「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも

文字の大きさ
26 / 36
第二章

69

しおりを挟む
 ゼロスを慕っているオーガの集団。
 数にして千人ほどのオーガが私たちの家に集結していた。

 ゼロスはオーガにしては美形であり、そして小柄だったようで……
 彼と同族であるオーガは、筋骨隆々といった体が大きく、そして怖い顔をした人ばかりであった。

 そんなオーガの集団を見てサリアは絶句するが、サリアが面倒を見ている子供たちは意外と愉しそうな顔をしている。
 なんで?

「み、皆は子供たちが怖くないの?」
「何言ってるんだよ、サリア。この人たちはライオウみたいじゃないか」

 私は子供の言った言葉に、妙に納得してしまっていた。
 確かに、ライオウも見た目は怖くないわけではない。
 しかしライオウは優しくていい人。
 
 そうか。
 子供たちはライオウと接することで、見た目だけで判断する真似はしなくなったんだ。
 見た目は大事だけど、見た目が全てじゃない。
 ライオウは予想外の学びを皆に教えてくれていたようだ。

「この方は俺の主であるイド様の奥様方であるリナ様だ。この方が魔族王の首が欲しいと言えば首を落とし、死ねと言えば潔く死ね。いいな」
「オオオオオオオ!!」
「いや、首なんて欲しくないし死ねなんて言わないから」
「言葉の綾というやつですよ。何を言われても貴方様の命令は絶対。そう伝えたかっただけです」

 命令とか……そんなのもどうでもいいんだけれど。

 私が呆れている間に、オーガたちは木材などを運び、住処を立てる準備を始め出した。
 するとそれをサポートするかのか、ライオウが重機を動かす。

「な、なんだあれは……」
「化け物……いや、なんだ!?」

 オーガたちは重機に驚くばかり。
 これまで見たことのない機械に仰天しっぱなしだ。

「この辺りも広いですけど、あれだけの人数が住まいを作る言うたらちょっと土地が足りまへんから」
「ああ。土地を広げるために重機を動かしたんだね」

 私の隣で話をしていたレンが、扇を私に向かって扇ぐ。
 いきなり何をするのだろうと私は怪訝に思い、首を傾げる。

「なんと言いますか……ちょっと顔色がすぐれんように見えましたんで」
「そうかな……そう言えば、ちょっと体が怠いかな」

 いつもと比べると何か気怠く、少しふらつくような気がする。
 レンに言われるまで大して気にはならなかったけれど、言われたらなんだか意識をしてしまう。
 不思議なものだよね。
 さっきまでは何とも思ってなかったのに。

「少し横になりますか?」
「ううん。大丈夫。そんなに疲れてるわけじゃないし」

 私は笑顔を作りレンに向ける。
 そしてオーガたちの作業の方を眺め、ふと思った事を口にした。

「オーガたち……というかさ、魔族とモンスターの違いって何なんだろうね。見た目は同じなのにまるで違う生き物みたい」
 
 近くを浮いていたクマが私の腕の中に着地し、同じようにオーガの方に視線を向けながら話し出す。

「そうだね……リナ様に分かりやすい言葉で言えば、意思の無いクローンみたいなものかな」
「クローン……自然に生まれたわけじゃないんだ」
「うん。もっと前の魔族王が生み出した禁呪……不自然に生物を生み出す技法。そうして生まれるのがモンスターなんだ」
「あの黒い霧がそうなんだ……」

 私はその話を聞き、霧に対して酷い嫌悪感を覚える。
 そんな技術を創り出して、人を襲わせて……本当に酷い術だ。
 あんなものは世界にあってはいけない。
 存在してはいけないものなんだ。
 漠然と、しかしそうハッキリと私は判断する。

「俺もあの技術は好きになれません。邪道ですよ、あんなものは」
「邪道ばかりの中で、正道を進むことができたんやなぁ、ゼロスは」
「そんな良いものではない。ただ卑怯なことが嫌いなだけだ」
「それが正道なんじゃない? 曲がったことが嫌いで、真っ直ぐ進んで来た……うん。良いことだと思うよ」
「リナ様……」

 ゼロスは綺麗な顔をグシャグシャにして、ホロリと目元から雫を流す。

「勿体ないお言葉……感謝いたします!」
「なんか新しい住人は面倒な人だね……」

 号泣し出すゼロスに呆れるサリア。
 私も呆れて涙するゼロスを見る。

「オーガの人たちがここに来たのはいいんだけどさ……これからどうしようかな」
「どうしようとは……どういうことですか?」

 ゼロスは鼻をすすりながら私に聞く。

「だって、人間の世界に魔族が大量に移り住むわけでしょ? 問題にならないかなって、思ってさ」
「問題にですか……問題になった時は、俺が全てを黙らせてみせますよ」
「それが問題って言ってるの! うーん……何事もなければいいんだけど」

 何事もなければいいとぼんやりと考える私であったが……
 何事もないまま済むわけがなかったのである。
 これだけの魔族がこの地域に住み始め、話が大きくなるのにそう時間はかからなかった。
しおりを挟む
感想 253

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。