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第5章
桔梗②
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「朱里! なんだおまえ、服のまま川で泳ぎでもしたのか? ……あれ、華さん。碧さんも……」
「え、哲平、知り合い?」
「え……? あ、うんと、たまたま以前、なんていうか……」
あからさまに動揺する哲平に、華がいった。
「哲平くん、大丈夫よ。こちら、桔梗さん、碧と同じVC。それでどうやらこちらの朱里さんが、その、パートナーの方」
哲平が一瞬固まって、それから目を丸くした。
「え……? え、ええ!? 何それ、どういうこと!? 何かあったの!? え、偶然?」
「その両方といったところかしら。今日は紅ちゃんは?」
「え? い、いるよ、今、めちゃ驚いてる。……え? だ、ダメだよ、まだちょっと待って! いきなりはヤバいって、ちょっと、まずは朱里と話してから……!」
哲平が慌てだして、誰もいない後ろをちらちらと振り返りながら怪しげな独り言をいっている。
「ちょっと、哲平、あんたも何か知ってるの――っくしゃん!」
朱里のくしゃみで、哲平がはっとしたようにリュックを下ろした。
「おまえ、それ風邪ひくよ。着替え、俺、持ってるから貸してやるよ」
「は? 男物の着替えなんて――」
断ろうとして、哲平のリュックから出てきたものを見て朱里が絶句する。
「……何それ。なんであんたが女物の着替えなんて持ってるの、キモ」
「あっ、これ、本当は紅のだよ。ほら、朱里が前に一緒に買ってくれたじゃん? それ、貸すから……」
「……どうして紅ちゃんの着替えとか持ってるの、キモ」
哲平はイライラしたように服を引っ張り出した。
「ああもう、それは後で説明するからさあ、とりあえず着替えなよ。いいよな、紅?」
最後の一言は、いい間違いではなく、いるはずのないリュックの中に向かって話しかけている。ご丁寧に下着まで揃った着替えを持って、朱里は桔梗と華の影に隠れてこっそりと着替えた。その間に、哲平がリュックから大きなボトルを取り出していた。なみなみと入った液体は、ボトルの色でよく見えないが、どうも飲み物としては体に悪そうな色がついている。
「さて。どうやら事情を知らないのは、こちらのお嬢さんだけのようだな。桔梗の状況を考えると、彼女にもすべて話したほうがよさそうだ。……紅、出てくるか?」
「え? 紅ちゃん、どこにいるの――」
いい終わらないうちに、哲平が出したボトルの口から赤い液体がひとりでに這い出し、ぬるぬると芝生の合間を縫ったあと、木の根元でむくむくと立ち上がり、紅が姿を現した。
「やっほ、朱里ちゃん! その服、朱里ちゃんも似合うね!」
「え、哲平、知り合い?」
「え……? あ、うんと、たまたま以前、なんていうか……」
あからさまに動揺する哲平に、華がいった。
「哲平くん、大丈夫よ。こちら、桔梗さん、碧と同じVC。それでどうやらこちらの朱里さんが、その、パートナーの方」
哲平が一瞬固まって、それから目を丸くした。
「え……? え、ええ!? 何それ、どういうこと!? 何かあったの!? え、偶然?」
「その両方といったところかしら。今日は紅ちゃんは?」
「え? い、いるよ、今、めちゃ驚いてる。……え? だ、ダメだよ、まだちょっと待って! いきなりはヤバいって、ちょっと、まずは朱里と話してから……!」
哲平が慌てだして、誰もいない後ろをちらちらと振り返りながら怪しげな独り言をいっている。
「ちょっと、哲平、あんたも何か知ってるの――っくしゃん!」
朱里のくしゃみで、哲平がはっとしたようにリュックを下ろした。
「おまえ、それ風邪ひくよ。着替え、俺、持ってるから貸してやるよ」
「は? 男物の着替えなんて――」
断ろうとして、哲平のリュックから出てきたものを見て朱里が絶句する。
「……何それ。なんであんたが女物の着替えなんて持ってるの、キモ」
「あっ、これ、本当は紅のだよ。ほら、朱里が前に一緒に買ってくれたじゃん? それ、貸すから……」
「……どうして紅ちゃんの着替えとか持ってるの、キモ」
哲平はイライラしたように服を引っ張り出した。
「ああもう、それは後で説明するからさあ、とりあえず着替えなよ。いいよな、紅?」
最後の一言は、いい間違いではなく、いるはずのないリュックの中に向かって話しかけている。ご丁寧に下着まで揃った着替えを持って、朱里は桔梗と華の影に隠れてこっそりと着替えた。その間に、哲平がリュックから大きなボトルを取り出していた。なみなみと入った液体は、ボトルの色でよく見えないが、どうも飲み物としては体に悪そうな色がついている。
「さて。どうやら事情を知らないのは、こちらのお嬢さんだけのようだな。桔梗の状況を考えると、彼女にもすべて話したほうがよさそうだ。……紅、出てくるか?」
「え? 紅ちゃん、どこにいるの――」
いい終わらないうちに、哲平が出したボトルの口から赤い液体がひとりでに這い出し、ぬるぬると芝生の合間を縫ったあと、木の根元でむくむくと立ち上がり、紅が姿を現した。
「やっほ、朱里ちゃん! その服、朱里ちゃんも似合うね!」
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