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最終章:その寵愛、真実につき
28.これも神のお導き
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「って、こんちゃん!?」
想像通りの笑い声が突然背後から聞こえて慌てて振り向く。
“犬神はどうなったの!? というか怪我は、そもそもなんでここにっ”
色んな疑問が頭に浮かび、そして振り向いた先のその光景に私は目を見開いた。
――銀色の大きな狐耳に、ふさふさの太く大きな尻尾。
切れ長の瞳は赤く、そしてその瞳と同じくらい赤く妖艶な小さめの唇。
こんちゃんと同じ銀髪は腰ほどまで長く伸ばされ、毛先を束ねて煌めいていた。
“似てる”
こんちゃんを思わせる容姿が月光で写し出され、ひたすらに美しいその女性は、私がこの世界に紛れ込んだその時に見た、あの花嫁狐――……
「こんちゃんの、お姉さん……?」
「ほう、本当にあの弟はこんちゃんと呼ばせているのね」
ポツリと溢した言葉にクスリと笑いながらそんな言葉を返さる。
その声色に嫌悪などが混じっていないことに安堵しつつも、ハッとし呆けている場合ではないことを思い出した私は慌てて頭を下げた。
「お、お願いします! こんちゃんを助けてくださいっ」
「それが必死にジャンプしながら小銭を捻出……ぷっ、捻出しようとして……ぷぷっ、願いたい……スゥ~~~、ハァ~~~、願いたいことか? あはっ」
“めっちゃ必死に笑いを押し殺してるんだけど”
これが血筋か、と納得するほど似た反応。
深呼吸して笑いを堪えようとしている分だけこんちゃんよりマシなのかもしれないが、結局笑ってしまっているのでやはりどっこいどっこいだ。
“でも、今はそんなことを言ってる場合じゃない……!”
「そうです」
「あい、わかった」
ハッキリと肯定すると、先ほどとは違うどこか凛々しい微笑みに変わったお姉さん。
そんな彼女が手のひらを唇の前に出し、ふうっと息を吹き掛ける。
すると、まるで手のひらに桜の花びらでもあったかのように淡い色をしたものがふわりと舞い、私を包んだ。
“花びらじゃ、ない?”
パッと見で桜の花びらだと思ったが、包まれてはじめてこれは熱くない炎なのだと理解する。
ふわふわとした小さな炎が渦のように私とお姉さんを包むと、ブワッと風が足元から舞い上がり、そしてそれらが一瞬でパチンと消えた。
「さぁ、誘われてやったぞお馬鹿ども!」
凛と響くお姉さんの声に釣られそっと目を開けるとそこは千本鳥居の入り口近くの石畳。
「あ、姉上……!?」
「くッ」
まさに、こんちゃんと犬神が対峙しているその場所だった。
“何これ、瞬間移動!?”
これも妖術のひとつなのだろうか。
理論なんて全く分からず、これぞまさに狐につままれるということなのかもしれない。
「天誅!」
私の前に一歩出たお姉さんがそう叫び右手を高く上げる。
その手の動きに合わせたように犬神とこんちゃんの足元から炎が上がり、縄のような形になって二人を拘束した。
「な、俺まで!?」
「こ、こんちゃんは肋骨にヒビが入ってますッ!」
「なぬっ? ま、まぁでもヒビよりいっそ折ってしまった方が早く治るっていうし結果オーライではないか」
「まだ結果は出てないので何一つオーライじゃありませんけどぉ!? というか折らない方向でお願いします!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ私たちだったが、こんちゃんと同じように炎の縄で拘束されたはずの犬神の呻き声に気付き視線を向ける。
すると拘束されていたはずの彼の体が一瞬で再び黒いモヤのようになり、目の前から消えてしまった。
「う、嘘……!」
「ここだと流石に僕には不利だね。二対一になっちゃったし、今晩はここまで。忘れないで、犬は食らいついた獲物を逃がさないから」
「……フン、負け犬め」
境内を反響するように犬神の声だけが響き、お姉さんが鼻を鳴らす。
そんな静けさを破るように足元でもぞりといまだ縄に捕らわれたままのこんちゃんが「姉上、俺の縄を……」と声を漏らすと、思わず私とお姉さんが顔を見合わせて。
「「ぷっ」」
思わず小さく吹き出すと、さっきまでの重苦しい空気が和らぎどこか温かい夜に帰って来たように感じたのだった。
想像通りの笑い声が突然背後から聞こえて慌てて振り向く。
“犬神はどうなったの!? というか怪我は、そもそもなんでここにっ”
色んな疑問が頭に浮かび、そして振り向いた先のその光景に私は目を見開いた。
――銀色の大きな狐耳に、ふさふさの太く大きな尻尾。
切れ長の瞳は赤く、そしてその瞳と同じくらい赤く妖艶な小さめの唇。
こんちゃんと同じ銀髪は腰ほどまで長く伸ばされ、毛先を束ねて煌めいていた。
“似てる”
こんちゃんを思わせる容姿が月光で写し出され、ひたすらに美しいその女性は、私がこの世界に紛れ込んだその時に見た、あの花嫁狐――……
「こんちゃんの、お姉さん……?」
「ほう、本当にあの弟はこんちゃんと呼ばせているのね」
ポツリと溢した言葉にクスリと笑いながらそんな言葉を返さる。
その声色に嫌悪などが混じっていないことに安堵しつつも、ハッとし呆けている場合ではないことを思い出した私は慌てて頭を下げた。
「お、お願いします! こんちゃんを助けてくださいっ」
「それが必死にジャンプしながら小銭を捻出……ぷっ、捻出しようとして……ぷぷっ、願いたい……スゥ~~~、ハァ~~~、願いたいことか? あはっ」
“めっちゃ必死に笑いを押し殺してるんだけど”
これが血筋か、と納得するほど似た反応。
深呼吸して笑いを堪えようとしている分だけこんちゃんよりマシなのかもしれないが、結局笑ってしまっているのでやはりどっこいどっこいだ。
“でも、今はそんなことを言ってる場合じゃない……!”
「そうです」
「あい、わかった」
ハッキリと肯定すると、先ほどとは違うどこか凛々しい微笑みに変わったお姉さん。
そんな彼女が手のひらを唇の前に出し、ふうっと息を吹き掛ける。
すると、まるで手のひらに桜の花びらでもあったかのように淡い色をしたものがふわりと舞い、私を包んだ。
“花びらじゃ、ない?”
パッと見で桜の花びらだと思ったが、包まれてはじめてこれは熱くない炎なのだと理解する。
ふわふわとした小さな炎が渦のように私とお姉さんを包むと、ブワッと風が足元から舞い上がり、そしてそれらが一瞬でパチンと消えた。
「さぁ、誘われてやったぞお馬鹿ども!」
凛と響くお姉さんの声に釣られそっと目を開けるとそこは千本鳥居の入り口近くの石畳。
「あ、姉上……!?」
「くッ」
まさに、こんちゃんと犬神が対峙しているその場所だった。
“何これ、瞬間移動!?”
これも妖術のひとつなのだろうか。
理論なんて全く分からず、これぞまさに狐につままれるということなのかもしれない。
「天誅!」
私の前に一歩出たお姉さんがそう叫び右手を高く上げる。
その手の動きに合わせたように犬神とこんちゃんの足元から炎が上がり、縄のような形になって二人を拘束した。
「な、俺まで!?」
「こ、こんちゃんは肋骨にヒビが入ってますッ!」
「なぬっ? ま、まぁでもヒビよりいっそ折ってしまった方が早く治るっていうし結果オーライではないか」
「まだ結果は出てないので何一つオーライじゃありませんけどぉ!? というか折らない方向でお願いします!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ私たちだったが、こんちゃんと同じように炎の縄で拘束されたはずの犬神の呻き声に気付き視線を向ける。
すると拘束されていたはずの彼の体が一瞬で再び黒いモヤのようになり、目の前から消えてしまった。
「う、嘘……!」
「ここだと流石に僕には不利だね。二対一になっちゃったし、今晩はここまで。忘れないで、犬は食らいついた獲物を逃がさないから」
「……フン、負け犬め」
境内を反響するように犬神の声だけが響き、お姉さんが鼻を鳴らす。
そんな静けさを破るように足元でもぞりといまだ縄に捕らわれたままのこんちゃんが「姉上、俺の縄を……」と声を漏らすと、思わず私とお姉さんが顔を見合わせて。
「「ぷっ」」
思わず小さく吹き出すと、さっきまでの重苦しい空気が和らぎどこか温かい夜に帰って来たように感じたのだった。
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