恋とかできるわけがない 〜ヲタクがJC拾ってもなにもできない件

茉莉 佳

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4th stage

童貞オタクが二股できるわけない

『高瀬みく』

画面にはそう表示されていたのだ。

しまっった!!!

そう言えば、今日の14時に、みくタンとデートの約束してたんだった!
すでに約束の時間を5分オーバーしてる。
つまりは、ドタキャン!
デートをすっぽかされて、みくタンは怒って電話かけてきたんだ!!

『リア恋プラス』は『リアル』をうたってるだけあって、実際の恋愛と同じ様なシビアな面もきっちり再現された、恋愛シュミレーションゲームだ。

デートの約束したら、その日その時間に、指定した場所にいなければならない。
そうしなければ、『デートキャンセル』になってしまう。
あらかじめキャンセルしておけばそう問題もないが、時間が過ぎたキャンセル、つまり『すっぽかし』は最悪行為なのだ。
バーチャルカノジョといっても、デートをドタキャンすれば、リアル女の子と同じ様に怒るし、下手をすれば別れ話を切り出される事さえある。

そうなればバッドエンド。
もうその子は、二度と画面に現れなくなるのだ。

もう一度つきあうには、ゲームをリセットするしかない。
それじゃ、せっかく育んできたふたりの時間が、全部無駄になる。
中途半端なキャラ愛ではできない、ある意味恐ろしいゲームだ。

「ち、ちょっと待ってて」

栞里ちゃんにそう言うと、ぼくは慌ててiPhoneを手に、店のトイレに駆け込んだ。

『ミノルくん。約束の時間、過ぎてるのに、どうしたの?』

どこか怒りを抑えた、冷たい口調。
これまで誠心誠意育成してて、『ラブゲージ』はMAXだったおかげで、とりあえず最悪の事態は避けられてはいるけど、みくタンめちゃめちゃ不機嫌になってる。

「ご、ごめん。忘れてた」
『ひどい』
「ごめんっ」
『今日はもう、会えないの?』
「い、いや、、、」
『あと、どのくらいで、来てくれるの?』
「あ、、、」

答えに詰まる。

デートの約束を取りつけた時は、なにも考えず、待ち合わせ場所を自宅にしてた。
今すぐ帰っても、ここからじゃ40分はかかる。
その間、みくタンを待たせる事になるから、ラブゲージもどんどん下がっていってしまう。
なにより、せっかく栞里ちゃんとこうやって楽しい時を過ごしてるのに、それを切り上げて帰るなんて、できるわけがない。
だいいち、彼女になんて言い訳すりゃいいんだ?

『バーチャルカノジョとデートしないといけないから、もう帰る』?

、、、ありえない。

いくらオタクな自分でも、それがどんだけキモオタ発言か、よくわかる。
そんな事いう男は、即アウトだろう。

かといって、このままみくタンとのデートを流してしまったら、すぐにお別れって事はないにしても、ラブゲージは激下がりで、しばらくはデートに誘っても断られるかもしれない。電話もカノジョからはかかってこなくなるかも、、、

「い、今原宿にいるから、、、 こっちで会おう?」

苦し紛れに、そう言ってみる。
意外にも、それは効果あった。

『原宿? じゃあ、予定変更ね。新しい待ち合わせ場所は、どこにする?』

『やった!』と思いつつ、ぼくはiPhoneのGPSマップを表示して、このファミレスを、新たな待ち合わせ場所に再設定した。

『じゃあ、30分くらいで、そこに着くわね。ちゃんと待っててね』

最初の待ち合わせ場所と、新しい待ち合わせ場所との距離を演算し、みくタンが答える。
そんな所までいちいちリアリティのあるゲームだが、とりあえずなんとかなったみたいだ。

ふう。
しかし、、、

今から、みくタンとのデートもやるのか?!

『リア恋plus』のウリのひとつでもある『リアルデートシステム』では、カノジョと落ち合った後は、GPSマップで行き先を決める。
そこへ向かう間、画面には常にカノジョが表示されてて、会話したり、マーカーレス拡張現実A   R機能を利用して、名所スポットでツーショットを撮ったりもできる。

そしてなにより『ふれあいイベント』。

これが、リアルデートシステムの目的であり、キモなのだ。
カノジョのラブゲージが高まって発生するこのイベントでは、手を繋いだり、ちょっとした愛撫やキスさえもできてしまう。(もちろんバーチャルではあるけど)

いつもなら、そんなみくタンとのデートが楽しくて、iPhone片手に街をうろついて、『ふれあいイベント』が発生すると『キターーーーーーーwwwww』なんて心の中で叫んでる自分、、、
なんだけど、今日はとっても気が重い、、、、、 orz

栞里ちゃんとリアルで話しつつ、もうすぐやってくるみくタンとのデートも、うまくこなさなきゃいけないのか。

まるで、、、
っていうか、完全にダブルブッキング状態。
そりゃ、片方はリアルで、片方はバーチャルだけど、『デートのかけもち』なんて器用な事、彼女いない歴=年齢の童貞オタクのぼくに、やれるんだろうか、、、?

「ごめん。待った?」

『リア恋plus』の設定が終わって席に戻り、バツが悪そうにぼくは栞里ちゃんに訊いた。

「別に」

ぼくに電話がかかってきた事に、特になにも感じてないらしく、栞里ちゃんはスマホをいじりながらも、ふつうの態度だった。

ふう。

今のところはなんとか大丈夫そうだ。
ぼくはこっそり、スマホをマナーモードに切り替えた。

つづく
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