39 / 77
6th stage
イベントだってのに盛り上がらない
しおりを挟む
6th stage
日曜日のイベント会場。
夏の大祭典直後のイベントなだけに、いつも参加してるメンツは燃え尽きてて、新刊やグッズの新作を出しているところも少ない。
全体的に、コミケでの売れ残り在庫処分のまったり進行といった感じで、売り子もお客もけだるそう、、、
なんて感じるのは、自分自身が落ち込んだままだからだろうか?
、、、虚しい。
今までイベントに、こんなに重く、虚しい気持ちで出た事はない。
右も左もみんな敵だらけに感じて、せっかくの祭りなのに盛り上がらない。
そんな気持ちを反映するかの様に、本やグッズの売り上げも、予想ほど芳しくなかった。
『あそこはレイープ魔のサークルだから、みんな買うな』
『キモいイラスト。見るだけで孕まされそう』
だれもがそんな事を噂し合って、ぼく達を避けてる気がした。
『売り子を手伝ってくれる』って言ってた麗奈ちゃんだけど、昨日の今日だ。さすがに顔を見せるはずもない。
そう言えば、Photoshopを買ってあげた代金も、立て替えたままだ。
今さら払ってもらえる、、、 わけないか。
ホテル代だって捨て金だったし、こんな事になるのなら、ペンタブなんて買ってやらなきゃよかった。
もう、美咲麗奈の事なんて、いっさい信用しない。
「コススペースで麗奈に会ったぞ」
カメコに出かけてたヨシキがサークルスペースに戻ってきて、苦笑いしながら言った。
「『昨日はあれからどうしたんだ?』って訊くと、『ミノルくんとデートして、行くとこまでいっちゃった』ってさ」
「行くとこまでって、、、」
、、、開いた口が塞がらない。
どうしてペロッと、そんな嘘がつけるんだ?!
まあ、確かに『ホテルに行った』のは事実だけど、、、
「オレに焼きもち妬かせようとしてるんだろな。 …ったく、女ってのは意味わかんねえ。
まあ、おまえたちの経緯は全部知ってるから、あいつのブラフは滑稽にしか見えないんだけどな」
「麗奈ちゃんって、、、、 なんでそんな嘘を、平気でつくんだ?」
やるせなくなって、責める様にヨシキに問い質す。ヤツは困った様な笑みを見せた。
「病んでるんじゃね? 心が」
「心の、病みかぁ、、、」
「まあ、『レイヤーあるある』だけどな。でなくても、『女は心を見せるより先に、尻を見せる』って言うしな。他人にはなかなか本性を見せないのが、女って生き物なのかもしれないな」
「ヨシキがつきあってきた女の子も、みんなそうだったのか?」
「どうだろう? オレは女の語る愛なんて、信じない事にしてるから」
「愛?」
「女なんて、つきあってる時は『一生あなただけを愛してる。離れたら生きていけない』なんて言いながら、別れて次の彼氏ができればもう、前カレの事なんか思い出しもしないもんだろ。過去の恋愛はみんな、上書き削除してしまうのさ」
「そう言えば、男の方が、昔の恋を引きずりやすいって言うよな。失恋をウジウジと、いつまでも悔やんだりとか」
「どうせおまえも、栞里ちゃんの事、まだ引きずってるんだろ?」
茶化す様に言って、ヨシキはニヤリと笑った。
クソぅ。
こんな時に、栞里ちゃんの話を持ち出さなくても、、、
「ったく、人の傷口に塩を塗り込む様な事を言うやつだな。相変わらず」
せっかく忘れかけてた栞里ちゃんへの想いが、まざまざと炙り出され、痛々しく甦ってきたぼくは、ひとりごちる様に言った。
麗奈ちゃんと違って、栞里ちゃんは、純粋だった。
自分の気持ちをうまく表現できない様な不器用なとこはあったけど、心根は優しい、いい子だった。
今更ながら、あの原宿での事件が悔やまれる。
栞里ちゃんとは、このイベントにいっしょに来るはずだったのに。
彼女のために高いお金を出して、ロリ服まで買ったのに、、、
いやいや。
元はと言えば、ぼくが悪いんだ。
あの時、、、
『リア恋plus』の『高瀬みく』とダブルブッキングさえしなければ。
ちゃんとみくタンより、栞里ちゃんを選んでれば。
バーチャルカノジョとはいえ、二股かける様な事をしたから、栞里ちゃんを怒らせてしまったんだ。
もう一度、あの日あの時に、時間を戻せたら、、、
、、、なんて。
やっぱり未練がましく、栞里ちゃんの事は忘れられないでいる自分は、いつまでも失恋を上書き削除できないでいる。
「ミノ~ルくん♪」
ナーバスになってうつむいてたぼくは、鼻にかかった様な甘い女の子の声にハッとなって顔を上げ、ギクリと息を呑んだ。
サークルのテーブルを挟んだ向こうには、なんと美咲麗奈が立ってて、ぼくに微笑みかけてるではないか!
つづく
日曜日のイベント会場。
夏の大祭典直後のイベントなだけに、いつも参加してるメンツは燃え尽きてて、新刊やグッズの新作を出しているところも少ない。
全体的に、コミケでの売れ残り在庫処分のまったり進行といった感じで、売り子もお客もけだるそう、、、
なんて感じるのは、自分自身が落ち込んだままだからだろうか?
、、、虚しい。
今までイベントに、こんなに重く、虚しい気持ちで出た事はない。
右も左もみんな敵だらけに感じて、せっかくの祭りなのに盛り上がらない。
そんな気持ちを反映するかの様に、本やグッズの売り上げも、予想ほど芳しくなかった。
『あそこはレイープ魔のサークルだから、みんな買うな』
『キモいイラスト。見るだけで孕まされそう』
だれもがそんな事を噂し合って、ぼく達を避けてる気がした。
『売り子を手伝ってくれる』って言ってた麗奈ちゃんだけど、昨日の今日だ。さすがに顔を見せるはずもない。
そう言えば、Photoshopを買ってあげた代金も、立て替えたままだ。
今さら払ってもらえる、、、 わけないか。
ホテル代だって捨て金だったし、こんな事になるのなら、ペンタブなんて買ってやらなきゃよかった。
もう、美咲麗奈の事なんて、いっさい信用しない。
「コススペースで麗奈に会ったぞ」
カメコに出かけてたヨシキがサークルスペースに戻ってきて、苦笑いしながら言った。
「『昨日はあれからどうしたんだ?』って訊くと、『ミノルくんとデートして、行くとこまでいっちゃった』ってさ」
「行くとこまでって、、、」
、、、開いた口が塞がらない。
どうしてペロッと、そんな嘘がつけるんだ?!
まあ、確かに『ホテルに行った』のは事実だけど、、、
「オレに焼きもち妬かせようとしてるんだろな。 …ったく、女ってのは意味わかんねえ。
まあ、おまえたちの経緯は全部知ってるから、あいつのブラフは滑稽にしか見えないんだけどな」
「麗奈ちゃんって、、、、 なんでそんな嘘を、平気でつくんだ?」
やるせなくなって、責める様にヨシキに問い質す。ヤツは困った様な笑みを見せた。
「病んでるんじゃね? 心が」
「心の、病みかぁ、、、」
「まあ、『レイヤーあるある』だけどな。でなくても、『女は心を見せるより先に、尻を見せる』って言うしな。他人にはなかなか本性を見せないのが、女って生き物なのかもしれないな」
「ヨシキがつきあってきた女の子も、みんなそうだったのか?」
「どうだろう? オレは女の語る愛なんて、信じない事にしてるから」
「愛?」
「女なんて、つきあってる時は『一生あなただけを愛してる。離れたら生きていけない』なんて言いながら、別れて次の彼氏ができればもう、前カレの事なんか思い出しもしないもんだろ。過去の恋愛はみんな、上書き削除してしまうのさ」
「そう言えば、男の方が、昔の恋を引きずりやすいって言うよな。失恋をウジウジと、いつまでも悔やんだりとか」
「どうせおまえも、栞里ちゃんの事、まだ引きずってるんだろ?」
茶化す様に言って、ヨシキはニヤリと笑った。
クソぅ。
こんな時に、栞里ちゃんの話を持ち出さなくても、、、
「ったく、人の傷口に塩を塗り込む様な事を言うやつだな。相変わらず」
せっかく忘れかけてた栞里ちゃんへの想いが、まざまざと炙り出され、痛々しく甦ってきたぼくは、ひとりごちる様に言った。
麗奈ちゃんと違って、栞里ちゃんは、純粋だった。
自分の気持ちをうまく表現できない様な不器用なとこはあったけど、心根は優しい、いい子だった。
今更ながら、あの原宿での事件が悔やまれる。
栞里ちゃんとは、このイベントにいっしょに来るはずだったのに。
彼女のために高いお金を出して、ロリ服まで買ったのに、、、
いやいや。
元はと言えば、ぼくが悪いんだ。
あの時、、、
『リア恋plus』の『高瀬みく』とダブルブッキングさえしなければ。
ちゃんとみくタンより、栞里ちゃんを選んでれば。
バーチャルカノジョとはいえ、二股かける様な事をしたから、栞里ちゃんを怒らせてしまったんだ。
もう一度、あの日あの時に、時間を戻せたら、、、
、、、なんて。
やっぱり未練がましく、栞里ちゃんの事は忘れられないでいる自分は、いつまでも失恋を上書き削除できないでいる。
「ミノ~ルくん♪」
ナーバスになってうつむいてたぼくは、鼻にかかった様な甘い女の子の声にハッとなって顔を上げ、ギクリと息を呑んだ。
サークルのテーブルを挟んだ向こうには、なんと美咲麗奈が立ってて、ぼくに微笑みかけてるではないか!
つづく
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる