あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

文字の大きさ
39 / 259
level 5

「ただの女子高生が相手にしてもらえるでしょうか」

 新宿中央公園でしばらく撮影したあと、近くのファミレスで軽くお昼ごはんをすませ、わたしたちは秋葉原に向かった。
今日は私服での撮影だったが、『リア恋plus』のコスプレも、近いうちにロケで撮らせてほしいと、ヨシキさんにリクエストされていた。
なので、撮影に使う衣装や小物をいっしょに見るため、オタクショップの充実している秋葉原まで、ふたりで出かけようということになったのだ。

どんなに小さくてつまらないことでも、こうしてヨシキさんから誘われるのは嬉しい。
好きなひとと、こうして一日いっしょに過ごせるのは、舞い上がるほど楽しい。
だけどそれ以上に、わたしの胸のなかには、モヤモヤした『なにか』がつかえてきて、ときどき息もできないくらいに、苦しくなることがあった。

今日が純粋に『デート』だったら、こんなに切ない想いをすることもなかったかもしれない。
いっしょにいても、わたしとヨシキさんとは、ただの『モデル』と『カメラマン』。
それだけの関係。
なんだか辛い。

いっそわたしの方から、告白しようか?

だけどヨシキさんは、『特定のレイヤーさんとつきあったりしない』みたいなことを言っていたし、ほんとうはちゃんとした彼女がいるのかもしれない。

ううん。

こんなに才能があって、容姿も抜群にカッコいい人なのだから、恋人がいない方がおかしい。
わたしみたいなただの女子高生が、『好きです』と告白したところで、相手にしてもらえるだろうか。
一笑に付されて、妹扱いされるのがオチかも。
それに、撮影とはいえ、こうしていっしょにいられるのだもの。
それだけで満足した方がいいのかもしれない。
だけどやっぱり、自分の気持ちは、ヨシキさんに知ってもらいたい。
わたしのことを、もっと見てほしい。
認めてほしい。
でも、それを伝えるのは怖い。

ヨシキさんといっしょにいるのは、とっても楽しい。
それとはうらはらに、鬱屈した想いもたまっていく。

ふたつの気持ちが、心のなかでぶつかりあいながら渦を巻き、わたしを翻弄する。
そんなジレンマをヨシキさんには悟られないように、わたしはできるだけ平静を装っていた。


「近くにいい感じのカフェがあるから、そこでお茶しながら今日の反省会とか、次の撮影の打ち合わせとかしない?」

あちこち歩き回って、少し疲れてきたかなという頃、タイミングよくヨシキさんが提案した。わたしに拒む理由は、なにもない。


 彼が連れていってくれたのは、秋葉原のはずれにあった小さなカフェだった。
こじんまりとした女の子っぽい淡いピンクの店内には、アンティークでお洒落な小物やクッションなどが置いてあって、とっても可愛い。ティータイムを過ぎた頃なので、店内は若い女の子たちで賑わっていた。

「あれ、ミノル? 珍しいな、こんな所で」

カフェのドアを開けて数歩歩いたところで、ヨシキさんは窓ぎわに座っていたカップルの男性を振り返って、意外そうな顔をして話しかけた。

知り合いかな?
そう思ってわたしも何気なくテーブルの方を見たが、あまりの驚きに思わず声が出そうになった。

この男の人は…
水曜日に優花さんと原宿に行ったときに見かけた、中学生くらいの女の子に振られていた人だ!
しかも…
いっしょにいる女の人は、この前のイベントのときに、甘ったるい声で『ヨシキぃ~。撮ってぇ~』とせがんでいた、巨乳の可愛いコスプレイヤーさん!

つづく
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
恋愛
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。