3 / 4
第二話
しおりを挟む
私は物心ついた時から、殺し屋だった。
理由は単純である。それは父、母、兄、全員もれなく殺し屋だから。それがすべてなのである。私に拒否権なんてものはない。殺し屋であることが当たり前、そういう人生を歩んできた。しかし拒否権がないといっても、別にそこまで嫌々やっているわけでもない。なんといっても、殺し屋というものは稼ぎがいい。私以外の三人ほど仕事をこなしたことはないが、すでに私自身の貯金もそれなりにある。小さい時からお金の面で、苦労をした記憶がないのだ。
「おとうさん、これ、ほしい」
私が、おもちゃやお菓子が欲しいと言ったときには、
「そんなことわざわざ聞かなくていい。好きにしなさい。」
即答である。
それを考えると、殺し屋というのも悪くないと感じてしまうのである。ほかにも、殺し屋であることが嫌ではない理由がある。それは母と兄に言われた一言である。
「未春、あなたって人としてのスキルが全体的に乏しいけれど、殺しの才能は素晴らしいと思うわ。素敵よ♡」
「ほんとだよなー。よかったな、一つでもできることがあってさ。」
当時の私は母の後半の言葉に引っ張られて喜んでいたが、今思う母の前半の言葉は結構な悪口であるし、兄においてもしっかりと私を貶している。しかし、自分でも自覚している部分はあるため、殺しをやめたいと思ったことはないのだ。
殺し屋一家と言ったら、血も涙もない人たちであると思われるかもしれないが、実際のところはそんなことはない。
まず父の名前は、杉本裕太郎。口数が少なく寡黙な印象。それによって怖がられがちだが全くそんなことはなく、起こっているところは見たことがない。
次に母の名前は、杉本沙雪。おっとりとした性格。基本的には温厚で人当たりが良い。だが、たまに毒を吐くこともある。
最後に兄の名前は、杉本湊斗。家族の中では一番明るく、社交的。チャラそうに見られがちだが、実はしっかり者で面倒見がいい。
基本的には、平穏に暮らしているごくごく普通の家族なのである。
そんな私たち家族の間には、『互いに、必要以上に干渉し合わない』という暗黙の了解のようなものがあった。
殺し屋の仕事は常に死と隣り合わせ。みんないつ死んでもおかしくない。だから、互いに必要以上の情がわかないようにしているのではないかと思う。
もちろん私自身も、会話はあれど家族としての情はわいていない。今後もそんなものは必要があるとは思わない。
私にとっての家族とはそういうものなんだ。
きっとこれからもずっと変わらない。
変えたくない。
理由は単純である。それは父、母、兄、全員もれなく殺し屋だから。それがすべてなのである。私に拒否権なんてものはない。殺し屋であることが当たり前、そういう人生を歩んできた。しかし拒否権がないといっても、別にそこまで嫌々やっているわけでもない。なんといっても、殺し屋というものは稼ぎがいい。私以外の三人ほど仕事をこなしたことはないが、すでに私自身の貯金もそれなりにある。小さい時からお金の面で、苦労をした記憶がないのだ。
「おとうさん、これ、ほしい」
私が、おもちゃやお菓子が欲しいと言ったときには、
「そんなことわざわざ聞かなくていい。好きにしなさい。」
即答である。
それを考えると、殺し屋というのも悪くないと感じてしまうのである。ほかにも、殺し屋であることが嫌ではない理由がある。それは母と兄に言われた一言である。
「未春、あなたって人としてのスキルが全体的に乏しいけれど、殺しの才能は素晴らしいと思うわ。素敵よ♡」
「ほんとだよなー。よかったな、一つでもできることがあってさ。」
当時の私は母の後半の言葉に引っ張られて喜んでいたが、今思う母の前半の言葉は結構な悪口であるし、兄においてもしっかりと私を貶している。しかし、自分でも自覚している部分はあるため、殺しをやめたいと思ったことはないのだ。
殺し屋一家と言ったら、血も涙もない人たちであると思われるかもしれないが、実際のところはそんなことはない。
まず父の名前は、杉本裕太郎。口数が少なく寡黙な印象。それによって怖がられがちだが全くそんなことはなく、起こっているところは見たことがない。
次に母の名前は、杉本沙雪。おっとりとした性格。基本的には温厚で人当たりが良い。だが、たまに毒を吐くこともある。
最後に兄の名前は、杉本湊斗。家族の中では一番明るく、社交的。チャラそうに見られがちだが、実はしっかり者で面倒見がいい。
基本的には、平穏に暮らしているごくごく普通の家族なのである。
そんな私たち家族の間には、『互いに、必要以上に干渉し合わない』という暗黙の了解のようなものがあった。
殺し屋の仕事は常に死と隣り合わせ。みんないつ死んでもおかしくない。だから、互いに必要以上の情がわかないようにしているのではないかと思う。
もちろん私自身も、会話はあれど家族としての情はわいていない。今後もそんなものは必要があるとは思わない。
私にとっての家族とはそういうものなんだ。
きっとこれからもずっと変わらない。
変えたくない。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる