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level 7
「バブル時代の伝説的アイテムなのですか」
「あ。怖い。そんなことしないわよ。ただ、あまり真剣にならない方がいいかなって、忠告したいだけ」
「わかります、そのくらい。でも、ダメなんです」
「ダメ?」
「理性ではわかっているけど、感情が… もうヨシキさんの方に突っ走っちゃってて、冷静になれないんです」
「ん~、、、 仕方ないか。恋する乙女にはなに言ってもムダだし。
ま。好きな人に振り回されて、わんわん泣くのもいい経験かもね。でも、困ったことがあったら相談してね。わたしはいつでも凛子ちゃんの味方だから」
「ありがとうございます。でもわたし、泣いたりしませんから。絶対」
「その負けん気の強さが凛子ちゃんらしいわね。応援してるわ」
ちょっと険悪な雰囲気になったものの、優花さんはすぐにニッコリと笑って、わたしのきつい発言を流してくれた。
ん~…
友達みたいな仲とはいえ、やっぱり優花さんはわたしよりおとなだ。
いつでも直球全力勝負しかできないわたしには、こんなかわし方はマネできない。
この日のイベントは遅く行ったにもかかわらず、今まで声をかけてくれたカメコさんがたくさん来てくれて、写真を撮っていった。
以前撮影したデータやプリントをくれたり、CG加工したわたしの写真をくれる人もいれば、UFOキャッチャーで取ったという、『リア恋plus』のぬいぐるみをくれたりする人もいる。
わたしも少しずつ、コスプレやイベントに来るみなさんに馴染んできたみたい。
「今日はいいもの持ってきたんだ。これ、プレゼントだよ。うふ♪」
撮影のあと、いつものつまらないカメラの自慢話をして、大きなカメラバッグからおもむろにリボンのかかった箱を取り出したのは、額にいっぱいの脂汗を浮かべたノマドさんだった。
「なんですか? これ」
「もうすぐ江之宮憐花の誕生日だろ?」
「そうですけど」
「だから、そのプレゼント。受け取ってほしいな」
「あ、ありがとうございます」
戸惑いながらお礼を言い、プレゼントを開けようとしたわたしの手を押さえ、ノマドさんはもったいつけるように言った。
「チッチッチッ。こんなとこじゃだめだよ。あとで、人のいないとこで開けてみて。うふ♪」
「…」
『うふ♪』って…
なにそれ。気持ち悪い。
「カメコって、キモい人多いね」
ノマドさんの背中を見送りながら、優花さんが耳打ちした。
「なにもらったの? なんか意味ありげ。開けてみてよ」
「でも、人のいないところでって…」
「凛子ちゃんって正直ね~。バカがつくくらい」
「んむ… じゃあ、こっちで」
その言葉にはちょっぴりカチンときたけど、一応ノマドさんに義理立てする形で、わたしは優花さんと人気のない柱の陰に回り込み、プレゼントの包装を解いた。
To 江之宮憐花@美月梗夜
お誕生日おめでとう
君との愛は永遠に
From Nomad
手描きのイラスト付きメッセージカードといっしょに入っていたのは、『ティファニー』のオープンハートのリング。
「…」
絶句しているわたしの代わりに、優花さんが気持ちを代弁してくれた。
「…キモすぎ。ネックレスじゃなくてリングってのが、なんだか…」
「え、ええ…」
「なんで凛子ちゃんが、あんな脂ぎったおっさんから指輪なんて貰わなきゃいけないの。つきあってもないのに。
しかもティファニーのオープンハートだなんて、鉄板過ぎて…」
「鉄板、なんですか?」
「伝説のアイテムよ。バブル時代のクリスマスプレゼントに大流行した」
「そうなんですか」
「あのおっさん、バブル時代の亡霊なんじゃない? しかも『君との愛は永遠に』って…
まだなんにもはじまってないし、これからも絶対はじまらないっつーの!」
「これ… 返した方がいいですよね」
「ん~、、、 適当な口実つけて返した方が無難だろうけど、どんな妄想してるかわかんないし。リアクションが読めないわね~」
「やっぱり、あとで返しておきます」
つづく
「わかります、そのくらい。でも、ダメなんです」
「ダメ?」
「理性ではわかっているけど、感情が… もうヨシキさんの方に突っ走っちゃってて、冷静になれないんです」
「ん~、、、 仕方ないか。恋する乙女にはなに言ってもムダだし。
ま。好きな人に振り回されて、わんわん泣くのもいい経験かもね。でも、困ったことがあったら相談してね。わたしはいつでも凛子ちゃんの味方だから」
「ありがとうございます。でもわたし、泣いたりしませんから。絶対」
「その負けん気の強さが凛子ちゃんらしいわね。応援してるわ」
ちょっと険悪な雰囲気になったものの、優花さんはすぐにニッコリと笑って、わたしのきつい発言を流してくれた。
ん~…
友達みたいな仲とはいえ、やっぱり優花さんはわたしよりおとなだ。
いつでも直球全力勝負しかできないわたしには、こんなかわし方はマネできない。
この日のイベントは遅く行ったにもかかわらず、今まで声をかけてくれたカメコさんがたくさん来てくれて、写真を撮っていった。
以前撮影したデータやプリントをくれたり、CG加工したわたしの写真をくれる人もいれば、UFOキャッチャーで取ったという、『リア恋plus』のぬいぐるみをくれたりする人もいる。
わたしも少しずつ、コスプレやイベントに来るみなさんに馴染んできたみたい。
「今日はいいもの持ってきたんだ。これ、プレゼントだよ。うふ♪」
撮影のあと、いつものつまらないカメラの自慢話をして、大きなカメラバッグからおもむろにリボンのかかった箱を取り出したのは、額にいっぱいの脂汗を浮かべたノマドさんだった。
「なんですか? これ」
「もうすぐ江之宮憐花の誕生日だろ?」
「そうですけど」
「だから、そのプレゼント。受け取ってほしいな」
「あ、ありがとうございます」
戸惑いながらお礼を言い、プレゼントを開けようとしたわたしの手を押さえ、ノマドさんはもったいつけるように言った。
「チッチッチッ。こんなとこじゃだめだよ。あとで、人のいないとこで開けてみて。うふ♪」
「…」
『うふ♪』って…
なにそれ。気持ち悪い。
「カメコって、キモい人多いね」
ノマドさんの背中を見送りながら、優花さんが耳打ちした。
「なにもらったの? なんか意味ありげ。開けてみてよ」
「でも、人のいないところでって…」
「凛子ちゃんって正直ね~。バカがつくくらい」
「んむ… じゃあ、こっちで」
その言葉にはちょっぴりカチンときたけど、一応ノマドさんに義理立てする形で、わたしは優花さんと人気のない柱の陰に回り込み、プレゼントの包装を解いた。
To 江之宮憐花@美月梗夜
お誕生日おめでとう
君との愛は永遠に
From Nomad
手描きのイラスト付きメッセージカードといっしょに入っていたのは、『ティファニー』のオープンハートのリング。
「…」
絶句しているわたしの代わりに、優花さんが気持ちを代弁してくれた。
「…キモすぎ。ネックレスじゃなくてリングってのが、なんだか…」
「え、ええ…」
「なんで凛子ちゃんが、あんな脂ぎったおっさんから指輪なんて貰わなきゃいけないの。つきあってもないのに。
しかもティファニーのオープンハートだなんて、鉄板過ぎて…」
「鉄板、なんですか?」
「伝説のアイテムよ。バブル時代のクリスマスプレゼントに大流行した」
「そうなんですか」
「あのおっさん、バブル時代の亡霊なんじゃない? しかも『君との愛は永遠に』って…
まだなんにもはじまってないし、これからも絶対はじまらないっつーの!」
「これ… 返した方がいいですよね」
「ん~、、、 適当な口実つけて返した方が無難だろうけど、どんな妄想してるかわかんないし。リアクションが読めないわね~」
「やっぱり、あとで返しておきます」
つづく
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