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最終章:その寵愛、真実につき
25.闇夜の招待
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「まぁ、でも実際問題出来ることなんてないのよねぇ」
こんちゃんと別れてお借りしている客室へ向かう。……とは言っても、万一の時のために隣の部屋を借りているので別れたのは数秒前だったりするのだが。
“そもそもこんな出し抜いたり派閥争いみたいなことはただの女子大生である私にはどうしてもピンと来ないし”
怪我までさせるのはやりすぎじゃないかと思うが、その考え自体も『人間だから』の感覚であってあやかしたちには当たり前の日常なのかもしれない。
それらがわからないにも関わらず首を突っ込み余計な事を言うのは出来れば避けたいのだが……
「でもやっぱり、こんちゃんたちが怪我するなんて嫌だよ」
もしあの時私がいなかったらこんちゃんは私を庇って怪我をすることもなかったのかもしれないと思うと、やはりどうしても気分が沈む。
そんな落ち込んだ気分を少しでも晴らしたくて、私は電気を消したまま部屋の窓へと近付いた。
月明かりが思ったより明るく、こんちゃんが見せてくれた遊火のことを思い出し――
「ん?」
ふと目についたのは、窓に挟むように置かれている小さな封筒だった。
“こんなのあった?”
疑問に思いながら封筒を手にする。
「さっき別れたばかりだし、まだ起きてるよね?」
宛名はなく、自分宛かわからない以上勝手に開封することが躊躇われた私はこんちゃんに確認してから開けるべきだと判断し、部屋から出ようとした時だった。
「ッ!?」
突然封筒が影のような黒いモヤに変わり、私の手には中の手紙と黒い羽が一枚現れる。
それはまるで私にだけ読めと言っているようだった。
「この羽って」
その黒く艶やかな羽がつい最近何度も目にした楓ちゃんの翼と酷似していることに気付きドクンと跳ねる。
“そんなはずはない”
楓ちゃんは楓ちゃんのお父さんたちが迎えに来ていた。
それに空を飛べるようになった彼女なら簡単に誰かに攫われることはないだろう。
だからこれは楓ちゃんの羽じゃない。
「なら羽団扇の……?」
嫌な予感がし、背中に冷や汗が伝う。
こんちゃんに先に相談してからにすべきだと頭ではわかっていたが、わざわざ私の泊っている部屋に置かれていたこの羽と開封しなかったことをとがめるようにモヤになって消えた封筒。
そして怪我をしているこんちゃんの姿が頭を過った私は、意を決して手紙の内容を確認した。
『深夜、君のはじまりの場所で』
たったそれだけの文面。
“深夜って何時のことなのよ”
はぁ、と大きなため息を吐いた私は、最初に着ていた自分の服に袖を通した。
「ここまで持ってこれたってことはどうせ見てるんでしょ」
内容を読んで確信したのは、この手紙が私宛のものだということ。
“どうせ逃げられないのなら望み通りに行ってやるわ”
フン、とわざとらしく鼻を鳴らした私はわずかに震える手には気付かないふりをして自分の鞄を肩にかけた
のだった。
「はじまりの場所ってことはここ、よね?」
こっそり部屋を抜け出し私が向かった場所はこんちゃんと初めて会ったあの神社。
階段を上った先の石畳で躓き転んだ私は、気付けばこの世界へと迷い込んでいた。
「神社の見た目は同じなのよね」
人間界とは全然違う場所なのに、迷い込むだけあって『入口』なのかこの神社だけは人間界で見た神社と同じ見た目だった。
とは言っても、あくまでも“見た目は”であってその場の雰囲気は全然違い、どこかへ誘われるような怖さを感じる。
ここで神隠しが起きると言われれば信じてしまいそうなその場所は、夜というだけで恐怖を増長させ私を心細くさせた。
「ねぇ! 来たわよ!?」
キョロキョロと見回しながらそう声を張り上げると、さっきまで静まり返っていたその場にカツンと乾いた靴音が響く。
その音にハッとした私が慌てて音の方へと振り返ると、石畳の先に続く千本鳥居の奥からひとつの人影が現れた。
「やっぱり貴方だったのね」
「狐から聞いてるかな? 僕の名前は乾瑞季。どう呼んでも構わないよ、呼べるうちならね」
くすりと笑うその目が何の光も映していないせいかくすみ、感情が全く読めない。
整った顔が青白く、その血色さえも失った色味とあわさってより不気味さを出していた。
「なんで呼んだの?」
「なんで来たの?」
「何か用があるのよね」
「何か用があるのかな」
質問に質問を返される無意味な問答。
じりじりと詰められた距離だけ私は後ずさった。
“埒が明かない”
「……楓ちゃんから奪った羽団扇、返して」
「返したら何をくれるの?」
「奪ったもので対価を要求するのはおかしいんじゃない」
理不尽を指摘するが、相変わらず表情のわからない口角だけを上げた笑顔の彼が私の言葉を聞いてハハッと乾いた声を響かせる。
「――それ、人間基準でしょ」
「ッ!」
至極当然とばかりに告げられたその言葉は、私の発言を否定するだけでなく私が『部外者』であることを表しており、痛いところを突かれた私はただただ黙るしかできなかった。
こんちゃんと別れてお借りしている客室へ向かう。……とは言っても、万一の時のために隣の部屋を借りているので別れたのは数秒前だったりするのだが。
“そもそもこんな出し抜いたり派閥争いみたいなことはただの女子大生である私にはどうしてもピンと来ないし”
怪我までさせるのはやりすぎじゃないかと思うが、その考え自体も『人間だから』の感覚であってあやかしたちには当たり前の日常なのかもしれない。
それらがわからないにも関わらず首を突っ込み余計な事を言うのは出来れば避けたいのだが……
「でもやっぱり、こんちゃんたちが怪我するなんて嫌だよ」
もしあの時私がいなかったらこんちゃんは私を庇って怪我をすることもなかったのかもしれないと思うと、やはりどうしても気分が沈む。
そんな落ち込んだ気分を少しでも晴らしたくて、私は電気を消したまま部屋の窓へと近付いた。
月明かりが思ったより明るく、こんちゃんが見せてくれた遊火のことを思い出し――
「ん?」
ふと目についたのは、窓に挟むように置かれている小さな封筒だった。
“こんなのあった?”
疑問に思いながら封筒を手にする。
「さっき別れたばかりだし、まだ起きてるよね?」
宛名はなく、自分宛かわからない以上勝手に開封することが躊躇われた私はこんちゃんに確認してから開けるべきだと判断し、部屋から出ようとした時だった。
「ッ!?」
突然封筒が影のような黒いモヤに変わり、私の手には中の手紙と黒い羽が一枚現れる。
それはまるで私にだけ読めと言っているようだった。
「この羽って」
その黒く艶やかな羽がつい最近何度も目にした楓ちゃんの翼と酷似していることに気付きドクンと跳ねる。
“そんなはずはない”
楓ちゃんは楓ちゃんのお父さんたちが迎えに来ていた。
それに空を飛べるようになった彼女なら簡単に誰かに攫われることはないだろう。
だからこれは楓ちゃんの羽じゃない。
「なら羽団扇の……?」
嫌な予感がし、背中に冷や汗が伝う。
こんちゃんに先に相談してからにすべきだと頭ではわかっていたが、わざわざ私の泊っている部屋に置かれていたこの羽と開封しなかったことをとがめるようにモヤになって消えた封筒。
そして怪我をしているこんちゃんの姿が頭を過った私は、意を決して手紙の内容を確認した。
『深夜、君のはじまりの場所で』
たったそれだけの文面。
“深夜って何時のことなのよ”
はぁ、と大きなため息を吐いた私は、最初に着ていた自分の服に袖を通した。
「ここまで持ってこれたってことはどうせ見てるんでしょ」
内容を読んで確信したのは、この手紙が私宛のものだということ。
“どうせ逃げられないのなら望み通りに行ってやるわ”
フン、とわざとらしく鼻を鳴らした私はわずかに震える手には気付かないふりをして自分の鞄を肩にかけた
のだった。
「はじまりの場所ってことはここ、よね?」
こっそり部屋を抜け出し私が向かった場所はこんちゃんと初めて会ったあの神社。
階段を上った先の石畳で躓き転んだ私は、気付けばこの世界へと迷い込んでいた。
「神社の見た目は同じなのよね」
人間界とは全然違う場所なのに、迷い込むだけあって『入口』なのかこの神社だけは人間界で見た神社と同じ見た目だった。
とは言っても、あくまでも“見た目は”であってその場の雰囲気は全然違い、どこかへ誘われるような怖さを感じる。
ここで神隠しが起きると言われれば信じてしまいそうなその場所は、夜というだけで恐怖を増長させ私を心細くさせた。
「ねぇ! 来たわよ!?」
キョロキョロと見回しながらそう声を張り上げると、さっきまで静まり返っていたその場にカツンと乾いた靴音が響く。
その音にハッとした私が慌てて音の方へと振り返ると、石畳の先に続く千本鳥居の奥からひとつの人影が現れた。
「やっぱり貴方だったのね」
「狐から聞いてるかな? 僕の名前は乾瑞季。どう呼んでも構わないよ、呼べるうちならね」
くすりと笑うその目が何の光も映していないせいかくすみ、感情が全く読めない。
整った顔が青白く、その血色さえも失った色味とあわさってより不気味さを出していた。
「なんで呼んだの?」
「なんで来たの?」
「何か用があるのよね」
「何か用があるのかな」
質問に質問を返される無意味な問答。
じりじりと詰められた距離だけ私は後ずさった。
“埒が明かない”
「……楓ちゃんから奪った羽団扇、返して」
「返したら何をくれるの?」
「奪ったもので対価を要求するのはおかしいんじゃない」
理不尽を指摘するが、相変わらず表情のわからない口角だけを上げた笑顔の彼が私の言葉を聞いてハハッと乾いた声を響かせる。
「――それ、人間基準でしょ」
「ッ!」
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