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6.飄々とした、その下の本音
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(くっそぅ、もっとすごいことをしたっていうのに)
その夜からなんとなく気恥ずかしさを覚えるようになってしまった私は、そもそも最初は彼を酔わせて乗ったのだということ含め頭を抱える。
「すべてが想定外よ。はわわって言えばなんとかなると思っていたのに」
今の現状は「はわわ」じゃ絶対解決しない。そもそもリチャードにはわわは効かないし、それにこの感情は……
「トレイシー?」
「なっ、何!?」
家庭教師に出された宿題に顔を突っ伏していると、突然部屋の扉がノックされて慌てて顔をあげる。しまった、昨日の口づけに動揺してまだ半分しか終わってない、と慌てていると大きな箱を抱えたリチャードが部屋へと入ってきた。
「何よそれ」
「手配していたドレスが届いたんだ、見てくれるかな」
「ドレス?」
何故ドレス、と首を傾げながらリチャードの元へと行くと、箱の中身はリチャードの髪色を思わせるラピスラズリのような深い青色の少しタイトなマーメイドラインの大人っぽいドレスだった。
(私の童顔には合わないような気がするんだけど)
確かにおっぱいは大きいが身長が高いわけではない私は、どちらかというと巨乳ロリという分類。もちろんそれを武器にしてきたし、何よりこの巨乳に童顔で「はわわ」が最高最強最凶の組み合わせだと理解して使ってきた。だから、こういう大人っぽいドレスにどれだけ憧れたとしても着たことはなかったのだが――
「似合うと思うんだけど好みじゃないかな」
「……まぁ、アンタがそう思うんならいいんじゃない」
当然のように「似合う」と言われ胸が高鳴ってしまう。本当はこういう大人っぽいドレスが似合うような女性になりたかったのだ。
「でもこんな高そうなドレス、どこに着ていくのよ」
「あぁ。今度の王太子殿下の成婚記念パーティーだよ」
「へえぇ、王太子殿下の……って嘘でしょッ!?」
私が焦るのも仕方がないだろう。王太子殿下の成婚となれば国中の貴族が集まることが目に見えているのだから。
(確かに好みのドレスだけど! リチャードがいいならいいとは言ったけど!)
流石に本来の好みのと本当に似合うものが一致しないということくらい理解している。それを大勢の貴族の前で披露するだなんて、無理して大人っぽいドレスを着ているだのドレスに着られているだの容易に陰口を叩かれることが想像できた。しかも。
「あと、『はわわ』は封印だ」
「最大にして唯一の武器なんだけどォッ!」
はわわまで封印されたのである。
その事実にくらりと目眩を起こすが、すかさずそんな私の腰に腕を回し支えたリチャードがじっと私の目を覗き込んだ。
「大丈夫、君の武器は」
「私の、武器……?」
「俺だ!」
「いい笑顔が腹立つーッ!」
ニカッと完璧に作り物の笑顔に苛立ちを覚えた私の全力の文句が部屋中に響いたのだった。
リチャードからドレスを贈られて一ヶ月。私はダンスに歩き方、「はわわ」と合わせると効果バツグンだった困り顔ではなく大人っぽい笑顔の振り撒き方までを徹底的に叩き込まれ気付けば馬車に乗っていた。
「まさか本当に着ることになるなんてね」
「その為に用意したんだから当たり前だろ。それにほら、似合ってる」
(それは、確かに……)
いつもあえて大振りのフリルを採用した――とは言っても、ぶっちゃけ家計事情で子供の時に買ったその一着しか持っていなかったドレスを無理矢理に着ていた私。身長はあまり伸びなかったし、胸は成長したがそれは逆に窮屈に見える方がばいんばいんと巨乳をアピールできてむしろ良かったのだが、こうやって改めて今の体型に合わせたドレスを身に纏うと心配していたよりも似合っている気がした。
いつも高めのツインテールにしていた髪をおろして緩く巻き、唇は可愛らしさを強調したピンクではなく少しダークな赤で彩る。それしかいつもとは変えていないはずなのに、この大人っぽいドレスに見合う大人の女性になったようでくすぐったい。
(それに、リチャードだって)
彼にお酒を無理矢理飲ませて既成事実を作ったあの夜の野暮ったい見た目ではなく、今は前髪をセットしそのフローライトのような神秘的な青紫の瞳を隠すことなく見せつけていた。
「凄く視線を感じるけど」
「きっ、気のせいじゃない!?」
「そう? 俺の願望だったのかな」
「――ッ!」
さらりと付け加えられるその一言に頬が一気に熱くなる。
(そういうとこよ本当にアンタはっ!)
飄々とした態度に苛立ちつつも、顔が赤くなってしまったであろう事実が悔しい。この冷静な顔を崩す方法がわからず歯噛みしながら、私は内心で〝私みたいな令嬢にお酒を飲まされて簡単に酔っ払い既成事実を作られたくせに〟と微妙に自分にもダメージを食らいそうな文句を言ったのだった。
その夜からなんとなく気恥ずかしさを覚えるようになってしまった私は、そもそも最初は彼を酔わせて乗ったのだということ含め頭を抱える。
「すべてが想定外よ。はわわって言えばなんとかなると思っていたのに」
今の現状は「はわわ」じゃ絶対解決しない。そもそもリチャードにはわわは効かないし、それにこの感情は……
「トレイシー?」
「なっ、何!?」
家庭教師に出された宿題に顔を突っ伏していると、突然部屋の扉がノックされて慌てて顔をあげる。しまった、昨日の口づけに動揺してまだ半分しか終わってない、と慌てていると大きな箱を抱えたリチャードが部屋へと入ってきた。
「何よそれ」
「手配していたドレスが届いたんだ、見てくれるかな」
「ドレス?」
何故ドレス、と首を傾げながらリチャードの元へと行くと、箱の中身はリチャードの髪色を思わせるラピスラズリのような深い青色の少しタイトなマーメイドラインの大人っぽいドレスだった。
(私の童顔には合わないような気がするんだけど)
確かにおっぱいは大きいが身長が高いわけではない私は、どちらかというと巨乳ロリという分類。もちろんそれを武器にしてきたし、何よりこの巨乳に童顔で「はわわ」が最高最強最凶の組み合わせだと理解して使ってきた。だから、こういう大人っぽいドレスにどれだけ憧れたとしても着たことはなかったのだが――
「似合うと思うんだけど好みじゃないかな」
「……まぁ、アンタがそう思うんならいいんじゃない」
当然のように「似合う」と言われ胸が高鳴ってしまう。本当はこういう大人っぽいドレスが似合うような女性になりたかったのだ。
「でもこんな高そうなドレス、どこに着ていくのよ」
「あぁ。今度の王太子殿下の成婚記念パーティーだよ」
「へえぇ、王太子殿下の……って嘘でしょッ!?」
私が焦るのも仕方がないだろう。王太子殿下の成婚となれば国中の貴族が集まることが目に見えているのだから。
(確かに好みのドレスだけど! リチャードがいいならいいとは言ったけど!)
流石に本来の好みのと本当に似合うものが一致しないということくらい理解している。それを大勢の貴族の前で披露するだなんて、無理して大人っぽいドレスを着ているだのドレスに着られているだの容易に陰口を叩かれることが想像できた。しかも。
「あと、『はわわ』は封印だ」
「最大にして唯一の武器なんだけどォッ!」
はわわまで封印されたのである。
その事実にくらりと目眩を起こすが、すかさずそんな私の腰に腕を回し支えたリチャードがじっと私の目を覗き込んだ。
「大丈夫、君の武器は」
「私の、武器……?」
「俺だ!」
「いい笑顔が腹立つーッ!」
ニカッと完璧に作り物の笑顔に苛立ちを覚えた私の全力の文句が部屋中に響いたのだった。
リチャードからドレスを贈られて一ヶ月。私はダンスに歩き方、「はわわ」と合わせると効果バツグンだった困り顔ではなく大人っぽい笑顔の振り撒き方までを徹底的に叩き込まれ気付けば馬車に乗っていた。
「まさか本当に着ることになるなんてね」
「その為に用意したんだから当たり前だろ。それにほら、似合ってる」
(それは、確かに……)
いつもあえて大振りのフリルを採用した――とは言っても、ぶっちゃけ家計事情で子供の時に買ったその一着しか持っていなかったドレスを無理矢理に着ていた私。身長はあまり伸びなかったし、胸は成長したがそれは逆に窮屈に見える方がばいんばいんと巨乳をアピールできてむしろ良かったのだが、こうやって改めて今の体型に合わせたドレスを身に纏うと心配していたよりも似合っている気がした。
いつも高めのツインテールにしていた髪をおろして緩く巻き、唇は可愛らしさを強調したピンクではなく少しダークな赤で彩る。それしかいつもとは変えていないはずなのに、この大人っぽいドレスに見合う大人の女性になったようでくすぐったい。
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彼にお酒を無理矢理飲ませて既成事実を作ったあの夜の野暮ったい見た目ではなく、今は前髪をセットしそのフローライトのような神秘的な青紫の瞳を隠すことなく見せつけていた。
「凄く視線を感じるけど」
「きっ、気のせいじゃない!?」
「そう? 俺の願望だったのかな」
「――ッ!」
さらりと付け加えられるその一言に頬が一気に熱くなる。
(そういうとこよ本当にアンタはっ!)
飄々とした態度に苛立ちつつも、顔が赤くなってしまったであろう事実が悔しい。この冷静な顔を崩す方法がわからず歯噛みしながら、私は内心で〝私みたいな令嬢にお酒を飲まされて簡単に酔っ払い既成事実を作られたくせに〟と微妙に自分にもダメージを食らいそうな文句を言ったのだった。
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