ブラックアウトガール

茉莉 佳

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11th sense

11th sense 9

現世と訣別するように、あたしは振り返り、足下にひろがる風景を眺めてみた。
急にいなくなったあたしを探して、航平くんやミクがキョロキョロとあたりを見回してる姿が、豆粒みたいにちっちゃく見える。

なんか、おかしい。
あたしのいた世界って、こんなにちっぽけな所だったんだ。
とってもごちゃごちゃで。
ちんまりとしてて。

そのなかに、たくさんの命がひしめき合ってる。
ほんと、数えきれないくらい、無数の命。
それは、この地球だけじゃない。

感じるーーーーーーーーーーー

宇宙全体に、命が溢れてる。
無限に。
永遠に。

いや、、、
宇宙自体が、ひとつの生命いのちだったんだ。


<それで、、、
これからあたしたち、どこに行くの?>

上も下もわからない、雲のように淡い色彩の空間を如月と漂いながら、あたしは訊いた。

<転生します>
<転生? それって、生まれ変わりってやつ?>
<はい。あなたの魂は、これから新しい命に宿るのです>
<へぇ~~っ?! 生まれ変わりって、ホントにあったんだ!
これ、みんなが知ったらビックリするだろ~な。
んであたし、どこのどの命に生まれ変わるの?>
<それは、あなたが生前行ってきたカルマによって、決められます>
<え~~~っ?! 自分で好きなように転生できないの~~?
まさか、人間じゃない動物や虫とかに生まれ変わったりしないでしょうね!? そんなのやだ>

ブウたれるあたしに、如月はやさしく微笑みかける。

<大丈夫です。よほどの極悪人でない限り、人間界から転落することはありません。
酒井さんなら次の命も、きっといいものになりますよ>
<そっか。じゃあ、今度こそ、素敵な恋人作っちゃうんだ。
そして、クルマに轢かれるようなドジは、もうしない!>
<ふふ。そうですね>

楽しそうに、如月は笑った。やっぱり彼女、死んでからも超絶美少女だ。

<如月さん。あなたとも来世では友達でいたいね。
面倒かけてごめんね。
あたしがいろいろ執着したばっかりに、あなたの命まで犠牲にして。
あたしがバカすぎた。ほんとに今までありがとう>
<あやまらなくてもいいですよ。わたしにはすべて、わかっていましたから。
死ぬことなど、少しも苦ではありませんでした>
<死ぬって、苦しいことじゃないの?>
<昼と夜を繰り返すように、人の生き死には表裏一体。
そして宇宙もまた、この輪廻のことわりを繰り返しているのです>
<へえ~。そうなんだ。
でもどうして、そうやって何度も生まれ変わったりするんだろ?>
<魂を切磋琢磨するためです>
<切磋琢磨ぁ~? 
よくわかんないんだけど、、、
それって具体的に、なにをどうすればいいの?>
<完全なる生命を全うするよう、生きるのです>
<完全なる生命?>
<欲に溺れず、怒りや憎しみに身を焦がさず、生きとし生けるものを愛し育み、宇宙の崩壊に逆らって生きることが、生命に与えられた、究極の目標なのです>
<うっわ~~! なんかすっごい難しそう!!>
<そうですね。そこは神の領域ですから>
<神ぃ?!
無理っ。あたしには!>
<そうかもしれません。人の感情は、自分の思い通りには、なかなかコントロールできませんから。
酒井さんも体験したように、人は簡単に闇の世界に堕ちてしまいます。欲望を振り切って生きることは、まず不可能なのです。
だから人間は不完全なまま、何度も輪廻転生を繰り返し、それでも神を目指すのです>
<そうか~。如月さんって、なんか悟ってるんだね。やっぱりあなた、すごいよ!>
<そんなことありません。
正直言ってわたしも、生きることは辛いです。
いじめにあったときも、『慣れている』なんて強がりを言いましたが、やっぱり寂しかったです>
<そっか。なんか安心した。如月さんも弱い人間だって思えて>
<死んでしまったあとだったとはいえ、酒井さんとこうしてお友達になれて、嬉しいです>
<あはは。死んでから友達になるなんて。なんかおかしいよね>
<ふふ。次の転生までは、わたしたちのいた世界の時間で、何年かはかかります。
それまではふたりで、この天界で浮き世の垢を落として、ゆっくりしましょう>
<死ぬってことは、魂の休息なんだ。まるでバカンスみたいな>
<そうですね。現世に戻ったら、また肉体のある苦難の日々がはじまります。
それでしたら死んでいる間くらい、のんびりさせてもらわないとですね>
<そっか。あはは。なんか変>
<ふふふ… 変ですね>

はじめて見る。
如月摩耶の楽しそうな笑顔。
生まれ変わっても、この笑顔を見てみたいな。

つづく
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