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第8章
精神感応②
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山吹は慎一のほうを見やった。慎一は困ったように笑った。
「山吹は、ちょっと……特別なんだ。彼女は、人間からエネルギーを吸収できない。研究所では、エナジーブロワーで適宜補充していたけど、今は……」
すると祐輔が、ポケットから小さな機械を取り出した。
「それ、ひょっとしてこれのこと? さっき山吹さんが、その……煙みたいになったときに、落ちたんだ。こっそり拾ってきちゃったけど」
小さな四角い機械だ。小さな小窓に8と書かれている。
「ああ、それだよ。なぜこんなところに」
「……研究所から出るときに、私が一台だけ、持って出ました」
山吹が告げた。
「もともとは九回分入っていましたが、一回分は、使ってしまいました。……あと、八回。拾ってくれて、ありがとう」
山吹は祐輔から受け取ると、再びポケットにしまった。
「あいつら、このブロワー以外に、サッカーっていうのも使ってるわよね」
華がリュックから小銃を二丁取り出し、それを見た紅が飛びのいて哲平の後ろに隠れた。
「ややややめてよ、暴発したらどうするのよっ」
紅と桔梗、蘇比は、サッカーをまともに食らったことがある。その恐怖が蘇ったのだろう。
「エナジーサッカーは、文字通り、VCの運動エネルギーを奪うものだ。どの形態のVCでも、当たれば個体になり、動けなくなる。命までは奪わないが、身動きが取れないほどにはエネルギーを奪うことができる。それでVCを無力化したあとに、ブロワーで強制的に液化できるだけのエネルギーを与える。そうすることで、VCの動きを封じたままボトルに回収できるというわけだ。これをもし、サッカーを使う前にブロワーだけ使えば、そのVCにエネルギーを与えることになる。山吹に与えれば生きる活力に、普通のVCに与えればその個体特有の技が発動できるだけのエネルギーになる」
「ほら、私の推測通り。朱里との精神感応が足りなかったから、自分にブロワーを使ったのは大正解だったのよ」
桔梗が得意げに話し、朱里がすねたように口を尖らせた。
「すみませんね、あたしの桔梗への気持ちが足りなかったみたいで」
桔梗がうっすらと微笑んで朱里の髪を撫でる。
「あら、いいのよお嬢さん。あなたの気持ちは、川の中のときにしっかりと伝わったから」
朱里が照れてほんのりと頬を染めるのを見て、慎一の頬が緩んだ。
「よかった……。桔梗、君が信頼する人間を見つけるのには時間がかかるんじゃないかと心配していたんだ。色の情報は、その手助けになったみたいだね」
「でも、そしたら墨は? 白いオーラの人間なんて見たことないって、VCたちはいってるわ。彼はどうやってエネルギーを?」
これには山吹が答えた。
「ほかの有彩色のVCから奪うこともできるし、そうでなくても、白い生き物――例えば白い花や白い虫。そういったものから、吸収できるみたいです」
墨の名が出て、再び全員が同じことを考え始めた。
VCを追う者は、FC社の人間だけではなくなった。仲間であるはずの黒のVCまで、ほかのVCたちをつけ狙っている。必然的に、VCを匿う人間の身も危うい。VCだけでなく哲平たちにとっても、墨は山辺たち以上に脅威なのかもしれないのだ。墨は山辺たちと違い、人間を殺すことに何のためらいもない。
「……紅たちが穏やかに暮らせるようになるには、誰に話をすればいいの? 高原社長? 僕たちが浅川さんと一緒に直談判にいったら、何か変わるんだろうか」
哲平が尋ねた。慎一はしばらく考えた後、答えた。
「……僕が、ひとりで行ってくる。社長の居場所も知ってるし、君たちが会いに行くより確実に話ができる。こうなったのはすべて、僕の責任だから……君たちの手を煩わせるわけにはいかないよ。進展があれば、僕から君たちに連絡をする。それまでは、FCの人間にも墨にも気づかれないよう、おとなしくしていたほうがいい」
「山吹は、ちょっと……特別なんだ。彼女は、人間からエネルギーを吸収できない。研究所では、エナジーブロワーで適宜補充していたけど、今は……」
すると祐輔が、ポケットから小さな機械を取り出した。
「それ、ひょっとしてこれのこと? さっき山吹さんが、その……煙みたいになったときに、落ちたんだ。こっそり拾ってきちゃったけど」
小さな四角い機械だ。小さな小窓に8と書かれている。
「ああ、それだよ。なぜこんなところに」
「……研究所から出るときに、私が一台だけ、持って出ました」
山吹が告げた。
「もともとは九回分入っていましたが、一回分は、使ってしまいました。……あと、八回。拾ってくれて、ありがとう」
山吹は祐輔から受け取ると、再びポケットにしまった。
「あいつら、このブロワー以外に、サッカーっていうのも使ってるわよね」
華がリュックから小銃を二丁取り出し、それを見た紅が飛びのいて哲平の後ろに隠れた。
「ややややめてよ、暴発したらどうするのよっ」
紅と桔梗、蘇比は、サッカーをまともに食らったことがある。その恐怖が蘇ったのだろう。
「エナジーサッカーは、文字通り、VCの運動エネルギーを奪うものだ。どの形態のVCでも、当たれば個体になり、動けなくなる。命までは奪わないが、身動きが取れないほどにはエネルギーを奪うことができる。それでVCを無力化したあとに、ブロワーで強制的に液化できるだけのエネルギーを与える。そうすることで、VCの動きを封じたままボトルに回収できるというわけだ。これをもし、サッカーを使う前にブロワーだけ使えば、そのVCにエネルギーを与えることになる。山吹に与えれば生きる活力に、普通のVCに与えればその個体特有の技が発動できるだけのエネルギーになる」
「ほら、私の推測通り。朱里との精神感応が足りなかったから、自分にブロワーを使ったのは大正解だったのよ」
桔梗が得意げに話し、朱里がすねたように口を尖らせた。
「すみませんね、あたしの桔梗への気持ちが足りなかったみたいで」
桔梗がうっすらと微笑んで朱里の髪を撫でる。
「あら、いいのよお嬢さん。あなたの気持ちは、川の中のときにしっかりと伝わったから」
朱里が照れてほんのりと頬を染めるのを見て、慎一の頬が緩んだ。
「よかった……。桔梗、君が信頼する人間を見つけるのには時間がかかるんじゃないかと心配していたんだ。色の情報は、その手助けになったみたいだね」
「でも、そしたら墨は? 白いオーラの人間なんて見たことないって、VCたちはいってるわ。彼はどうやってエネルギーを?」
これには山吹が答えた。
「ほかの有彩色のVCから奪うこともできるし、そうでなくても、白い生き物――例えば白い花や白い虫。そういったものから、吸収できるみたいです」
墨の名が出て、再び全員が同じことを考え始めた。
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「……紅たちが穏やかに暮らせるようになるには、誰に話をすればいいの? 高原社長? 僕たちが浅川さんと一緒に直談判にいったら、何か変わるんだろうか」
哲平が尋ねた。慎一はしばらく考えた後、答えた。
「……僕が、ひとりで行ってくる。社長の居場所も知ってるし、君たちが会いに行くより確実に話ができる。こうなったのはすべて、僕の責任だから……君たちの手を煩わせるわけにはいかないよ。進展があれば、僕から君たちに連絡をする。それまでは、FCの人間にも墨にも気づかれないよう、おとなしくしていたほうがいい」
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