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level 16
「そんなに簡単には、上書きなんてできないです」
“RRRRR RRR…”
「あ、凛子ちゃん? どうしたの、こんな夜中に。なにか用?」
電話の向こうの声は、優花さん。
「用ってほどでもないんですけど… なんとなく、声が聞きたくて」
「え~?! なんか嬉しいなぁ。そんな風に言ってくれると」
「そうですか?」
「昨日の撮影会、楽しかったね。ヨシキさんの速報が楽しみね」
「え? ええ…」
「『すぐに送る』って言ってたのに、まだ来ないけど。仕事忙しいのかな?」
「…そうみたいですね」
「凛子、ちゃん?!」
「…え?」
「元気ないけど… なにかあったの?」
「え。ええ… ちょっと」
「話してみてよ。力になるからさ」
「…ええ。実は・・・」
問われるまま、例のメールのことや掲示板のこと。そして昨日のヨシキさんとのいきさつを、わたしは優花さんに打ち明けた。
『うん』『うん』『それは酷いわ』『ありえない』と、相づちを打ちながら、優花さんは話を聞いてくれた。
「まあ… そんな事になるんじゃないかと、思ってたけどね」
したりと、優花さんは話しはじめた。
「はじめて会ったときから、警報鳴りっ放しだったのよ」
「警報?」
「『こいつは危険人物だ』ってね」
「…」
「凛子ちゃんたち、つきあいはじめてまだ1ヶ月くらいでしょ?」
「ええ」
「酷な言い方かもしれないけど、よかったかもよ。傷が浅いうちに別れられて」
「そ、そうですか?」
「このままズルズルはまっちゃうと、致命傷になりかねないし。
ああいうタイプは、別れた女に未練なんか持たないから、凛子ちゃんもヨシキさんのことはさっさと忘れて、新しい恋探した方がいいわよ」
確かに、優花さんの言うとおりなんだろうけど…
なにかもやもやする。
「新しい恋なんて… まだ…」
「女の恋は上書きよ。いい男が現れたら、昔の恋なんてさっぱり忘れられるから」
「でも、そんなに簡単には、上書きなんてできないです」
「ん~、、、 まあ、初めての男だもんね。そりゃそうだわ。
でも、あれは女を喰っては捨てるタイプよ。犬に噛まれたとでも思って、ヨシキさんのことは早く忘れた方が、凛子ちゃんのためよ」
『女を喰っては捨てる』
フレーズがピタリと重なった。
もしかして、あの陰湿なメールを送ってきたのは、、、 優花さん?
まさか?!
「優花さんですか? あのメールは」
「え?」
「あんな陰湿なことしたの、優花さんなんですか?!」
「なっ、なに言ってるの。わたしがそんなことするわけないでしょ」
「優花さん。もしかして、ヨシキさんのことが好きなんですか?」
「えっ、、? なっ、なんでそうなるの? わたしは別になんにも…」
どことなく慌てた口調で、優花さんは返す。
なんだか怪しい。
彼女の言葉を遮り、わたしは畳みかけるように言った。
「『素敵な人ね~』って言ってたじゃないですか? イベントではじめて会ったとき。
『わたしも思わずグラグラきちゃった』って優花さん、嬉しそうに話していたし、昨日の撮影会でもずいぶんヨシキさんのこと、褒めていたじゃないですか」
「そりゃ、、、 あれだけカッコよくて才能もあって、面白い人だもの。素敵って思うのも当然じゃない」
「だから、わたしたちを別れさせたかったんですか?」
「それは違うわよぉ! わたしは凛子ちゃんのためを思って」
「嘘!」
思わず声を荒げた。
いったん疑いはじめたら、どんな台詞も悪い方にしかとれない。
いつでもお姉さん口調で、知ったような顔でわたしを諭して、上から目線で…
前から胡散臭いと思っていた。
大友優花さんのことは。
つづく
「あ、凛子ちゃん? どうしたの、こんな夜中に。なにか用?」
電話の向こうの声は、優花さん。
「用ってほどでもないんですけど… なんとなく、声が聞きたくて」
「え~?! なんか嬉しいなぁ。そんな風に言ってくれると」
「そうですか?」
「昨日の撮影会、楽しかったね。ヨシキさんの速報が楽しみね」
「え? ええ…」
「『すぐに送る』って言ってたのに、まだ来ないけど。仕事忙しいのかな?」
「…そうみたいですね」
「凛子、ちゃん?!」
「…え?」
「元気ないけど… なにかあったの?」
「え。ええ… ちょっと」
「話してみてよ。力になるからさ」
「…ええ。実は・・・」
問われるまま、例のメールのことや掲示板のこと。そして昨日のヨシキさんとのいきさつを、わたしは優花さんに打ち明けた。
『うん』『うん』『それは酷いわ』『ありえない』と、相づちを打ちながら、優花さんは話を聞いてくれた。
「まあ… そんな事になるんじゃないかと、思ってたけどね」
したりと、優花さんは話しはじめた。
「はじめて会ったときから、警報鳴りっ放しだったのよ」
「警報?」
「『こいつは危険人物だ』ってね」
「…」
「凛子ちゃんたち、つきあいはじめてまだ1ヶ月くらいでしょ?」
「ええ」
「酷な言い方かもしれないけど、よかったかもよ。傷が浅いうちに別れられて」
「そ、そうですか?」
「このままズルズルはまっちゃうと、致命傷になりかねないし。
ああいうタイプは、別れた女に未練なんか持たないから、凛子ちゃんもヨシキさんのことはさっさと忘れて、新しい恋探した方がいいわよ」
確かに、優花さんの言うとおりなんだろうけど…
なにかもやもやする。
「新しい恋なんて… まだ…」
「女の恋は上書きよ。いい男が現れたら、昔の恋なんてさっぱり忘れられるから」
「でも、そんなに簡単には、上書きなんてできないです」
「ん~、、、 まあ、初めての男だもんね。そりゃそうだわ。
でも、あれは女を喰っては捨てるタイプよ。犬に噛まれたとでも思って、ヨシキさんのことは早く忘れた方が、凛子ちゃんのためよ」
『女を喰っては捨てる』
フレーズがピタリと重なった。
もしかして、あの陰湿なメールを送ってきたのは、、、 優花さん?
まさか?!
「優花さんですか? あのメールは」
「え?」
「あんな陰湿なことしたの、優花さんなんですか?!」
「なっ、なに言ってるの。わたしがそんなことするわけないでしょ」
「優花さん。もしかして、ヨシキさんのことが好きなんですか?」
「えっ、、? なっ、なんでそうなるの? わたしは別になんにも…」
どことなく慌てた口調で、優花さんは返す。
なんだか怪しい。
彼女の言葉を遮り、わたしは畳みかけるように言った。
「『素敵な人ね~』って言ってたじゃないですか? イベントではじめて会ったとき。
『わたしも思わずグラグラきちゃった』って優花さん、嬉しそうに話していたし、昨日の撮影会でもずいぶんヨシキさんのこと、褒めていたじゃないですか」
「そりゃ、、、 あれだけカッコよくて才能もあって、面白い人だもの。素敵って思うのも当然じゃない」
「だから、わたしたちを別れさせたかったんですか?」
「それは違うわよぉ! わたしは凛子ちゃんのためを思って」
「嘘!」
思わず声を荒げた。
いったん疑いはじめたら、どんな台詞も悪い方にしかとれない。
いつでもお姉さん口調で、知ったような顔でわたしを諭して、上から目線で…
前から胡散臭いと思っていた。
大友優花さんのことは。
つづく
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