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友達の結婚式からの
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「まさか、村上と結婚するとは」
「うん。びっくりしたわー」
高校の友達の結婚式。相手はまさか同級生。
加奈って、大学生の人と付き合ってなかったけ?
それなのに、いつ村上と…
びっくりしたなー
「村上がずっと好きだったみたいよ」
「えっ?そうなの?」
どうやら村上の一途で実ったらしい。
新郎の席には同級生の男子たちが何人かいた。
懐かしい人たちいるな。
その中に、相内誠がいた。
私、瀬田裕子、24歳。人材派遣会社の営業事務を担当している。
相内は密かに好きだった。けど…
「また、他の子と付き合いだしたの?」
「いいじゃん!減るもんじゃないし」
別れたら数時間もしないで次に彼女ができる。女たらしと言われてる。
顔はいい、優しい口調、女性には優しい、そんなのもあって、付き合いたい!って子が山のようにいた。
なぜ、相内を気になったんだろう?と疑問に思うが、本当はそんなヤツじゃないんしゃないか?と思うようになっていた。
それは本当にささいなことなのだが、彼女と別れ話をしてるのをたまたま聞いてしまった。
「なんか、本当に好きなのかなーって、他の子と同じだし」
「そんなことないよ!」
「じゃなんで、キスとかそういうのしないの?」
「えっ?してほしいの?それ以上も?」
「だって付き合ってるならそういうの考えない?」
「じゃ、今からする?」
「…もういい!!」
女の子の方は、行ってしまった。
これって別れ話でいいんだよな?
あっ!
目が合ってしまった。
「なんだ、瀬田か」
「な、なんだって何よ」
別にショックも受けてる感じもない。
「相内ってさー」
「ん?」
「どんな付き合いしてるの?」
「えっ?なに?興味あるわけ?」
まだ付き合ったことない私にはよくわからないが
「いや、よくわからんからきいてる」
「んー、一緒に帰ったり、休みの日遊んだり?」
「ふーん」
「興味なさげだな」
「そうねー、今の彼女みたいにそういうのは?」
「…あっ、そうだな。まぁタイミングよければするが…」
タイミングって、どんなよ!!ってツッコミたくなるが
「お飾りと思われてるなら別にいいかなーって」
「お飾り?」
「そそ、彼氏できました!って友達に自慢したり、そんな感じ?別に俺じゃなくてもいいわけだし」
少しは考えてるのか…てか、でもなんかズレてる気がするが
「相内ってさ、それなりのルックスなんだから安売りしない方がいいんじゃない?くるもの拒まずしなくってもモテるんまから」
「…」
ちょっと面食らった顔をしてた。
「まぁ、余計なこと言ったね!ごめん!それじゃ」
そう言ってわたしは、その場から離れたが
しばらくすると
「最近さ、相内、女と付き合ってないよね」
「えっ、そうなの?」
「男友達とカラオケ行ったり、ゲーセンしたりしてるよ」
へぇー、そうなんだ。
それからしばらくして
「相内振られたらしいよ」
「えっ?」
「他校の子を好きになったとかでこくったら、あんた誰でも付き合うって有名じゃん!って言われたとか」
「そうなんだ」
それからの相内は元気はあるものの1人のときは、どこか寂しい顔をしてた。そんな彼が少しだけ気になってしまった。
「よう」
私たち女性軍のところに来る男性軍達。
披露宴の席は離れてたから終わったら近くにきて話しかけてきた。
「久しぶりだな」
「ほんと、あんたたち変わってないねー」
「えー!男前になったろ?」
「どこがよ!」
と、話が盛り上がっていた。
「よう」
私に向かって声をかけてきた相内
「おす!」
私は適当に返事をした。
「元気か?」
「ボチボチ」
「ふーん」
話が続かねー
「皆二次会行くの?」
「あー、俺はパス!」
「そーなんだ。私も…」
早く帰って見たいテレビがあるとは言えない。録画しとけばいい話なんだが、少しでも早く見たい。
他の面子は行くようなので
「ごめん、私はこれで。ちょっと予定ありで」
「俺もなんだ!またな」
私と相内は皆よりも先に披露宴会場を後にした。
駅に向かって歩いてるが…、何も話さない。元々話す関係でもなかったしな
「俺さ、あれからさ」
「あれから?」
「そそ、瀬田に言われてから」
「えっ、なに?」
「自分を安売りって言われたこと」
「あー、覚えてたんだ」
まさか、覚えてたとは
「それから少し見直してヤローと遊んだりしててそれも楽しくってさ」
「…うん」
「で、少しして俺さ一目惚れして子いて、こくったら誰でも付き合うヤツって言われて振られた」
「そ、なんだ」
まぁ、知ってたけど
「真剣に好きなとき、言っても全く相手されなくって、調子にのってたんだなって思った」
「…そか」
「瀬田はどうなの?」
「えっ?」
「好きなヤツとかいなかったの?」
「周りはさ恋愛とか色々だけど、うちさ母子家庭だからさ、学校終わっても家事したり、バイトしたりでそんな恋愛とか考える余裕なかったよ!でも少しはいいなって思った人いたけどね。でも基本は余裕なかったかな」
「そうだったんだ」
「うん」
「そういえば、瀬田ってあまり遊んだりした記憶ないもんな」
そりゃそうだ。ほぼそういうの参加しなかったもん。
「今は落ち着いたの?」
ちょっとドギマギしつつもきいてみた。
「まぁどうだろ?今はとりあえず仕事楽しくって恋愛後回しになってる」
「ええっ!相内が!?」
「なんだよそれ!?ありえないって顔だな」
「はい、ありえないと思いました」
「なんだかなーもう。でも瀬田の言うとおり安売りしないことにしてるよ!本気でって思う人以外は付き合わんことにしてる」
「…そか」
駅についた。
「じゃ、またな」
まぁ、多分ないだろうけど
「またね」
ホームは違うようなので、改札口を出たらお互いホームに向かおうとした。
「ねぇ、その気になる人って相内だったんだ。今更だけどね!じゃね」
私はホームに駆け出した。
…
…
私、何言ってるんだ!?ポロっと言っちゃったよ!ポロってか、無意識に言ってた!
後ろにいる相内なんか見る余裕なかった。
なにやってるんだか…
でも、まぁ2度と会うことはないだろう。
「瀬田さん、悪い!これさ、A商事まで届けてくれない?」
営業の人に言われ
「えっ?」
「今日中なんだ、ごめん」
「…わかりました」
たまにこん仕事も頼まれる。
もっと早く気づかないのかしら?と思うも、忙しくって頭まわらんのかなーとも思うようにしてる。
受付で
「お世話になっております。TK派遣会社の瀬田と申します。本日中に書類をお届けする約束をしてまして、システム部2課の吉本様をお願いしたいのですが」
「かしこまりました。少々おまちください」
大手の会社との契約はいくつかしてるが、ここは本当にデカイ会社だな。一流企業だもんな。
「瀬田様。申し訳ありません。吉本が不在でして代わりの物が参ります。」
「そうですか。ありがとうございます」
ロビーの椅子に座るよう託されたので、その席に座って待つこと10分。
「大変お待たせしました。吉本は不在でしてかわり…」
!?
振り向くと
「相…内…」
「…瀬田か」
嘘でしょ!?
「あっ、えっと、こちらが書類です。よろしくお願い致します」
相内の前に書類を渡して頭を下げる。
「で、では失礼します」
やばい、やばい!!
早足で会社の出口に向かう。
絶対に会わないと思ったのにーー!!
急いで外にでて、それから少しゆっくり歩いた。
ビックリした。もう…
でも、まぁ滅多にここに来ることないし今後は2度と…
そんなことを思ってたら肩を捕まれた。
ま、まさか…
「はぇーな。逃げ足」
振り向かなくっても解る。なんできたのよ!!
「お前さ、あれはよくないんじゃね?」
「…あ、あれって?」
「あの駅での最後のは」
うっ!!
「あー、忘れて!魔が差したの!じゃあ」
と言って逃げるように駅に向かおうとするも
「それで、そうなんだ!で終わるかよ!」
「いや、できたら終わって欲しいです」
「落ち着け!瀬田!!」
「…」
「俺、瀬田のことそんな風に思ったことないから」
そんなの言わんでも解ってるわよ!
「あー、うん。別にそんな好きとかそんなんじゃ…、だから、うん。」
「安売りとか言われるかもだけど、俺瀬田と友達になりたい」
「…な、なに?」
「連絡先も知らないじゃん!だから友達になりたい」
それって何!?どういうこと?
「瀬田に人として興味がある。だから友達になりたい」
「…」
「友達なってくれね?」
「…解った」
そう言って連絡先を交換する。
「サンキュー!じゃ瀬田、またな!」
な、な、なんなのよ!!もう!!
それから数日して相内から連絡がきた。
『今度さ飲みにいかね?』
これって…、まぁ友達としてなのは解ってるけど、まさか続くとは…
結局断ることも出来ず、飲みに行く約束をした。
「よう!」
「おす!」
「じゃ、いくか」
気取らない、大衆居酒屋みたいなところに入った。
生を2つ注文し乾杯をする。
「やっぱ、うめーな!!」
「そ、そうね」
確かに生はうまい!
「もしかして、まだ何か考えてる?」
「まぁ、なんていうの?相内よくわからんからさ」
って言うと笑いだして
「それはこっちの台詞。あれだけ知ってて俺を気になったとかってありえなくね?」
「…確かに」
それはごもっともな意見。
「だからちょっと瀬田に興味もった。どんなヤツだろう?って」
「私楽しくないよ!高校出てから今の仕事してるし、休みの日は家のことでいそがしいし、あまり友達と出歩かないから」
「えっ?なに?一人暮らし?」
「いや、母と暮らしてるけど1年前からからだ壊して」
「そっか…、大変だな」
「だから、そこまで遊んだりとか出掛けたりとかないし、話題あまりないよ」
「別にそんなの求めてないよ!お母さんは大丈夫なの?」
「あ、うん。少しはパートで仕事できるようになって、少しずつよくなってるよ!でも休みの日は休ませてあげたくって」
「偉いな!」
「そんなことないよ!やる人いないだけ」
「瀬田ってそういうの顔に出さないからさ、知らないことだらけだな」
「私だって相内のこと知らないよ!まぁ女とっかえ、ひっかえ!ってのは知ってるけど」
「…お前な。まぁそんくらいしか印象ないもんな」
それから、相内の話が始まって
「大学は意外にまじめに取り組んだんだ。サークルも入ってたけど、色目使う女より男達と旅行行ったりしてたよ!海外旅行とか結構して、あちこちの国に行くのが楽しかった」
「へぇー」
「まぁ、社会人になったらそんな海外旅行行けないけどな。スゲー充実してた」
「そっかぁー、よかったね。私パスポートすら持ったことないよ!」
「あー、そうか。瀬田は行きたい国とかないの?」
「…そうだな。あっ!えっと…サントリーニ?白い家の国」
「あー、綺麗だなあそこは」
「テレビで見てさ、こんな凄いところあるんだって思っちゃった。いつか行ってみたいなーくらいかな。」
「そか」
「行ったことないなー、そこは。でもスゲー綺麗らしいから」
「…うん。」
その後もお互いのことを少しずつ話してその日は解散した。
友達としてならいっか!
別に今好きとか言ったわけじゃないし。
そんな感じでその後も相内とは飲み友達として会うことになった。
それからしばらくして
「大丈夫ですか?」
私と相内が飲んだ帰りに駅に向かってる途中、紙袋が切れて中身が落ちてしまい、アタフタしてる高齢の男性がいた。
「あっ、これ、よかったら使ってください」
いつも入れてるマイバック。
「あ、いえ、そんな悪いです」
「全然ですよ!相内も手伝って」
後ろでボーとしてる相内に一言いって
「ああ、ごめん」
と、すぐ手伝ってくれた。
「すいません。助かりました」
「いえ、よかったです。では」
「あ、あの…、なにかお礼を」
「そんなのいいですよ!たいしたことしてません。では」
そう言って駅に向かった。
「…すげーな。瀬田の行動力」
「えっ?」
「普段はなんて言うんだろ?内気な感じに見えるんだが、いざとなると凄いなって」
「えっ?それって陰キャ系女子ってこと?」
と言うと
「ああ、まぁ…」
そう思ってても否定しろ!っと思ってしまう。
「でも、瀬田のいいところ見っけたって感じ」
「…」
褒めてるのかけなしてるのかわからん!
「えっ!?またですか?」
またA商事に書類を持っていくように頼まれた。
「俺でもいいんだけどさ」
えっ?それなら自分で行ってよ!
「先方から指名されてて」
「へ?」
「前回のとき何かしたの?」
な、な、な、なんてぇー!?
意味わからないまま、私はまた書類を届けに向かった。
今度は吉本さんはいたようで
「あなたが瀬田さんね」
と、興味津々でみる。
「はぁ…」
「俺は相内の1個先輩なんだが、あいつさあの容姿で女っけ全然ないんよ!女に興味ないのかと思ったが、最近瀬田さんと偶然再会したとかで。たまに飲みに行ってるって聞いたけど」
「えっ!?女っけないんですか?」
本当に仕事楽しくって恋愛後回しにだった?のか。
「えっ?そこで驚く?」
「あ、いえ、失礼しました。今はそうですね。たまに飲みに行く飲み友達ですね。私とはそんな関係ですので」
と言うと
「へえー、まぁあいつも言ってたけどね。とりあえず瀬田さん見れてよかったよ!」
な、なんだ!?
結局は吉本さんが私を見たかった?で終わってしまいました。
それからしばらくたってからのこと
「え!そうなの?」
母が実家に帰るという。
祖母は凄い元気で、姉夫婦が近くに住んでいて農家を手伝おうと前々から考えていたようだ。
「裕子にいい人でも出来たらと思ったんだけどね。なんか最近変わった気がしたから、いい人できたの?」
!?
いやいや、それはないが
でも、母が言うように実家に帰った方がいいかもしれない。
祖母も元気だし、近所におばさんたちもいる。何かあってもすぐ対応できるし、それに空気も綺麗だし、こっちみたいにゴミゴミしてないし…
「出来たら紹介してほしいわね。安心させて行きたいし」
「…」
「…というわけで、恋人代行をお願いしたいです!」
相内に頭を下げお願いする。
他に頼めるヤツいないし、多分飲み友達が出来たことで気持ちが和らいだのもあって変わったんだとは思うが
「解った。俺でいいなら」
と、引き受けてくれた。
「まぁ、こんな素敵な方が?」
「裕子さんとお付き合いさせて頂いてます相内誠です。高校の同級生で最近再会しましてそれから友達からとしてお付き合いをさせて頂いてます」
「まぁ、そうなんですね。裕子は男っけが全くなくで心配してたんですよ!嬉しいわ!こんなイケメンの方に…」
母親からイケメンって…
「それで、今後は?結婚とかは?」
「そ、それは、まだ…」
「あら、そうなの?相内さんも?」
「そうですね。すぐは考えてませんが、僕がまだ社会に出て半人前ですのでもう少し安定感したらと思ってます。」
「じゃあ、考えていらっしゃるのね?」
な、なに余計なことを…
「まぁ、先のことだし、まだ解らないわよ」
そう言って上手くまとめるも、やっぱり母親として心配なのか、根掘り葉掘りきかれた。
「ごめんね。まさかあんなに食いつくとは…」
「いや、子供のことを心配する親なんていないよ!」
「うん。ごめん。でもこれで少しは安心して実家に行くみたいだし、助かったよ」
「そか…、でお前はどうするの?」
「そうね、あのマンションで1人で住むのもなー、ちょっと広すぎるし、売って引っ越すかなーと」
元々は父が生存してたときに購入したマンション。
ローンはないが、3LDKは広すぎる。
「じゃさ、俺と住むのは?」
「…はっ?」
何いってるんだ!?
「あんた仮にも…まぁ私じゃ女に見えないのかもだけど、それでも私と住むのは抵抗ないの?」
「何いってるの?抵抗も何も俺は瀬田を女としてみてるよ」
「へ?」
「はじめは全く思ってなかったよ!けど、これだけ会ってりゃその気あるって解るだろ!」
「解らないよ!友達として会ってたんだから」
「確かに友達として会ってるよ!でもそれよりも瀬田が俺にないところとか、いっぱいみれてどんどん惚れた」
「あ、あのね…、そんな冗談…」
「本気だが」
「!?」
「お前、いいヤツすぎ。内気なくせに相手のこと自分より先に考える。袋破けてすぐに自分のバッグあげたり、電車では率先してゆずるし、子供が泣いてるのみると何かあげたり」
「そんなの、普通じゃん」
「そんな普通、できねーよ」
「でも、だからって私わかるでしょ?陰キャ女子、見た目も別に可愛いとか綺麗とかでない、オシャレ全然してない!恋愛なんか素人同然!どうみても相内からしたら役不足よ!」
「自分で言うかよ!」
「言うわよ!高校の時だって、可愛い子ばかりと付き合ってたじゃん!その後だって、まぁ知らないけど相内にあう子と付き合ってたじゃないの?」
「…あのな」
「私は、地味な女なの自覚してるし、男との出会もないと思ってる。結婚したければ、お見合い相談とかそんなもので結婚するんだなって思ってるわよ」
「そこまで悲観的に…」
「悲観的じゃないわよ!本心よ。私には出会いなんてないもん。こんな見た目だからね、恋愛ってのもなかなか厳しいしね」
「…だから、俺が!」
「ボランティアか何かのつもり?大丈夫よ!」
もう、相内ったら何考えてるのよ!
「じゃ、おれが本気だって解れば納得する?」
「えっ?」
そんなのどうやって本気って解るのよ
相内がそんなこと言うなんて初めてだったから躊躇したけど、元々私に対してその気なかったんだし、それに飲み友達みたいな関係だったし、どう考えても私にそんな感情があるとは思えなかった。
あっ、飲みのお誘い。
LINEがきてみると、ん?珍しいな。なんか改まった店なのかな?
なんか凄い名前の店。そのときネットで見ればよかったけど、そこまでみようとは思わなかった。
あのことがあっての初めての飲みなんでどうしようか悩んだが、まぁそこまで気にすることないかな。
と、仕事を終わりそのまま店に行った。
こ、こ、ここって料亭!?
なんでまた、こんなところに…
どうしよう?とりあえず入る?か?
「すいません、えっと相内って名前で予約してると思うんですが」
「伺っております。お部屋にご案内致します」
ちょ、ちょっとー!なんの企み!?
「失礼します。お連れ様をお連れしました」
そう言ってお部屋に案内されると
「な、な、」
「よう!」
流石におす!と答えられん!
「はじめまして!父です」
その後、お母さん、兄弟までいて紹介された。
「俺が本気で付き合いたいと思ってる瀬田裕子さん」
「ちょ、ちょっと」
「俺が色々遊んでるの知ってるから、本気だと言っても信じて貰えなくって、だから家族を巻き込んで協力してもらった」
「あ、あのね、相内、あんた…」
「ご覧の通り、しょうもない息子です。ですが、貴方に対する気持ちは真剣のようで、我々に頭を下げて頼まれましてな。こんなことをお願いするなんて初めてだからな」
「そこまで真剣に思ってる人を私も一目見たくてね」
「いや、あの…」
「私は、息子には政略結婚とか考えてないので、気になさらず」
「…政略?」
な、な、に?どういうこと!?
「ちょっと、相内って、一体…」
「親父がA商事の社長だからさ」
「ええーーーー!!」
「あら、そんなことも言ってなかったの?」
「そういうことで媚売るやつじゃないが、まぁうん。そういうことだから」
そういうことだからって…
「む、無理無理!!私一般庶民の高卒です!」
というと
「おもしれー」
多分お兄さん?だろう…。面白がってみてる。
「相内、あんた、こんな凄い家柄だったの?どっちにしても私じゃ無理よ!ちゃんとしっかりした家柄の人と」
「うちの家族は反対してないけど」
「えっ!?」
「学歴とか家柄とか関係ないわよ!お互いが気に入ってるならそれでいいじゃない」
いや、次元が違うって!
「紹介したってことは、勿論先も考えてるんだろ?」
「ああ」
先ってもしかして…結…
いや、怖くて考えられない
「ということで、家族まで紹介して冗談ってことないだろ?」
「…」
「とりあえず、料理くるから堪能しよう」
恐ろしい!なんでまたこんなことに…
あっ、もしかしてこのお兄様はA商事の…
「あー、そそ兄貴は取締役やってる」
「…」
む、無理!!
そのあと、話しは我が家のことを色々聞かれた
「あら、そんなに若くしてお父さんが…、それは大変でしたね」
「こいつ、母親が仕事をしてるから家事もしてバイトで学費少しでも…って頑張ってたらしい。だから高校の時あまり遊んだりした記憶ない。」
「えらいわね!高校生といったら、友達とかと色々遊びたいから」
「まぁ、俺の中では印象薄かったな」
…
ハッキリ言い過ぎ
「でもまぁ、今となってはそういう優しいところが俺にとっては見習うことろだよ」
今度は褒めるのかい!!
「息子はこれだけ貴方に真剣に考えています。少しだけでも考えて頂けたら我々家族としても有りがたいです」
「…」
食事はきっと美味しいんだろう…
頂いたが、味を感じる余裕はなかった。
気品のある家族と別れて
「ちょっと、相内!!」
「ん?」
「どういうことよ!」
「いやさ、公衆の前でオープンに言おうかとも思ったが、やっぱり俺が恥をかくステータスが一番いいのかなーと思ってさ、それなら家族に言ったらと思ったんだがな」
「そ、そんな…」
「家族に紹介したのも初めてだし、こんな風に諦めず落とそうとするのも初めてだし」
「で、でも、仕事のが楽しいんでしょ?」
「ああ、楽しいよ!でも恋愛もして仕事もしては充実あるな」
調子いいな。
「とりあえず、昔みたいに女とっかえひっかえはしないし、俺一途やで!浮気はしない」
本当かよ!
「とりあえず」
ドン!!
後ろに壁があって…、これって壁ドンですか!?
「絶対!!落とすから!」
…
…
…
それからはしばらくは自分にバリアをはり躊躇したものの相内の攻撃に完敗し、わたしはまんまと罠にはまってまった。
キモいくらいに、溺愛されてます。
「うん。びっくりしたわー」
高校の友達の結婚式。相手はまさか同級生。
加奈って、大学生の人と付き合ってなかったけ?
それなのに、いつ村上と…
びっくりしたなー
「村上がずっと好きだったみたいよ」
「えっ?そうなの?」
どうやら村上の一途で実ったらしい。
新郎の席には同級生の男子たちが何人かいた。
懐かしい人たちいるな。
その中に、相内誠がいた。
私、瀬田裕子、24歳。人材派遣会社の営業事務を担当している。
相内は密かに好きだった。けど…
「また、他の子と付き合いだしたの?」
「いいじゃん!減るもんじゃないし」
別れたら数時間もしないで次に彼女ができる。女たらしと言われてる。
顔はいい、優しい口調、女性には優しい、そんなのもあって、付き合いたい!って子が山のようにいた。
なぜ、相内を気になったんだろう?と疑問に思うが、本当はそんなヤツじゃないんしゃないか?と思うようになっていた。
それは本当にささいなことなのだが、彼女と別れ話をしてるのをたまたま聞いてしまった。
「なんか、本当に好きなのかなーって、他の子と同じだし」
「そんなことないよ!」
「じゃなんで、キスとかそういうのしないの?」
「えっ?してほしいの?それ以上も?」
「だって付き合ってるならそういうの考えない?」
「じゃ、今からする?」
「…もういい!!」
女の子の方は、行ってしまった。
これって別れ話でいいんだよな?
あっ!
目が合ってしまった。
「なんだ、瀬田か」
「な、なんだって何よ」
別にショックも受けてる感じもない。
「相内ってさー」
「ん?」
「どんな付き合いしてるの?」
「えっ?なに?興味あるわけ?」
まだ付き合ったことない私にはよくわからないが
「いや、よくわからんからきいてる」
「んー、一緒に帰ったり、休みの日遊んだり?」
「ふーん」
「興味なさげだな」
「そうねー、今の彼女みたいにそういうのは?」
「…あっ、そうだな。まぁタイミングよければするが…」
タイミングって、どんなよ!!ってツッコミたくなるが
「お飾りと思われてるなら別にいいかなーって」
「お飾り?」
「そそ、彼氏できました!って友達に自慢したり、そんな感じ?別に俺じゃなくてもいいわけだし」
少しは考えてるのか…てか、でもなんかズレてる気がするが
「相内ってさ、それなりのルックスなんだから安売りしない方がいいんじゃない?くるもの拒まずしなくってもモテるんまから」
「…」
ちょっと面食らった顔をしてた。
「まぁ、余計なこと言ったね!ごめん!それじゃ」
そう言ってわたしは、その場から離れたが
しばらくすると
「最近さ、相内、女と付き合ってないよね」
「えっ、そうなの?」
「男友達とカラオケ行ったり、ゲーセンしたりしてるよ」
へぇー、そうなんだ。
それからしばらくして
「相内振られたらしいよ」
「えっ?」
「他校の子を好きになったとかでこくったら、あんた誰でも付き合うって有名じゃん!って言われたとか」
「そうなんだ」
それからの相内は元気はあるものの1人のときは、どこか寂しい顔をしてた。そんな彼が少しだけ気になってしまった。
「よう」
私たち女性軍のところに来る男性軍達。
披露宴の席は離れてたから終わったら近くにきて話しかけてきた。
「久しぶりだな」
「ほんと、あんたたち変わってないねー」
「えー!男前になったろ?」
「どこがよ!」
と、話が盛り上がっていた。
「よう」
私に向かって声をかけてきた相内
「おす!」
私は適当に返事をした。
「元気か?」
「ボチボチ」
「ふーん」
話が続かねー
「皆二次会行くの?」
「あー、俺はパス!」
「そーなんだ。私も…」
早く帰って見たいテレビがあるとは言えない。録画しとけばいい話なんだが、少しでも早く見たい。
他の面子は行くようなので
「ごめん、私はこれで。ちょっと予定ありで」
「俺もなんだ!またな」
私と相内は皆よりも先に披露宴会場を後にした。
駅に向かって歩いてるが…、何も話さない。元々話す関係でもなかったしな
「俺さ、あれからさ」
「あれから?」
「そそ、瀬田に言われてから」
「えっ、なに?」
「自分を安売りって言われたこと」
「あー、覚えてたんだ」
まさか、覚えてたとは
「それから少し見直してヤローと遊んだりしててそれも楽しくってさ」
「…うん」
「で、少しして俺さ一目惚れして子いて、こくったら誰でも付き合うヤツって言われて振られた」
「そ、なんだ」
まぁ、知ってたけど
「真剣に好きなとき、言っても全く相手されなくって、調子にのってたんだなって思った」
「…そか」
「瀬田はどうなの?」
「えっ?」
「好きなヤツとかいなかったの?」
「周りはさ恋愛とか色々だけど、うちさ母子家庭だからさ、学校終わっても家事したり、バイトしたりでそんな恋愛とか考える余裕なかったよ!でも少しはいいなって思った人いたけどね。でも基本は余裕なかったかな」
「そうだったんだ」
「うん」
「そういえば、瀬田ってあまり遊んだりした記憶ないもんな」
そりゃそうだ。ほぼそういうの参加しなかったもん。
「今は落ち着いたの?」
ちょっとドギマギしつつもきいてみた。
「まぁどうだろ?今はとりあえず仕事楽しくって恋愛後回しになってる」
「ええっ!相内が!?」
「なんだよそれ!?ありえないって顔だな」
「はい、ありえないと思いました」
「なんだかなーもう。でも瀬田の言うとおり安売りしないことにしてるよ!本気でって思う人以外は付き合わんことにしてる」
「…そか」
駅についた。
「じゃ、またな」
まぁ、多分ないだろうけど
「またね」
ホームは違うようなので、改札口を出たらお互いホームに向かおうとした。
「ねぇ、その気になる人って相内だったんだ。今更だけどね!じゃね」
私はホームに駆け出した。
…
…
私、何言ってるんだ!?ポロっと言っちゃったよ!ポロってか、無意識に言ってた!
後ろにいる相内なんか見る余裕なかった。
なにやってるんだか…
でも、まぁ2度と会うことはないだろう。
「瀬田さん、悪い!これさ、A商事まで届けてくれない?」
営業の人に言われ
「えっ?」
「今日中なんだ、ごめん」
「…わかりました」
たまにこん仕事も頼まれる。
もっと早く気づかないのかしら?と思うも、忙しくって頭まわらんのかなーとも思うようにしてる。
受付で
「お世話になっております。TK派遣会社の瀬田と申します。本日中に書類をお届けする約束をしてまして、システム部2課の吉本様をお願いしたいのですが」
「かしこまりました。少々おまちください」
大手の会社との契約はいくつかしてるが、ここは本当にデカイ会社だな。一流企業だもんな。
「瀬田様。申し訳ありません。吉本が不在でして代わりの物が参ります。」
「そうですか。ありがとうございます」
ロビーの椅子に座るよう託されたので、その席に座って待つこと10分。
「大変お待たせしました。吉本は不在でしてかわり…」
!?
振り向くと
「相…内…」
「…瀬田か」
嘘でしょ!?
「あっ、えっと、こちらが書類です。よろしくお願い致します」
相内の前に書類を渡して頭を下げる。
「で、では失礼します」
やばい、やばい!!
早足で会社の出口に向かう。
絶対に会わないと思ったのにーー!!
急いで外にでて、それから少しゆっくり歩いた。
ビックリした。もう…
でも、まぁ滅多にここに来ることないし今後は2度と…
そんなことを思ってたら肩を捕まれた。
ま、まさか…
「はぇーな。逃げ足」
振り向かなくっても解る。なんできたのよ!!
「お前さ、あれはよくないんじゃね?」
「…あ、あれって?」
「あの駅での最後のは」
うっ!!
「あー、忘れて!魔が差したの!じゃあ」
と言って逃げるように駅に向かおうとするも
「それで、そうなんだ!で終わるかよ!」
「いや、できたら終わって欲しいです」
「落ち着け!瀬田!!」
「…」
「俺、瀬田のことそんな風に思ったことないから」
そんなの言わんでも解ってるわよ!
「あー、うん。別にそんな好きとかそんなんじゃ…、だから、うん。」
「安売りとか言われるかもだけど、俺瀬田と友達になりたい」
「…な、なに?」
「連絡先も知らないじゃん!だから友達になりたい」
それって何!?どういうこと?
「瀬田に人として興味がある。だから友達になりたい」
「…」
「友達なってくれね?」
「…解った」
そう言って連絡先を交換する。
「サンキュー!じゃ瀬田、またな!」
な、な、なんなのよ!!もう!!
それから数日して相内から連絡がきた。
『今度さ飲みにいかね?』
これって…、まぁ友達としてなのは解ってるけど、まさか続くとは…
結局断ることも出来ず、飲みに行く約束をした。
「よう!」
「おす!」
「じゃ、いくか」
気取らない、大衆居酒屋みたいなところに入った。
生を2つ注文し乾杯をする。
「やっぱ、うめーな!!」
「そ、そうね」
確かに生はうまい!
「もしかして、まだ何か考えてる?」
「まぁ、なんていうの?相内よくわからんからさ」
って言うと笑いだして
「それはこっちの台詞。あれだけ知ってて俺を気になったとかってありえなくね?」
「…確かに」
それはごもっともな意見。
「だからちょっと瀬田に興味もった。どんなヤツだろう?って」
「私楽しくないよ!高校出てから今の仕事してるし、休みの日は家のことでいそがしいし、あまり友達と出歩かないから」
「えっ?なに?一人暮らし?」
「いや、母と暮らしてるけど1年前からからだ壊して」
「そっか…、大変だな」
「だから、そこまで遊んだりとか出掛けたりとかないし、話題あまりないよ」
「別にそんなの求めてないよ!お母さんは大丈夫なの?」
「あ、うん。少しはパートで仕事できるようになって、少しずつよくなってるよ!でも休みの日は休ませてあげたくって」
「偉いな!」
「そんなことないよ!やる人いないだけ」
「瀬田ってそういうの顔に出さないからさ、知らないことだらけだな」
「私だって相内のこと知らないよ!まぁ女とっかえ、ひっかえ!ってのは知ってるけど」
「…お前な。まぁそんくらいしか印象ないもんな」
それから、相内の話が始まって
「大学は意外にまじめに取り組んだんだ。サークルも入ってたけど、色目使う女より男達と旅行行ったりしてたよ!海外旅行とか結構して、あちこちの国に行くのが楽しかった」
「へぇー」
「まぁ、社会人になったらそんな海外旅行行けないけどな。スゲー充実してた」
「そっかぁー、よかったね。私パスポートすら持ったことないよ!」
「あー、そうか。瀬田は行きたい国とかないの?」
「…そうだな。あっ!えっと…サントリーニ?白い家の国」
「あー、綺麗だなあそこは」
「テレビで見てさ、こんな凄いところあるんだって思っちゃった。いつか行ってみたいなーくらいかな。」
「そか」
「行ったことないなー、そこは。でもスゲー綺麗らしいから」
「…うん。」
その後もお互いのことを少しずつ話してその日は解散した。
友達としてならいっか!
別に今好きとか言ったわけじゃないし。
そんな感じでその後も相内とは飲み友達として会うことになった。
それからしばらくして
「大丈夫ですか?」
私と相内が飲んだ帰りに駅に向かってる途中、紙袋が切れて中身が落ちてしまい、アタフタしてる高齢の男性がいた。
「あっ、これ、よかったら使ってください」
いつも入れてるマイバック。
「あ、いえ、そんな悪いです」
「全然ですよ!相内も手伝って」
後ろでボーとしてる相内に一言いって
「ああ、ごめん」
と、すぐ手伝ってくれた。
「すいません。助かりました」
「いえ、よかったです。では」
「あ、あの…、なにかお礼を」
「そんなのいいですよ!たいしたことしてません。では」
そう言って駅に向かった。
「…すげーな。瀬田の行動力」
「えっ?」
「普段はなんて言うんだろ?内気な感じに見えるんだが、いざとなると凄いなって」
「えっ?それって陰キャ系女子ってこと?」
と言うと
「ああ、まぁ…」
そう思ってても否定しろ!っと思ってしまう。
「でも、瀬田のいいところ見っけたって感じ」
「…」
褒めてるのかけなしてるのかわからん!
「えっ!?またですか?」
またA商事に書類を持っていくように頼まれた。
「俺でもいいんだけどさ」
えっ?それなら自分で行ってよ!
「先方から指名されてて」
「へ?」
「前回のとき何かしたの?」
な、な、な、なんてぇー!?
意味わからないまま、私はまた書類を届けに向かった。
今度は吉本さんはいたようで
「あなたが瀬田さんね」
と、興味津々でみる。
「はぁ…」
「俺は相内の1個先輩なんだが、あいつさあの容姿で女っけ全然ないんよ!女に興味ないのかと思ったが、最近瀬田さんと偶然再会したとかで。たまに飲みに行ってるって聞いたけど」
「えっ!?女っけないんですか?」
本当に仕事楽しくって恋愛後回しにだった?のか。
「えっ?そこで驚く?」
「あ、いえ、失礼しました。今はそうですね。たまに飲みに行く飲み友達ですね。私とはそんな関係ですので」
と言うと
「へえー、まぁあいつも言ってたけどね。とりあえず瀬田さん見れてよかったよ!」
な、なんだ!?
結局は吉本さんが私を見たかった?で終わってしまいました。
それからしばらくたってからのこと
「え!そうなの?」
母が実家に帰るという。
祖母は凄い元気で、姉夫婦が近くに住んでいて農家を手伝おうと前々から考えていたようだ。
「裕子にいい人でも出来たらと思ったんだけどね。なんか最近変わった気がしたから、いい人できたの?」
!?
いやいや、それはないが
でも、母が言うように実家に帰った方がいいかもしれない。
祖母も元気だし、近所におばさんたちもいる。何かあってもすぐ対応できるし、それに空気も綺麗だし、こっちみたいにゴミゴミしてないし…
「出来たら紹介してほしいわね。安心させて行きたいし」
「…」
「…というわけで、恋人代行をお願いしたいです!」
相内に頭を下げお願いする。
他に頼めるヤツいないし、多分飲み友達が出来たことで気持ちが和らいだのもあって変わったんだとは思うが
「解った。俺でいいなら」
と、引き受けてくれた。
「まぁ、こんな素敵な方が?」
「裕子さんとお付き合いさせて頂いてます相内誠です。高校の同級生で最近再会しましてそれから友達からとしてお付き合いをさせて頂いてます」
「まぁ、そうなんですね。裕子は男っけが全くなくで心配してたんですよ!嬉しいわ!こんなイケメンの方に…」
母親からイケメンって…
「それで、今後は?結婚とかは?」
「そ、それは、まだ…」
「あら、そうなの?相内さんも?」
「そうですね。すぐは考えてませんが、僕がまだ社会に出て半人前ですのでもう少し安定感したらと思ってます。」
「じゃあ、考えていらっしゃるのね?」
な、なに余計なことを…
「まぁ、先のことだし、まだ解らないわよ」
そう言って上手くまとめるも、やっぱり母親として心配なのか、根掘り葉掘りきかれた。
「ごめんね。まさかあんなに食いつくとは…」
「いや、子供のことを心配する親なんていないよ!」
「うん。ごめん。でもこれで少しは安心して実家に行くみたいだし、助かったよ」
「そか…、でお前はどうするの?」
「そうね、あのマンションで1人で住むのもなー、ちょっと広すぎるし、売って引っ越すかなーと」
元々は父が生存してたときに購入したマンション。
ローンはないが、3LDKは広すぎる。
「じゃさ、俺と住むのは?」
「…はっ?」
何いってるんだ!?
「あんた仮にも…まぁ私じゃ女に見えないのかもだけど、それでも私と住むのは抵抗ないの?」
「何いってるの?抵抗も何も俺は瀬田を女としてみてるよ」
「へ?」
「はじめは全く思ってなかったよ!けど、これだけ会ってりゃその気あるって解るだろ!」
「解らないよ!友達として会ってたんだから」
「確かに友達として会ってるよ!でもそれよりも瀬田が俺にないところとか、いっぱいみれてどんどん惚れた」
「あ、あのね…、そんな冗談…」
「本気だが」
「!?」
「お前、いいヤツすぎ。内気なくせに相手のこと自分より先に考える。袋破けてすぐに自分のバッグあげたり、電車では率先してゆずるし、子供が泣いてるのみると何かあげたり」
「そんなの、普通じゃん」
「そんな普通、できねーよ」
「でも、だからって私わかるでしょ?陰キャ女子、見た目も別に可愛いとか綺麗とかでない、オシャレ全然してない!恋愛なんか素人同然!どうみても相内からしたら役不足よ!」
「自分で言うかよ!」
「言うわよ!高校の時だって、可愛い子ばかりと付き合ってたじゃん!その後だって、まぁ知らないけど相内にあう子と付き合ってたじゃないの?」
「…あのな」
「私は、地味な女なの自覚してるし、男との出会もないと思ってる。結婚したければ、お見合い相談とかそんなもので結婚するんだなって思ってるわよ」
「そこまで悲観的に…」
「悲観的じゃないわよ!本心よ。私には出会いなんてないもん。こんな見た目だからね、恋愛ってのもなかなか厳しいしね」
「…だから、俺が!」
「ボランティアか何かのつもり?大丈夫よ!」
もう、相内ったら何考えてるのよ!
「じゃ、おれが本気だって解れば納得する?」
「えっ?」
そんなのどうやって本気って解るのよ
相内がそんなこと言うなんて初めてだったから躊躇したけど、元々私に対してその気なかったんだし、それに飲み友達みたいな関係だったし、どう考えても私にそんな感情があるとは思えなかった。
あっ、飲みのお誘い。
LINEがきてみると、ん?珍しいな。なんか改まった店なのかな?
なんか凄い名前の店。そのときネットで見ればよかったけど、そこまでみようとは思わなかった。
あのことがあっての初めての飲みなんでどうしようか悩んだが、まぁそこまで気にすることないかな。
と、仕事を終わりそのまま店に行った。
こ、こ、ここって料亭!?
なんでまた、こんなところに…
どうしよう?とりあえず入る?か?
「すいません、えっと相内って名前で予約してると思うんですが」
「伺っております。お部屋にご案内致します」
ちょ、ちょっとー!なんの企み!?
「失礼します。お連れ様をお連れしました」
そう言ってお部屋に案内されると
「な、な、」
「よう!」
流石におす!と答えられん!
「はじめまして!父です」
その後、お母さん、兄弟までいて紹介された。
「俺が本気で付き合いたいと思ってる瀬田裕子さん」
「ちょ、ちょっと」
「俺が色々遊んでるの知ってるから、本気だと言っても信じて貰えなくって、だから家族を巻き込んで協力してもらった」
「あ、あのね、相内、あんた…」
「ご覧の通り、しょうもない息子です。ですが、貴方に対する気持ちは真剣のようで、我々に頭を下げて頼まれましてな。こんなことをお願いするなんて初めてだからな」
「そこまで真剣に思ってる人を私も一目見たくてね」
「いや、あの…」
「私は、息子には政略結婚とか考えてないので、気になさらず」
「…政略?」
な、な、に?どういうこと!?
「ちょっと、相内って、一体…」
「親父がA商事の社長だからさ」
「ええーーーー!!」
「あら、そんなことも言ってなかったの?」
「そういうことで媚売るやつじゃないが、まぁうん。そういうことだから」
そういうことだからって…
「む、無理無理!!私一般庶民の高卒です!」
というと
「おもしれー」
多分お兄さん?だろう…。面白がってみてる。
「相内、あんた、こんな凄い家柄だったの?どっちにしても私じゃ無理よ!ちゃんとしっかりした家柄の人と」
「うちの家族は反対してないけど」
「えっ!?」
「学歴とか家柄とか関係ないわよ!お互いが気に入ってるならそれでいいじゃない」
いや、次元が違うって!
「紹介したってことは、勿論先も考えてるんだろ?」
「ああ」
先ってもしかして…結…
いや、怖くて考えられない
「ということで、家族まで紹介して冗談ってことないだろ?」
「…」
「とりあえず、料理くるから堪能しよう」
恐ろしい!なんでまたこんなことに…
あっ、もしかしてこのお兄様はA商事の…
「あー、そそ兄貴は取締役やってる」
「…」
む、無理!!
そのあと、話しは我が家のことを色々聞かれた
「あら、そんなに若くしてお父さんが…、それは大変でしたね」
「こいつ、母親が仕事をしてるから家事もしてバイトで学費少しでも…って頑張ってたらしい。だから高校の時あまり遊んだりした記憶ない。」
「えらいわね!高校生といったら、友達とかと色々遊びたいから」
「まぁ、俺の中では印象薄かったな」
…
ハッキリ言い過ぎ
「でもまぁ、今となってはそういう優しいところが俺にとっては見習うことろだよ」
今度は褒めるのかい!!
「息子はこれだけ貴方に真剣に考えています。少しだけでも考えて頂けたら我々家族としても有りがたいです」
「…」
食事はきっと美味しいんだろう…
頂いたが、味を感じる余裕はなかった。
気品のある家族と別れて
「ちょっと、相内!!」
「ん?」
「どういうことよ!」
「いやさ、公衆の前でオープンに言おうかとも思ったが、やっぱり俺が恥をかくステータスが一番いいのかなーと思ってさ、それなら家族に言ったらと思ったんだがな」
「そ、そんな…」
「家族に紹介したのも初めてだし、こんな風に諦めず落とそうとするのも初めてだし」
「で、でも、仕事のが楽しいんでしょ?」
「ああ、楽しいよ!でも恋愛もして仕事もしては充実あるな」
調子いいな。
「とりあえず、昔みたいに女とっかえひっかえはしないし、俺一途やで!浮気はしない」
本当かよ!
「とりあえず」
ドン!!
後ろに壁があって…、これって壁ドンですか!?
「絶対!!落とすから!」
…
…
…
それからはしばらくは自分にバリアをはり躊躇したものの相内の攻撃に完敗し、わたしはまんまと罠にはまってまった。
キモいくらいに、溺愛されてます。
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