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「まさか……こんなことができるなんて」
「驚いただろ?」
「驚くというか……もう夢でも見ているような気分」
私はファイと共にユリウス様のお屋敷に侵入していた。
周囲には屋敷に仕える人だらけだというのに……誰も私たちに気づいていない。
普通に歩いているというのにだ。
いや、普通というのは少し違う。
幽体離脱して私は屋敷の中を歩いてるのだ。
こんなこと出来るのは死神の力のおかげ。
ファイの背中を見ながら私は乾いた笑い声で出していた。
「本当、非常識な人」
「常識なんてつまらないだろ。非常識ぐらいの方が一緒にいて楽しいぞ」
「楽しいかも知れないけれど、ちょっとこれは人間のルールから逸脱し過ぎな気もするわ」
「俺は死神だぞ。人間のルールなどに縛られるものか」
平然としているファイはそう言った。
そうこうしていると、ユリウス様の部屋に到着する。
私たちは部屋の扉をすり抜けて中へと侵入した。
すると部屋の中では、ユリウス様と彼に仕えている男性が会話をしている。
「ロバート……本当にバレていないんだな?」
「はい。間違いございません。ディアナ嬢は盗賊に襲われて死んだ。それこそが真実として風説が広まっております」
「そ、そうか……それなら安心だな」
私はその言葉に激しい怒りを覚えていた。
「私を殺したのはあなたでしょう! 何を言っているの!?」
ユリウス様に対して、私は怒鳴り付ける。
しかし彼は反応を示さない。
どういうこと、これ。
「向こうにはお前の声は届いていない。だって今のお前はただの霊体だからな」
「……この姿で来る必要ってあったのかしら? 話も出来ないんじゃ、まさに話にならないじゃない」
私は歯を噛みしめ、ユリウス様の表情を睨み付ける。
彼は常に怯えている様子で、ロバートと呼ばれる男を見上げていた。
「な、なあロバート……カリーナはこの話を漏らしたりしないだろうか? 誰かにポロッと喋ってしまったりはしないだろうか?」
カリーナ……きっとユリウス様と浮気をしていた女のことであろう。
この人は自分の身の安全ばかりを気にしている。
いつも私のことを気にしてくれていたのは演技だったのか。
私は呆れてため息をつく。
「……そんなに心配なのでしたら、あの女を殺しましょうか?」
ロバートは冷たい声で、ゆったりとそう言った。
ユリウス様は怯えた表情のままで何度も頷く。
「頼む……できるなら頼む。あいつが口を滑らないか怯えて暮らすのなんて御免だ。すぐにでも俺を安心させてくれ」
「かしこまりました」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で怒りが炎のように燃え広がる。
こいつは……自分のために人を殺させるというのか。
許せない……こんな自分勝手な人間を私は赦すことができない!
「驚いただろ?」
「驚くというか……もう夢でも見ているような気分」
私はファイと共にユリウス様のお屋敷に侵入していた。
周囲には屋敷に仕える人だらけだというのに……誰も私たちに気づいていない。
普通に歩いているというのにだ。
いや、普通というのは少し違う。
幽体離脱して私は屋敷の中を歩いてるのだ。
こんなこと出来るのは死神の力のおかげ。
ファイの背中を見ながら私は乾いた笑い声で出していた。
「本当、非常識な人」
「常識なんてつまらないだろ。非常識ぐらいの方が一緒にいて楽しいぞ」
「楽しいかも知れないけれど、ちょっとこれは人間のルールから逸脱し過ぎな気もするわ」
「俺は死神だぞ。人間のルールなどに縛られるものか」
平然としているファイはそう言った。
そうこうしていると、ユリウス様の部屋に到着する。
私たちは部屋の扉をすり抜けて中へと侵入した。
すると部屋の中では、ユリウス様と彼に仕えている男性が会話をしている。
「ロバート……本当にバレていないんだな?」
「はい。間違いございません。ディアナ嬢は盗賊に襲われて死んだ。それこそが真実として風説が広まっております」
「そ、そうか……それなら安心だな」
私はその言葉に激しい怒りを覚えていた。
「私を殺したのはあなたでしょう! 何を言っているの!?」
ユリウス様に対して、私は怒鳴り付ける。
しかし彼は反応を示さない。
どういうこと、これ。
「向こうにはお前の声は届いていない。だって今のお前はただの霊体だからな」
「……この姿で来る必要ってあったのかしら? 話も出来ないんじゃ、まさに話にならないじゃない」
私は歯を噛みしめ、ユリウス様の表情を睨み付ける。
彼は常に怯えている様子で、ロバートと呼ばれる男を見上げていた。
「な、なあロバート……カリーナはこの話を漏らしたりしないだろうか? 誰かにポロッと喋ってしまったりはしないだろうか?」
カリーナ……きっとユリウス様と浮気をしていた女のことであろう。
この人は自分の身の安全ばかりを気にしている。
いつも私のことを気にしてくれていたのは演技だったのか。
私は呆れてため息をつく。
「……そんなに心配なのでしたら、あの女を殺しましょうか?」
ロバートは冷たい声で、ゆったりとそう言った。
ユリウス様は怯えた表情のままで何度も頷く。
「頼む……できるなら頼む。あいつが口を滑らないか怯えて暮らすのなんて御免だ。すぐにでも俺を安心させてくれ」
「かしこまりました」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で怒りが炎のように燃え広がる。
こいつは……自分のために人を殺させるというのか。
許せない……こんな自分勝手な人間を私は赦すことができない!
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