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今日の予定は?
しおりを挟む中村遥香は無印のルームウェアを着たまま、テーブルの上に突っ伏した。
カーテンの閉じられた薄暗い部屋。アイフォンのホーム画面を開いたり閉じたりする。誰からも連絡は来なかった。
せっかくの休日なのに……。何のやる気も湧いてこない……。
遥香は足先で、床に脱ぎ捨てられたままのスーツを弄った。
はぁっとため息をつくと、ベットにアイフォンを投げて床に寝転がる。
先週もその前も、最近、ずっとこんなだ。
遥香は、自分が鬱病では無いだろうかと悩んでいた。
社会人四年目の遥香は、外資系コンサルティングファームで毎日忙しく働いていた。仕事を任されるようになると残業も増え、平日は夕飯を作る時間も無い。せめて休日くらいは充実させたいと願ったが、仕事中に思い描く理想の週末が訪れることは無かった。休日になると気分が落ち込んで、身体が動かないのだ。
仲が良かった学生時代の友達は、相次ぐ結婚のラッシュで連絡を取り合う事すらも稀になった。恋人もいない。
寂しい人生だな。暗いベットの下を覗きながらボソリと呟いた。
ふと遥香は、暗がりに何かが落ちている事に気がついた。床に寝転がったまま腕を伸ばす。埃を被ったそれは、学生時代のメモ帳だった。
パラパラと捲ってみる。そこには放課後の予定や、休日の時間割がびっしりと書かれていた。
こんなの持ってきてたっけ?
遥香は懐かしいなと思いながら、カーテンを開けた。眩しい日差しに目が眩む。
あの頃は友達も沢山いたからな……。
遥香は感慨深げに読んでいくと、意外にも一人の時間の予定も沢山詰まっていた。
映画鑑賞。漫画の読破。川沿いの散歩。ジョギング。お菓子作り……。
そう言えば、観たい映画があったんだっけ。
遥香はずいぶん前に友達に薦められたホラー映画を思い出した。
読みかけのあの漫画、続きはどうなったんだろう。
学生時代に愛読していた少女漫画の続きが気になってきた。
遥香は窓の外を見た。青々とした空に白い雲が流れている。
よし、適当に開いたページを、今日の予定にしよう。
遥香はワクワクとメモ帳を閉じた。
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