57 / 70
10th sense
10th sense 3
ふと気がつくと、なにごともない日常の世界に戻ってた。
目の前の二車線の幹線道路には、相変わらずクルマが引っ切りなしに行き交ってる。
西に傾きかけた日差しを受けて、街路樹の葉っぱがキラキラ輝いてる。
事故なんかなかったみたいに、ランドセルを背負った小学生の女の子がふたり、おしゃべりに熱中しながらその場所を通り過ぎ、あたしの家に続く脇道に曲がってく。
なにもかも、いつもと同じ光景。
そんななかで、道ばたに添えられた、少ししおれかかった真っ白な百合の花だけが、過ぎ去った日の出来事を物語ってた。
「ここは、、、」
驚いたように事故現場の前で足を止めた航平くんは、ミクと真っ白な百合の花を交互に見ながら、戸惑うように言った。
「こんなとこに連れてきて、ミクちゃんは酒井さんの霊が、怖くないのか?」
「あずさは親友だもん。怖いなんて、、、」
そう言ったミクの声は、少し震えてた。
しかし彼女は、勇気を奮い起こすかのように、大きくうなづく。
「確かに、怖い。
わたし、あずさには酷いことしたと思ってるから、今度はわたしの番だって、覚悟してる」
「、、、ミクちゃん」
「でもそれで、あずさの気がすむなら、まあいいかなって、思ったりもするのよ」
そう言って、ミクは航平くんに笑顔を見せ、トートバッグから一輪の花を取り出した。
それは、真っ白なカサブランカの花。
しおれかかった百合の花を花瓶から抜いたミクは、ようやくつぼみのほころびかけたそのカサブランカを、代わりに生ける。
そして、歩道の脇にしゃがみ込み、静かに手を合わせ、航平くんを振り返った。
「ね。航平くんもここに座って手を合わせてよ。そのために来てもらったんだから」
「ミクちゃんって、いつもここに来てるのか?」
「週に一•二回くらい。枯れる前に花も替えたいし」
「そう、、、 だったんだ」
「あたしがあずさにしてあげられることって、このくらいだし。
でも、今となっては、あずさが成仏できるまでは、毎日でも通うつもり。だって、、、」
なにか言いかけて、ミクは口を噤み、代わりにガードレールに添えられたカサブランカの花に向かって、静かに手を合わせて目を閉じた。
そんなミクを見ながら、航平くんもその隣にしゃがみ込み、合掌する。
けたたましい騒音が響く幹線道路の脇で、そこだけは静かな祈りの場になった。
と同時に、今まで真っ暗で荒んでた心の奥深くに、一筋のかすかな光が差し込み、それが少しづつあたりを照らしはじめるような、ほの暖かい、、、
そんな感覚が、あたしのなかに広がってきた。
この気持ちは、、、
以前も感じたことがある。
真っ暗闇の怨みのなかで、ほんの一筋のあたたかな光。
それは、ミクの祈りだったんだ。
<ミク、ありがとう。あたし、、>
冷たく凍り固まっていた気持ちが、春の日差しに温められる様に、ゆっくりと溶けていく、、、
とその時、不気味な笑い声が響いてきた。
<ケケケケケッ。
ったく、人間ってヤツは、浅はかで自分勝手な生き物だぜ!>
ふと隣を見ると、しゃがみこんで合掌するふたりを見下すように、黒い影の下級霊がガードレールの上にあぐらをかき、不気味な笑顔を浮かべてる。
つづく
目の前の二車線の幹線道路には、相変わらずクルマが引っ切りなしに行き交ってる。
西に傾きかけた日差しを受けて、街路樹の葉っぱがキラキラ輝いてる。
事故なんかなかったみたいに、ランドセルを背負った小学生の女の子がふたり、おしゃべりに熱中しながらその場所を通り過ぎ、あたしの家に続く脇道に曲がってく。
なにもかも、いつもと同じ光景。
そんななかで、道ばたに添えられた、少ししおれかかった真っ白な百合の花だけが、過ぎ去った日の出来事を物語ってた。
「ここは、、、」
驚いたように事故現場の前で足を止めた航平くんは、ミクと真っ白な百合の花を交互に見ながら、戸惑うように言った。
「こんなとこに連れてきて、ミクちゃんは酒井さんの霊が、怖くないのか?」
「あずさは親友だもん。怖いなんて、、、」
そう言ったミクの声は、少し震えてた。
しかし彼女は、勇気を奮い起こすかのように、大きくうなづく。
「確かに、怖い。
わたし、あずさには酷いことしたと思ってるから、今度はわたしの番だって、覚悟してる」
「、、、ミクちゃん」
「でもそれで、あずさの気がすむなら、まあいいかなって、思ったりもするのよ」
そう言って、ミクは航平くんに笑顔を見せ、トートバッグから一輪の花を取り出した。
それは、真っ白なカサブランカの花。
しおれかかった百合の花を花瓶から抜いたミクは、ようやくつぼみのほころびかけたそのカサブランカを、代わりに生ける。
そして、歩道の脇にしゃがみ込み、静かに手を合わせ、航平くんを振り返った。
「ね。航平くんもここに座って手を合わせてよ。そのために来てもらったんだから」
「ミクちゃんって、いつもここに来てるのか?」
「週に一•二回くらい。枯れる前に花も替えたいし」
「そう、、、 だったんだ」
「あたしがあずさにしてあげられることって、このくらいだし。
でも、今となっては、あずさが成仏できるまでは、毎日でも通うつもり。だって、、、」
なにか言いかけて、ミクは口を噤み、代わりにガードレールに添えられたカサブランカの花に向かって、静かに手を合わせて目を閉じた。
そんなミクを見ながら、航平くんもその隣にしゃがみ込み、合掌する。
けたたましい騒音が響く幹線道路の脇で、そこだけは静かな祈りの場になった。
と同時に、今まで真っ暗で荒んでた心の奥深くに、一筋のかすかな光が差し込み、それが少しづつあたりを照らしはじめるような、ほの暖かい、、、
そんな感覚が、あたしのなかに広がってきた。
この気持ちは、、、
以前も感じたことがある。
真っ暗闇の怨みのなかで、ほんの一筋のあたたかな光。
それは、ミクの祈りだったんだ。
<ミク、ありがとう。あたし、、>
冷たく凍り固まっていた気持ちが、春の日差しに温められる様に、ゆっくりと溶けていく、、、
とその時、不気味な笑い声が響いてきた。
<ケケケケケッ。
ったく、人間ってヤツは、浅はかで自分勝手な生き物だぜ!>
ふと隣を見ると、しゃがみこんで合掌するふたりを見下すように、黒い影の下級霊がガードレールの上にあぐらをかき、不気味な笑顔を浮かべてる。
つづく
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。