トラガール

詩織

文字の大きさ
30 / 35

実家へ

しおりを挟む
翌月の週末と祝日を入れて三連休だったので、そこで実家に帰ることにした。

短大で家を出たので戻ってきたのは、14年ぶり?本当に戻ってきてよかったのか未だに不安になる。

「た、ただいま」

玄関をあけて言ってみたが、それであってるのかを疑問だった。

チャイム鳴らしたほうが…、色々考えてしまった。

「おかえり!志奈乃」

母が嬉しそうに出迎えてくれた。

「…うん」

「早く入って」

そう言って、リビングに付いていった。

そこにはお義父さんがいて

「あ、」

なんて言ったらいいんだろ?

「おかえり、志奈乃ちゃん」

優しく微笑んでくれて、言葉に詰まってしまった。

「そんなところに突っ立てないでこっち来なさい」

当たり前だけど二人共歳をとってしまって、月日がたったんだなと実感する。

「お腹すいたでしょ?色々作ったから食べなさい」

座ってすると、どんどんと色んなものが出て来て、テーブルいっぱいになってしまった。

元気だったかとか今どんな仕事してるの?とか近況を少しずつ話しだした。

そんなときに、玄関の開く音がした。

しばらくすると、リビングのドアがあいた。

制服を着た男の子が立っていて

「おかえり。志奈乃よ」

と、母が言う。

この子があの時の…

私が知ってるのは3歳くらいまで

私の顔を見て、本当に軽くだけど頭を下げた。

「こんばんわ」

と言うと

「早く着替えてらっしゃい」

と、言われて自分の部屋に向って行った。

智樹ともきは、今高校2年生よ」

「そうなんだ。大きくなったな」

私にとって唯一の姉弟になるのか。

実感がわかなかった。

着替えてリビングにきて

「はじめまして…だよね。私のこと覚えてないよね」

と言うと

「…覚えてない」

と、返された。まぁ覚えてる方が凄いか。

「じゃ乾杯しよ」

と言って、お義父さんは私にビール飲める?と聞いて注いでくれた。

4人で乾杯して

「やっと4人でこうやって…」

母は少し潤んでた。

「俺が…」

少し小さい声で

「え?」

「俺が居場所なくさせた?」

と言われて、返す言葉が一瞬なかった。

「そ、そんなことないよ!私が我儘だったの」

と言ってビールを飲んだ。

智樹は何か言いたげだったが、それ以上は言わなかった。

よく見ると、髪の毛サラサラだし背も高い。顔を整っててスラッとしてるスタイルだからモテるな。

「お相手の方は海外にいるって聞いたけど」

翔悟さんとの出会い、そして事故で記憶をなくして別れてたこと、またやり直そうとしたことを簡単に話した。

「そう…事故で志奈乃だけ記憶が…」

何とも言えない顔をしてた。

「…うん、でもまぁ何とか結婚する話までになったし」

「そう…、良かったわね」

「向こうのお父さんがあの大臣してた方なのか…、うちは一般家庭だからな。その辺大丈夫なんだろうか?」

それは、私も1番気になってたこと。

「大丈夫だと思うんだけど」

今はこれしか言えなかった。

「志奈乃ちゃんが幸せになることは願ってるよ!でも嫁に行って志奈乃ちゃんが辛い思いするのであれば、家族としてはな…」



反対されてるわけではないけど、やっぱり難しいのかな。

でも、それよりも

「お義父さん、ありがとう。」

「え?」

「だって、こんな何十年も連絡取ってなかったのに家族と言ってくれて」

と言うと

「志奈乃ちゃんが家を出た気持ちは解ってるつもりだから。その後も何もしなかった俺は父親として失格だと思う。でも俺にとっては家族だからな」

優しそうな目で言ってくれて、胸が詰まった。

「志奈乃は、うちの家族よ」

言葉に詰まって何も言えなかった。



ごめんね、お義父さん、お母さん、ずっと連絡しなくって

そんな気持ちで胸がいっぱいだった。


「えっ?うそ!!」

一泊泊まる予定だったので、寝ようとして居間で寝たほうがいい?と聞いたら、2階に私の部屋があった。

高校の時ままで…

「いつ帰ってきてもいいようにね」

と言われた。

ビックリして、まさかこの部屋がこのままあったなんて…

部屋に入って懐かしさで色々みていた。

あー、これ部活のみんなで撮ったときのだ。

これは…、あー坂下の携帯の番号だ。

そそ、大事なものは3番目の引き出しの奥の箱にしまってたんだった。

あと、これって…

と、色々見てると

「…入っていい?」

と、ドアの向こうから声が聞こえた。

智樹君だとすぐわかったので

「うん」

と言った。

しばらくは立っていて

「明日帰るんだよね?」

と言われたので

「うん」

少し間があった。

そして

「父さんも母さんも、ずっと逃げるように出ていったと思ってるようで、自分たちが傷つけたとずっと責めてた時期があった。でも本当は俺が産まれたからだよな?」

「え?」

「俺が産まれたから…」

「違うの、私が…我儘だっの。」

そう。私が結局我儘だったんだ。

「あのときは、君が産まれたことで私は邪魔だと思って逃げてしまった。でもお義父さんやお母さんのこと見てればちゃんと愛情もらってたんだよね。でも怖くって見ることが出来なかった。」

もっとこっちを見てほしい。そのうちにいらないと思われる。そんなことで頭いっぱいで…

「ごめんね、そういう気持ちにさせちゃって」

智樹君は何も悪くないのに、そう思わせちゃったな。

顔を見ると、ビックリした顔をしてて

「…」

何とも言えない顔をしてる

「あ、あの智樹君?」

「出ていった方はいいかもだけど、残った人たちのこと考えてること出来なかった?」

「!?」

言葉が出ない。

智樹君の言うとおりだ。

「俺達、ずっと考えてた。俺は産まれないほうが…て。両親はもっとしっかり見ていればって…、口は出さないけど、それでもどこかに3人共考えてるのはあって、そういうの考えたことある?」

「…」

そうだ。本当に自分勝手すぎるな、私。

「考えたことは正直なかった。3人で仲良く暮らしてるんだろうなって思ってた」

「…今更怒ってもだけど、もっと早く話し合いたかった」

「…うん」

「智樹君、ずっと考えててくれて、そして辛い思いさせてごめん」

そう言って頭を下げた。

そのあと、智樹君は部屋を出てしまった。

確かに彼からしたら、自分が産まれたことでってなるだろう。

子供なりに傷ついて辛かった時期もあっただろうに。

心から申し訳ないと思った。

翌日、朝ご飯が用意されてた。

「…智樹君は?」

「休みの日なのにねー、部活なのよ!近々地区大会があってね、いつも休みの日も朝からなのよ」

「へぇー、何してるの?」

「サッカーよ」

そっかぁー、部活か…

彼にとっては私は会いたくない存在かもな。

食事をしたあと3人でまったりと過ごして、昼ころに帰ることにした。

「これからはちゃんと連絡するから、本当に心配かけてごめんね!」

「いいのよ!元気でさえいてくれれば。今度は2人できてね」

「…うん」

そう言って実家を出た。

両親の感謝と智樹君の最もな意見に複雑な気持ちで家に帰った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

ひとつ屋根の下

瑞原唯子
恋愛
橘財閥の御曹司である遥は、両親のせいで孤児となった少女を引き取った。 純粋に責任を感じてのことだったが、いつしか彼女に惹かれていき――。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える

たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。 そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!

離した手の温もり

橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺
恋愛
ごく普通の家庭で育っている女の子のはずが、実は……。 お兄ちゃんの親友に溺愛されるが、それを煩わしいとさえ感じてる主人公。いつしかそれが当たり前に……。 視線がコロコロ変わります。 なろうでもあげていますが、改稿しつつあげていきますので、なろうとは多少異なる部分もあると思いますが、宜しくお願い致します。

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

処理中です...