あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

文字の大きさ
94 / 259
level 10

「一糸纏わぬ姿をレンズの前に曝け出していました」

しおりを挟む
戸惑いと恥じらいの瞳が、悩ましげにこちらを見つめ、薄く開いた唇が、なにかの秘密を語りたそうにしている。
書店やコンビニなどで見かける、ちょっとエッチなグラビア写真みたいだけど、下品で安っぽいところはない。
ヨシキさんの視線をとおしたわたしは、艶めかしくて物憂げで、すごく大人の雰囲気を纏っている。
自分で言うのもなんだけど、まるで年代物の上質なワインのような、高貴な芳醇さを漂わせていた。

「凛子ちゃんはいろんな表情を魅せてくれるな。撮るたびにのめり込んでいくよ。まったく、可愛いやつ」

そう言ってヨシキさんはわたしの頬をひと撫でして、キスをした。

「もっと撮らせてくれるかい?」
「はい。もっと撮ってほしいです」
「じゃあ、ベッドに座って。まずは後ろ向きで。長い髪を掻き上げながら、少し横を向くようにして… ツヤツヤしててほんっと綺麗な髪だね~。いいよいいよ… そう!」

“カシャーンカシャーン”

髪を梳く腕がいちばん綺麗な位置にきた瞬間、ヨシキさんは立て続けにシャッターを切る。

「よし! 今度は腰をそらして脚をぐっと後ろの方に伸ばして。長くて綺麗な脚だよ。いいよ」

褒め言葉を挟みながら、ヨシキさんはベッドの上に座り込むわたしを撮り続ける。
最初は後ろ姿から。
少しずつからだを正面に向けさせて、ポーズも挑発的になっていく。
ぐっと腰を入れて背中をのけぞらせ、胸を張って髪を掻き上げる。
すべてのしがらみから解放されるように、心地いい。
シーツの海に身をよじらせながら、わたしは熱くレンズを見つめた。

「いいよ。いいよ。凛子ちゃん最高!」

くすぐり言葉が、心地よい。
褒められると、からだの芯に火がついてくる。

「今度はシーツをからだに巻いて、肩だけ出してみて」
「ブラの紐に軽く手を当てようか!」
「そのまま転がって」
「そう! その隙だらけな感じがたまらないよ!」
「ちょっとだけブラの紐をずらしてみて」
「背中のホックもはずして。両手で胸を隠してみて。そのあやうさがいいよ!」

流れるようにヨシキさんはわたしを動かし、シャッターを切り続ける。

「いいよいいよ。その紐パンエロい! そのままパンツの紐を少しほどきながら、こっちを見て」
「背中向けてぐっと腰を入れて、お尻をちょっとだけ浮かせて、紐を両手で引っ張って」
「そう! そのままパンツをとって胸に当てて」

いつの間にかわたしは、一糸纏わぬ姿を、レンズの前にさらけ出していた。
すべてが自然な流れだった。

「いいよいいよ。凛子ちゃん、感動だよ! 綺麗だよ!」

夢中でシャッターを切りながら、ヨシキさんはわたしを美の女神のように賛美し、褒めたたえる。
その声はかすかに震え、湿り気さえ帯びている。
ヨシキさんの気持ちがどんどんヒートアップしていくのが、カメラのレンズを通して、わたしにも伝わってくる。
戸惑いながらもわたしは少しずつ、レンズの前にからだを開いていった。

後悔しない。
ヨシキさんなら信じられる。
ヨシキさんになら、わたしのすべてを見せられる。
ううん。
むしろ、すべてを見てほしい。
あなたのその目に、わたしのすべてを焼きつけてほしい。
この胸も。
お尻も。
秘密のところさえも…

深く刻み込んでほしい。
わたしだけを。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...