【R18】はわわって言えばなんとかなると思ってた~拗らせ次期宰相からの執愛はウザい!~

春瀬湖子

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3.はわわの想定外な結末

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 ――そう、これで終わるはずだったのに。

「なんっで! 私が今! 勉強させられてんのよぉッ!」
「はい、発作を起こさないでくださいませ、トレイシー様。貴女様はリチャード様の婚約者なのですからこれくらいは学んでいただきませんと」
 それとも、この程度もできませんか? なんて煽りのようなことを重ねてくるのは、なんとアイツがつけた家庭教師である。
(まさか、まさかまさかこんなことになるだなんて!)
 既成事実を作った。そして責任を取るという言質まで貰えたのはラッキーだった。そう、あの日は思っていたのだが。
「まさかこんなに勉強漬けにされるなんて!!」
「まだこれ序章ですからね。リチャード様は次期宰相に内定されてるんです、その妻になるのですから当然ですよ」
「くっそぉぉ!」
「はい、汚い言葉は使わない」
(本当にはわわ過ぎる事態なんだけどォッ!)

 腹の底から湧き出る苛立ちを隠すこともせず、大きく舌打ちをしながら目の前に積み上げられたありとあらゆる書物を見た時だった。
 コンコンと少し控えめなノックの音と共に、ひょっこりと顔を出したのはラピスラズリのような深い青の長い前髪を掻き上げたようにセットし、フローライトのような神秘的な青紫色の瞳をいやらしく細めてニヤニヤと笑う、腹立たしいほど顔の整った美丈夫だった。

「……何しにきたのよ」
 じろりと睨みながら恨みがましくそう聞くと、彼の口角がにこりとあがる。
「別に? ただ俺は自分の婚約者の様子を見に来ただけだよ?」
「ッ、ほんっと騙されたんだけど! アンタ最初は自分のこと〝僕〟って言ってたくせにさぁ!」
「ははっ、そうだったかな」
「前髪だって下ろして、気の弱そうなフリをしてたし!」
「それは違うよ。ほら、俺はこの外見だからね。面倒な令嬢を追い払うよりも、そもそも寄ってこないようにする方が簡単ってだけだよ」
(それはまぁ、道理にかなってるけども)
 確かに前髪を上げた彼の顔は「はわわ」を持った私ですらドキッとさせられるものがあるし、世の令嬢がきゃあきゃあと彼を囲う想像は簡単にできた。だが、それとこれとは話が違う。
「私、婚約してまでは言ってないのに!」
「責任を取って欲しいと言ったのはトレイシーだろう」
「責任取りすぎなのよ!」
「安心してよ。俺は何が合っても責任取るから」
 いや、玉の輿は狙っていた。狙っていたし、借金まみれで没落しかけている私を娶ってくれるだなんて渡りに船ではあるのだが、流石に次期宰相夫人のポジションまでは狙っていなかった。
 口止め料として家の借金と使用人たちのお給料と彼らと私の次の職場を紹介して貰うくらいのつもりだったのに。
(それがまさかの勉強漬けにされるだなんてッ!)
 しかも厳しい。めちゃくちゃにスパルタ。
 家庭教師といえば執事が仕事の合間に色々教えてくれたことが全部の私に、今更こんなに突然色々と詰め込まれてもすぐに覚えられるはずなんてない。
 けれど不満を全面に出す私を見たリチャードが隠す気もなくプッと吹き出した。

「ははっ、奇跡の美少女って呼び名に似合った奇跡の不満顔だ」
「うるっさいわね。煽りたいなら本気出しなさいよ」
「折角男爵家の使用人たちのその後を教えてあげようと思ったんだけどなぁ」
「はわわっ、教えて欲しいですぅ~!」
「くふっ、いいね、その変わり身嫌いじゃないよ」
「はわはわ、さっさと教えろくださぁい☆」
 きゅるんきゅるんとした瞳で見つめてやると、くくくっと暫く堪えきれない笑いを存分に零したリチャードが私の机の近くまで歩いてきてドキリとする。
「ほとんどの使用人は侯爵家の紹介状を持って新しい職場へ、もちろん希望者はウチで雇うと告げたし何人かはもう働きに来てくれているよ。他の職場を選んだ使用人たちは、家族と住んでいる家が遠いからという理由であってトレイシーが嫌だったわけじゃない」
 まるで私を安心させるようにそんな解説をつけてされたその内容に思わず安堵の息を吐く。そんな私の顔を何故か心配そうにリチャードが覗き込んだ。
 
「な、なによ」
「……乳母と執事は再就職を希望しなかった」
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