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ファミリー
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5歳の時に母は好きな人が出来たと、私と父を捨てて居なくなった。
そして父は私が高校生の時に行方不明になった。
会社から出て駅に向かってる目撃情報はあるものの他の情報がなかった。
警察も捜索はしてけれたものの打ち切り。私は親戚に引き取られることなく施設に預けられた。
通ってた高校生は遠くなり施設の近くの高校に編入となった。
そして二年後、高校を卒業し食品加工の工場に転職、施設を出た。
長山彩里、25歳。食品加工会社に勤めてた会社は既に退職し、今はネットカフェのチェーン店の本社に勤務。といっても本社に席を置いてる社員は30人ほどだ。今はまだ7店舗。少しずつ規模を増やそうと奮闘している。
そして今大きな決断をした。
私が19歳の時、食品加工の会社で面倒みてくれた上司がいた。
名前は黒木裕子さん、私が施設から出来来たこと、親が居ないことを知ってよく自宅の食事に招待をしてくれた。
旦那さんもお子さんもいて、旦那さんも本当の家族のように思ってもいいからね!っと言ってくれて、いつも暖かく向かえてくれた。旦那さんは聡さん、お子さんは瑛大君。当時7歳だった。
食事だけでなく、その後はアミューズメントや家族旅行にも連れていってくれた。
ずっと一人で頑張らないと!と思ってた気持ちが緩み、色々と頼っていた。
両親と思っていいとも言われたが、歳が近すぎるので少し歳の離れたお姉ちゃん夫婦みたいなそんな感じに近いかもしれない。
それから間もなくして私は、今の会社に転職。裕子さんと仕事で離れるのは寂しかったが、それ以外は変わらず家族として付き合いが続いていた。
「好きなこと、やりたいことがあったら、遠慮なくしたらいいのよ!」
裕子さんがそう言ってくれたことで転職に踏み出せた。
元々ネットカフェが好きで、もっと自分の思った店が出来たらなっと思ってたので、ネットカフェの企画側の仕事をついた。
そして、今
「だから!!うちは難しいのよ!」
「聡さん側のご親戚では無理なの?」
そんな会話が聞こえる。
裕子さんと聡さんが亡くなったのだ。
家族で買い物をしてるとき、歩道にトラックが突っ込んできて、2人は瑛大君を守るように亡くなっていた。
そして、葬儀が終わり親戚同士の話し合い。瑛大くんをどうするか?
お互いがお互い、うちでは無理と言い合ってる。施設にって話が出た時
「わたしが引き取ります!」
そういっのは、裕子さんのお母さん。
「なにいってるのよ!お母さん!まだ動ける状態でないでしょう?」
足腰が悪く、入退院を繰り返してるときいてた。何度かお会いしたことはあるがその時はとても元気な時だった。
「あんたら、施設とか目の前に居るのによく言えるわね!」
「そんなこと言っても皆それぞれ家庭があるんだよ!」
瑛大君は離れた場所で下を向いていた。
「私が連れて帰ります」
と、裕子さんのお母さんは足を引きずって瑛大君のてをとった。
「おばあちゃんと、帰ろう」
笑顔で言う裕子さんのお母さん。瑛大君は何も言えず
「…おばあちゃん、迷惑かけるからダメだよ」
「そんなことないよ!」
そんな話ししてるときに
「お母さん!いい加減にして!なにかあったら私たちが大変なのよ!」
おばあちゃんに怒るように言うのは、裕子さんのお姉さんだろうか?面影がある。
「あんたたちに迷惑なんかかけないよ!大事な孫にこんな思いさせるなんて…」
悔しそうな顔をする
「わ、私が引き取ります!!」
一斉に皆が私をみる。
もう、我慢出来なかった。
「たしか貴方は…」
裕子さんのお母さんが私をみてそう言った。
親戚同士の話だったのではじめは聞くつもりすらなかったし、遠くにいた。けど、瑛大君のくらい顔をしてるのをみて、近づいてそ聞いてしまった。
「貴方はどちらさま?」
そう聞かれたけど
「私は、瑛大君の家族です!」
「はぁ?なに言ってるんだ!」
と、親戚のひとがいいだす。
「おばさん、私に瑛大君を預からせてください」
「そんな…貴方はまだ若いみたいだし」
「裕子さんには家族同然に面倒みてもらいました。私にとって瑛大君は家族です!瑛大君。私と一緒に住まない?かなり狭いけどいいかな?」
「さえちゃん」
瑛大君は私のことをさえちゃんと呼んでくれてた。
「どうかな?」
瑛大君は、おばさん(裕子さんのお母さん)をみて
「さえちゃんと暮らす」
「えっ?」
瑛大君が私と暮らすと言ってびっくりし、
「でもおばあちゃんにも会いに行く」
「…」
周りは騒ぎだしてるがそんなのは私もおばさんも無視をし
「本当にいいのかしら?」
「はい!」
おばさんに、宜しくお願いします!と頭を下げられ私は引き取ることとなった。
瑛大君が13歳のときだった。
はじめは一人暮らしだったんで1LDKだったが2LDKに引っ越した。都会と違ってか田舎なのでそこまで家賃は高くはない。仕事も企画などは在宅ワークでも出来るので、出勤しないといけない時以外は在宅ワークに切り替えた。
その後高校に進学。瑛大君はかなりのイケメンになっていた。
少しでも生活の足しにと部活はせずバイトをしている。そんなこと気にしないでいいよ!って言ってるんだけどね
ちょうど一回り離れてる私達。年の離れた姉弟みたいなそんな感じだった。
「さえちゃん」
「ん?」
「今月分」
そういってバイト代を渡してくれる。
「んじゃ、これだけもらっとく!」
と言って1万だけ抜きとりあとは返した。
「なんだよ!それ!!」
「彼女出来たんでしょ?デート代も必要じゃない!」
「…」
瑛大君にも彼女が出来たし、その少し前にも私にも恋人ができた。
だけど、彼とは多分無理かもしれない。
彼は33歳で、私も29歳だし結婚もしたい話はしている。けど私にとっては瑛大君は家族なんで、瑛大君と一緒に住むのが条件になる。
そうなるとなかなか前に話がすすまない。そうやって過去にも終わってしまったことがある。
「その子高校生なんだからさ、一人暮らしとか無理なの?」
と言われるが、私からしたらやっぱり…、過保護なんだろうか?
結局別れることになってしまった。
瑛大君が一人立ちしたら婚活するか…
仕事も以前より責任のある仕事をするようになり店舗も20店舗まで拡大。宿泊施設、シャワー完備なども当たり前。なによりも快適に過ごせるよう日々考え、使用した御客様のご意見なども踏まえ、新たなものを考えてる。
その一つが、在宅ワークが今は増えてるので自宅だと集中出来ないひとのための個室の施設。
月契約とか、日割りとか色んなプランを考え、防音などもする予定。
「何か質問とかありますか?」
「いえ、大丈夫です」
「では。また来週続きを…」
「はい!お疲れさまでした」
リモートの打ち合わせが終わり、ほっと一息ついたころ。スマホが鳴った。
相手は瑛大君の担任の先生だった。
「進路ですが、就職を希望されてまして」
「えっ?」
何度も大学に行きなって話したのに
「本人は大学に行きたいのではと思ってます。」
どうかじっくり話し合って下さいといわれ、電話は切られた。
「行きたい大学があれば行きなって行ってるじゃん!」
「行きたい大学なんてないよ!」
「もう、瑛大君!!」
「俺は就職に決めたんだ」
きっとお金のこと気にして…
「瑛大君あのね」
そう言って通帳を渡す
「な、なにこれ?」
そう言って通帳の中身ををみる。
「!?」
「先週ね、瑛大君のおばあちゃんに会ったのよ。話があるって…、これね瑛大君の御両親が集めてた学資保険とそのあとおばあちゃんが引き継いで貯金してたのよ!大学行くときに使ってくれと言われて」
「…」
「少しくらい借金しても瑛大君が行きたいのであれば、行かせようって決めてたから。そんなのを察してか瑛大君のおばあちゃんが話があるってね、だから私達の思いに答えるために行きたい大学があれば行きな」
「瑛大君、今までなに不自由なくって思ってたけど、一人では限界で…、不自由させてごめんね」
「な、なに言ってるんだよ!さえちゃんにここまでしてくれて感謝しかないよ」
「お願い!行きたい大学あるなら行って!」
「…」
少し考えて
「…俺、薬学部行きたいんだ。医薬品の研究を将来したい」
「うん!そっか。瑛大君、頑張って!」
そう言って瑛大君の進学の話は落ち着いた。
「なぁ、さえちゃん」
「ん?」
「いや、何でもない」
それから瑛大君は受験勉強を本格てにはじめた。元々合格圏内だったのもあり行きたい大学は無事に合格。
「瑛大君、おめでとう!」
質素ながら自宅でパーティーをした。前日は友達とお祝いパーティーしたようだけどね。私もお祝いしたい!
「瑛大君、おめでとう!」
「ありがとう」
「ほんとよかった。」
私も大学に行きたかったなー、私の分も楽しんでほしい。
「さえちゃん」
「ん?どうしたの?」
急に真剣な顔になる瑛大君。
「大学を卒業して社会人になったら、俺と…結婚はしてほしいんだ」
…はっ!?
「な、なに言っての?勉強しすぎてボケちゃった?」
「マジなんだけど」
「…」
な、なんて答えたらいいか
「あ、あのね、瑛大君。私達て家族だし、息子とまでいかなくっても私にとっては大事な大事な家族なのよ」
「俺のことそういう風には見れない?」
一回りも離れてる、しかも高校生の瑛大君にそんなこと言われるなんて
「み、見たことないよ!家族として接してたし」
「じゃ、これから男として見てよ」
お互い立つと瑛大君は180くらいあって、こなにも私より大きくなって
「俺、さえちゃんがずっと好きだ!これからも変わらない」
「そ、それは、大学に行って社会に出ればもっと出会いあるし、それに」
「俺はさえちゃんなんだよ!!」
「で、でもね」
「もう絶対離したくない!」
そう言って抱きしめてきて
「え、瑛大君!ちょっと」
「俺を男としてみて」
そ、そんな色っぽい顔…、今まで見たことない!ドキドキする。そんな隙に瑛大君からキスをされ、胸を押してやめさせようとするが全く動かない。その間キスが深くなる。
「…やっ…」
瑛大君やめて!!
必死に抵抗してるのに…
「絶対に落とす」
「…」
そんな顔しないでよ!
「もう無理なんだ!誰にも触られたくないんだ!俺のものになって」
「…瑛大君」
またキスをされ、どうしていいかわからない。抵抗もやめてしまい受け入れてしまってる自分がいる。
そのままソファに倒され首筋にキスが降りてくる。
「瑛大君、もうこれ以上は」
「さえちゃんが欲しい」
「ダメよ!やめて!!」
「もう、ずっと我慢してたんだ!限界なんだ」
服に手をかけられ、拒んでるのに
「それで抵抗してるつもり?」
「…あー」
「やべ!いい声」
胸を触られ嬉しそうな顔をしてる。それをちょっと見るだけでドキドキする。
「瑛大君、お願いもう…」
私が必死に拒んでるのにどんどん進め
「お願いそれ以上は」
「ずっとこの時を待ってたんだ!もう無理!!」
と言って、最後の一線を越えてしまう。
裕子さんへの罪悪感で一杯で、心が痛い。
「…」
どうしよう…
抱きしめられてお互い何も言わない。
「瑛大君、これからね大学に行ったら沢山の出会いもあるし、それに瑛大君に相応しい子がみつかるかも」
「俺にはさえちゃんしかいないんだよ!」
「でもね、」
「俺は昔からずっと好きだった!だから高校出て社会人になって告白するつもりでいた。でも…行きたい大学もあったのも事実で…、金のこともあったけど少しでも早く社会に出て、稼げるようになってさえちゃんと…」
「瑛大君、そのその考えはダメよ!やりたいことがあるならやらないと!それにさっきも言ったけど、大学には沢山の出会いがあるから」
「だから、俺はさえちゃんだけなんだよ!」
結局話は平行線で、その後も瑛大君は変わらず抱きしめられたり、キスをされたり、私の部屋にきてすることはしてしまい…、完全に拒否しない私も悪いんだけど。
罪悪感もありつつ満更でもないと思ってるんだろうか?自分自身でもしっかりしない判断にモヤモヤしていた。
大学生になり、瑛大君はバイトも新しくはじめ、サークルも入ったようだ。以前よりも増して友達とかの付き合いも増え前よりも家にいることが少なくなった。
このまま少しずつ離れて行くのかもしれない。こんな関係になってもし彼女ができたら、ここにも帰りづらいだろう。
そこで
「私は嬉しいけどいいのかしら?」
「ええ。その方がいいと思ってます」
おばあちゃん、裕子さんのお母さんのことだけど、2年前から退院をし自宅で生活できるレベルまでに元気になってる。私は関西に店舗を増やすため関西に行くことを志願ひた。リモートでも出来るので行かなくってもいいが、行くことになると出張で行くことになるのでそれなら住むところを関西に引っ越そうと思ってる。まぁそんなのは口実で、瑛大君から離れた方がいいと思ったからだ。
「なに勝手に話つけてるんだよ!!」
「あ、あのね」
「俺がどれだけ…」
でも、それは今だけだよ!まだ大学に入って半年。あと少ししたら瑛大君の居場所が出来るよ!
「瑛大君、私達がもし今の関係をしたことで将来進めなかったらと思うとね」
「なんだよ!それ!!俺が他のヤツとどうかなるとでも思ってるわけ!?」
そうだ!ともハッキリ言えないので
「そうじゃないけど、でも私とこうなったことでもしこの先好きな人が出来た場合、私が近くだと…ね」
「…」
凄い怒ってる。でも、でもね、近くに居すぎて周りが見えなかっただけなんだと思う。こんな一回りも離れてる女より、素敵な人と出会ってほしい。
何度か話し合い、私が関西に行くことは決めてしまったのでもう離れるしかない。
「…わかったよ!大学卒業のとき俺がさえちゃん好きだったら、問答無用で結婚するからな!」
「え、瑛大君!!あ、あのね」
「俺の気持ちが解ってもらえてなかったと思うとマジ悔しい!でも俺は諦めないから」
真剣な顔に圧倒される。でも、でもきっと…、今だけだよ。
私はそれに対して返事はせず、関西に転居した。
そして、瑛大君はおばあちゃんの家に行く事になった。
それから2年前。
たまにLINEはくるけど、あれから会うことはない。LINEの内容もお互いの近況報告程度。
なんとなく、距離が出来た気がして私のことはもう過去として思ってるのかな?とも思ってる。その方が瑛大君のためにもいい。
最近、こっちで採用された同じ歳の男性とたまに飲むようになって、飲み仲間みたいになってる。形上は私が上司なのではじめは慣れない仕事で大変そうだからってことで飲みに誘ったりしてたが、今はだいぶ落ち着いて飲み仲間のような存在になっていた。名前は吉木高徳、製作会社からの転職だった。
「そういえば俺、最近彼女と別れちゃって」
「えっ!?結婚するとか言ってなかった?」
「少し前からなんか様子が変だったんだよね。それでもう…」
「そうなんだ。」
吉木君は元々東京出身なので方言はない。5年付き合ってる彼女がいたのは知ってて結婚の話も聞いていた。
「じゃ、長山さん慰めてくださいよー!」
「な、なに言ってるのよ!人のことなんて慰めてる暇ないわよ!」
「でも、在宅ワークでも問題ないのにこうやって会ってくれるのは脈あり?とか?」
「プッ」
と、思わず笑ってしまった。
「ひでぇー!!笑うことないのに」
「ごめん、ごめん、確かに会って飲みたいのはあるよ!でもこっちには知り合いいないし、こうやって飲んでくれるだけでもありがたくって」
「…まぁ、そんいうことなのは解ってましたけどねー」
と、ぶつぶつ言われる。
「長山さんは、恋人作らないんですか?」
!?
「あっ、なんか訳あり?」
「そ、そんなことないけど」
「へぇー、そういえば長山さんの恋愛話聞いたことなかったなー」
「あー、うん。別に言うようなことないからだよ」
「へぇー」
と、何かあるなーって感じで見られてしまってる。
瑛大君が恋人が出来ればよかったとは思ってる。思ってるはずなのに私はなにをきたいしてるんだろう?
私にとっては瑛大君は保護者の代理で、ずっと大事な家族として成長を見守って来たんだもん。私なんかでなくいい人とであって欲しい。
『瑛大君元気にしてる?風邪引いてない?』
『うん。大丈夫』
こんな最低限のLINEのやり取りばかり。連絡しない方がいいのかなー。とりあえずどっちかお互いLINEはしてるけど、話がもうこんな感じだもんなー
『そろそろ4年生になるけど、就活とか動いてる?』
『うん。だいたい目星はつけてるので』
『そっかー、じゃあ決まったら教えてね』
『わかった』
私が婚活したほうがいいのかな?
でも、どのみち瑛大君が就職するまで気が気じゃないから就職したら婚活するかなー
私も進まないと!と考えるようにした。
瑛大君が4年生になり、多分就活で頑張ってるだろうな。
そんなとき
「あっ、もしもし?」
一緒に住んでる瑛大君のおばあちゃんから電話がきた。
「彩里ちゃん、元気にしてる?」
「はい!おばさんもお元気ですか?」
「ええ、お陰さまで。瑛大とは連絡してるの?」
「はい!近況報告とかですがたまにしてますよ!」
「そう…、彩里ちゃんはこっちに戻ってこないの?」
「えっ?」
「いや、瑛大もね、寂しいんじゃないかなーって。口には出してないけどやっぱり会えないと寂しいのかもね」
「そうですか。でも大学の友達とか…、彼女とか…、居そうですけど」
「ああ、そうね。なんか前よりもオシャレに気を遣うようになったから彼女でも出来たのかしらね」
!?
「そうですか」
「今度時間あったら戻ってきて」
「はい」
多分私のこと心配してくれてるんだろう。たまにこうやっておばさんなら電話がくる。それでも私は戻ることはなかった。
ハッ
「な、なに?えっ?」
気がついたらいつもの飲み屋でうつ伏せに寝ていた?ようだ。
「やっと起きたー」
吉木君が大笑で言われ
「わ、私めっちゃ飲んだ?」
「かなり…、お陰でいい話聞けましたけどね」
「えっ?」
「…瑛大君でしたっけ?」
「!?」
私、な、なに言った!?
「瑛大君が大学卒業したら、婚活するーー!って言ってましたよ」
「…」
「その瑛大君って、長山さんにとっては大事な人なんだ」
「か、か、家族です」
「あー、そんなこと言ってましたね!家族だって!だから、瑛大君を応援したいって言ってましたねー」
「あっ、うん」
なんか、余計なこと言ってない?ってか、瑛大君の話をすることじたい余計なことだけど
「それって本心です?」
「えっ?」
「だって、今までかなり飲んでた仲間じゃないですか。それなのにその瑛大君の話を今まで一度も聞いたことない。しかも家族なんですよね?長山さんの御両親が亡くなったこととかは教えて貰いましたが、家族である瑛大君は一度も話さないって、なにか気になりまして」
「あっ、うん。まぁ複雑だからね」
「ふーん」
まさか飲みまくったときに、瑛大君のことを言ってたなんて…、不覚だった。
「まぁ、うん。深酒気を付けます」
「1時間半ここで寝てましたけどね」
「す、すいません」
「こんなにピッチ早く飲むの初めて見ましたよ!それも瑛大君が理由ですか?」
「いや、そんなんじゃないよ」
「言いたいことあるんじゃないんですか?」
「え?」
「言いたいことですよ!長山さんの本心。」
本心…、本心ってなんだろ?
「本当はどうしたいんですか?」
本当は…?
本当は…、そんなこと、今まで通り瑛大君の保護者としてずっと見守りたい。
それが私の本心よ!
そう改めて思い、深酒したのを深く反省した。
それから3ヶ月後、瑛大君から希望の会社に内定が決まったと連絡があった。
『よかったねー、おめでとう!』
『ありがとう』
相変わらず至ってドライ
はぁ…、まぁうん。育てて貰った義理もあるから連絡したんだろうな。きっと。
もう昔みたいに仲良くはなれないのかなー。あんなことあったしなー
瑛大君と仲良くなれないもどかしさを感じていた。
そんな時に見たのが…
「!?」
コレ、瑛大君!?
家のパソコンでネットをみてたとき、テレビで大学の学祭の特集をしてて、瑛大君の大学の学祭ってどんなのだろ?って安易に検索したら…
あるブログにたどり着き、瑛大君が綺麗な子と腕を組んでるのが載っていた。
実際は女性がメインだったようで瑛大君はしっかり写ってないが、でも少し下向きだけどこれは瑛大君だ!
ブログの文面をみると、ミスコンの優勝者のようで夜のパーティーのとき、パートナー同伴らしくそこでの写真のようだった。
これは間違いなく…、3年会ってないだけでこんなに大人っぽくなったんだ。同伴のパーティーなんてもしこの時付き合ってなくっても、どっちかが好意がなければ声なんてかけないだろうし…
「そっかぁー」
そうだよな。こんな綺麗な人が近くにいるなら、まぁそうなるか。
そりゃ私にはそういう態度になるわ!
これからも瑛大君のいい保護者として見守って行こう!
「で、いいんですか?」
「え?」
「だから!!そのままでいいんですか?って聞いてるの!」
吉木君に強く言われた。
瑛大君のことを聞かれたので、ブログでカップルのように腕組んでる瑛大君を見たことを話した。
「いいもなにも…、大学ではいっぱい出会いあるんだし、よかったじゃない!」
「…」
「もう、瑛大君の話はいいから」
「後悔しても知りませんよ」
「え?なんで?」
「長山さんって自分の気持ち解らない鈍感派?」
「鈍感って…なんでよ!」
呆れた顔をする吉木君。
年もあけ、あと少しで瑛大君も卒業。やっと婚活でもできるかな?って思ったりしてる。
婚活の登録でもするかなー
アプリとかでなくしっかりしたところで登録したいしなー
明けましておめでとう!とはLINEしあったが、その後は特に…、こんなLINEもしなくてもいいかもしれないな。
仕事も関西に店舗が予定の数になったことで落ち着いた。
店舗の場所から探しはじめたところばかりなので全店舗思いでがある。
そして本社から戻ってくる話が出て、お陰さまで役職があがることになった。もともとマネージャーという役職ではあったが、統括マネージャーとして店舗を取り仕切ることになった。
だったら婚活は戻ってからするか。あ、あと瑛大君に…言わなくってもいいか。戻ったとしても一緒に住むわけじゃないし、とりあえずおばさんにだけでも連絡しとこう。
引っ越し先の新居をネットで見つけ、めぼしいところをチェックする。
もう少ししたら、この不動屋さんに連絡するか。
2月になり、ここもあと少しでお別れになる。
「これだけ長い間飲み仲間になってくれたなんて、凄い珍しいからまだまだ続くと思ったんだけどなー」
「まぁ、オンライン会議ではちょっくちょく会うし」
「そうだけど、こうやって飲めなくなるのは寂しい」
吉木君も責任者となり、各店舗の売り上げをチェックし、対策に色々励んでる立場になっていた。
「長山さんから教えて貰ったこと、しっかり叩き込んでこっちで頑張りますよ」
「うん、よろしくね」
この日はなんだかんだ昔話もし話が盛り上がりお互いいつものペース以上に飲んでしまった。
「やべーそろそろ終電!帰りますよ」
お互いちょっとほろ酔いだけど、終電は解り会計を済ませて駅に向かう。住んでる最寄駅も1駅しか変わらないので、以前飲みすぎたときは、マンションまで送ってくれたことがあった。
「今日は送った方がいいかもなー」
そう言って吉木君は私が降りる駅に降りてくれた。
「大丈夫なのにー」
「そう言ってる人が一番危ない」
「…」
「とりあえず、マンションまで送りますよ」
何度か送ってくれたこともあり、迷いなく進む。
吉木君が最近気になった人が出来たらしく、その人の話をしながら歩いてた。
「がんばって、デート誘えばいいのに」
「なんか脈なさそうなんだよなー」
「えーそうなの?」
歩いたら余計に酔っ払ったので、そんな会話をしたあとからなに話してたか…
「なんで…」
「あっ、もしかして…」
「もしか…」
「いや、あの…」
あれ?なんか、ボーとしてきて男性2人の会話が聞こえてる。
吉木君と…、えっ?だれ?
目の前には瑛大君に見える。でもそんなはずはなく幻?この人だれ?
「あっ、おい!ちょっ…」
「…ん?」
あー、飲みすぎたのか。かろうじて覚えてるところはあるが、確か吉木君に送って貰ったんだった。
自分のマンションに居るので、ちゃんと送り届けてくれたんだな。最後の方はあまり覚えてない?なー、歩いて酔いが回ったのかも
「あっ?起きた?」
!?
「な、な、なっ…!?」
なに?どういうこと?
なんで私のマンションに瑛大君が!?
「…夢?」
「あんな感じで男と2人で飲んでるんだ」
「…」
本当に瑛大君?でもやっぱり夢なんだろうな。
「瑛大君が居るはずないか」
「…えっ?」
「瑛大君、私のこと避けてるもんね。 もう会うことないから…、あの綺麗な子と今は居るのかな?」
「…さえちゃん?」
「私、瑛大君だけが家族だったの。だからそっけないLINEに辛かった。でも、でも…、あんなことあったしから、恋人出来たら私に対してはそうなるよね、きっと。でも、それでも、家族として仲良くやりたかったの!」
涙が止まらない。
「私とあったら、またおばさんになってるから女として余計に見れないだろうね。それで瑛大君は大人のいい男になって…」
「…」
「夢でも現れないで!辛いよ!」
「夢じゃないよ!俺はここにいるよ!さえちゃんに会いに来た。」
そんなわけない!私に会うなんて…
「おばあちゃんから聞いてさ、4月からこっちに戻ってくるって聞いたから。来月卒業だからちょっと早いけど、新居とか見つける前にさえちゃんに会いに来た」
私に会いに?
「さえちゃん、迎えにきたよ!あのときの言ったこと実現しにきた。結婚しよう」
「えっ…」
「こっちに戻ってきたら、また一緒に住もう」
これって夢だよね?
「夢だと瑛大君は私のことまだ好きでいてくれるだね」
「え?」
「だって、綺麗な彼女いるじゃん!LINEだと事務的な報告だし、もう完璧に邪魔なんだと思ってた。」
「なに…」
「でも!!」
瑛大君が離す途中で割り込んで
「もし、夢の中で瑛大君が私のこと好きなら、抱きしめてほしい」
「!?」
そう言って私は瑛大君を胸のなかに入って背中に腕を回した。
「本当は辛いけど、今だけ…ごめん。辛いって言ったり、抱きしめてって言ったりメチャクチャだよ私!でも、家族だけど今だけお願い」
「さえちゃん…」
私の顎を持ち上げ、瑛大君の顔が…そして、キスをした。
キスがどんどん深くなり、それからは記憶をなくしてしまった。
「んー」
カーテンの隙間から光が見える。あー朝か。なんていう夢をみたんだろう。
瑛大君とキスをするなんて欲求不満の重症だわ!そして頭が痛い!完璧に飲みすぎた。
時間をみると6時前だった。今日は週末で休みだし、もう少し寝るか。でもシャワーだけ浴びたいな。
そう思って起きようとしたとき
「…えっ?」
隣に瑛大君が寝てる。
ど、ど、どういうこと!?
フル回転で考える。
なんで居るんだ?まさか、夢じゃなかったとか!?
いやいや、それはないでしょう?どうみても瑛大君は私に対してもうそういう気持ちがないよ。
じゃなんでいるの?
「…ん?起きた?」
「え、瑛大君?」
「おはよう」
「う、うん。」
嬉しそうな顔をして私の頬を触る。
「さえちゃんから、抱きしめられたの初めて」
「…」
夢じゃなかったのぉー!!?
「え、瑛大君、あのね」
「昨日酔っぱらってたから話しても忘れられると思ったから、それに寝ちゃったし」
キスのあと寝ちゃったの?私。
「あのさ、俺なんか彼女がいると思ってるようだけど、どうしてそうなるの?」
「あ、いや、あの、たまたま学祭のブログをみて、そしたらえっと瑛大君、綺麗な人と腕組んでベッタリとしてたから」
「えっ?学祭?」
と少し考えて
「もしかして、ミスの優勝した子との写真か?」
私は小さく頷きた。
「あー、確かにそんなことあったけど、あれはパートナー同伴でないとパーティー出れないからお願いされてたんだよ!はじめは断わったんだけど、他の人だと誘うと勘違いされても困るから誘えず困ってたらしい。俺は好きな人いるってずっと言ってたから、そういうのに惑わされないと思ったからお願いしたらしいよ」
「えっ?じゃ彼女とかじゃ」
「俺、大学では付き合ったことないけど」
うそ!?こんなかっこいいのに!?
「だって、さえちゃんしか見えないもん」
「で、でも、LINEとかではそっけなかったし、もう私が…」
「…それは、制御してたんだよ!本当はいっぱい話したい!会いたい!でも少しでもしたら、多分制御できなくなると思った。大学やめてさえちゃんのところに行こうとすら思ってしまう。だから我慢した。この3年半会えなくって辛かった。でも俺はたった3年半くらいで気持ちが変わらない自信があった。」
「…瑛大君」
「さえちゃんの気持ちも解ってたし、きっとうちの両親の罪悪感があったんだと思ってる。でもさえちゃんは俺のこと好きなの知ってたから、だから迎えにいくと決めてた」
「えっ?」
好きって…私…
「私、瑛大君のこと好きよ!でもそれは家族としてだしそれに」
「待った!!」
!?
「いい加減自分の気持ち気付いてないの?」
「えっ?」
「俺鈍感な方だと思うけど、それでもさえちゃんが俺のこと好きなの解りまくりだよ」
「な、な、!!?」
嘘よ!私瑛大君に対してそんな
「さえちゃんを抱いてたとき、さえちゃん無意識に好きって言ってるんだよ」
「えっ!!?」
全然気付いてなかった
「俺性欲強くて長いからさ、最後の方になると朦朧としながら好きとか離さないでとか言ってるんだよ!もしかして覚えてないのか?って思ってたが、やっぱりそうか」
確かにあの時、最後の方になると朦朧としててあまり覚えてなかった。まさかそんなこと言ってたなんて
「それでも、恋愛の好きじゃないって言いきれる?」
3センチくらいまで顔が近づいてきて
「…瑛大君」
「好きだよ!愛してる」
何かが崩れた音がした。そして自然と
「…私も」
私も好き
と、確信した。
瑛大君にキスをし、その後は…って
「だ、だめ!昨日飲んじゃってそのまま寝たからシャワー浴びたい」
「フッ」
と、笑って
「じゃあ、一緒に浴びようよ」
「ええ!?」
引きずられるように浴室に行き、長いシャワー 時間となった。
その後は、もうベッタリ状態で濃厚な時間を過ごした。
そして
「色々お世話になりまして」
今は吉木君と瑛大君と3人で店にいる。瑛大君がずっとお世話になってた吉木君に挨拶したいと言い出して…
「いえ、こちらこそです!長山さんには本当にお世話になりまして。瑛大君のことは色々聞いてます」
「ちょっと!!吉木君!!」
ハハハと笑い
「でもよかったじゃないですか!長山さんは素直じゃないから、このままどうするのか?と思ってたんですよ。瑛大君がこうやって迎えに来てくれたんだし、もう誤魔化すのはやめてくださいよ!」
「…はい」
その後2時間ほど3人で呑みながら話し、解散した。
あと、3日したら瑛大君は帰るけど2ヶ月後には瑛大君と…って
そうだ!私にはクリアしなくちゃいけないことがあったんだった。
「あの、おばさん…、本当にあの…なんていっていいか」
そう。裕子さんのお母さん。
「あら、なに?瑛大のこと?」
電話口では私と久々に話せることが嬉しいようで弾んだ口調だった。
「はい」
「瑛大はそこにいるんでしょ?」
「…はい」
私は瑛大君を見て
「裕子さんになんて言っていいか…、こんな年上で瑛大君の育ての親として出来たかどうかも解らないのに、それなのに瑛大君に恋愛感情を持ってしまいました。本当に…何て言ったらいいか」
「あら、瑛大は彩里ちゃんにプロポーズするって言ってそっちに行ったのよ」
「あ、あの…」
隣で瑛大君は優しそうに私をみつめ
「瑛大君とこの先一緒になりたいと思っています。お許し頂けないでしょうか?」
複雑な心境。おばさんにこんなことを言うことになるなんて。おばさんだって本当は…
「あら、私いつ反対した?」
「…えっ?」
「瑛大が昔から彩里ちゃんのこと好きなの知ってたし、2人が想いあってるなら反対することなんてないわよ!おめでとう!」
「おばさん…」
「あっ、俺変わるよ」
その後は瑛大君が電話口にかわり、おばさんと話をして電話が切れた。
「孫の結婚式に出れるの楽しみにしてるってさ」
数日後、瑛大君は帰っていった。
その後私は引き継ぎやらで会社はドタバタし、あっという間に戻ることとなった。
最後の日に吉木君と2人でお別れ会をして
「本当は俺、長山さんが好きだったんですけどね。幸せになってください」
私は吉木君に感謝をいっぱいして、関西を後にした。
「お帰り」
駅に迎えに来てくれた瑛大君。
今月大学を卒業し、今はおばさんの近くのマンションを借りて2人での生活を始める準備をしてくれてた。
おばさんの家は広いので、それでも…と思ったが、新婚さんの邪魔はしたくないと言ってくれて、近くで借りることにして何かあったらすぐ行けるようにした。
マンションは3DK。瑛大君が探してくれて私が通いやすいように色々考慮してきめてくれた。
「うわー、写メでは何度も見てたけど、こうやって実際みると違うねー」
「どお?実際みて」
「角部屋だし、綺麗だし、築年数も2年以内だし、スーパーも近いし言うことないよ」
「そか、よかった」
そう言って抱き締めてくれる。
「さえちゃん、俺はさえちゃんを愛してるから!だから俺を信じてついてきて」
「…はい!」
半年後、小さい教会で式を挙げた。列席者はおばさんだけだけど、それでも私たちは幸せだった。
そして父は私が高校生の時に行方不明になった。
会社から出て駅に向かってる目撃情報はあるものの他の情報がなかった。
警察も捜索はしてけれたものの打ち切り。私は親戚に引き取られることなく施設に預けられた。
通ってた高校生は遠くなり施設の近くの高校に編入となった。
そして二年後、高校を卒業し食品加工の工場に転職、施設を出た。
長山彩里、25歳。食品加工会社に勤めてた会社は既に退職し、今はネットカフェのチェーン店の本社に勤務。といっても本社に席を置いてる社員は30人ほどだ。今はまだ7店舗。少しずつ規模を増やそうと奮闘している。
そして今大きな決断をした。
私が19歳の時、食品加工の会社で面倒みてくれた上司がいた。
名前は黒木裕子さん、私が施設から出来来たこと、親が居ないことを知ってよく自宅の食事に招待をしてくれた。
旦那さんもお子さんもいて、旦那さんも本当の家族のように思ってもいいからね!っと言ってくれて、いつも暖かく向かえてくれた。旦那さんは聡さん、お子さんは瑛大君。当時7歳だった。
食事だけでなく、その後はアミューズメントや家族旅行にも連れていってくれた。
ずっと一人で頑張らないと!と思ってた気持ちが緩み、色々と頼っていた。
両親と思っていいとも言われたが、歳が近すぎるので少し歳の離れたお姉ちゃん夫婦みたいなそんな感じに近いかもしれない。
それから間もなくして私は、今の会社に転職。裕子さんと仕事で離れるのは寂しかったが、それ以外は変わらず家族として付き合いが続いていた。
「好きなこと、やりたいことがあったら、遠慮なくしたらいいのよ!」
裕子さんがそう言ってくれたことで転職に踏み出せた。
元々ネットカフェが好きで、もっと自分の思った店が出来たらなっと思ってたので、ネットカフェの企画側の仕事をついた。
そして、今
「だから!!うちは難しいのよ!」
「聡さん側のご親戚では無理なの?」
そんな会話が聞こえる。
裕子さんと聡さんが亡くなったのだ。
家族で買い物をしてるとき、歩道にトラックが突っ込んできて、2人は瑛大君を守るように亡くなっていた。
そして、葬儀が終わり親戚同士の話し合い。瑛大くんをどうするか?
お互いがお互い、うちでは無理と言い合ってる。施設にって話が出た時
「わたしが引き取ります!」
そういっのは、裕子さんのお母さん。
「なにいってるのよ!お母さん!まだ動ける状態でないでしょう?」
足腰が悪く、入退院を繰り返してるときいてた。何度かお会いしたことはあるがその時はとても元気な時だった。
「あんたら、施設とか目の前に居るのによく言えるわね!」
「そんなこと言っても皆それぞれ家庭があるんだよ!」
瑛大君は離れた場所で下を向いていた。
「私が連れて帰ります」
と、裕子さんのお母さんは足を引きずって瑛大君のてをとった。
「おばあちゃんと、帰ろう」
笑顔で言う裕子さんのお母さん。瑛大君は何も言えず
「…おばあちゃん、迷惑かけるからダメだよ」
「そんなことないよ!」
そんな話ししてるときに
「お母さん!いい加減にして!なにかあったら私たちが大変なのよ!」
おばあちゃんに怒るように言うのは、裕子さんのお姉さんだろうか?面影がある。
「あんたたちに迷惑なんかかけないよ!大事な孫にこんな思いさせるなんて…」
悔しそうな顔をする
「わ、私が引き取ります!!」
一斉に皆が私をみる。
もう、我慢出来なかった。
「たしか貴方は…」
裕子さんのお母さんが私をみてそう言った。
親戚同士の話だったのではじめは聞くつもりすらなかったし、遠くにいた。けど、瑛大君のくらい顔をしてるのをみて、近づいてそ聞いてしまった。
「貴方はどちらさま?」
そう聞かれたけど
「私は、瑛大君の家族です!」
「はぁ?なに言ってるんだ!」
と、親戚のひとがいいだす。
「おばさん、私に瑛大君を預からせてください」
「そんな…貴方はまだ若いみたいだし」
「裕子さんには家族同然に面倒みてもらいました。私にとって瑛大君は家族です!瑛大君。私と一緒に住まない?かなり狭いけどいいかな?」
「さえちゃん」
瑛大君は私のことをさえちゃんと呼んでくれてた。
「どうかな?」
瑛大君は、おばさん(裕子さんのお母さん)をみて
「さえちゃんと暮らす」
「えっ?」
瑛大君が私と暮らすと言ってびっくりし、
「でもおばあちゃんにも会いに行く」
「…」
周りは騒ぎだしてるがそんなのは私もおばさんも無視をし
「本当にいいのかしら?」
「はい!」
おばさんに、宜しくお願いします!と頭を下げられ私は引き取ることとなった。
瑛大君が13歳のときだった。
はじめは一人暮らしだったんで1LDKだったが2LDKに引っ越した。都会と違ってか田舎なのでそこまで家賃は高くはない。仕事も企画などは在宅ワークでも出来るので、出勤しないといけない時以外は在宅ワークに切り替えた。
その後高校に進学。瑛大君はかなりのイケメンになっていた。
少しでも生活の足しにと部活はせずバイトをしている。そんなこと気にしないでいいよ!って言ってるんだけどね
ちょうど一回り離れてる私達。年の離れた姉弟みたいなそんな感じだった。
「さえちゃん」
「ん?」
「今月分」
そういってバイト代を渡してくれる。
「んじゃ、これだけもらっとく!」
と言って1万だけ抜きとりあとは返した。
「なんだよ!それ!!」
「彼女出来たんでしょ?デート代も必要じゃない!」
「…」
瑛大君にも彼女が出来たし、その少し前にも私にも恋人ができた。
だけど、彼とは多分無理かもしれない。
彼は33歳で、私も29歳だし結婚もしたい話はしている。けど私にとっては瑛大君は家族なんで、瑛大君と一緒に住むのが条件になる。
そうなるとなかなか前に話がすすまない。そうやって過去にも終わってしまったことがある。
「その子高校生なんだからさ、一人暮らしとか無理なの?」
と言われるが、私からしたらやっぱり…、過保護なんだろうか?
結局別れることになってしまった。
瑛大君が一人立ちしたら婚活するか…
仕事も以前より責任のある仕事をするようになり店舗も20店舗まで拡大。宿泊施設、シャワー完備なども当たり前。なによりも快適に過ごせるよう日々考え、使用した御客様のご意見なども踏まえ、新たなものを考えてる。
その一つが、在宅ワークが今は増えてるので自宅だと集中出来ないひとのための個室の施設。
月契約とか、日割りとか色んなプランを考え、防音などもする予定。
「何か質問とかありますか?」
「いえ、大丈夫です」
「では。また来週続きを…」
「はい!お疲れさまでした」
リモートの打ち合わせが終わり、ほっと一息ついたころ。スマホが鳴った。
相手は瑛大君の担任の先生だった。
「進路ですが、就職を希望されてまして」
「えっ?」
何度も大学に行きなって話したのに
「本人は大学に行きたいのではと思ってます。」
どうかじっくり話し合って下さいといわれ、電話は切られた。
「行きたい大学があれば行きなって行ってるじゃん!」
「行きたい大学なんてないよ!」
「もう、瑛大君!!」
「俺は就職に決めたんだ」
きっとお金のこと気にして…
「瑛大君あのね」
そう言って通帳を渡す
「な、なにこれ?」
そう言って通帳の中身ををみる。
「!?」
「先週ね、瑛大君のおばあちゃんに会ったのよ。話があるって…、これね瑛大君の御両親が集めてた学資保険とそのあとおばあちゃんが引き継いで貯金してたのよ!大学行くときに使ってくれと言われて」
「…」
「少しくらい借金しても瑛大君が行きたいのであれば、行かせようって決めてたから。そんなのを察してか瑛大君のおばあちゃんが話があるってね、だから私達の思いに答えるために行きたい大学があれば行きな」
「瑛大君、今までなに不自由なくって思ってたけど、一人では限界で…、不自由させてごめんね」
「な、なに言ってるんだよ!さえちゃんにここまでしてくれて感謝しかないよ」
「お願い!行きたい大学あるなら行って!」
「…」
少し考えて
「…俺、薬学部行きたいんだ。医薬品の研究を将来したい」
「うん!そっか。瑛大君、頑張って!」
そう言って瑛大君の進学の話は落ち着いた。
「なぁ、さえちゃん」
「ん?」
「いや、何でもない」
それから瑛大君は受験勉強を本格てにはじめた。元々合格圏内だったのもあり行きたい大学は無事に合格。
「瑛大君、おめでとう!」
質素ながら自宅でパーティーをした。前日は友達とお祝いパーティーしたようだけどね。私もお祝いしたい!
「瑛大君、おめでとう!」
「ありがとう」
「ほんとよかった。」
私も大学に行きたかったなー、私の分も楽しんでほしい。
「さえちゃん」
「ん?どうしたの?」
急に真剣な顔になる瑛大君。
「大学を卒業して社会人になったら、俺と…結婚はしてほしいんだ」
…はっ!?
「な、なに言っての?勉強しすぎてボケちゃった?」
「マジなんだけど」
「…」
な、なんて答えたらいいか
「あ、あのね、瑛大君。私達て家族だし、息子とまでいかなくっても私にとっては大事な大事な家族なのよ」
「俺のことそういう風には見れない?」
一回りも離れてる、しかも高校生の瑛大君にそんなこと言われるなんて
「み、見たことないよ!家族として接してたし」
「じゃ、これから男として見てよ」
お互い立つと瑛大君は180くらいあって、こなにも私より大きくなって
「俺、さえちゃんがずっと好きだ!これからも変わらない」
「そ、それは、大学に行って社会に出ればもっと出会いあるし、それに」
「俺はさえちゃんなんだよ!!」
「で、でもね」
「もう絶対離したくない!」
そう言って抱きしめてきて
「え、瑛大君!ちょっと」
「俺を男としてみて」
そ、そんな色っぽい顔…、今まで見たことない!ドキドキする。そんな隙に瑛大君からキスをされ、胸を押してやめさせようとするが全く動かない。その間キスが深くなる。
「…やっ…」
瑛大君やめて!!
必死に抵抗してるのに…
「絶対に落とす」
「…」
そんな顔しないでよ!
「もう無理なんだ!誰にも触られたくないんだ!俺のものになって」
「…瑛大君」
またキスをされ、どうしていいかわからない。抵抗もやめてしまい受け入れてしまってる自分がいる。
そのままソファに倒され首筋にキスが降りてくる。
「瑛大君、もうこれ以上は」
「さえちゃんが欲しい」
「ダメよ!やめて!!」
「もう、ずっと我慢してたんだ!限界なんだ」
服に手をかけられ、拒んでるのに
「それで抵抗してるつもり?」
「…あー」
「やべ!いい声」
胸を触られ嬉しそうな顔をしてる。それをちょっと見るだけでドキドキする。
「瑛大君、お願いもう…」
私が必死に拒んでるのにどんどん進め
「お願いそれ以上は」
「ずっとこの時を待ってたんだ!もう無理!!」
と言って、最後の一線を越えてしまう。
裕子さんへの罪悪感で一杯で、心が痛い。
「…」
どうしよう…
抱きしめられてお互い何も言わない。
「瑛大君、これからね大学に行ったら沢山の出会いもあるし、それに瑛大君に相応しい子がみつかるかも」
「俺にはさえちゃんしかいないんだよ!」
「でもね、」
「俺は昔からずっと好きだった!だから高校出て社会人になって告白するつもりでいた。でも…行きたい大学もあったのも事実で…、金のこともあったけど少しでも早く社会に出て、稼げるようになってさえちゃんと…」
「瑛大君、そのその考えはダメよ!やりたいことがあるならやらないと!それにさっきも言ったけど、大学には沢山の出会いがあるから」
「だから、俺はさえちゃんだけなんだよ!」
結局話は平行線で、その後も瑛大君は変わらず抱きしめられたり、キスをされたり、私の部屋にきてすることはしてしまい…、完全に拒否しない私も悪いんだけど。
罪悪感もありつつ満更でもないと思ってるんだろうか?自分自身でもしっかりしない判断にモヤモヤしていた。
大学生になり、瑛大君はバイトも新しくはじめ、サークルも入ったようだ。以前よりも増して友達とかの付き合いも増え前よりも家にいることが少なくなった。
このまま少しずつ離れて行くのかもしれない。こんな関係になってもし彼女ができたら、ここにも帰りづらいだろう。
そこで
「私は嬉しいけどいいのかしら?」
「ええ。その方がいいと思ってます」
おばあちゃん、裕子さんのお母さんのことだけど、2年前から退院をし自宅で生活できるレベルまでに元気になってる。私は関西に店舗を増やすため関西に行くことを志願ひた。リモートでも出来るので行かなくってもいいが、行くことになると出張で行くことになるのでそれなら住むところを関西に引っ越そうと思ってる。まぁそんなのは口実で、瑛大君から離れた方がいいと思ったからだ。
「なに勝手に話つけてるんだよ!!」
「あ、あのね」
「俺がどれだけ…」
でも、それは今だけだよ!まだ大学に入って半年。あと少ししたら瑛大君の居場所が出来るよ!
「瑛大君、私達がもし今の関係をしたことで将来進めなかったらと思うとね」
「なんだよ!それ!!俺が他のヤツとどうかなるとでも思ってるわけ!?」
そうだ!ともハッキリ言えないので
「そうじゃないけど、でも私とこうなったことでもしこの先好きな人が出来た場合、私が近くだと…ね」
「…」
凄い怒ってる。でも、でもね、近くに居すぎて周りが見えなかっただけなんだと思う。こんな一回りも離れてる女より、素敵な人と出会ってほしい。
何度か話し合い、私が関西に行くことは決めてしまったのでもう離れるしかない。
「…わかったよ!大学卒業のとき俺がさえちゃん好きだったら、問答無用で結婚するからな!」
「え、瑛大君!!あ、あのね」
「俺の気持ちが解ってもらえてなかったと思うとマジ悔しい!でも俺は諦めないから」
真剣な顔に圧倒される。でも、でもきっと…、今だけだよ。
私はそれに対して返事はせず、関西に転居した。
そして、瑛大君はおばあちゃんの家に行く事になった。
それから2年前。
たまにLINEはくるけど、あれから会うことはない。LINEの内容もお互いの近況報告程度。
なんとなく、距離が出来た気がして私のことはもう過去として思ってるのかな?とも思ってる。その方が瑛大君のためにもいい。
最近、こっちで採用された同じ歳の男性とたまに飲むようになって、飲み仲間みたいになってる。形上は私が上司なのではじめは慣れない仕事で大変そうだからってことで飲みに誘ったりしてたが、今はだいぶ落ち着いて飲み仲間のような存在になっていた。名前は吉木高徳、製作会社からの転職だった。
「そういえば俺、最近彼女と別れちゃって」
「えっ!?結婚するとか言ってなかった?」
「少し前からなんか様子が変だったんだよね。それでもう…」
「そうなんだ。」
吉木君は元々東京出身なので方言はない。5年付き合ってる彼女がいたのは知ってて結婚の話も聞いていた。
「じゃ、長山さん慰めてくださいよー!」
「な、なに言ってるのよ!人のことなんて慰めてる暇ないわよ!」
「でも、在宅ワークでも問題ないのにこうやって会ってくれるのは脈あり?とか?」
「プッ」
と、思わず笑ってしまった。
「ひでぇー!!笑うことないのに」
「ごめん、ごめん、確かに会って飲みたいのはあるよ!でもこっちには知り合いいないし、こうやって飲んでくれるだけでもありがたくって」
「…まぁ、そんいうことなのは解ってましたけどねー」
と、ぶつぶつ言われる。
「長山さんは、恋人作らないんですか?」
!?
「あっ、なんか訳あり?」
「そ、そんなことないけど」
「へぇー、そういえば長山さんの恋愛話聞いたことなかったなー」
「あー、うん。別に言うようなことないからだよ」
「へぇー」
と、何かあるなーって感じで見られてしまってる。
瑛大君が恋人が出来ればよかったとは思ってる。思ってるはずなのに私はなにをきたいしてるんだろう?
私にとっては瑛大君は保護者の代理で、ずっと大事な家族として成長を見守って来たんだもん。私なんかでなくいい人とであって欲しい。
『瑛大君元気にしてる?風邪引いてない?』
『うん。大丈夫』
こんな最低限のLINEのやり取りばかり。連絡しない方がいいのかなー。とりあえずどっちかお互いLINEはしてるけど、話がもうこんな感じだもんなー
『そろそろ4年生になるけど、就活とか動いてる?』
『うん。だいたい目星はつけてるので』
『そっかー、じゃあ決まったら教えてね』
『わかった』
私が婚活したほうがいいのかな?
でも、どのみち瑛大君が就職するまで気が気じゃないから就職したら婚活するかなー
私も進まないと!と考えるようにした。
瑛大君が4年生になり、多分就活で頑張ってるだろうな。
そんなとき
「あっ、もしもし?」
一緒に住んでる瑛大君のおばあちゃんから電話がきた。
「彩里ちゃん、元気にしてる?」
「はい!おばさんもお元気ですか?」
「ええ、お陰さまで。瑛大とは連絡してるの?」
「はい!近況報告とかですがたまにしてますよ!」
「そう…、彩里ちゃんはこっちに戻ってこないの?」
「えっ?」
「いや、瑛大もね、寂しいんじゃないかなーって。口には出してないけどやっぱり会えないと寂しいのかもね」
「そうですか。でも大学の友達とか…、彼女とか…、居そうですけど」
「ああ、そうね。なんか前よりもオシャレに気を遣うようになったから彼女でも出来たのかしらね」
!?
「そうですか」
「今度時間あったら戻ってきて」
「はい」
多分私のこと心配してくれてるんだろう。たまにこうやっておばさんなら電話がくる。それでも私は戻ることはなかった。
ハッ
「な、なに?えっ?」
気がついたらいつもの飲み屋でうつ伏せに寝ていた?ようだ。
「やっと起きたー」
吉木君が大笑で言われ
「わ、私めっちゃ飲んだ?」
「かなり…、お陰でいい話聞けましたけどね」
「えっ?」
「…瑛大君でしたっけ?」
「!?」
私、な、なに言った!?
「瑛大君が大学卒業したら、婚活するーー!って言ってましたよ」
「…」
「その瑛大君って、長山さんにとっては大事な人なんだ」
「か、か、家族です」
「あー、そんなこと言ってましたね!家族だって!だから、瑛大君を応援したいって言ってましたねー」
「あっ、うん」
なんか、余計なこと言ってない?ってか、瑛大君の話をすることじたい余計なことだけど
「それって本心です?」
「えっ?」
「だって、今までかなり飲んでた仲間じゃないですか。それなのにその瑛大君の話を今まで一度も聞いたことない。しかも家族なんですよね?長山さんの御両親が亡くなったこととかは教えて貰いましたが、家族である瑛大君は一度も話さないって、なにか気になりまして」
「あっ、うん。まぁ複雑だからね」
「ふーん」
まさか飲みまくったときに、瑛大君のことを言ってたなんて…、不覚だった。
「まぁ、うん。深酒気を付けます」
「1時間半ここで寝てましたけどね」
「す、すいません」
「こんなにピッチ早く飲むの初めて見ましたよ!それも瑛大君が理由ですか?」
「いや、そんなんじゃないよ」
「言いたいことあるんじゃないんですか?」
「え?」
「言いたいことですよ!長山さんの本心。」
本心…、本心ってなんだろ?
「本当はどうしたいんですか?」
本当は…?
本当は…、そんなこと、今まで通り瑛大君の保護者としてずっと見守りたい。
それが私の本心よ!
そう改めて思い、深酒したのを深く反省した。
それから3ヶ月後、瑛大君から希望の会社に内定が決まったと連絡があった。
『よかったねー、おめでとう!』
『ありがとう』
相変わらず至ってドライ
はぁ…、まぁうん。育てて貰った義理もあるから連絡したんだろうな。きっと。
もう昔みたいに仲良くはなれないのかなー。あんなことあったしなー
瑛大君と仲良くなれないもどかしさを感じていた。
そんな時に見たのが…
「!?」
コレ、瑛大君!?
家のパソコンでネットをみてたとき、テレビで大学の学祭の特集をしてて、瑛大君の大学の学祭ってどんなのだろ?って安易に検索したら…
あるブログにたどり着き、瑛大君が綺麗な子と腕を組んでるのが載っていた。
実際は女性がメインだったようで瑛大君はしっかり写ってないが、でも少し下向きだけどこれは瑛大君だ!
ブログの文面をみると、ミスコンの優勝者のようで夜のパーティーのとき、パートナー同伴らしくそこでの写真のようだった。
これは間違いなく…、3年会ってないだけでこんなに大人っぽくなったんだ。同伴のパーティーなんてもしこの時付き合ってなくっても、どっちかが好意がなければ声なんてかけないだろうし…
「そっかぁー」
そうだよな。こんな綺麗な人が近くにいるなら、まぁそうなるか。
そりゃ私にはそういう態度になるわ!
これからも瑛大君のいい保護者として見守って行こう!
「で、いいんですか?」
「え?」
「だから!!そのままでいいんですか?って聞いてるの!」
吉木君に強く言われた。
瑛大君のことを聞かれたので、ブログでカップルのように腕組んでる瑛大君を見たことを話した。
「いいもなにも…、大学ではいっぱい出会いあるんだし、よかったじゃない!」
「…」
「もう、瑛大君の話はいいから」
「後悔しても知りませんよ」
「え?なんで?」
「長山さんって自分の気持ち解らない鈍感派?」
「鈍感って…なんでよ!」
呆れた顔をする吉木君。
年もあけ、あと少しで瑛大君も卒業。やっと婚活でもできるかな?って思ったりしてる。
婚活の登録でもするかなー
アプリとかでなくしっかりしたところで登録したいしなー
明けましておめでとう!とはLINEしあったが、その後は特に…、こんなLINEもしなくてもいいかもしれないな。
仕事も関西に店舗が予定の数になったことで落ち着いた。
店舗の場所から探しはじめたところばかりなので全店舗思いでがある。
そして本社から戻ってくる話が出て、お陰さまで役職があがることになった。もともとマネージャーという役職ではあったが、統括マネージャーとして店舗を取り仕切ることになった。
だったら婚活は戻ってからするか。あ、あと瑛大君に…言わなくってもいいか。戻ったとしても一緒に住むわけじゃないし、とりあえずおばさんにだけでも連絡しとこう。
引っ越し先の新居をネットで見つけ、めぼしいところをチェックする。
もう少ししたら、この不動屋さんに連絡するか。
2月になり、ここもあと少しでお別れになる。
「これだけ長い間飲み仲間になってくれたなんて、凄い珍しいからまだまだ続くと思ったんだけどなー」
「まぁ、オンライン会議ではちょっくちょく会うし」
「そうだけど、こうやって飲めなくなるのは寂しい」
吉木君も責任者となり、各店舗の売り上げをチェックし、対策に色々励んでる立場になっていた。
「長山さんから教えて貰ったこと、しっかり叩き込んでこっちで頑張りますよ」
「うん、よろしくね」
この日はなんだかんだ昔話もし話が盛り上がりお互いいつものペース以上に飲んでしまった。
「やべーそろそろ終電!帰りますよ」
お互いちょっとほろ酔いだけど、終電は解り会計を済ませて駅に向かう。住んでる最寄駅も1駅しか変わらないので、以前飲みすぎたときは、マンションまで送ってくれたことがあった。
「今日は送った方がいいかもなー」
そう言って吉木君は私が降りる駅に降りてくれた。
「大丈夫なのにー」
「そう言ってる人が一番危ない」
「…」
「とりあえず、マンションまで送りますよ」
何度か送ってくれたこともあり、迷いなく進む。
吉木君が最近気になった人が出来たらしく、その人の話をしながら歩いてた。
「がんばって、デート誘えばいいのに」
「なんか脈なさそうなんだよなー」
「えーそうなの?」
歩いたら余計に酔っ払ったので、そんな会話をしたあとからなに話してたか…
「なんで…」
「あっ、もしかして…」
「もしか…」
「いや、あの…」
あれ?なんか、ボーとしてきて男性2人の会話が聞こえてる。
吉木君と…、えっ?だれ?
目の前には瑛大君に見える。でもそんなはずはなく幻?この人だれ?
「あっ、おい!ちょっ…」
「…ん?」
あー、飲みすぎたのか。かろうじて覚えてるところはあるが、確か吉木君に送って貰ったんだった。
自分のマンションに居るので、ちゃんと送り届けてくれたんだな。最後の方はあまり覚えてない?なー、歩いて酔いが回ったのかも
「あっ?起きた?」
!?
「な、な、なっ…!?」
なに?どういうこと?
なんで私のマンションに瑛大君が!?
「…夢?」
「あんな感じで男と2人で飲んでるんだ」
「…」
本当に瑛大君?でもやっぱり夢なんだろうな。
「瑛大君が居るはずないか」
「…えっ?」
「瑛大君、私のこと避けてるもんね。 もう会うことないから…、あの綺麗な子と今は居るのかな?」
「…さえちゃん?」
「私、瑛大君だけが家族だったの。だからそっけないLINEに辛かった。でも、でも…、あんなことあったしから、恋人出来たら私に対してはそうなるよね、きっと。でも、それでも、家族として仲良くやりたかったの!」
涙が止まらない。
「私とあったら、またおばさんになってるから女として余計に見れないだろうね。それで瑛大君は大人のいい男になって…」
「…」
「夢でも現れないで!辛いよ!」
「夢じゃないよ!俺はここにいるよ!さえちゃんに会いに来た。」
そんなわけない!私に会うなんて…
「おばあちゃんから聞いてさ、4月からこっちに戻ってくるって聞いたから。来月卒業だからちょっと早いけど、新居とか見つける前にさえちゃんに会いに来た」
私に会いに?
「さえちゃん、迎えにきたよ!あのときの言ったこと実現しにきた。結婚しよう」
「えっ…」
「こっちに戻ってきたら、また一緒に住もう」
これって夢だよね?
「夢だと瑛大君は私のことまだ好きでいてくれるだね」
「え?」
「だって、綺麗な彼女いるじゃん!LINEだと事務的な報告だし、もう完璧に邪魔なんだと思ってた。」
「なに…」
「でも!!」
瑛大君が離す途中で割り込んで
「もし、夢の中で瑛大君が私のこと好きなら、抱きしめてほしい」
「!?」
そう言って私は瑛大君を胸のなかに入って背中に腕を回した。
「本当は辛いけど、今だけ…ごめん。辛いって言ったり、抱きしめてって言ったりメチャクチャだよ私!でも、家族だけど今だけお願い」
「さえちゃん…」
私の顎を持ち上げ、瑛大君の顔が…そして、キスをした。
キスがどんどん深くなり、それからは記憶をなくしてしまった。
「んー」
カーテンの隙間から光が見える。あー朝か。なんていう夢をみたんだろう。
瑛大君とキスをするなんて欲求不満の重症だわ!そして頭が痛い!完璧に飲みすぎた。
時間をみると6時前だった。今日は週末で休みだし、もう少し寝るか。でもシャワーだけ浴びたいな。
そう思って起きようとしたとき
「…えっ?」
隣に瑛大君が寝てる。
ど、ど、どういうこと!?
フル回転で考える。
なんで居るんだ?まさか、夢じゃなかったとか!?
いやいや、それはないでしょう?どうみても瑛大君は私に対してもうそういう気持ちがないよ。
じゃなんでいるの?
「…ん?起きた?」
「え、瑛大君?」
「おはよう」
「う、うん。」
嬉しそうな顔をして私の頬を触る。
「さえちゃんから、抱きしめられたの初めて」
「…」
夢じゃなかったのぉー!!?
「え、瑛大君、あのね」
「昨日酔っぱらってたから話しても忘れられると思ったから、それに寝ちゃったし」
キスのあと寝ちゃったの?私。
「あのさ、俺なんか彼女がいると思ってるようだけど、どうしてそうなるの?」
「あ、いや、あの、たまたま学祭のブログをみて、そしたらえっと瑛大君、綺麗な人と腕組んでベッタリとしてたから」
「えっ?学祭?」
と少し考えて
「もしかして、ミスの優勝した子との写真か?」
私は小さく頷きた。
「あー、確かにそんなことあったけど、あれはパートナー同伴でないとパーティー出れないからお願いされてたんだよ!はじめは断わったんだけど、他の人だと誘うと勘違いされても困るから誘えず困ってたらしい。俺は好きな人いるってずっと言ってたから、そういうのに惑わされないと思ったからお願いしたらしいよ」
「えっ?じゃ彼女とかじゃ」
「俺、大学では付き合ったことないけど」
うそ!?こんなかっこいいのに!?
「だって、さえちゃんしか見えないもん」
「で、でも、LINEとかではそっけなかったし、もう私が…」
「…それは、制御してたんだよ!本当はいっぱい話したい!会いたい!でも少しでもしたら、多分制御できなくなると思った。大学やめてさえちゃんのところに行こうとすら思ってしまう。だから我慢した。この3年半会えなくって辛かった。でも俺はたった3年半くらいで気持ちが変わらない自信があった。」
「…瑛大君」
「さえちゃんの気持ちも解ってたし、きっとうちの両親の罪悪感があったんだと思ってる。でもさえちゃんは俺のこと好きなの知ってたから、だから迎えにいくと決めてた」
「えっ?」
好きって…私…
「私、瑛大君のこと好きよ!でもそれは家族としてだしそれに」
「待った!!」
!?
「いい加減自分の気持ち気付いてないの?」
「えっ?」
「俺鈍感な方だと思うけど、それでもさえちゃんが俺のこと好きなの解りまくりだよ」
「な、な、!!?」
嘘よ!私瑛大君に対してそんな
「さえちゃんを抱いてたとき、さえちゃん無意識に好きって言ってるんだよ」
「えっ!!?」
全然気付いてなかった
「俺性欲強くて長いからさ、最後の方になると朦朧としながら好きとか離さないでとか言ってるんだよ!もしかして覚えてないのか?って思ってたが、やっぱりそうか」
確かにあの時、最後の方になると朦朧としててあまり覚えてなかった。まさかそんなこと言ってたなんて
「それでも、恋愛の好きじゃないって言いきれる?」
3センチくらいまで顔が近づいてきて
「…瑛大君」
「好きだよ!愛してる」
何かが崩れた音がした。そして自然と
「…私も」
私も好き
と、確信した。
瑛大君にキスをし、その後は…って
「だ、だめ!昨日飲んじゃってそのまま寝たからシャワー浴びたい」
「フッ」
と、笑って
「じゃあ、一緒に浴びようよ」
「ええ!?」
引きずられるように浴室に行き、長いシャワー 時間となった。
その後は、もうベッタリ状態で濃厚な時間を過ごした。
そして
「色々お世話になりまして」
今は吉木君と瑛大君と3人で店にいる。瑛大君がずっとお世話になってた吉木君に挨拶したいと言い出して…
「いえ、こちらこそです!長山さんには本当にお世話になりまして。瑛大君のことは色々聞いてます」
「ちょっと!!吉木君!!」
ハハハと笑い
「でもよかったじゃないですか!長山さんは素直じゃないから、このままどうするのか?と思ってたんですよ。瑛大君がこうやって迎えに来てくれたんだし、もう誤魔化すのはやめてくださいよ!」
「…はい」
その後2時間ほど3人で呑みながら話し、解散した。
あと、3日したら瑛大君は帰るけど2ヶ月後には瑛大君と…って
そうだ!私にはクリアしなくちゃいけないことがあったんだった。
「あの、おばさん…、本当にあの…なんていっていいか」
そう。裕子さんのお母さん。
「あら、なに?瑛大のこと?」
電話口では私と久々に話せることが嬉しいようで弾んだ口調だった。
「はい」
「瑛大はそこにいるんでしょ?」
「…はい」
私は瑛大君を見て
「裕子さんになんて言っていいか…、こんな年上で瑛大君の育ての親として出来たかどうかも解らないのに、それなのに瑛大君に恋愛感情を持ってしまいました。本当に…何て言ったらいいか」
「あら、瑛大は彩里ちゃんにプロポーズするって言ってそっちに行ったのよ」
「あ、あの…」
隣で瑛大君は優しそうに私をみつめ
「瑛大君とこの先一緒になりたいと思っています。お許し頂けないでしょうか?」
複雑な心境。おばさんにこんなことを言うことになるなんて。おばさんだって本当は…
「あら、私いつ反対した?」
「…えっ?」
「瑛大が昔から彩里ちゃんのこと好きなの知ってたし、2人が想いあってるなら反対することなんてないわよ!おめでとう!」
「おばさん…」
「あっ、俺変わるよ」
その後は瑛大君が電話口にかわり、おばさんと話をして電話が切れた。
「孫の結婚式に出れるの楽しみにしてるってさ」
数日後、瑛大君は帰っていった。
その後私は引き継ぎやらで会社はドタバタし、あっという間に戻ることとなった。
最後の日に吉木君と2人でお別れ会をして
「本当は俺、長山さんが好きだったんですけどね。幸せになってください」
私は吉木君に感謝をいっぱいして、関西を後にした。
「お帰り」
駅に迎えに来てくれた瑛大君。
今月大学を卒業し、今はおばさんの近くのマンションを借りて2人での生活を始める準備をしてくれてた。
おばさんの家は広いので、それでも…と思ったが、新婚さんの邪魔はしたくないと言ってくれて、近くで借りることにして何かあったらすぐ行けるようにした。
マンションは3DK。瑛大君が探してくれて私が通いやすいように色々考慮してきめてくれた。
「うわー、写メでは何度も見てたけど、こうやって実際みると違うねー」
「どお?実際みて」
「角部屋だし、綺麗だし、築年数も2年以内だし、スーパーも近いし言うことないよ」
「そか、よかった」
そう言って抱き締めてくれる。
「さえちゃん、俺はさえちゃんを愛してるから!だから俺を信じてついてきて」
「…はい!」
半年後、小さい教会で式を挙げた。列席者はおばさんだけだけど、それでも私たちは幸せだった。
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