蛍火送り

椎井 慧

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第二夜

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「ねえ、お姉ちゃん。もしかして道に迷ってる?」

 じわりと汗のにじむ私の手を握り、沙夜が聞く。

 小道に入って体感数十分。もしかしなくても道に迷っている。

 小道だと思っていた道は途中から獣道に変わり、およそ子どもの歩けるような道ではない。

 そろそろ引き返さなくては。沙夜をこれ以上連れ回すわけにもいかない。

 すると、目の前をホタルが横切った。ホタルの行く先に目をやると、小さな泉のようなものがあった。

「あ……」

 私はその光景に思わず息を飲んだ。


 泉の周りには楽しそうにふわふわと舞うホタルたち。もし天国があるならこんな感じなのだろうか。水面がホタルたちの光できらめいている。

 ――そして泉のほとりに佇む、真白な少年。

 髪も肌も透き通るように白くて、彼の周りだけ清廉な空気が漂っているようだ。

 真夏の熱帯夜におよそ似つかわしくないその姿は、まるで天使……。

 そんなことをぼんやり考えていると、こちらに気付いた少年が声を掛けてきた。

「誰?」

「え……」

 私は面食らって何も言えなかった。しかし沙夜がいつものように明るく返事をする。

池脇いけわき沙夜さや! 小学2年生です!」

 少年はふっと笑うと私に視線を送る。

「君は?」

 その視線に、身体が硬直するような、背筋が熱くむずむずするような変な感覚を覚えながら震える声で答えた。

灯里あかり……池脇灯里。小学5年生……です」

 すると彼はホタルの光のように優しい笑みを浮かべてこう言った。

「ぼくはひかる。初めまして、灯里、沙夜。」
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