1 / 70
1st sense
1st sense 1
1st sense
なに? なに?
いったいどうしたっての??
いきなり目の前ブラックアウト。
なんにも見えない。
そっか。
全力で走ってて転んで、頭打ったんだ。
いやいや。
こんなとこで寝っ転がってる場合じゃない。
今日こそ航平くんにラブレター渡さなきゃ。
今どき手書きのラブレターなんて時代遅れでダサいかもしれないけど、その分気持ちが籠ってるはず。
浅井航平くん。
中学時代の2年間、同じ教室で勉強してて、同じ高校に通う様になって1年経つってのに、ほとんど口きいたことないし、席が隣になったことさえない。
だけど昨日の新学年の始業式。
同じ教室のなかに航平くんの姿を見つけたときは、もう感動で息もつまりそうだった。
もう『運命だ』って思ったね。
2年になった早々、なんてラッキー!
この勢いで、今日こそはあたしの気持ち、知ってもらうんだ!
昨日夜なべして書いた、便せん5枚もの超大作。
おかげで今朝は睡眠不足。朝も起きれなかったんだ。
、、、やっぱキモいかな。
重すぎるかな。
こんなあたしって。
それでもいい!
振られたっていい。
あたしの気持ちを、航平くんには知っててほしい。
2年以上もずっと想ってきたことを、航平くんには覚えててほしい。
でもやっぱり、、
振られるのはイヤかも。
ううん。
クヨクヨするんじゃない、あずさ!
航平くんはあたしのこと、少しは気にしてるって。
授業中でも時々目が合うし、『あずさに気がある』って噂も、ミクや萌香から聞いたことある。
自分を信じてぶつかっていけ、あずさ!!
このラブレター、今日こそ絶対渡さなきゃ!』
ーーーーーーーーーーー
あたしは全力で駆け出した。
街の景色がぼやけて左右に流れてく。
なにも目に入らない。
脇目も振らず、あたしは走って走って、走りまくった。
駅前の繁華街を抜け、学校のある小高い丘へと続く、大通りの栄川交差点に差しかかる。
この交差点は工場地帯の入口で、ダンプやトラックがひっきりなしに走ってて、よく事故が起こる場所。
なので、『魔の交差点』なんて呼ばれてる。
その交差点の最前列に立って、歩行者信号が青になるのを、あたしはじりじりと待っていた。
と、そのときのことだった。
角のビルの隅にうずくまってた、シミだらけのヨレヨレスーツを着て無精髭を生やしたオヤジが、ふらりと立ち上がると、いきなりあたしの隣にいたサラリーマンらしき40歳くらいのおじさんの背中に、ドンとぶつかってきたのだ。
ぶつかられたスーツのおじさんは、勢いで車道によろけながら飛び出した。
危ない!!
“パパパパーッ!!!”
土砂をいっぱいに積んだダンプが、けたたましくクラクションを鳴らして迫ってくる。
間一髪。
からだをエビぞりに仰け反らせたおじさんは、ギリギリでダンプを避けて尻餅をつき、なんとか巻き込まれずにすんだ。
顔は真っ青。冷や汗かきながら目を剥いてる。
そりゃそうだ。
一歩間違えればトラックの下敷きだったんだから。
犯人の無精髭オヤジは、歩道に立って薄ら笑いを浮かべ、その様子を眺めてた。
「ちょ、、おっさんなにやってんのっ?! わけわかんない!!」
思わず大声が出た。
いったいなんなの、こいつ?!
オヤジはあたしを見るとびっくりした様に顔を引きつらせ、無言のまま人ごみに紛れて消えてしまう。
他の通行人は、その光景を見て見ぬふり。だれも無精髭オヤジに関心を持ってない。
みんな、自分のことしか頭にないの?!
まったく、イヤな世の中だ。
しんと静まり返った学校の長い廊下を、あたしは忍び足で歩いていた。
教室からは先生の声だけが聞こえてくる。
もう授業がはじまってる。
完全に遅刻だ。
『2-3』と表札の出ている教室のうしろのドアを、あたしは音を立てない様にじわじわと開けた。
教壇には英語の田中先生が立っていた。
ひょろりと痩せた神経質な先生で、生徒から授業を妨害されるのをなによりもイヤがる。
見つかったらイヤミのひとつも言われちゃうかな~。
だけど、田中先生は腕組みしたまま目を閉じて、授業もせずに黙り込んでいた。
机についてるクラスメイトたちも、みな固く表情を強張らせ、物音ひとつ立てない。
なんだか異様。
不気味な重い空気が、教室に立ちこめてる。
うしろのドアから入ってきたあたしは、先生に見つからないようにからだを低くかがめ、自分の席に着く。隣のミクも、あたしが入ってきたことに気づかないみたい。ほっと肩をなで下ろし、あたしは何食わぬ顔で、カバンから教科書と筆箱を取り出した。
“ガラガラガラ…”
間髪入れずに教室の前扉が開き、担任の井上先生が入ってくる。泣きはらしたように腫れぼったい目元は、マスカラが禿げかかって黒ずんでる。真っ赤に充血した瞳。
みんなは一斉に、井上先生に注目した。
「先生、どうでしたか?」
田中先生が訊いたが、その声はわずかに震えていた。
井上先生は首を2,3回振ると教壇に立ち、重苦しい表情を浮かべてあたしたちを見渡しながら、沈鬱な口調で告げた。
「酒井あずささんのお通夜は、今日の午後6時からです」
その言葉で、張りつめていた教室内の空気は糸が切れたようになって、ざわざわと喧噪に包まれた。
「わあぁぁぁぁぁぁ、、、」
隣に座ってたミクは、突然声を上げて泣き出し、机に突っ伏した。
え?
どういうこと?
あたし、ここにいるじゃない?!
いくらあたしが遅刻したからって、悪い冗談はやめてよね!
思わず三つ隣の席の航平くんを、わたしは振り返った。
青ざめた表情のまま、彼も両手をギュッと握りしめて、口元を固く結んでる。
つづく
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
