長安陥落~ ཀེང་ཤྀ་ཕབ།

りゅ・りくらむ

文字の大きさ
37 / 49
第三章

そのころニャムサンは……

しおりを挟む

 ニャムサンは建立中の寺の視察に向かっていた。
 寺の工事は遅々として進まない。呪いの噂が絶えず、逃亡する労働者が続出。新たに徴集しようとしても、なかなか募集に応じる者がいなかった。しびれを切らしたツェンポが強制的に人足を徴集しようというのを、ニャムサンは止めていた。庶民から反感を買ってしまったら仏教が広まるどころか、嫌悪の対象となってしまう。
 せっかく招聘したシャーンタラクシタも、妨害がなくなったらまた来ると言って帰国してしまった。ルコンとゲルシクに京師から技術を持つ工人を沢山連れて来るよう命じたというが、このままではそれも無駄になってしまう。
 その解決の糸口が見えて来て、ニャムサンは上機嫌だった。
 しかしタクは始終不安そうな顔をしている。
「本当に、あのふたりを牢においてきてしまってよかったのですか?」
「おまえだって、どこまでもついてきてうざったいって言ってたじゃないか」
「殿に話を合わせてただけですよ。本当はいてくれたほうがこころ強いです。だって、なにか危険があるから来てくれてたんでしょ?」
「ホント、おまえは口先だけのお調子者だから当てにならないよな」
「だから、当てになるあのふたりを呼び戻しましょう」
「じゃあ、当てにならないおまえはクビな」
「やっぱり呼び戻さなくていいです。でも、賊に襲われて殿に死なれたら、結局無職になっちゃうから困るんですよね」
「なんでオレが死んでおまえが無事なんだよ。死ぬなら身体を張ってオレを守る役目のおまえが先だろ」
「わたしは殿が賊と戦っている間に助けを呼びに行く役目ですよ」
「なんで主のオレに戦わせるんだ」
「だって、剣の腕は殿の方が上じゃないですか」
「じゃあ、おまえより弱そうなヤツだったら、おまえが相手しろよ」
「わたしより弱いヤツだったら、殿が確実に勝てるからいいじゃないですか」
「あのねぇ、そういうときは『鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん』って言って、家来が相手するもんなんだよ」
「なんでトリとかウシとか出てくるんですか」
「バカ。喩えて言うんだ」
「どうせサンシさまからの受け売りでしょう。ちょっと難しい言葉を覚えたからってひけらかさないでください」
「いいか、オレの馬はおまえの馬より速い。相手が強いか弱いかなんて見る前にオレはさっさと逃げるからな。遅い馬に乗ってるおまえはその間身体を張って時間稼ぎするんだ」
「クビになった方がいいのかな」
 タクはボソリとつぶやいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

処理中です...