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大好きな上司
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「おめでとうございます」
みんなに囲まれてお祝いされてる、私の好きな人。
彼は近々結婚する。
矢島大樹、32歳。
若いのに課長で、しかもいい男。
優しいし人気もある。
私は彼の下で5年いた。
初めは憧れで、それがいつの間にか恋になってしまった。
近すぎて想いを打ち明けて、もし気まずくなったらと思うと言えないでいた。
仲も良かったし、2人で飲みに行くことも何度もあった。
嫌われてはいないとは思ってた。もしかしたらそのまま少しはなんて期待もあった。
「内野さん、これお願いします」
後輩から資料を渡される。
私、内野真理、28歳。
上司の彼に4年片思いをしていた。
「てっきり、内野さんと結婚するかと思いましたよ」
食堂で一緒に食べてる後輩に言われた。
「えー?なんでよ?そんなんじゃないって!」
…と、言うしかない。
はぁー、これからも顔見るのか。辛いな。
「内野!今日中にできる?」
「あっ!はい!大丈夫だと思います」
矢島課長の顔を見ずに返事をした。
だって、無理だよ
結婚相手は秘書課の楢川さん。昔読者モデルやってたとか言ってたっけ。
それなりのスタイルだし、見た目ももう言うことがない。
美男美女ってやつだ。
ある日、残業で1人フロアに残っていた。
大きなミスをして1人居残り。
しょもない初歩的なミスをしてしまった。
「はぁー、なにやってるんだか」
最近の私は全然だめだ。
少しぼーとしてると、ふと矢島課長の席をみる。
何とも切なくって苦しい。
課長の机の前にいって机を触る。
「なんで私じゃないんだろ…」
そう言って、一気に涙が出た。
解ってる。私なんかじゃダメなんだって、でも…
ずっと近くにいたじゃん。
「ずっと、近くに居たのに…」
!?
何かの気配を感じて後ろを振り向くと
「な…」
う、うそ!!
課長がいる。もしかして、まさか…見てた?
「内野…」
しばらく呆然としてるみたいで
「お前…嘘だろ?」
やっぱり、気が付いた!?
私はその返事にも何も返さず、急いでフロアから出た。
「おい!!」
どうしよう…、絶対にバレてる!!
どうしよう…
翌日、緊迫した面持ちで出勤した。
「内野!」
!!
後ろから課長の声が…
「電源つけっぱなしで帰るな!」
と言って、ファイルで後ろから頭をつついて、離れていった。
あっ、そうだった。PCつけっぱなしで帰ってしまった。
その後は、ほとんど話さず仕事はしてる。
前なら気軽に話すのに、課長は全然話さなくなった。
完璧に嫌われたか…
向こうもなるべく接点をとらないようにしてるし、私もそうしよう。
けど、好きな人に避けられるってこんなに辛いものなのかと…
辛くて仕事に行くのもどんどん嫌になってきた。
そんなとき
「行こうかな…」
今度香港支店出来るらしく、まだ出向するメンツが足りないとかで募集してると聞いてる。
「部長、お話が…」
香港支店に行きたいことを言ったら、上司と検討すると言われ、その2週間後私の願いが叶えられた。
とりあえず、1年の予定で出向となる。
引き継ぎやらやんやらで、忙しくなってあっという間に、香港に行く日が来週となった。
部署で送別会をしてくれて
「また1年後、この部署に帰ってくるか解りませんが、また戻ったら皆さん宜しくおねがいします」
皆さんに挨拶をした。
課長は来月結婚式をする。
部署の大半は招待状がきてた。
私も来てたけど…
1人1人にお酌して挨拶をする。
課長の番になって
「課長、お世話になりました。式に招待して頂いたのに申し訳ありません」
「…いや」
「課長、お元気で。お幸せに」
「…ああ」
他の人にも挨拶を回るので、課長から離れた。
「元気でね!」
「愚痴とかならいつでも聞くからラインでも何でもくれよ!」
「うん。ありがとう」
「内野さん、お世話になりました」
お花を頂いて、そしてお開きとなった。
向こうでいい恋愛とか出来たらいいなーなんて期待もしたり…
前向きに行こう!
駅に向かって歩いてると
「内野!」
えっ?
振り向かなくってもわかる。
「ちょっといい?」
「あっ、いや…」
後ろから腕を掴まれて、グイグイと引っ張られる。
「か、課長ー!」
連れてこられたのは小高い丘の公園で、街の夜景が見える所。
ここでよく、酔い醒ましと言って2人で缶コーヒー飲んだこともあったな。
私にとっては思い出の公園。
「お前…」
課長は何か言おうとしたけど、少し黙って
「俺、絶対に男として見られてないと思ってた」
「えっ?」
「気軽に話せるのは有難かった。けど近すぎて、そういう男女の関係とかないと思ってた」
「…課長?」
「何度かこれでもアプローチしたの知ってる?」
「…アプローチ?」
「…全く気づいてない?まさか」
「な、なにを?」
「…」
嘘だろ?と、呟いてる。
「あの、課長…」
「…」
なに、どういうこと?
「内野がうちの部署にきて、俺は内野のこと…」
「!?」
ちょっと待って!!
「何度も好きと言ったと思うが…」
あっ!
『お前のそういう前向きな考え好きだな』
確かに好きとは言われたことあるけど…
「それって、仕事に対しての考えとかそういうのって思ったから」
「お前、察しろよ!」
「そ、そんなのわかりませんよ!!」
な、なに?逆ギレ!?
「だいたい、課長つきあってとか言いました?そんなついでみたいな言い方じゃわかるわけないじゃないですか!」
「普通なら解るんだよ!うとすぎるんだよ、お前!」
「うとすぎるって何ですか!?失礼すぎませんか?いちいちそういうのが好きとか言われたら、今のは恋愛感情のですか?って聞けってこと?」
「そこまでは言ってないが解るだろ?」
「解りませんよ!」
誰も居ない夜の公園で喧嘩の声だけが響く。
ある程度言い切ったところで、お互い言うこともなくなり
「…」
「…」
「じゃ、私行きます。お疲れ様でした」
そう言って、公園を出ようとしたとき
「おい!」
と、腕を掴まれた。
私は思いっきり振りほどいて
「今知ったからって、どうなるんですか!?」
「…」
だって、そんなの今知ったって…
「結婚する課長には、もう…」
課長は何も言い返さなかった。
「お、お疲れ様でした」
私は走って公園を後にした。
日々和訳ソフトに格闘してる。
香港にきて2ヶ月。
仕事での会話は英語。
とは言っても半分は日本人なので助かってる。
それに、英語得意な人もいるので本当にダメなときは、助けて~と叫ぶ。
4ヶ月くらいになると、現地の人も片言な日本語を言うようになって、私も片言の英語を言うようになった。
それで混在の言葉でなんとか通じるまでになってきてた。
ひたすらがむしゃらに仕事をしていた。
既に結婚して私のことなんか忘れてるだろうな…
考えると泣きそうになる。
「真理さん、ご飯食べに行こー」
最近よく、仕事おわった後に一緒にご飯を食べるようになったリノン。
彼もアメリカから出向で来た。
歳は26歳で私より2つ下。かなりの優秀で、しかも見た目もかっこいい。それに日本人にはないレディーファーストにドキッとする。
「リノンは日本食好きだねー」
今日は回転寿司にきた。
前回は和食レストラン。その前はお蕎麦屋さん。
どの店も日本にある店のチェーン店。
「美味しいし、見た目が綺麗」
そう言ってリノンは13皿食べてた。
美味しそうに食べてる彼を見るのも嬉しくなる。
「リノン、いつも出してもらってばっかりで悪いよ!私もたまには…」
「女性にそんなことさせれないよ」
支払いの時、こう言ってはいつも返される。
こういうのは国の違いなんだろうな。
「ねぇ、真理さん、恋人になって」
「え?」
突然の告白に驚きまくった。
全くその気もなかったように見えたのに…
その後もリノンのアプローチは凄くって、結局私は折れてしまった。
今の私がリノン以外に話し相手がいない。
リノンを失ったらこの国では本当に一人ぼっち。
リノンのことは嫌いじゃないし、優しくって、楽しいことも多い。
そう思うと、リノンの付き合ってみるのも…っと思えるようになっていた。
そして、先のことは考えないでいた。
仕事が終われば一緒に帰り、晩御飯はお互い遅い残業がなければほぼ一緒に食べてた。
夜も一緒に過ごすことが多くなって、リノンにどんどん染まっていってる自分がいる。
まさか、異国で恋愛できるとは…
行く前は少し思ったけど、それも課長を忘れるためのだったし、毎日が凄い幸せに過ごしていた。
でも、それは…
「えっ!?そんなに早く?」
リノンも私も香港支店の出向は1年の予定だった。
それなのに、10ヶ月目でリノンはアメリカに戻ることになった。
「ついてきてくれる?」
そんなの、勿論だよ
そう答えたいのに、言葉として出ない。
「真理?」
私はリノンのこと愛してるし、ずっと一緒にいたいもん。
それなのに…
「真理来てくれるよね?」
私は答えることができなかった。
何度も話し合ったけど、最後の最後になると行くと言えない。
愛してるのに…
「真理、俺は真理を愛してるよ」
「私だって愛してる」
遠距離も辛いというリノンと、ついていきたいのに答えられない私との間に溝が出てきてしまい、私達は別れる道を選んだ。
リノンの見送りするために、空港まで行って、お互いに気持ちを言って抱き合った。
「でも、真理。真理な中には誰がいるの?」
え?
「日本で待ってる人がいるの?」
「…いないよ」
「でも、忘れられない人がいるんだね?」
「…リノン」
「知らないふりしてた」
「出向が終わったらその人と結ばれるといいね」
つらそうに言うリノンに言葉が詰まる。
「そ、そんなの…」
そう言って彼は出国ゲートに向かった。
リノンの失ったら辛さは簡単に立ち直れるものではなかった。
気持ちを抑えてでもついていけばよかった。
今更後悔しても全てが遅かった。
その後私はほとんど付き合いせず、黙々と仕事をしていた。
仕事以外では1人でいる。
寂しくって辛くって悲しくなる。
そんなときにいつもリノンが居てくれた。
出向から1年。私がまだ日本に帰ることはなかった。
それから半年後、ようやく日本に帰る話が出て、かなうかどうか解らないけど希望の支店が言えるというので本社以外の関東圏内を希望した。
そして決ったのが横浜支店だった。
日本に戻ったときには30歳になって主任の役職になった。
歓迎会もしてくれて、仕事で当たり前のように日本語の会話。
それがほっとする。
少しずつ慣れて、落ち着いて2ヶ月くらいたったとき
「あー、態々よかったのに」
「いやー、ついでなんで」
と言う会話が聞えて何気なく見たら
えっ!?
矢島課長?
目線もバッチリ合った。
「…よう!」
そう言って課長は手をあげた。
一瞬放心状態になって、多分挨拶したと思う。
そのあとハッと我にかえると、課長は居なくなっていた。
心臓に悪いよ。ほんと。
動揺が隠せずにいて、1時間の残業で終業した。
会社を出ると
「え?」
後ろから腕をガシッと掴まれた。
「元気だったか?」
そんなの見ないでも解る
「な、なんでこっちに?もう用は終わったんじゃ…」
「お前の顔見に来た」
そんなの、いいよ!と言うのを堪えた。
腕を引っ張られ、どっかのお店の駐車場に連れてこられた
「予定ある?」
「…それって連れてくる前に言いません?」
「まぁ、でもお前なら大丈夫だろ…」
どういう意味ですか!?
まだしっかり顔は見てない。
けど、少し全体的に小さくなった印象があった。
かなり痩せたのでは?と思う。
「どうだった?香港は」
「ええ、まぁ勉強になりました」
「そっか」
しばらくお互い無言。
「…恋人いたようだな」
「!?」
海外とはいえ、同じ社内。
あっちに矢島課長と何かしら関係してる人がいれば知ると事もあり得るってことか…
「か、課長はどうなんですか?夫婦円満ですか?お子様が既にいらっしゃるんですか?」
辛いので相変わらず顔を見ないで言ってる。
「…お前…俺に興味なさ過ぎだろ?」
「は?」
大きなため息をつかれた。
な、なに?何か変なこと言った?
「…離婚してるよ」
「…えっ?うそ!?」
びっくりして顔をみた。
「やっと顔見てくれたな」
と苦笑する。
「ど、どういうことですか」
「そのままだよ」
そのままって、離婚…って…
あまりにも予想外だったので、なんと言っていいか
「…彼女の方から言ったんだ」
「何をです?」
「付き合いたいってのも、結婚したいってのも」
そうだったんだ…
「気が利くし、一生懸命尽くしてくれるし、だから幸せにしてやらないとって思った」
私の顔をチラッとみて
「どんなに想ってても結ばれることが出来ない。それならこれだけ頑張ってくれる子とってな。」
…私の事言ってるの?
「結婚して幸せだったよ。けど買い物してた時、気になったことがあったんだ。小さい子供がはぐれて迷子になったんだ。それを見て彼女が、大きな声で泣いたら迷惑だよってその子に言ったんだ。その子はその後、悔しそうな顔をして泣くのを堪えてた。その時思ったんだ。あいつならこんなこと言わないだろって」
私の顔をみた。
「俺にために一生懸命で、俺のために色々してくれる。けど俺以外の人には少しドライすぎてびっくりした。彼女が俺に対することだけしか見てなかったが、色々みると、何かひっかかるところが増えてきた。」
確かに楢川さんは、女性と男性の前では態度が違うとか、そんな噂は聞いたことあったけど…
「結婚する前に見れなかったんですか?」
「…そうだな」
しばらくは、お互い話さず
「それで離婚?」
「まぁ、きっかけはそんなところからだった。それから少し裏表があることに少し違和感を感じて、俺自身も態度が少し変わってきたようで、そっからなんとなく距離が出始めて…それから間もなくして彼女が男と会って…て感じ」
それなら、結婚しなければよかったのに!!
と、言いたいのをぐっと堪えた。
「内野」
「…はい」
「いい人だな。リノンさん」
「なっ!?」
どういうこと?
「本当は会社のメールだから、まずいんだけど、俺宛にメールが来てな。お前のこと頼むって書いてあった」
えっ!?
「私、リノンに課長のこと話したことない!なんで?」
「お前が泥酔に近い状態で寝てるときに、矢島課長と言って泣いてたのを見たと言ってる」
!!?
確かに1度意識が半分消えてたくらい飲んだことあった。その時に私は言ってしまってたの?
「俺もこういう理由でバツイチになったから、内野に言い寄ることも資格もないと返したんだが…、リノンさんはそんなの過去のこと。お互い想いがあるならこれから後悔しない人生を送って欲しいと…」
そ、そんな…
「リノン…」
香港で泣くことが出来なかったのに、今になって涙が…
座り込んで泣いてる私をみて
「内野…」
肩を叩く。
「お前を香港に行かせるんじゃなかった」
「課長…」
それなら1ヶ月後、私は有給を2日、週末の休みと祭日を合わせて5日間の連休をとった。
あっ、来た…
目的の人を見つけてその人の前に立った。
「!?」
目を大きくしてる。
「ど、どうしたの?」
「…逢いに来たと言ったらもう遅い?」
「えっ?」
「…もう、私とのことは終わってるから、もう…」
彼は静かに
「今でも愛してるよ」
と言ってくれた
「リノン!」
彼に思いっきり抱きついた。
半年後、私は退職してリオンのいるアメリカに行って入籍をした。
みんなに囲まれてお祝いされてる、私の好きな人。
彼は近々結婚する。
矢島大樹、32歳。
若いのに課長で、しかもいい男。
優しいし人気もある。
私は彼の下で5年いた。
初めは憧れで、それがいつの間にか恋になってしまった。
近すぎて想いを打ち明けて、もし気まずくなったらと思うと言えないでいた。
仲も良かったし、2人で飲みに行くことも何度もあった。
嫌われてはいないとは思ってた。もしかしたらそのまま少しはなんて期待もあった。
「内野さん、これお願いします」
後輩から資料を渡される。
私、内野真理、28歳。
上司の彼に4年片思いをしていた。
「てっきり、内野さんと結婚するかと思いましたよ」
食堂で一緒に食べてる後輩に言われた。
「えー?なんでよ?そんなんじゃないって!」
…と、言うしかない。
はぁー、これからも顔見るのか。辛いな。
「内野!今日中にできる?」
「あっ!はい!大丈夫だと思います」
矢島課長の顔を見ずに返事をした。
だって、無理だよ
結婚相手は秘書課の楢川さん。昔読者モデルやってたとか言ってたっけ。
それなりのスタイルだし、見た目ももう言うことがない。
美男美女ってやつだ。
ある日、残業で1人フロアに残っていた。
大きなミスをして1人居残り。
しょもない初歩的なミスをしてしまった。
「はぁー、なにやってるんだか」
最近の私は全然だめだ。
少しぼーとしてると、ふと矢島課長の席をみる。
何とも切なくって苦しい。
課長の机の前にいって机を触る。
「なんで私じゃないんだろ…」
そう言って、一気に涙が出た。
解ってる。私なんかじゃダメなんだって、でも…
ずっと近くにいたじゃん。
「ずっと、近くに居たのに…」
!?
何かの気配を感じて後ろを振り向くと
「な…」
う、うそ!!
課長がいる。もしかして、まさか…見てた?
「内野…」
しばらく呆然としてるみたいで
「お前…嘘だろ?」
やっぱり、気が付いた!?
私はその返事にも何も返さず、急いでフロアから出た。
「おい!!」
どうしよう…、絶対にバレてる!!
どうしよう…
翌日、緊迫した面持ちで出勤した。
「内野!」
!!
後ろから課長の声が…
「電源つけっぱなしで帰るな!」
と言って、ファイルで後ろから頭をつついて、離れていった。
あっ、そうだった。PCつけっぱなしで帰ってしまった。
その後は、ほとんど話さず仕事はしてる。
前なら気軽に話すのに、課長は全然話さなくなった。
完璧に嫌われたか…
向こうもなるべく接点をとらないようにしてるし、私もそうしよう。
けど、好きな人に避けられるってこんなに辛いものなのかと…
辛くて仕事に行くのもどんどん嫌になってきた。
そんなとき
「行こうかな…」
今度香港支店出来るらしく、まだ出向するメンツが足りないとかで募集してると聞いてる。
「部長、お話が…」
香港支店に行きたいことを言ったら、上司と検討すると言われ、その2週間後私の願いが叶えられた。
とりあえず、1年の予定で出向となる。
引き継ぎやらやんやらで、忙しくなってあっという間に、香港に行く日が来週となった。
部署で送別会をしてくれて
「また1年後、この部署に帰ってくるか解りませんが、また戻ったら皆さん宜しくおねがいします」
皆さんに挨拶をした。
課長は来月結婚式をする。
部署の大半は招待状がきてた。
私も来てたけど…
1人1人にお酌して挨拶をする。
課長の番になって
「課長、お世話になりました。式に招待して頂いたのに申し訳ありません」
「…いや」
「課長、お元気で。お幸せに」
「…ああ」
他の人にも挨拶を回るので、課長から離れた。
「元気でね!」
「愚痴とかならいつでも聞くからラインでも何でもくれよ!」
「うん。ありがとう」
「内野さん、お世話になりました」
お花を頂いて、そしてお開きとなった。
向こうでいい恋愛とか出来たらいいなーなんて期待もしたり…
前向きに行こう!
駅に向かって歩いてると
「内野!」
えっ?
振り向かなくってもわかる。
「ちょっといい?」
「あっ、いや…」
後ろから腕を掴まれて、グイグイと引っ張られる。
「か、課長ー!」
連れてこられたのは小高い丘の公園で、街の夜景が見える所。
ここでよく、酔い醒ましと言って2人で缶コーヒー飲んだこともあったな。
私にとっては思い出の公園。
「お前…」
課長は何か言おうとしたけど、少し黙って
「俺、絶対に男として見られてないと思ってた」
「えっ?」
「気軽に話せるのは有難かった。けど近すぎて、そういう男女の関係とかないと思ってた」
「…課長?」
「何度かこれでもアプローチしたの知ってる?」
「…アプローチ?」
「…全く気づいてない?まさか」
「な、なにを?」
「…」
嘘だろ?と、呟いてる。
「あの、課長…」
「…」
なに、どういうこと?
「内野がうちの部署にきて、俺は内野のこと…」
「!?」
ちょっと待って!!
「何度も好きと言ったと思うが…」
あっ!
『お前のそういう前向きな考え好きだな』
確かに好きとは言われたことあるけど…
「それって、仕事に対しての考えとかそういうのって思ったから」
「お前、察しろよ!」
「そ、そんなのわかりませんよ!!」
な、なに?逆ギレ!?
「だいたい、課長つきあってとか言いました?そんなついでみたいな言い方じゃわかるわけないじゃないですか!」
「普通なら解るんだよ!うとすぎるんだよ、お前!」
「うとすぎるって何ですか!?失礼すぎませんか?いちいちそういうのが好きとか言われたら、今のは恋愛感情のですか?って聞けってこと?」
「そこまでは言ってないが解るだろ?」
「解りませんよ!」
誰も居ない夜の公園で喧嘩の声だけが響く。
ある程度言い切ったところで、お互い言うこともなくなり
「…」
「…」
「じゃ、私行きます。お疲れ様でした」
そう言って、公園を出ようとしたとき
「おい!」
と、腕を掴まれた。
私は思いっきり振りほどいて
「今知ったからって、どうなるんですか!?」
「…」
だって、そんなの今知ったって…
「結婚する課長には、もう…」
課長は何も言い返さなかった。
「お、お疲れ様でした」
私は走って公園を後にした。
日々和訳ソフトに格闘してる。
香港にきて2ヶ月。
仕事での会話は英語。
とは言っても半分は日本人なので助かってる。
それに、英語得意な人もいるので本当にダメなときは、助けて~と叫ぶ。
4ヶ月くらいになると、現地の人も片言な日本語を言うようになって、私も片言の英語を言うようになった。
それで混在の言葉でなんとか通じるまでになってきてた。
ひたすらがむしゃらに仕事をしていた。
既に結婚して私のことなんか忘れてるだろうな…
考えると泣きそうになる。
「真理さん、ご飯食べに行こー」
最近よく、仕事おわった後に一緒にご飯を食べるようになったリノン。
彼もアメリカから出向で来た。
歳は26歳で私より2つ下。かなりの優秀で、しかも見た目もかっこいい。それに日本人にはないレディーファーストにドキッとする。
「リノンは日本食好きだねー」
今日は回転寿司にきた。
前回は和食レストラン。その前はお蕎麦屋さん。
どの店も日本にある店のチェーン店。
「美味しいし、見た目が綺麗」
そう言ってリノンは13皿食べてた。
美味しそうに食べてる彼を見るのも嬉しくなる。
「リノン、いつも出してもらってばっかりで悪いよ!私もたまには…」
「女性にそんなことさせれないよ」
支払いの時、こう言ってはいつも返される。
こういうのは国の違いなんだろうな。
「ねぇ、真理さん、恋人になって」
「え?」
突然の告白に驚きまくった。
全くその気もなかったように見えたのに…
その後もリノンのアプローチは凄くって、結局私は折れてしまった。
今の私がリノン以外に話し相手がいない。
リノンを失ったらこの国では本当に一人ぼっち。
リノンのことは嫌いじゃないし、優しくって、楽しいことも多い。
そう思うと、リノンの付き合ってみるのも…っと思えるようになっていた。
そして、先のことは考えないでいた。
仕事が終われば一緒に帰り、晩御飯はお互い遅い残業がなければほぼ一緒に食べてた。
夜も一緒に過ごすことが多くなって、リノンにどんどん染まっていってる自分がいる。
まさか、異国で恋愛できるとは…
行く前は少し思ったけど、それも課長を忘れるためのだったし、毎日が凄い幸せに過ごしていた。
でも、それは…
「えっ!?そんなに早く?」
リノンも私も香港支店の出向は1年の予定だった。
それなのに、10ヶ月目でリノンはアメリカに戻ることになった。
「ついてきてくれる?」
そんなの、勿論だよ
そう答えたいのに、言葉として出ない。
「真理?」
私はリノンのこと愛してるし、ずっと一緒にいたいもん。
それなのに…
「真理来てくれるよね?」
私は答えることができなかった。
何度も話し合ったけど、最後の最後になると行くと言えない。
愛してるのに…
「真理、俺は真理を愛してるよ」
「私だって愛してる」
遠距離も辛いというリノンと、ついていきたいのに答えられない私との間に溝が出てきてしまい、私達は別れる道を選んだ。
リノンの見送りするために、空港まで行って、お互いに気持ちを言って抱き合った。
「でも、真理。真理な中には誰がいるの?」
え?
「日本で待ってる人がいるの?」
「…いないよ」
「でも、忘れられない人がいるんだね?」
「…リノン」
「知らないふりしてた」
「出向が終わったらその人と結ばれるといいね」
つらそうに言うリノンに言葉が詰まる。
「そ、そんなの…」
そう言って彼は出国ゲートに向かった。
リノンの失ったら辛さは簡単に立ち直れるものではなかった。
気持ちを抑えてでもついていけばよかった。
今更後悔しても全てが遅かった。
その後私はほとんど付き合いせず、黙々と仕事をしていた。
仕事以外では1人でいる。
寂しくって辛くって悲しくなる。
そんなときにいつもリノンが居てくれた。
出向から1年。私がまだ日本に帰ることはなかった。
それから半年後、ようやく日本に帰る話が出て、かなうかどうか解らないけど希望の支店が言えるというので本社以外の関東圏内を希望した。
そして決ったのが横浜支店だった。
日本に戻ったときには30歳になって主任の役職になった。
歓迎会もしてくれて、仕事で当たり前のように日本語の会話。
それがほっとする。
少しずつ慣れて、落ち着いて2ヶ月くらいたったとき
「あー、態々よかったのに」
「いやー、ついでなんで」
と言う会話が聞えて何気なく見たら
えっ!?
矢島課長?
目線もバッチリ合った。
「…よう!」
そう言って課長は手をあげた。
一瞬放心状態になって、多分挨拶したと思う。
そのあとハッと我にかえると、課長は居なくなっていた。
心臓に悪いよ。ほんと。
動揺が隠せずにいて、1時間の残業で終業した。
会社を出ると
「え?」
後ろから腕をガシッと掴まれた。
「元気だったか?」
そんなの見ないでも解る
「な、なんでこっちに?もう用は終わったんじゃ…」
「お前の顔見に来た」
そんなの、いいよ!と言うのを堪えた。
腕を引っ張られ、どっかのお店の駐車場に連れてこられた
「予定ある?」
「…それって連れてくる前に言いません?」
「まぁ、でもお前なら大丈夫だろ…」
どういう意味ですか!?
まだしっかり顔は見てない。
けど、少し全体的に小さくなった印象があった。
かなり痩せたのでは?と思う。
「どうだった?香港は」
「ええ、まぁ勉強になりました」
「そっか」
しばらくお互い無言。
「…恋人いたようだな」
「!?」
海外とはいえ、同じ社内。
あっちに矢島課長と何かしら関係してる人がいれば知ると事もあり得るってことか…
「か、課長はどうなんですか?夫婦円満ですか?お子様が既にいらっしゃるんですか?」
辛いので相変わらず顔を見ないで言ってる。
「…お前…俺に興味なさ過ぎだろ?」
「は?」
大きなため息をつかれた。
な、なに?何か変なこと言った?
「…離婚してるよ」
「…えっ?うそ!?」
びっくりして顔をみた。
「やっと顔見てくれたな」
と苦笑する。
「ど、どういうことですか」
「そのままだよ」
そのままって、離婚…って…
あまりにも予想外だったので、なんと言っていいか
「…彼女の方から言ったんだ」
「何をです?」
「付き合いたいってのも、結婚したいってのも」
そうだったんだ…
「気が利くし、一生懸命尽くしてくれるし、だから幸せにしてやらないとって思った」
私の顔をチラッとみて
「どんなに想ってても結ばれることが出来ない。それならこれだけ頑張ってくれる子とってな。」
…私の事言ってるの?
「結婚して幸せだったよ。けど買い物してた時、気になったことがあったんだ。小さい子供がはぐれて迷子になったんだ。それを見て彼女が、大きな声で泣いたら迷惑だよってその子に言ったんだ。その子はその後、悔しそうな顔をして泣くのを堪えてた。その時思ったんだ。あいつならこんなこと言わないだろって」
私の顔をみた。
「俺にために一生懸命で、俺のために色々してくれる。けど俺以外の人には少しドライすぎてびっくりした。彼女が俺に対することだけしか見てなかったが、色々みると、何かひっかかるところが増えてきた。」
確かに楢川さんは、女性と男性の前では態度が違うとか、そんな噂は聞いたことあったけど…
「結婚する前に見れなかったんですか?」
「…そうだな」
しばらくは、お互い話さず
「それで離婚?」
「まぁ、きっかけはそんなところからだった。それから少し裏表があることに少し違和感を感じて、俺自身も態度が少し変わってきたようで、そっからなんとなく距離が出始めて…それから間もなくして彼女が男と会って…て感じ」
それなら、結婚しなければよかったのに!!
と、言いたいのをぐっと堪えた。
「内野」
「…はい」
「いい人だな。リノンさん」
「なっ!?」
どういうこと?
「本当は会社のメールだから、まずいんだけど、俺宛にメールが来てな。お前のこと頼むって書いてあった」
えっ!?
「私、リノンに課長のこと話したことない!なんで?」
「お前が泥酔に近い状態で寝てるときに、矢島課長と言って泣いてたのを見たと言ってる」
!!?
確かに1度意識が半分消えてたくらい飲んだことあった。その時に私は言ってしまってたの?
「俺もこういう理由でバツイチになったから、内野に言い寄ることも資格もないと返したんだが…、リノンさんはそんなの過去のこと。お互い想いがあるならこれから後悔しない人生を送って欲しいと…」
そ、そんな…
「リノン…」
香港で泣くことが出来なかったのに、今になって涙が…
座り込んで泣いてる私をみて
「内野…」
肩を叩く。
「お前を香港に行かせるんじゃなかった」
「課長…」
それなら1ヶ月後、私は有給を2日、週末の休みと祭日を合わせて5日間の連休をとった。
あっ、来た…
目的の人を見つけてその人の前に立った。
「!?」
目を大きくしてる。
「ど、どうしたの?」
「…逢いに来たと言ったらもう遅い?」
「えっ?」
「…もう、私とのことは終わってるから、もう…」
彼は静かに
「今でも愛してるよ」
と言ってくれた
「リノン!」
彼に思いっきり抱きついた。
半年後、私は退職してリオンのいるアメリカに行って入籍をした。
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みんなの感想(1件)
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まぁ、私もリオン選ぶだろうなぁ。
課長は良い男かも知れないけど、30才超えて「アプローチしたけどダメみたいだからアプローチしてくる女性にしとこ」みたいな学生のような恋愛観をお持ちでは・・・しかも違和感持っちゃったら離婚になっちゃいましたって、同じ事繰り返さないと誰が信じられる??
せめて諦める前にきちんと「結婚前提につきあってくれ」の一言は大人としてあってしかるべきだったと思うよ。
一人相撲の恋愛して自己完結って、相手にとっても失礼じゃないかと、人生経験の長いおばさんは思うのです(--;)
それに比べてリオンの観察眼やはっきりした言動は、欧米人という括りを外しても男性として好感持てる♡
ただ「お互い思いがあるなら後悔しない~」って、リオン君、君自身のことは棚上げですか?っておばさんは突っ込んだから(^^;)
ともかく、スッと読める楽しい作品でした♪
コメント感謝です。
誤字脱字多い小説で見づらかったかと思います。
まだまだ新参者ですので御理解ください。
色々悩みました。実はあっちと最後は…とギリギリまで考えてました。というかそのつもりで初めからいました。
でも最後の最後で気持ちがコロっと変わってしまい、ああいう感じに…。
急にコロっと変わるとところもあるので、また変えたのか!?くらいな気持ちで思って頂ければ幸いです