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卒業式とキャラメル
しおりを挟む毛糸の手袋から指を出すと、キャラメルの包み紙に爪を引っ掛ける。
風が強く、舞い散る小雪が肌にぶつかっては溶けた。
冷え切った指先には感覚がなく、柳瀬琴美は銀色の紙に苦戦する。
「ほら」
その様子を横目に見ていた大宮拓海は、琴美の手からひょいっとキャラメルを取り上げると、包装を解いてくれた。
手袋は着けていない。寒くは無いのかと、琴美は呆れたようにその手を見つめた。キャラメルを口に放り込む。固い。
季節外れの雪は、この世に何の未練も無いかのようにぶつかっては消えていった。
琴美は冷たいキャラメルを舌で転がしながら、手袋に張り付く小さな雪の結晶を眺めた。
消えたくないのもいるんだね。心の中で呟く。
校門には花束が飾られていた。花弁はうっすらと白く染まっている。
二人は「卒業式」の看板を通り過ぎ、教室へと向かった。
教室は鮮やかにデコレーションされ、黒板は折り紙の花で彩られていた。
「卒業おめでとう!」誰が書いたのかは知らないが、沢山の花に囲まれた白いチョークに琴美はしんみりとした気分になった。
隣町の高校への進学が決まっていた。だが、見知らぬ土地で見知らぬ人達と暮らす未来の自分が想像出来ない。
私はここから消えて何処へ行くのだろう。
琴美は言いようのない寂しさと不安に涙が浮かんだ。
「あのさ」
頬を赤らめた拓海は足元を見ながら琴美の前に立つ。琴美は慌てて涙を拭った。
「どうしたの?」
拓海と会うのも今日で最後か。琴美はしんみりと幼馴染の顔を見上げた。いつの間にか琴美の身長を抜いていた拓海は、最近髪を伸ばしていた。
「これ」
拓海はもじもじと小さな銀紙を渡してきた。キャラメルの包み紙。綺麗に折り畳んであった。
「なにそれ、ゴミ?」
「いいから!」
琴美は渋々、拓海から銀紙を受け取った。すると拓海は「それじゃあ」と慌ただしく教室を出たいった。
銀紙がプレゼントか。
琴美は相変わらず変な奴だなと頬を緩めると、日記帳に銀紙を挟んだ。
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