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「女の子同士の秘密はワクワクしますか?」
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「そっ、そんなことないけど…」
「そうか? 残念だな」
「残念?」
「最近の凛子、なんだか妙に色気出てきたし、しょっちゅう庭で素振りやってるし…
おまえ、昔っから悩みがあると、なぎなたの素振りしてたもんな」
「あ、あれは… 来週全国大会があるから、練習しとかなきゃと思って…」
「ふ~ん、まあいいや。おまえにひとつ忠告しとこう」
「え? なにを?」
「女はやっぱり『薩摩おごじょ』じゃなきゃな。慎み深くてしとやかで胃袋を満たしてくれて、いつでも男を立ててくれる女を、男は好きになるもんだよ」
「…」
「ま、おまえなら大丈夫だよ。兄のおれから見ても、才色兼備の超絶美少女だもんな」
「でも男の人は、そういうのを求めているの?」
「確かに。はたから見てる分は凜子はかっこいいけど、自分の彼女にとなると、尻込みするやつは多いかもな。どちらかというと『守ってやりたい系』の方が、男受けはいいだろうし。
まあ、相談があればいつでも乗るからな。おまえも頑張れよ」
そう言って兄は、わたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。
なんだか複雑。
「ん… ありがと」
ひとことだけお礼を言って、わたしは兄の部屋をあとにした。
お風呂からあがり、濡れた髪をタオルでゴシゴシと拭きながら、自分の部屋に入ったわたしは、フウと大きく深呼吸をして気持ちを落ち着け、優花さんの電話番号をプッシュした。
『もしもし? 凜子ちゃん?』
電話の前で待ち構えていたかのように、1コールで繋がり、優花さんの明るい声が響いてくる。
「こんばんは。優花さん。すみません、突然電話してしまって」
『いいのいいの。忠彰さんから『凜子がなにか訊きたいってよ』って聞いて、なんかドキドキしちゃった。
なになに? 訊きたいことって』
心なしか、いつもより声が弾んでいる。
その夜は優花さんと、しばらく電話で話をした。
これまでの経緯をざっくりと話したわたしは、ヨシキさんの個撮を受けることを伝えると、優花さんにファッションとメイクについての意見を求めた。
優花さんは思っていたよりも親切で、積極的にわたしにアドバイスしてくれる。
そして今度、お互いの予定の合う日に、いっしょにショッピングに出かけることになった。
全国なぎなた選手権大会が終わった週の水曜日。
わたしは大友優花さんと渋谷の街を歩いていた。
「でも嬉しかったわよ~。凛子ちゃんから電話もらったとき。
あたし『頼られてるんだ』って、なんか急にお姉さんになった気分で。
あたし、凛子ちゃんみたいな、可愛い妹がほしかったんだよね~!
もう、服やコスメのことは任せといてよ。このあたしがいっしょにバッチリ選んであげる!」
レースの飾りのついたミニ丈のキャミソ-ルワンピに、ふんわりとした目の粗いサマーセーターを羽織り、編み上げのサンダルを履いた大友優花さんは、わたしにニコニコと微笑みかけながら、陽気にしゃべる。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「え~。やぁ~ね。なんか他人行儀~」
「あっ。すみません。わたしっていつも、こんなだから」
「でも、それを変えるために、頑張ってるんじゃないの?」
「そうですけど…」
「まあ、彼氏ができたら、一発で変わっちゃうだろうけどね」
「あの…」
とりあえず、念を押しておく。
「お兄さまには黙っていて下さい。知られると、いろいろからかわれそうだし…」
「大丈夫よ☆」
そう言って意味深な微笑みを浮かべた優花さんは、秘密を打ち明けるように、わたしの耳元に顔を寄せて、ささやいた。
「あたしもね。あとで聞いてほしいことがあるの。もちろん忠彰さんには言えないことよ」
「お兄さまにも?」
「女の子同士の秘密ってやつ? なんだかワクワクするね♪」
なんか… この人、楽しんでいるみたい。
まぁ、いいか。
どんな状況でも、それを楽しめるポジティブな性格は、羨ましいかも。
つづく
「そうか? 残念だな」
「残念?」
「最近の凛子、なんだか妙に色気出てきたし、しょっちゅう庭で素振りやってるし…
おまえ、昔っから悩みがあると、なぎなたの素振りしてたもんな」
「あ、あれは… 来週全国大会があるから、練習しとかなきゃと思って…」
「ふ~ん、まあいいや。おまえにひとつ忠告しとこう」
「え? なにを?」
「女はやっぱり『薩摩おごじょ』じゃなきゃな。慎み深くてしとやかで胃袋を満たしてくれて、いつでも男を立ててくれる女を、男は好きになるもんだよ」
「…」
「ま、おまえなら大丈夫だよ。兄のおれから見ても、才色兼備の超絶美少女だもんな」
「でも男の人は、そういうのを求めているの?」
「確かに。はたから見てる分は凜子はかっこいいけど、自分の彼女にとなると、尻込みするやつは多いかもな。どちらかというと『守ってやりたい系』の方が、男受けはいいだろうし。
まあ、相談があればいつでも乗るからな。おまえも頑張れよ」
そう言って兄は、わたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。
なんだか複雑。
「ん… ありがと」
ひとことだけお礼を言って、わたしは兄の部屋をあとにした。
お風呂からあがり、濡れた髪をタオルでゴシゴシと拭きながら、自分の部屋に入ったわたしは、フウと大きく深呼吸をして気持ちを落ち着け、優花さんの電話番号をプッシュした。
『もしもし? 凜子ちゃん?』
電話の前で待ち構えていたかのように、1コールで繋がり、優花さんの明るい声が響いてくる。
「こんばんは。優花さん。すみません、突然電話してしまって」
『いいのいいの。忠彰さんから『凜子がなにか訊きたいってよ』って聞いて、なんかドキドキしちゃった。
なになに? 訊きたいことって』
心なしか、いつもより声が弾んでいる。
その夜は優花さんと、しばらく電話で話をした。
これまでの経緯をざっくりと話したわたしは、ヨシキさんの個撮を受けることを伝えると、優花さんにファッションとメイクについての意見を求めた。
優花さんは思っていたよりも親切で、積極的にわたしにアドバイスしてくれる。
そして今度、お互いの予定の合う日に、いっしょにショッピングに出かけることになった。
全国なぎなた選手権大会が終わった週の水曜日。
わたしは大友優花さんと渋谷の街を歩いていた。
「でも嬉しかったわよ~。凛子ちゃんから電話もらったとき。
あたし『頼られてるんだ』って、なんか急にお姉さんになった気分で。
あたし、凛子ちゃんみたいな、可愛い妹がほしかったんだよね~!
もう、服やコスメのことは任せといてよ。このあたしがいっしょにバッチリ選んであげる!」
レースの飾りのついたミニ丈のキャミソ-ルワンピに、ふんわりとした目の粗いサマーセーターを羽織り、編み上げのサンダルを履いた大友優花さんは、わたしにニコニコと微笑みかけながら、陽気にしゃべる。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「え~。やぁ~ね。なんか他人行儀~」
「あっ。すみません。わたしっていつも、こんなだから」
「でも、それを変えるために、頑張ってるんじゃないの?」
「そうですけど…」
「まあ、彼氏ができたら、一発で変わっちゃうだろうけどね」
「あの…」
とりあえず、念を押しておく。
「お兄さまには黙っていて下さい。知られると、いろいろからかわれそうだし…」
「大丈夫よ☆」
そう言って意味深な微笑みを浮かべた優花さんは、秘密を打ち明けるように、わたしの耳元に顔を寄せて、ささやいた。
「あたしもね。あとで聞いてほしいことがあるの。もちろん忠彰さんには言えないことよ」
「お兄さまにも?」
「女の子同士の秘密ってやつ? なんだかワクワクするね♪」
なんか… この人、楽しんでいるみたい。
まぁ、いいか。
どんな状況でも、それを楽しめるポジティブな性格は、羨ましいかも。
つづく
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