夜会に行くって伝えたら同僚の様子がなんだかおかしいようだ

春瀬湖子

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最終話.結論とは極論、それもまた良し

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「何か言いたいことはありますか」
「ありません」

達した事で多少正気になったメルを座らせ問い詰める。
お互い裸のままだが、シてしまったのだし今更だ。それに野営してると着替えやらなんやらで裸なんて勝手に目に飛び込んでくるし。


ただ、この状況でしゅんと項垂れているメルを見てるとまたなんだかおかしな笑いがこみ上げてきた。

「げ、また笑う?」
「笑わせてるのメルだろ?」
「そうかもしれないけど…」

これからどうするかなぁ、と考えても何もいい案は思い付かなくて。
それに騎士たるもの、いつでも最悪を想定して動くべきと教わってきたしなぁ、と考える。


最悪の状況ってなんだろ。
戦場で、訓練で、日常で。あらゆる状況を思い出し、その全ての場面で側にいるメルの姿に気付く。
そしてそのメルがいなくなることを想像する。


「それは、嫌だなぁ」


いつか政略結婚するかもしれないと意識的に誰かを特別視しないようにしていたはずなのに、未来の自分の隣にもメルがいるのだ。今までずっと側にいたように。
それはとっくに特別視していたということなのではないだろうか。

メルが側にいることがあまりにも当たり前になっていて。


「とりあえず結婚してみるか?」
「………は?」

思い付いた言葉を口に出したら、その赤紫の瞳がこぼれ落ちそうなくらい見開かれて。
この顔見たの2回目だな、と思うとまた少し笑えた。

「お前何言ってるかわかってんの?」
「まぁ、わかってるつもりだけど」
「俺に何されたか忘れた訳じゃないよな?」
「馬車で襲撃されて、連れてこられて、ドレスびりびりにされて、ヤられたかな」

ありのまま伝えると黙りこむ。
後悔するならやるなよと思わなくもないが、思い詰めておかしくなってたしそれに。

「驚いたし、まぁなんてことしてくれたんだと思わなくもないんだけど、不思議と何故か嫌悪感がない」
「は…?」
「メルはどうなんだ、私が他の誰かと結婚してもいいのか?」
「絶対許さない、絶対殺す」
「相手をだよな?いや、相手も殺すな。てかつまり私はお前以外誰とも結婚出来ないだろ、それ」
「え?いや、それは、そうかもしれないが…」
「だったらお前と結婚すればいいかと思った」
「さすがの俺でもその結論はどうかと思う」


反論するメルに少しイラつき、だったらもういいとそっぽを向くと、慌てた気配が伝わってきて。

「で、でもシータは本当にそれでいいわけ?」
困ったように顔を覗き込まれ、いつもと違った表情に少しきゅんとしてしまう。

「どうせ今までもずっと側にいたし、これからもいて欲しいのはメルだなって思ったから」
そう答えると、さっきまでの強引さはどこにいったのか、おずおずとまるでガラス細工を触るかのようにそっと抱き締められた。

「シータが、許してくれるならずっと側にいたい…」

そんなメルの背中に自分の腕を回ししっかり抱き締める。

「他の人に乱暴はするなよ」
そう念押しすると、頷いた気配がしたのでまぁ良しとした。




簡単に湯浴みし、ドレスはもう着れなかったのでメルの隊服の替えに袖を通す。
ジャケットまで着るとかっちりした服があまりにも目立つのでシャツまでだが、袖を折れば問題なく見れる姿にはなった。

ついてこようとするメルを一喝し一人で伯爵家に帰ると、護衛に連れてきていた団員が上手く誤魔化してくれていたのか盗賊に襲撃されたのを撃退して戻ってきたことになっていた。
偶然にも着替えたのが隊服だったので、信憑性が増したのはラッキーだったとしておく。


後日、団員二人にはどう口止めするかと考えながら仕事に行ったらそこはどうやったのかメルが上手く言いくるめてくれたらしく変な噂などにはなっていなかった。

団長と家族に結婚しようと思っている旨を伝えたら、よく私から名前の出る相手だったことも幸いし反対されることもなかった。
団長だけは脅されたかどうか確認してきたが。



「もう夜会には行かなくてよくなったな?」
「もう襲われたくはないからな」
笑いながらそう答えると、少しばつが悪そうにするメルがちょっと可愛く見えてるので、きっとまぁなんとかなるだろう。



…………………多分。
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