姫と王子

いちご

文字の大きさ
上 下
7 / 7
ソフィアSIDE 1

そんな目で見ないで下さい。

しおりを挟む
「Sophia(ソフィア)様」
私には親友が居る。
名前はElizabeth(エリザベス)。
お姫様にしか見えない美少女で、リズと呼んでいる。
私付きの侍女で幼少期から一緒に居る為必然的に仲良くなった。
親友なのだから敬語抜きでと頼んでいるのだが
「親しき仲にも礼儀あり、たとえ友人でも私は侍女なのですからダメです」
頑なに言われたら無下に出来ない。
言葉使いはそのままになってしまった。

だけど仕事の時以外は、前世での友人達と同様仲良く出来ている。
一緒に居て楽しいし、ずっと仲良くしていきたいのだけれど
「ソフィア様」
物凄く困っている事が1つだけある。
「今日も素敵です」

うん、リズ。気持ちは分かるよ。
分かるけどね、止めて?

毎日私を憧れの王子様として見るのは止めて欲しい。
実際自分もこの姿が自分じゃなかったら同じ目で見てしまう。
分かっていても鏡を見る度にウットリしちゃうし、未だに自分の身体とはいえ裸を見るのも触るのも抵抗がある。
まぁ、見た目王子とはいえ女性の身体だから胸もあるし、男性のアレもないのだから見ても大丈夫なのだが。

今の自分の身体付きはモデル並みにスタイルが良い。
ウエストは細くて胸は大きいが、鍛えている為全体的に引き締まっていて良い感じに筋肉が付いている。
足も胴より長い。
まさに外国のマネキンスタイル。
前世の自分が見たら羨ましがるレベルだろう。

顔もスタイルも胸以外王子様。
外見を裏切らない為に色々頑張った為、基本何でも出来る様になった。
そのせいで、リズだけでなく、沢山の女性から憧れの目を向けられる。
モテまくりだ。

って、違う。
私は姫。王子じゃない。
本来なら可愛らしいドレスを見に纏い、綺麗に髪を結い、化粧をし、キラキラした装飾品等で着飾っている筈。
だけど、激しく似合わない為いつも男装をしている。
有り得ない位似合い過ぎるし、格好良い。
前世の例えで言うと、宝塚の男役みたいな感じかな?
男性にしか見えないのに女性だから男臭くない。
異性より親しみやすく、近付きやすい。
こんな女性ばかり居たら男性要らないんじゃない?って言いたくなるレベル。
私だって、自分じゃなければ惚れるよ本気で。

「ソフィア様」「ソフィア様」
気が付くと当たり前の様に可愛らしい女の子達に囲まれる毎日。
キラキラした憧れの目を向けられたら応えてあげたくなって、ついついアイドルみたいなファンサービスをしてしまう。
女の子が喜びそうな笑顔・仕草・行動・台詞。
自分がされて嬉しい事をしてあげるとキャアキャア言いながら皆喜んでくれる。
笑顔を見ると嬉しいし、楽しいのだが。
こんなんじゃ余計王子化に拍車が掛かるだけ。
分かってはいるのだけれど、小さな頃からずっと続けているのだから止め時が分からない。
うん、困った。
笑顔を振り撒きながら内心考えていたら
「ソフィア、今からいいか?」
父から声を掛けられた。


リズと一緒に父の部屋に向かう。
其処には父だけでなく、母迄居た。
一体何なのだろうか。

「ソフィア、今好きな人は居るか?」
好きな人?
父に聞かれ
「居ません」
即答する。

「なら、お見合いしてみない?」
お見合い?
「この前ね、隣国に行った時其処の王子様を見て思ったの。ソフィアとお似合いって。あの方なら絶対貴女と並んだら絵になるし、素敵よ」
隣国の王子様。

いやね、母よ。普通なら王子様と結婚って嬉しいし憧れるよ。
女の子の夢だ。
だけど王子にしか見えない私が王子様と並んだらそれは前世で言うBLにしか見えないワケで。
そんなのこの世界に腐女子を誕生させてしまうキッカケになりかねない。
まぁ、友人に数人居たから理解あるし、本も読まされたから男性同士のノウハウも知ってる。

「あの母様。私の見た目理解してますよね?今迄私が恋愛しなかったのは自分の見た目を自覚していたからです。幼い頃より私は姫と言うより王子にしか見えません。そんな私が男性の、それも王子様の隣に立つなんて、違和感しかありませんわ」
ニコニコ。
ん?
何故物凄く嬉しそうにニコニコしてるんですか?母。

「大丈夫よ。その方も同じだから」
同じ?
「その方ね、有り得ない位可愛らしいの。何処からどう見ても美少女にしか見えなくて。一度逢って話をしてみたらどうかしら。絶対気が合うと思うし、上手くいきそうよ?」
美少女にしか見えない王子様。
王子にしか見えない自分と姫に見られる王子。
これは一度逢って顔が見てみたい。
好奇心に勝てなかった私は
「分かりました。一度話をしてみます」
母の話に乗ってしまった。



「お見合いですか?」
はぁああぁぁ。重い溜め息を吐きながらリズが口にする。
「ソフィア様はソフィア様のみで完結してるんです。性別を超えた美しさ。ソフィア様に男性なんて要りません」
私は私のみで完結って、どんな考えしてるのリズ。
意味が分かりません。

「男性なんて唯野蛮で不潔なだけです。そんな汚物に神聖なソフィア様を近付けるなんて、許せません」
リズ、一体貴女男性にどんな怨みを持ってるの?
あと、神聖って、私は普通の人間なんですが。

「ソフィア様。たとえ隣国の王子と言えども、貴女に比べたら月とスッポンです。逢う必要等ありませんわ」
いやいやいやいや、逢う前からスッポン呼ばわりですか。
「あっ、私とした事が。これではスッポンに失礼ですわね。雪と墨、提灯に釣鐘の方が適切でしたかしら」
うん。生き物でさえ無くなりましたか。
それより異世界でことわざを聞くとは。
これはもしかしたら、以前も日本からの転生者居たのかもしれないわね。

「リズ。逢う前から色々決め付けてしまうのはよくないわよ?取り敢えず一度顔合わせをするのが良いと思うの。もし不安なのなら、一緒に着いてくる?」
「…………分かりました。ご同行させて頂き、私自ら釣鐘を鑑定します」
釣鐘の鑑定。
リズ、分かっているかしら。今から逢うのは人間よ?

怖い顔をしながら同行を決めたリズ。
不安しか感じないのだけれど、大丈夫?
嗚呼、置いていった方が良いかも。
って、言った手前断れないし。
思わず吐きそうになった溜め息を飲み込み
「なら外出の準備をしましょうか」
無理矢理笑顔を作った。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...