鬼姫は今度こそのんびりしたい。

さちもん

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三章

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一方ユミリィは悪魔召喚から4ヶ月目に漸く『王都からでなければ怖い思いはしない』という結論にいたり、公爵邸別邸への引っ越しを控えていた。
控えめな令嬢を演じながらも、元々は華やかな場や社交が好きな性格だったユミリィ。長く続く引きこもり生活に限界を感じていたのだった。
それは母親のエミリアも同様で彼女は3ヶ月経つ頃にはサロンなどに被害者面で顔を出すようになっていた。
なにより、本邸の自室に残してきた宝飾品も別邸に運ばれたとの知らせを受けたことで気が大きくなったこともあった。
(やっぱり、エレオノーラは私に逆らえないんだわ。)
引っ越しを前に学園にも復帰した。
呪われた自分を皆がどのように扱うのか一抹の不安はあったがライルの婚約者になったこともあり前以上に気遣われる存在となっていた。
皆との会話の中でユミリィは、自身が実の叔父に悪魔召喚の生贄にされかけた令嬢だと周囲が思っていることを知った。
「ユミリィ様は次期公爵様となられるのでしょう?」
自身の左前腕にある継承印のことをユミリィは惜しみなく見せていた。あくまでも控え目にだが。
「生贄に選ばれたのが公爵令嬢と聞いてすぐにユミリィ様を思い浮かべましたわ。」
「ユミリィ様が狙われたのね、実の叔父様になんて、可哀想過ぎますわ。」
「もしかして、エレオノーラ様が叔父様をたぶらかしていたのでは?」
「まぁ!だとしたら何と言うことかしら!」
「でも、エレオノーラ様は瘴気まみれの屋敷に閉じ込められているのでしょう?」
「元々学園での学びなど必要ないって、中等部からの入学も拒否されていたのでしょう?」
「幼い頃からの社交も身に付いていない公爵令嬢なんて存在してはなりませんわ、」
ユミリィの取り巻き達が口々に言う言葉はユミリィに根拠のない自信を取り戻させていく。
「皆様、エレオノーラのことを悪く言わないで、彼女は今、瘴気に満ちた屋敷の中で苦しんでいるのよ。」
ハンカチで目頭を抑えるユミリィ。
濃い魔素は瘴気となり人の身も心も壊していく、黙っていてもエレオノーラは破滅するだろうとユミリィは考えていた。
屋敷の瘴気が魔素に変わるまでは半年以上は必要だとの話だ。自分が改めて本邸で暮らせるようになる頃には、エレオノーラは死んでいるのではないか、エレオノーラが死ねば自身に掛けられた呪いも解けるような気がしていた。
「中にいる人達は、生きているのかしら。」
ふと漏らされた言葉。
瞬時にユミリィの脳裏に見たことのない灰色と黒を纏う美しい少女と後ろに控える使用人の姿が過った。
「ユ、ユミリィ様!大丈夫ですか?」
取り巻きの子爵令嬢が頭を押さえるユミリィの体を支えた。
「中の方々は、ご無事ですわ。」
聞こえてきた声に皆の視線が動く。
2学年飛び級をした天才児と言われる子爵令嬢だ。
「突然すみません、聞こえてきたものですから。」
少しあざとい系の上目遣いで許しを請う令嬢。
「私の兄の1人が宰相府に勤めておりますの。私、エレオノーラ様と同い年ですから少し交流があると告げれば兄が教えて下さったの。屋敷内との連絡手段が復活していると。」
ユミリィの背中に汗が流れた。
奴隷のように扱ってきたエレオノーラと交流する令嬢などいないはずだ。
「エ、エレオノーラ様と交流があるのですか?」
そう尋ねたユミリィの友人に令嬢はクスリと笑う。
「エレオノーラ様は表に出てこない引きこもり令嬢ですがそれなりに方法はありますから。兄の情報ではエレオノーラ様や屋敷内に残っている使用人達は無事に過ごされ、短時間なら屋敷の外、門の近くまで来られるから物資の搬入が出来ているようです。それでもエレオノーラ様が屋敷から出られるようになるにはまだまだかかりそうで、学園で会えないのが残念です。」
真っ青なユミリィに子爵令嬢は声をかける。
「どうなさったの?インフェ伯爵令嬢様?」
首を傾げる子爵令嬢は続ける。
「エレオノーラ様は贄にされかけたせいで未だに体内の魔力が落ち着かないのですよ?ご心配ですよね?」
エレオノーラが生け贄にされかけた令嬢なのかと取り巻き達がにわかにざわついた。
「引っ越しと共に気遣っていた従妹様に会えるかもしれないのよ?」
しかし、次の言葉で取り巻き達は子爵令嬢を睨んだ。そんな様子に気付かないのか、首を傾げて顎に人差し指を置いて尋ねる彼女は年下だというのも相まってとても愛らしく見えた。
「嬉しいわけないじゃないの、エレオノーラ様はユミリィ様を虐めていたのよ!」
一人の令嬢の言葉に子爵令嬢は眉尻を下げた。
「まぁ!そうでしたの?私ったら、そういう世情に疎くて、ごめんなさい。」
子爵令嬢の言葉の終わりと共にチャイムが鳴った。
ユミリィは初めて言葉を交わす年下の同級生を苦手に思った。

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