」

 やばい!ドキドキとまらない!!

 それからは考えてくだいと言われて電話は終わった。


 数日後、初めて出版社に顔をだした。住田さんがびっくりしてる。

「いやー、すごい!よかったねー」

 住田さんは涙ぐんで言ってくれた。

「もとはといえば、住田さんの紹介からなんで感謝してます」

「これからいっぱい外に出ていい出会いいっぱいしてね」

 住田さんは本当に嬉しそうだった。

 出版社から帰るとき、中学生以来のショッピングをした。いつもほしい時はネットだった。今は店で手にとってみることができる。それな当たり前のことが嬉しくってたまらない。

 色々買ってしまい、家に着くと弁護士さんから電話があった。

「慰謝料の請求についてはなくなりました。それでこちらとしては、無実の訴えに精神的苦痛があったので迷惑料として逆に請求しました。そんなに大きい額は貰えないかもですが」

「ありがとうございます」

「いえ、眞鍋さんからも浜谷さんにご迷惑をお掛けしたからと何度もお願いされてましたので、なんとかこういう形になれてよかったです」

 今回の問題で婚約破談だけでなく、会社同士の付き合いもなくなっまったという。


 問題は解決された今、今思うことは先生のことだった。

 先生にLINEをしようと思うが恥ずかしい。

 でもいつも先生が心配してくれる。それが嬉しい。この気持ちが恋愛なのかどうか解らないけど、でも…

 LINEで今電話していいですか?とチャットをし、大丈夫と回答を貰ってすぐ電話をした。

「先生、まだ恋愛感情があるかどうか解りませんが…、でも先生のことは好きです」

「…」

「…こんな私でよければ一緒に住んでもいいでしょうか?」

「一緒に住もう」

 嬉しそうに答えてくれる。

「はい」



 引っ越しの準備をしてるときチャイムがなった。みると

「えっ!?」

 眞鍋さんと真由加さん!?

「引っ越しされるのでご挨拶にと…」

「そんな、わざわざすいません。本当に色々ありがとうございました」

 頭を下げると

「こちらこそ、ありがとうございました」

「坂木先生のところに行かれると聞きました」

「…あ、あ、はい。」

「よかったですね」

 真由加さんは嬉しそうに言った。

 なんだか恥ずかしいなぁー

 でも、それよりも2人で来たのが気になる。

「あ、あの…、お二人でこられたというのはそのー」

  真由加さんが

「少し浜谷さんにはお話してたので、ご報告とご挨拶をと思ったんです」

「この先結婚を前提に、ここに住むことにしました」 

「えっ!そうなんですか。おめでとうございます。…てか、新居に長く住んじゃってすいません。」

「いえ、こちらからお願いしましたから。」

「私達、浜谷さんとはこれからも長くお付き合いしたいと思ってます。これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 幸せそうな2人をみて本当によかったと思った。

「浜谷さんが現れなければ祐人はきっと、あのフィアンセの方と結婚をしてたと思います。私達がこうやって勇気をだして2人で進もうときっかけをくれたのは浜谷さんです。ありがとうございます」

「いえ、私は何も…お幸せになってください」

「浜谷さんも」

 その日、自宅のマンションに戻り引っ越しの準備をした。

「これは?」

「あ、それは破棄で」

「わかった」

 少ししてから坂木先生がきて引っ越しの手伝いをしてくれた。

「2人だと準備が早いですね」

「そりゃ、急いでますよ!早く一緒に住みたいから」

 !?

 そういって後ろから抱き締められた。

「…咲子」

「っっ!?」

 そしてもう一度

「咲子」

 やばい!身体中が熱い

「こっち向いて」

 そういうと、顔を橫に向けさせられ

 えっ!?

 い、今、なに?これって、キス!?

 唇を合わせるくらいのキスで

「我慢できなくなった」

 は、恥ずかしい

「絶対に大事にするから、今までの分幸せになりましょう」

「…はい」

 はじめて抱き締められる。ドキドキと胸の締め付けみたいなものがあって凄い幸せ。



 半月後、引っ越し。

「やっと来た」

 そういって、またキスをする。

 何度もキスをしてるけど慣れない。

「先生、あの…」

「先生じゃないでしょ?」

「あっ、紀一きいちさん」

「これからは、そうよんで」

 そういってまたキスをする。

 私が中学から引きこもりだったため、恋愛もそこで止まってる。色々知識は知ってても私がそんな経験をすることはないと思っていた。それを知ってか紀一さんは、キス以上はしようとしない。

 一緒に寝てるけど抱き締めて寝てくれる。もしかして我慢してる?それとも私じゃ無理?

 一緒に住んで1ヶ月。いまだに抱き締めて寝てるだけだった。

 こういうときって何か言った方がいいのかな?でも私からどうやって言えば…


 ある日、担当してる住田さんから別の担当になり、近くに来てたことから挨拶にきた。名前は徳田とくださんといい、25~27歳くらいの若い男性だった。

 リビングに通してコーヒーを出す。

「住田から、とても優秀だと伺ってます」

「いえ、そんなことは…」

「私はまだ、社会人三年目なんでご迷惑をお掛けすると思いますが、精一杯頑張りますのでよろしくお願い致します」

「こちらこそ」

 お互い頭を下げ、その後は雑談を少しした。そしてお見送りに玄関に送ろうとしてとき

 カチャ

 と、ドアの音がした。

「!?」

 紀一さんが帰ってきた。

 ビックリしたんでお互い固まった。

「あっ、旦那様すいません。お邪魔してます。それでは失礼します」

 そういって、徳田さんが帰ろうとしたとき

「お、おい!」

徳田さんの腕を掴む

「は、はい!」

徳田さんはビックリして裏声になる。

「咲子これは…」

真剣な目で私をみる。

「?」

私は意味がわからず

「何が?」

と、答える。

「俺がいない間、どーいうこと?」

「へ?」

「男を連れてこむとか」

「ちょ、すいません!勘違いされてるようですが、私は来月から浜谷さんの仕事の担当をすることになってんでご挨拶に…」

「…えっ?」

「??」

な、なに!?どうしたの?

私は未だ状況が解らないでした。

「あ、あ、す、すいません!!」

深く頭を下げる紀一さん。

「いえ、奥さまを愛されてるんですね!では失礼します!今後ともよろしくお願い致します」

笑顔で挨拶する徳田さんに、バツが悪そうな顔をする紀一さん。

徳田さんが帰ったあと

「なんだよー!言っといてよ!」

と、言われ

「だって、急に言われて」

それに、奥様って…恥ずかしい!でも

「なんで怒ってたんです?」

「…」

確かに凄い顔をして怒ってたように見えた。

「なにか私悪いことでも?」

「…悪いことした!」

「え?」

腕を引っ張られ、ギュッと抱き締められる。

「…悪いことした」

「あ、ごめんなさい。解らなくって」

なんで怒ってるのか解らない。でも私が悪いことしたんだ。

「…嫉妬した。…浮気してるのかと思った。」

「えっ!?」

「解って」

そういってキスをされた。

「んー」

いつも口をつける優しいキスなのに、後頭部を押さえられ、口を無理やり開けさせられ

「んーー」

な、なに!?これ!!

絡まるものに刺激が強く、逃げても逃げても追いかけられる。

どこで息をしていいのか窒息死しそうになり、苦しくって胸を叩く

「咲子、鼻で息をしないと死んじゃうよ」

「…ううう」

「その顔、たまらない」

そういって抱き締められる。

「…ごめん、進めていい?」

「え?」

「ずっと我慢してて、でもそんな顔したら理性崩壊しそう」

それってもしかして…

「咲子を俺のものにしたい」

は、恥ずかしい…

でも

「わ、私本当に何も知らないので、教えてください」

というと

クスッと笑われ

「教えることなんて何もないよ!そのまま身を任せればいい。それだけ」

「と、とりあえず!!ご飯は食べましょう!!下ごしらえはできてるのであとは焼くだけなんで」

というと

「…」

何も言わない紀一さん。

少しして

「アハハ!」

と笑いだした。

「えっ!?」

「咲子には参るよなー」

「紀一さん?」

「そうだね、折角準備してくれたんだもん。たべないとだね」

そういって、部屋着に着替えて食卓に座った。

その後は何事もなかったように食事をし、お互い別々でお風呂に入った。

これだけ何事もなかったようにしてるんだもん。さっきのはなかったこと?になったのかもな。

 そのときは、私自身がムードを壊したと思ってなかった。

そろそろ寝る時間だなーと思ってたとき

「さて、咲子」

そういってキスをしてきた。

えっ?

「そんなビックリするなって!さっき言ったこと覚えてる?もう寝るだけだから他することないよね?」

「ええ、まぁ…」

「じゃ。さっき話したこと実践するから」

そういってお姫様抱っこされ

「えええ!?」

「ごめん、マジで限界で…いい?」

そんな顔で言われたら…私は少しだけ頷くと

「ありがと」

嬉しそうな顔をしてくれた。

いつも一緒に抱き合って寝るベッド。

同じベッドなのにいつもと違う感じがする。

「咲子…」

紀一さんは、大事に大事に抱いてくれた。

「ごめん、痛いよな。ごめん」

「…大丈夫」

本当は全然大丈夫じゃない!!こんな痛いなんて思わなかった。

苦痛な顔をしてる私をみて

「愛してる」

!?

「苦しい咲子をみて、俺のもになってくれた嬉しさがあるんだ。俺っていやなやつだよな。こんなに苦しんでるのに」

「…痛い!でも、私も嬉しい」

初めての体験は痛さと辛さでいっぱいだった。けど、愛してると言われて幸せでもあった。



「咲子、ありがとな。」

痛みを我慢してる間に終わり、紀一さんは優しく髪を撫でながら言ってくれた。

「…私、今でも信じられない。一生涯1人で生きていくと思ってたから…、まさか恋愛が出来るなんて思いもしなかった。その相手が紀一さんみたいな素敵な人で、私こそ選んでくれて感謝です」

優しい顔をして抱き締めてくれる。そしてそのまま眠りについてしまった。



3ヶ月後

眞鍋さんと真由加さんが結婚式を挙げ私達は招待された。

婚約も破棄したりと色々あったので式は身内と友人とで30人くらいが行った。

幸せをそうな2人をみると、私も結婚してみたいと思ってしまう。ちょっと前までならあり得ない非現実の願望。

眞鍋さんの弟さんと妹さん、そしてご両親も深々と私に頭を下げ

「もういいですから」

遅くなったけど、お見舞いとしてお金をご両親に渡されたが眞鍋さんが治療費を全部負担してくれたのでと言って受け取るとことはしなかった。

席は紀一さんの隣。

「綺麗だなー」

と、いう私に

「咲子も着たら綺麗だよ。きっと」

深い意味はないんだろうけど、ドキドキする、

ちゃっかり二次会まで参加。

クリニックの受付、看護士さんもいてお酒を飲みながら談笑した。



家に向かう途中で少し公園によらない?と言われ、公園によった。

この公園は高台にあるので街の夜景がみえる。とても綺麗でお気に入りの場所。

「楽しかったなー」

「そうだね」

「ねぇ、咲子はどういうのしたい?」

「…えっ?」

「やっぱりそういうのって、女性の夢とかあるでしょ?」

「…紀一さん?」

それって、まさか…

「ん?」

「あ、あの…、それって」

紀一さんは笑顔で

「俺は咲子の花嫁姿見れれば何でもいいけどね」

「!?」

「俺の奥さんになってください」

そういって指輪を持っている紀一さん。

「これ、はめていい?」

「…」

言葉が出ない。

「咲子?」

私の顔を覗く

「俺、咲子なしなんてこの先考えられないよ」

「…俺の奥さんになってくれるよね?」

「は、はい…」

手をとられて、指輪をはめてくれた。

「結婚式を出席した人ってさ、そのあと自分も結婚したいって思う人が多いんだって!だから、今のチャンスを生かしてプロポーズしたずるいやつです!」

そういって苦笑する紀一さん。

なるほど、確かに凄い結婚したいと思ってる。なんかずるいタイミング。

でも…

私はギュッと抱き締めていた。

「ありがとうございます」

私を選んでくれたことに、感謝いっぱい。


1ヶ月後

「えっ?」

母は目を見開き、父は言葉を失ってる。

「本当に咲子?」

「…うん」

それと同時に母が大泣きする。

「はじめまして、坂木といます。突然失礼します。咲子さんと結婚の許しを頂き伺わせて頂きました」

「…そ、そうですか。ありがとうございます」

娘が結婚することなんて諦めてた両親。それかまさかという感じなんだろう。両親は感極まって涙が止まらないでいた。

「聞いてるかもしれませんが、娘は事故で顔を怪我してまして」

「はい。私はその手術を一緒に担当してまして」

「そ、そうなんですか!」

父がビックリして

ありがとうございます!と何度も頭を下げる両親。

坂木さんも

「頭をあげてください!私は怪我をされてる咲子さんと出会い、咲子の心の優しさにひかれました。咲子さんはとても心の綺麗な方です。彼女と出会えてよかったです」

ヤバイ!私も泣きそう…

私は手術をした経緯を説明し、そしてあんな形で出ていったとはいえ、両親はずっと心配してくれてたことを実感したことを感謝した。



「咲子」

実家を出たあと、名前を呼んで手を出されたので私は手を繋いだ。

嬉しそうな彼の顔をみると幸せで…、何度も死のうと思ったこともあったけど、生きててよかった。

だから、これからは死ぬなんて考えないで生きてゆく
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