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「恥ずかしい衣装を着てみたのですけど」
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初めてのコスプレで、初めてのイベント参加。
なにをどうしていいのか、わからない。
話す相手もいないまま、わたしはひとり、会場の隅の柱に背中をもたれて、まわりの様子を眺めていた。
みんな、わたしなんかより派手で奇抜で、胸やお尻がほとんど見えている様な、エロい格好をしている子もいる。
だけど今のわたしには、こんな地味なミニの制服でも、いっぱいいっぱい。
股のあたりがスースーして、死ぬほど恥ずかしくて、思わずスカートの裾を引っ張ってしまう。
前を通り過ぎる女性コスプレイヤーが、珍しいものでも見るかのように、ジロジロわたしを睨んでいく。
向こうでは大きなカメラを何台も抱えた、脂ぎって太ったおじさんや、背の低いニキビ面の若い男の人が、まるで品定めするかのようにこちらに目を向け、上から下までジロジロと眺めている。
広々とした会場では、たくさんのコスプレイヤーがあちこちに集まっていて、楽しそうにお喋りしたり、写真を撮ったりしている。
だけど、だれもわたしには、話しかけてこない。
そういえばわたしは、昔から『とっつきにくいタイプ』と言われてきた。
教室の中でもこうやって、ポツンとひとりでいることが多かった。
クラスの女子たちが恋愛話に花を咲かせていても、わたしはいつも蚊帳の外。
たまに女子たちの話の輪に入っても、わたしがいるとみんな遠慮して、だれも恋の話題とか持ち出さない。
たまにわたしが、『あの人いいわね』とか話を振ってみても、みんな『意外』といった顔をして、顔を見合わせているだけなのだ。
もちろん、男子が話しかけてくることは皆無に等しく、授業の準備などで話さなきゃけないときでも、恐る恐る、まるで先生に対するかのように、敬語を使ってくる。
そんなにわたしは、人を拒絶するようなオーラを発しているのかな?
そりゃ、恋愛なんてなんだか気恥ずかしくて、そういう話題は好きじゃなさそうにしてはいるけど、本当は興味津々で、みんなの経験を聞いてみたくて、うずうずしているのだ。
わたしだってもう高校3年生。秋には18歳になる。
ふつうに恋だってしてみたいし、彼氏だってほしいし、その… エ、エッチにだって、人並みくらいに興味はある。
だけど、そういうのは『軽卒だ』と馬鹿にして、軽蔑しているフリをして、自分を誤魔化してきた。
そうするうちに、みんなどんどん先に進んでしまい、わたしひとり、バスに乗り遅れてしまっている。
…焦る。
結局、『変わりたい』と思ってこんなコスプレイベントに来てみても、自分からはだれにも話しかけられず、なにも変わることができないでいる。
「なんか… 馬鹿みたい」
思わず、愚痴がこぼれる。
わたし、なにやってんだろ。
こんなとこにいたって、意味ない。
時間の無駄。
もう帰ろう。
切なくなってきて、その場から立ち去ろうとした、そのときだった。
「おっ。江之宮憐花じゃん。レアだな~」
目の前を通り過ぎた男の人が、そう声を上げて立ち止まり、わたしを振り返った。
爽やかで張りのある声。
反射的にわたしはその人を見たが、慌てて視線を逸らせ、うつむいた。
…すっごいイケメンだったからだ。
つづく
なにをどうしていいのか、わからない。
話す相手もいないまま、わたしはひとり、会場の隅の柱に背中をもたれて、まわりの様子を眺めていた。
みんな、わたしなんかより派手で奇抜で、胸やお尻がほとんど見えている様な、エロい格好をしている子もいる。
だけど今のわたしには、こんな地味なミニの制服でも、いっぱいいっぱい。
股のあたりがスースーして、死ぬほど恥ずかしくて、思わずスカートの裾を引っ張ってしまう。
前を通り過ぎる女性コスプレイヤーが、珍しいものでも見るかのように、ジロジロわたしを睨んでいく。
向こうでは大きなカメラを何台も抱えた、脂ぎって太ったおじさんや、背の低いニキビ面の若い男の人が、まるで品定めするかのようにこちらに目を向け、上から下までジロジロと眺めている。
広々とした会場では、たくさんのコスプレイヤーがあちこちに集まっていて、楽しそうにお喋りしたり、写真を撮ったりしている。
だけど、だれもわたしには、話しかけてこない。
そういえばわたしは、昔から『とっつきにくいタイプ』と言われてきた。
教室の中でもこうやって、ポツンとひとりでいることが多かった。
クラスの女子たちが恋愛話に花を咲かせていても、わたしはいつも蚊帳の外。
たまに女子たちの話の輪に入っても、わたしがいるとみんな遠慮して、だれも恋の話題とか持ち出さない。
たまにわたしが、『あの人いいわね』とか話を振ってみても、みんな『意外』といった顔をして、顔を見合わせているだけなのだ。
もちろん、男子が話しかけてくることは皆無に等しく、授業の準備などで話さなきゃけないときでも、恐る恐る、まるで先生に対するかのように、敬語を使ってくる。
そんなにわたしは、人を拒絶するようなオーラを発しているのかな?
そりゃ、恋愛なんてなんだか気恥ずかしくて、そういう話題は好きじゃなさそうにしてはいるけど、本当は興味津々で、みんなの経験を聞いてみたくて、うずうずしているのだ。
わたしだってもう高校3年生。秋には18歳になる。
ふつうに恋だってしてみたいし、彼氏だってほしいし、その… エ、エッチにだって、人並みくらいに興味はある。
だけど、そういうのは『軽卒だ』と馬鹿にして、軽蔑しているフリをして、自分を誤魔化してきた。
そうするうちに、みんなどんどん先に進んでしまい、わたしひとり、バスに乗り遅れてしまっている。
…焦る。
結局、『変わりたい』と思ってこんなコスプレイベントに来てみても、自分からはだれにも話しかけられず、なにも変わることができないでいる。
「なんか… 馬鹿みたい」
思わず、愚痴がこぼれる。
わたし、なにやってんだろ。
こんなとこにいたって、意味ない。
時間の無駄。
もう帰ろう。
切なくなってきて、その場から立ち去ろうとした、そのときだった。
「おっ。江之宮憐花じゃん。レアだな~」
目の前を通り過ぎた男の人が、そう声を上げて立ち止まり、わたしを振り返った。
爽やかで張りのある声。
反射的にわたしはその人を見たが、慌てて視線を逸らせ、うつむいた。
…すっごいイケメンだったからだ。
つづく
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