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執着旦那と愛の子作り&子育て編
出来れば・・・一つずつ来て欲しい。
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ハイシア城。
夜も更けシャリオンは自室に帰ってきた。
今日一日で本当に色々なことがあった。
王太子であるルークの伴侶のことが前進したと安心したのもつかの間。
新たな問題が増えた。
突如現れた魔物と共に消えたセレス。
ほぼ同時に解決した村の発見は、そのセレスが関係しているのだろうと思うと素直に喜べない。
どうにかしたいと思っていたが、犠牲になってほしいとは思っていなかった。
まずは、出現した村の全体把握をしたら、すぐにでもセレスの捜査に着手しようと思っていた。
だが、また別の問題が起きてしまった。
今シャリオンの隣にはいつもいてくれる存在がいない。
「・・・、」
何故こんなことになってしまったのだろうか?
いくら考えても答えは出てこない。
平常心で居たつもりだったのだが、それが出来ていなかったのだろうか。
自分の未熟さに小さくため息をついた。
シャリオンが執務室に行くと、ウルフ家の者からの報告を聞いていた。
そうした中でとても信じられないことがあった。
例の村で安否調査をすすめていると、行方不明な人物たちがいるというのが分かった。
時期を尋ねると村から出られなくなったころだったらしく、調査隊はその行方不明者についても捜索を始めた。
しかし、村の中にはどこを探しても見つからなかった。
それどころか、皆が認識しているのに、誰もがあやふやなことを言う。
1人以上だったような気がするが、何人いたかわからない。
ただ、そのうちの1人は『ガリウス』と言う名前の美しい男だと言うのだ。
念のためガリウスの絵姿をみせると全員が口をそろえて間違いないと言ったそうだ。
ガリウスは次期宰相として常に王都に居たし、終わればすぐに領地に戻ってきていた。
だからただの他人の空似だと言えると思っていた。
しかし。
・・・実験段階とは言えワープリングの存在が逆にその可能性を立てることになってしまった。
執務室から離れることもあったし、絶対に一人にならなかったというわけではない。
本来であれば側近なのだからレオンにつきそうべきなのだが、そのレオンすらも単独行動をする。
次期宰相のガリウスではあるが、側近である彼に付き人がいるわけがない。
一応ウルフ家の者は証明できるが、この場合ウルフ家は身内の者になる。
レオンがいる手前、誰も口に出さなかったが、ガリウスへの疑念を向けられた。
防衛大臣は特にガリウスを疑いの目で見ており、レオンへ「そういう証言がある以上。一定の措置は必要ではないか?」と言った。
レオンはそれを暫く考えたが、それにより事実確認が行われることになり、ガリウスは今も王都で取り調べを受けている。
シャリオンよりもよっぽど口が達者で、理路整然と物事を考えられるガリウス。
きっと心配は無意味だ。
しかし、・・・不安は尽きない。
シャリオンはベッドに体を沈みこませた。
帰ってから少したってもまだ気分は浮上しない。
自室に戻り、なんだか籠りたくなって寝室に籠ってしまってから動けないでいる。
仕事に手を付けようと言う気にはならず、ただ不安しかなかった。
ルークの事もセレスの事も、・・・ガリウスの事も。
考えることが多すぎて。
でもどれも大切で。
どうしたらうまくいくのだろうか。
「っ・・・」
どんなに考えてもわからない。
こんな時にはいつもガリウスが気付いて、話を聞き時には背中を押してくれていた。
しかし、今は頼るわけにはいかない。
不本意な疑いを掛けられ、ガリウスも頑張っているのだから、シャリオンも頑張らねば。
そう思った時だった。
ふわりと頭を撫でられた。
「!」
きっと、ガリウスじゃなかったら驚いていた。
けれど、何故かガリウスの気配だけは分かる。
ずっとその香りだと思っていたが、なんだか違うような気がする。
しかし、今はそれはどうでもいい。
ガバリと起き上がると、その姿を確かめる。
「っ・・・」
今日は帰ってこれないと思っていた。
帰ってきたという事は、潔白が証明されたという事だ。
「ただいま戻りました」
「っ・・・おかえりっ」
「今日は大変でしたね」
「っ・・・ガリィに比べたら」
ガリウスの優しいキスが頬に触れる。
「シャリオンには言ってませんがあれくらいの質疑はいつもの事ですよ」
「でも」
「今回は流石に証言した人物全員が、行方不明者に私が居たというので呼ばれたのです。
流石にそれでなにもしないわけにはいかないでしょう?」
「そう・・・だけど」
ガリウスはクスリと笑った後、頬を撫でた。
「心配してくださってありがとうございます。どこぞの誰かが変身の魔術を使ったのでしょう。
アレは別にコンドル家の特権ではない話しですし、セレスもクラスの魔術師は使えるそうです」
「そう・・・だよね。
ガリィなら大丈夫だってわかってたんだけど。・・・・ごめんね」
心配しなくても大丈夫だと思っていても我慢が出来なかった。
そんなシャリオンにこんな事態だと言うのに嬉しそうに微笑み、ちゅっと額に口づけられる。
「その間私を考えていてくれたと言う事でしょう?
貴方が私のことを考えてくれる時間があるならば、それがどんな感情だって嬉しいですよ。
・・・出来れば優しい感情が嬉しいですが」
「っ・・・そ、・・・・また・・・揶揄って」
シャリオンが心配していると言うのに、余裕気に微笑むガリウスにキっと睨む。
すると、ガリウスはクスクスと笑った。
「揶揄ってなどいないです。
・・・シャリオンはきっと殿下の事、・・・伴侶2人の事を考えていると思っていたので」
ガリウスがそういうのも当然で、思い出したようにシャリオンは苦笑した。
「ガリィ。正確には王配と側室だよ」
「どちらでも構いません」
そんなことは全くないが、次期宰相としてルークの支えになるのに、知ったことではないのであろう。
以前の婚約者と比べれば2人は国庫を脅かすような危険はないからだ。
・・・
・・
・
少し時は戻る。
ガリウスを取り調べをしようとなった直後の事だ。
直ぐに執務室に入ってきたのは、先ほど別れたばかりのアンジェリーンとミクラーシュだった。
そのアンジェリーンはルークとブルーノを捕まえると、飛んでもないことを言い放った。
今考えても王族と血が近い公爵の家の出だから言えることだった。
「ルーク殿下。少々お時間宜しいでしょうか」
ガリウスやセレスの事で困惑しているシャリオンだったが、その強気なアンジェリーンに意識が引っ張られる。
2人揃って現れたというのならば、あの魔物について何かあったのだろうかとも思ったが、この場所で一番優先すべきは陛下であるブルーノだ。
それを差し置いてルークを呼びかけたことで、少々嫌な気もした。
呼ばれたルークは不思議そうにしながらも応諾する。
すると・・・。
「いつになったらお返事を頂けるのでしょうか」
「「「・・・」」」
その言葉に一斉に皆が無言になった。
最近ルークへ見下すような態度は消えた矢先の出来事に皆が困惑である。
いや、これだって別に見下しているわけではない。
だが、タイミングがあると思うのだ。
シャリオンは昼間のうちにアンジェリーンが室内を伺い知ることが出来る魔法を扱えることを知っていたから余計にそう思った。
王配になることに固執しているように見えるアンジェリーンだが、王族の人間に媚びへつらう事は無い。
その強気な態度はアンジェリーンの年齢にも関わってくるのだろう。
一番年齢が高いのはミクラーシュではあるが、結婚に年齢が作用するのは大きくあるし、王家としても2人が気に入らないならすぐにでも次を探さなければならないはずだ。
だが、こんな状況でそんなことを言うアンジェリーンにルークは露骨に嫌な表情を浮かべた。
それもほんの一瞬だったが、シャリオンだから分かった。
アンジェリーンに何かを言おうとしたが、それをかぶせたのはアンジェリーン。
「早々にお返事を頂きたいのですが」
「すまないが、今はそんな状況ではない。そう待たせないうちに」
「いいえ。今です。そもそも選定が困難を極めるのであれば決めて差し上げましょう」
アンジェリーンから何か決意を感じられ、その気配に皆が気圧されたのだが、続いた言葉に皆開いた口がふさがらない。
「私が王配になります」
「・・・、」
言い切ったアンジェリーンにルークは面食らった。
いや。この部屋にいる全員だ。
だが周りの反応などお構いなしになおも彼は続ける。
「ですが、マリアージュ・ブランを望みます」
『マリアージュ・ブラン』とは要は偽装結婚である。
つまり、子をなさないと宣言をした。
敢えて口に出したと言う事は、核組織も出さないと言う現れなのだろうか。
皆が一斉に息を飲む。それは当然だ。
王太子であるルークには後継ぎが必要で、子を成さなければならない。
勿論側室が成すこともあるが、自ら成さないと宣言している人物が王配には難しい。
ルーク以外に後継ぎを成せるとしたら側室だが、現状居ない。
後はライガーにとなるがライガーは結婚をしないと言い切っているからこちらも無理だ。
であればアンジェリーンの望みは受け入れられるわけがない。
「し・・・しかし」
そう言ったのは、騎士団統括だ。
アンジェリーンはそんな彼を抑止する様に手を目の前に出した。
「子の事なら心配無用。
それはミクラーシュがどうにかします」
皆が一斉に息を飲み続いて、ミクラーシュに視線が行く。
ミクラーシュもまた、緊張をした様子はなくまっすぐルークを見ていた。
「私は心身ともに殿下を支えさせていただきたく存じます。
それ故、私の身分がどの地位にあろうとも構いません。
傍に置かせていただけるのであれば、それ以上の望みはありません」
「・・・、」
思わずシャリオンはルークを見たが、珍しく彼も驚いている様だった。
・・・
・・
・
思い出しても驚きしかない。
あの状況で話したアンジェリーンも、
側室で良いと言うミクラーシュに、
それを了承したルーク。
ルークは幼い頃より、結婚に対して夢を抱いている様だった。
それは、例の初恋の人に対している者になのかもしれないが。
だがルークは予想に反して軽い返事で、2人がそれで良いなら良いと言ったのだ。
ガリウスが隣にいて思い出されると、やはり少々可笑しかったのかもしれない。
しかし、これ以上口を出して良いかわからないのも事実だ。
だから気持ちを切り替える様に言った。
「でも・・・ガリィの疑いが晴れて良かった」
しかし。
「いえ。晴れていません」
「え?」
であれば何故ここに居るのだろうか??
困惑の眼差しを浮かべると、ガリウスはニコリと微笑んだ。
そして・・・・。
「夢物語を真実にすることが出来そうです」
「え?」
夜も更けシャリオンは自室に帰ってきた。
今日一日で本当に色々なことがあった。
王太子であるルークの伴侶のことが前進したと安心したのもつかの間。
新たな問題が増えた。
突如現れた魔物と共に消えたセレス。
ほぼ同時に解決した村の発見は、そのセレスが関係しているのだろうと思うと素直に喜べない。
どうにかしたいと思っていたが、犠牲になってほしいとは思っていなかった。
まずは、出現した村の全体把握をしたら、すぐにでもセレスの捜査に着手しようと思っていた。
だが、また別の問題が起きてしまった。
今シャリオンの隣にはいつもいてくれる存在がいない。
「・・・、」
何故こんなことになってしまったのだろうか?
いくら考えても答えは出てこない。
平常心で居たつもりだったのだが、それが出来ていなかったのだろうか。
自分の未熟さに小さくため息をついた。
シャリオンが執務室に行くと、ウルフ家の者からの報告を聞いていた。
そうした中でとても信じられないことがあった。
例の村で安否調査をすすめていると、行方不明な人物たちがいるというのが分かった。
時期を尋ねると村から出られなくなったころだったらしく、調査隊はその行方不明者についても捜索を始めた。
しかし、村の中にはどこを探しても見つからなかった。
それどころか、皆が認識しているのに、誰もがあやふやなことを言う。
1人以上だったような気がするが、何人いたかわからない。
ただ、そのうちの1人は『ガリウス』と言う名前の美しい男だと言うのだ。
念のためガリウスの絵姿をみせると全員が口をそろえて間違いないと言ったそうだ。
ガリウスは次期宰相として常に王都に居たし、終わればすぐに領地に戻ってきていた。
だからただの他人の空似だと言えると思っていた。
しかし。
・・・実験段階とは言えワープリングの存在が逆にその可能性を立てることになってしまった。
執務室から離れることもあったし、絶対に一人にならなかったというわけではない。
本来であれば側近なのだからレオンにつきそうべきなのだが、そのレオンすらも単独行動をする。
次期宰相のガリウスではあるが、側近である彼に付き人がいるわけがない。
一応ウルフ家の者は証明できるが、この場合ウルフ家は身内の者になる。
レオンがいる手前、誰も口に出さなかったが、ガリウスへの疑念を向けられた。
防衛大臣は特にガリウスを疑いの目で見ており、レオンへ「そういう証言がある以上。一定の措置は必要ではないか?」と言った。
レオンはそれを暫く考えたが、それにより事実確認が行われることになり、ガリウスは今も王都で取り調べを受けている。
シャリオンよりもよっぽど口が達者で、理路整然と物事を考えられるガリウス。
きっと心配は無意味だ。
しかし、・・・不安は尽きない。
シャリオンはベッドに体を沈みこませた。
帰ってから少したってもまだ気分は浮上しない。
自室に戻り、なんだか籠りたくなって寝室に籠ってしまってから動けないでいる。
仕事に手を付けようと言う気にはならず、ただ不安しかなかった。
ルークの事もセレスの事も、・・・ガリウスの事も。
考えることが多すぎて。
でもどれも大切で。
どうしたらうまくいくのだろうか。
「っ・・・」
どんなに考えてもわからない。
こんな時にはいつもガリウスが気付いて、話を聞き時には背中を押してくれていた。
しかし、今は頼るわけにはいかない。
不本意な疑いを掛けられ、ガリウスも頑張っているのだから、シャリオンも頑張らねば。
そう思った時だった。
ふわりと頭を撫でられた。
「!」
きっと、ガリウスじゃなかったら驚いていた。
けれど、何故かガリウスの気配だけは分かる。
ずっとその香りだと思っていたが、なんだか違うような気がする。
しかし、今はそれはどうでもいい。
ガバリと起き上がると、その姿を確かめる。
「っ・・・」
今日は帰ってこれないと思っていた。
帰ってきたという事は、潔白が証明されたという事だ。
「ただいま戻りました」
「っ・・・おかえりっ」
「今日は大変でしたね」
「っ・・・ガリィに比べたら」
ガリウスの優しいキスが頬に触れる。
「シャリオンには言ってませんがあれくらいの質疑はいつもの事ですよ」
「でも」
「今回は流石に証言した人物全員が、行方不明者に私が居たというので呼ばれたのです。
流石にそれでなにもしないわけにはいかないでしょう?」
「そう・・・だけど」
ガリウスはクスリと笑った後、頬を撫でた。
「心配してくださってありがとうございます。どこぞの誰かが変身の魔術を使ったのでしょう。
アレは別にコンドル家の特権ではない話しですし、セレスもクラスの魔術師は使えるそうです」
「そう・・・だよね。
ガリィなら大丈夫だってわかってたんだけど。・・・・ごめんね」
心配しなくても大丈夫だと思っていても我慢が出来なかった。
そんなシャリオンにこんな事態だと言うのに嬉しそうに微笑み、ちゅっと額に口づけられる。
「その間私を考えていてくれたと言う事でしょう?
貴方が私のことを考えてくれる時間があるならば、それがどんな感情だって嬉しいですよ。
・・・出来れば優しい感情が嬉しいですが」
「っ・・・そ、・・・・また・・・揶揄って」
シャリオンが心配していると言うのに、余裕気に微笑むガリウスにキっと睨む。
すると、ガリウスはクスクスと笑った。
「揶揄ってなどいないです。
・・・シャリオンはきっと殿下の事、・・・伴侶2人の事を考えていると思っていたので」
ガリウスがそういうのも当然で、思い出したようにシャリオンは苦笑した。
「ガリィ。正確には王配と側室だよ」
「どちらでも構いません」
そんなことは全くないが、次期宰相としてルークの支えになるのに、知ったことではないのであろう。
以前の婚約者と比べれば2人は国庫を脅かすような危険はないからだ。
・・・
・・
・
少し時は戻る。
ガリウスを取り調べをしようとなった直後の事だ。
直ぐに執務室に入ってきたのは、先ほど別れたばかりのアンジェリーンとミクラーシュだった。
そのアンジェリーンはルークとブルーノを捕まえると、飛んでもないことを言い放った。
今考えても王族と血が近い公爵の家の出だから言えることだった。
「ルーク殿下。少々お時間宜しいでしょうか」
ガリウスやセレスの事で困惑しているシャリオンだったが、その強気なアンジェリーンに意識が引っ張られる。
2人揃って現れたというのならば、あの魔物について何かあったのだろうかとも思ったが、この場所で一番優先すべきは陛下であるブルーノだ。
それを差し置いてルークを呼びかけたことで、少々嫌な気もした。
呼ばれたルークは不思議そうにしながらも応諾する。
すると・・・。
「いつになったらお返事を頂けるのでしょうか」
「「「・・・」」」
その言葉に一斉に皆が無言になった。
最近ルークへ見下すような態度は消えた矢先の出来事に皆が困惑である。
いや、これだって別に見下しているわけではない。
だが、タイミングがあると思うのだ。
シャリオンは昼間のうちにアンジェリーンが室内を伺い知ることが出来る魔法を扱えることを知っていたから余計にそう思った。
王配になることに固執しているように見えるアンジェリーンだが、王族の人間に媚びへつらう事は無い。
その強気な態度はアンジェリーンの年齢にも関わってくるのだろう。
一番年齢が高いのはミクラーシュではあるが、結婚に年齢が作用するのは大きくあるし、王家としても2人が気に入らないならすぐにでも次を探さなければならないはずだ。
だが、こんな状況でそんなことを言うアンジェリーンにルークは露骨に嫌な表情を浮かべた。
それもほんの一瞬だったが、シャリオンだから分かった。
アンジェリーンに何かを言おうとしたが、それをかぶせたのはアンジェリーン。
「早々にお返事を頂きたいのですが」
「すまないが、今はそんな状況ではない。そう待たせないうちに」
「いいえ。今です。そもそも選定が困難を極めるのであれば決めて差し上げましょう」
アンジェリーンから何か決意を感じられ、その気配に皆が気圧されたのだが、続いた言葉に皆開いた口がふさがらない。
「私が王配になります」
「・・・、」
言い切ったアンジェリーンにルークは面食らった。
いや。この部屋にいる全員だ。
だが周りの反応などお構いなしになおも彼は続ける。
「ですが、マリアージュ・ブランを望みます」
『マリアージュ・ブラン』とは要は偽装結婚である。
つまり、子をなさないと宣言をした。
敢えて口に出したと言う事は、核組織も出さないと言う現れなのだろうか。
皆が一斉に息を飲む。それは当然だ。
王太子であるルークには後継ぎが必要で、子を成さなければならない。
勿論側室が成すこともあるが、自ら成さないと宣言している人物が王配には難しい。
ルーク以外に後継ぎを成せるとしたら側室だが、現状居ない。
後はライガーにとなるがライガーは結婚をしないと言い切っているからこちらも無理だ。
であればアンジェリーンの望みは受け入れられるわけがない。
「し・・・しかし」
そう言ったのは、騎士団統括だ。
アンジェリーンはそんな彼を抑止する様に手を目の前に出した。
「子の事なら心配無用。
それはミクラーシュがどうにかします」
皆が一斉に息を飲み続いて、ミクラーシュに視線が行く。
ミクラーシュもまた、緊張をした様子はなくまっすぐルークを見ていた。
「私は心身ともに殿下を支えさせていただきたく存じます。
それ故、私の身分がどの地位にあろうとも構いません。
傍に置かせていただけるのであれば、それ以上の望みはありません」
「・・・、」
思わずシャリオンはルークを見たが、珍しく彼も驚いている様だった。
・・・
・・
・
思い出しても驚きしかない。
あの状況で話したアンジェリーンも、
側室で良いと言うミクラーシュに、
それを了承したルーク。
ルークは幼い頃より、結婚に対して夢を抱いている様だった。
それは、例の初恋の人に対している者になのかもしれないが。
だがルークは予想に反して軽い返事で、2人がそれで良いなら良いと言ったのだ。
ガリウスが隣にいて思い出されると、やはり少々可笑しかったのかもしれない。
しかし、これ以上口を出して良いかわからないのも事実だ。
だから気持ちを切り替える様に言った。
「でも・・・ガリィの疑いが晴れて良かった」
しかし。
「いえ。晴れていません」
「え?」
であれば何故ここに居るのだろうか??
困惑の眼差しを浮かべると、ガリウスはニコリと微笑んだ。
そして・・・・。
「夢物語を真実にすることが出来そうです」
「え?」
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