28 / 259
level 4
「最低なお洒落スキルをなんとかしないといけません」
しおりを挟む
level 4
『コミケ』というのは、『コミックマーケット』の略称らしい。
かれこれ40年以上も続いている、世界最大級の同人誌展示即売会だ。
お盆と年末の年2回開催され、全国から同人サークルが何万と集まってきて、お客の数も50万人を超えるという、数ある同人誌展示即売会のなかでも、最高峰でスペシャルなオタクのイベントだと、ヨシキさんが教えてくれた。
わたしのようなオタクではない人(『パンピー』というらしい)は、この前のような即売会も、『コミケ』と呼んでしまうが、ヨシキさんたちオタクは、毎週のように開催される即売会は『イベント』といって厳密に区別する。
そのイベントにしても、オールジャンルなものの他に、特定の漫画やゲームなどをテーマとして扱う、『オンリーイベント』や、コスプレイヤーだけのイベント。雑貨やフィギュアをテーマにしたイベントなど細かく分かれていて、いつもどこかで、なにかのオタクイベントが開催されているということだった。
コスプレについてもあまり詳しくないわたしにとって、ドライブの帰りにヨシキさんが語ってくれた、オタクやイベントの話は、新しい世界を覗くようで、新鮮だった。
もっとも、彼の語り口がわかりやすくておもしろかったというのもあるけど、それまでどちらかというとネガティブだった『オタク』というイメージが、『クリエイティブ』なものに変わったかもしれない。
次の日曜は、その大イベントの『コミケ』に参加するので、ヨシキさんは準備で忙しいということだった。
わたしもその日はちょうど、全国なぎなた選手権大会に出場しないといけなかったので、ふたりでメールで話し合い、撮影日は再来週の土曜日に決めた。
メールのやりとりをしながら、どういった撮影にするかを決めていく。
はじめての個撮なので、最初は私服で、公園とかで撮ろうということになった。
場所のセッティングはヨシキさんにお任せしたが、わたしは服装で悩む。
『高校生はお化粧などしなくていい』
という時代遅れな家訓を守ってきたせいで、わたしのお洒落スキルは最低だった。
化粧道具すらろくに持っていないし、比較的親しい友達にも、あまりお洒落な女の子はいないこともあって、わたしはファッションやメイクに関する知識も経験も乏しかった。
デニムのパンツに、シンプルな無地のカットソー姿のわたしは、コスプレイベントのなかでも、いちばん野暮ったい女の子だろう。
この前のアフターでは、ヨシキさんが撮っているレイヤーさんは、みんなそれぞれ個性的なファッションで、素敵な人たちばかりだった。
せっかく撮影してくれるのに、なにを着ればいいかわからない。
こんなんじゃ、ヨシキさんに落胆される。
少しでもわたしに対して、興味を持ってほしい。
ヨシキさんの好みの格好をしたい。
なんとかしなければ!
「…うん。そうしよう。それがいちばんいいかも…」
いろいろ思いを巡らしたわたしは、ひとり言をつぶやきながら心を決めた。
廊下に出たわたしは、向かいの兄の部屋の前に立った。
実は、この場所に立つのはちょっとした『トラウマ』があるのだけど、思い切って鍵のついた木製のドアをノックしながら、わたしは外から兄を呼んだ。
つづく
『コミケ』というのは、『コミックマーケット』の略称らしい。
かれこれ40年以上も続いている、世界最大級の同人誌展示即売会だ。
お盆と年末の年2回開催され、全国から同人サークルが何万と集まってきて、お客の数も50万人を超えるという、数ある同人誌展示即売会のなかでも、最高峰でスペシャルなオタクのイベントだと、ヨシキさんが教えてくれた。
わたしのようなオタクではない人(『パンピー』というらしい)は、この前のような即売会も、『コミケ』と呼んでしまうが、ヨシキさんたちオタクは、毎週のように開催される即売会は『イベント』といって厳密に区別する。
そのイベントにしても、オールジャンルなものの他に、特定の漫画やゲームなどをテーマとして扱う、『オンリーイベント』や、コスプレイヤーだけのイベント。雑貨やフィギュアをテーマにしたイベントなど細かく分かれていて、いつもどこかで、なにかのオタクイベントが開催されているということだった。
コスプレについてもあまり詳しくないわたしにとって、ドライブの帰りにヨシキさんが語ってくれた、オタクやイベントの話は、新しい世界を覗くようで、新鮮だった。
もっとも、彼の語り口がわかりやすくておもしろかったというのもあるけど、それまでどちらかというとネガティブだった『オタク』というイメージが、『クリエイティブ』なものに変わったかもしれない。
次の日曜は、その大イベントの『コミケ』に参加するので、ヨシキさんは準備で忙しいということだった。
わたしもその日はちょうど、全国なぎなた選手権大会に出場しないといけなかったので、ふたりでメールで話し合い、撮影日は再来週の土曜日に決めた。
メールのやりとりをしながら、どういった撮影にするかを決めていく。
はじめての個撮なので、最初は私服で、公園とかで撮ろうということになった。
場所のセッティングはヨシキさんにお任せしたが、わたしは服装で悩む。
『高校生はお化粧などしなくていい』
という時代遅れな家訓を守ってきたせいで、わたしのお洒落スキルは最低だった。
化粧道具すらろくに持っていないし、比較的親しい友達にも、あまりお洒落な女の子はいないこともあって、わたしはファッションやメイクに関する知識も経験も乏しかった。
デニムのパンツに、シンプルな無地のカットソー姿のわたしは、コスプレイベントのなかでも、いちばん野暮ったい女の子だろう。
この前のアフターでは、ヨシキさんが撮っているレイヤーさんは、みんなそれぞれ個性的なファッションで、素敵な人たちばかりだった。
せっかく撮影してくれるのに、なにを着ればいいかわからない。
こんなんじゃ、ヨシキさんに落胆される。
少しでもわたしに対して、興味を持ってほしい。
ヨシキさんの好みの格好をしたい。
なんとかしなければ!
「…うん。そうしよう。それがいちばんいいかも…」
いろいろ思いを巡らしたわたしは、ひとり言をつぶやきながら心を決めた。
廊下に出たわたしは、向かいの兄の部屋の前に立った。
実は、この場所に立つのはちょっとした『トラウマ』があるのだけど、思い切って鍵のついた木製のドアをノックしながら、わたしは外から兄を呼んだ。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる