ブラックアウトガール

茉莉 佳

文字の大きさ
19 / 70
4th sense

4th sense 4

 みんな思い思いに店内を回って、食べ物を選ぶ。
航平くんはといえば、ドリンク棚から麦茶のペットボトルを取ると、まっすぐレジに向かい、ドリンクをカウンターに置きながら、
「お好み棒と唐揚げ棒塩味下さい」
と告げた。

「今日も部活お疲れさま。航平くんはマヨネーズたっぷりだったわね」

レジのアラフォーのおばさんが、気安い感じで話しかけ、航平くんは照れ笑いした。
ふうん。
航平くんたち、常連なんだ。

コンビニの駐車場に座り込み、三人はスナック菓子やお好み棒をガツガツとむさぼった。
、、、ったく。
男子って、よくこんなとこで食べられるわよね~。
それにしてもみんな、すごい食欲。
やっぱり部活帰りはおなか空くんだろな。

「…にしても航平、そろそろあんなムチャな練習やめろよ。先輩たちもドン引きしてるぞ」

春巻きを食べてた中島和馬くんが、諭すように航平くんに言った。
その声が聞こえてないのか、航平くんはそっぽ向いたまま、お好み棒を頬張ってる。

「レギュラー決めるのはまだ先だろ。それまでに潰れっちまったら意味ないぞ?
なぁ、航平。おまえだけが辛いわけじゃねぇんだよ。
もう終わったことじゃん。早く忘れようぜ。
あずさちゃんは死んだ。
もう、いないんだ」
「…しつこく蒸し返すなよ」

苛立った口調で、航平くんは和馬くんを睨む。
隣の男子も、横から口を出してきた。

「航平。おまえの気持ち、わかるよ」
「坂本、、、」
「酒井に告るつもりだったんだろ?!」
「…」

あたしのこと、航平くんたちはどんな風に話すんだろ?
ドキドキしながら、みんなの会話に聞き耳立てる。
坂本くんは続けた。

「『2年になっても同じクラスになれた! これはもう運命だ』って、航平喜んでたもんな。
酒井って明るくて可愛いし、かなりモテるし」
「そうそう。あずさちゃんって男子に人気あったよな。気は強かったけど明るかったし」
「だよな。おれの知ってるだけで、三人くらいは想ってたかもな」
「顔だって、メッチャ可愛いかったじゃん」
「だよな」
「胸もけっこうデカかったし」
「そこ、ポイントだな、って。横からチャチャ入れんな和馬。
だから、そんな酒井にふさわしい男になるために、航平はバトのレギュラーの座掴もうとしてたんだよな」
「まあ、な」
「それが、まさかの事故で死んじゃって、、、 もう永久に告れなくなっちゃって」
「…」
「だけど航平。いつまで後悔してても、しかたないじゃん。
和馬の言うとおり、どんなに悲しんだって、酒井が生き返るわけじゃないし、一刻も早く忘れて、もっと前向きに生きろよ」
「…わかってるよ!」

やりきれない怒りをぶつけるように、航平くんは食べ終わったお好み棒のカスを、荒っぽくゴミ箱へ投げ込んだ。

「いちいちダメ押しみたいに言うなよ。オレだって、頑張ってんだよ!」

そう言って、グビグビと麦茶をのどの奥に流し込むと、航平くんは空になったペットボトルを、グシャリと握りつぶした。

「おまえらの言うことはわかるよ。オレだって、早く忘れた方がいいと思ってる。
もう少し、時間くれよ」

え?
忘れるって、、、
あたしのことを?!

やだ、、、
そんなのイヤ!!
航平くんだけには、あたしのこと、いつまでも覚えておいてほしいのにっ!!!


コンビニをあとにした三人は、私鉄の駅の改札前で別れ、それぞれ帰途についた。
電車を降りた航平くんは、すっかり陽が落ちた住宅街を、自分の家に向かう。
あたりはすっかり夜のとばりに囲まれてて、道端の水銀灯が、チカチカと揺らめいてる。

夜は怖い。
垣根の間や暗い路地、家と家の隙間にできた暗闇が、生きてるときよりもいっそう恐ろしく感じる。

『人は簡単に、闇に支配され、堕ちてしまう』

如月摩耶が言ってたように、この暗闇から、得体の知れない悪意ある霊魂の気配が漂ってくる。
そいつらが闇の底から、あたしを引きずり込もうと狙ってる気がする。

つづく
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。