素晴らしい象[ショートショート]

アケビ(仮)

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素晴らしい象

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「どうしたものか……」
僕は部屋の隅で独白する。
はどこを見ても視界に入る。

10年ほど前、人口の増加が著しく、当時の地球は人と物であふれていた。
人類は環境を破壊し、行き場のないごみ、廃棄物がそこら中に散らばっていた。
不要なものを宇宙にでも飛ばすことができればよかったが、
それができる技術はなかったため叶わなかった。
各国でごみ収集場を増やすなどの対策が取られたものの焼け石に水であった。
そんなときだ。
消滅しかけているサバンナで巨大な象が発見されたのは。

初めてその象を発見した者は我が目を疑った。
体高約7メートルの巨象は廃棄されたテレビを食べていた。
象はすぐに世界中から注目を浴びた。
(この廃棄物だらけの世界を少しでも変えてくれるのではないか)
そのような期待を抱いている者は少なくなかったし、僕もそのうちの一人だった。
「凄まじいな」
実際に見に来た人々はその迫力に気圧された。
その象が生き物を食すことはなかったが、人間が作り出したものであれば
廃棄物でも毒物でも何でも食べた。
この生物は今の世の中に最も必要なものかもしれない。
報道を見ながら僕は思った。

象にありとあらゆるものをひたすら食べさせる実験が終わると、
世界中から象の住むサバンナへと廃棄物が運ばれた。
象はそのすべてを平らげた。その中には僕が廃棄した物も含まれていたはずだ。
なぜこの生物にそんなことができるのかは不明だがそんなことはどうでもよかった。
世界中の人間がこのシステムを利用し、
巨象は人々にとって必要不可欠なものとなっていた。

数年後、巨象について続報が発表された。

——象が増えている——

一頭目から二頭目、三頭目と象が増殖しているというのである。
増殖の頻度はだんだんと速くなっていった。
そのために象が百頭を超えるのにそう時間はかからなかった。
象たちは人里にまで進出し、建造物を食べ、また増える。
象の食事に巻き込まれ命を落としたものも多くいた。
そうして世界から廃棄物は一掃され、地球は象であふれた。

今や廃墟となってしまった我が家で僕は再び呟いた。
「どうしたものか……」
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