あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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level 3

「同じ土俵でこの人たちとは諍いたくないです」

「ヨシキさんダメだからね。高校生に手ぇ出しちゃ。美月ちゃん未成年なんだから」
「え? なんでそこでオレが出てくるわけ?」

横から口をはさんだ百合花さんが、突然話の流れを変えた。
ヨシキさんも意表を突かれた感じで、目を丸くしている。
そこへ魔夢さんも、口を挟んできた。

「そうよ。ヨシキさんって女好きだし、チャラいじゃない。それに、美月さんみたいなストレートヘアで背の高いスレンダーな子って、ドストライクでしょ」

百合花さんも追いうちをかけるように、続ける。

「でも美月さんってマジメなお嬢様そうだから、泣かせるようなことしてほしくないです」
「そうよね。美月さんの『江之宮憐花』って凛々しくて素敵で、わたし、いっぺんで美月さんのファンになっちゃったんだから」
「そうですね。美月さんってすっごい清らかさんだから、変に汚したりしないでくださいね」
「まあ、これだけ美少女だったら、恋人とかいてもおかしくないしね。残念だったね、ヨシキさん。あははは」
「は、はは…」「ははは…」

魔夢さんと百合花さんの連携プレイに、わたしとヨシキさんの乾いた笑いがハモった。
女ってどうしてこう、陰湿なんだろう?
明るく冗談めかしているものの、ふたりとも、わたしや恋子さんに対する牽制がありあり。
『ファン』だなんて、適当なこと言わないでよ。
『清らかさん』とか、変なキャラを作らないで。
人のこと、勝手に恋人がいる設定にするのも、やめてほしいんだけど。

でも、ヨシキさんが自分の彼氏だったら、ふたりともこんな言い方はきっとしないはず。
今の台詞で、百合花さんや魔夢さんがヨシキさんの恋人ではないと、確信が持てた。
『ナンバー1』『ナンバー2』が恋人でないなら、今いるメンバーの中に、ヨシキさんの彼女はいないだろう。ちょっと希望が出てきたかな…

というか、なに?
わたし、ヨシキさんの恋人になりたいわけ?
ここにいるメンバー全員を出し抜いて、ヨシキさんの恋人になりたいわけ?

確かにわたしは、もっとヨシキさんと仲良くなりたいし、もっと深く、彼のことを知り合いたい。
とはいっても、この人たちと同じ土俵ではいさかいたくない。
なんだか、こっちの女が下がる気がする。

「そろそろお開きにしようぜ。オレ、先週撮った仕事画像のレタッチ任されてるし。早く帰らなくちゃいけないんだ」

場の空気がピリピリしてきたのを敏感に悟ったのか、ヨシキさんはそう言って席を立った。
魔夢さんはまだなにか言い足りないような顔をしていたが、ここにいることに辟易していたわたしは、真っ先に立ち上がった。

「まだここでダベりたいヤツは残ってていいよ。悪いけどオレは先に失礼するわ」

わたしの顔をチラと見ながら、ヨシキさんはバッグを肩にかける。
数人の女の子が、『そうね』と言ってそれに従ったが、魔夢さんをはじめとした半分くらいは、そのまま席に残った。
帰り組は別々に会計を済ませ、ファミレスを出てお別れの挨拶しながら、それぞれ帰途につく。みんなと別れたわたしも、桃李さんと連れ立って歩きはじめた。


「なんかムカつかない? 美月さん!」

近くのバス停へ向かっていたわたしたちのうしろで、いきどおった声がした。
振り向くとそこには、太い眉をつり上げて唇を尖らせ、怒りの表情を露わにした恋子さんがいて、早足でこちらに歩いてくるところだった。

つづく
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