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level 17
「囲み撮影になっても動じることはありません」
撮影スペースに桃李さんと行くと、わたしは小脇に薙刀を抱え、ポーズをとった。
ゲームではずっと『お市の方』キャラを使っていたし、ネットの解説動画もいろいろ見て、決めポーズも研究している。薙刀の扱いならお手のものだ。ポージングには自信があった。
「うっきゃぁあああ~~!!
そのポージング完璧お市の方ですぅ!
美月姫最高ですうっっ ((◎д◎ ))ゝ」
何度も歓声をあげ、狂喜乱舞といった感じで、桃李さんは写真を撮りまくっていた。
「すご~い! 『お市の方』じゃない?! 衣装すご~い!!」
「衣装のクオリテイ高~い! これコスパラ製ですか? 細かいとこまで質感出ててすごいです!」
「すごいです! よく似合ってて美しいです!!」
「きれ~い! すみません。写真撮らせてもらっていいですか?!」
「え~。わたしも撮りたい! お願いしますっ!」
「背も高いし、すっごい美人さんですよね。『お市の方』コスしてるレイヤーさんはいろいろ見たけど、美月さんが最高です!」
桃李さんの勢いに乗せられてか、他のレイヤーさんもどんどん集まってきて、口々にわたしのコスプレを褒め、写真を撮ってくれた。
一旦人だかりができると、あっという間に膨れ上がっていく。
カメコさんも次々と寄ってきて、ついには囲み撮影へとなだれ込んでいった。
意外な成り行きにびっくりしたけど、もう、以前のように動じることはない。
「そこ! あまりローアングルから撮らないで下さい!」
そう言いながらわたしは、目の前に座り込んでる黒い帽子を被ったカメコのレンズに、薙刀の切っ先を突きつけた。
この人はいつもローアングルで写真を撮る要注意人物で、前からいけ好かなかったんだ。
短い打ち掛けの下にはアンダースコートを穿いてガードしてはいるけど、それさえ撮られたくない。
「下がりなさい。でないと、薙刀の錆にしてくれますよ!」
『お市の方』の決めゼリフを真似ながら、わたしは薙刀を突き出し、彼の目の前で寸止めした。
驚いた黒帽カメコは、カメラを落とし、目をむいて尻もちをついたまま、必死に後ずさりする。
レイヤーさんやカメコさんたちの間からも、笑いが巻き起こった。
ふふん。いい気味。
気をよくしたわたしは、薙刀を上段に構えながら、ヒラリと翻り、腰を落として髪を振り乱す。
その拍子に、短いスカートがふわりとめくれ上がる。
瞬間、一斉にシャッター音が鳴り響くが、アンダースコートのおかげでパンチラは気にならない。
気分いい!
「もう終了で~す。カウントかけま~す! 3、2、1、はいっ。解散で~す!」
しばらくするとスタッフさんが制止に入ってくれた。
「もう終わりです。いつまでも撮っている方は、容赦なく串刺しにしてくれますよ!」
それでも撮影をやめないカメコに向かって、わたしは高らかに言い放った。
「うわ~っ。美月さん、その『散華転生』コス。新作? おっそろしく似合ってるわぁ」
桃李さんと別れてしばらく会場をうろついていると、今度は魔法戦士のコスチュームを纏った恋子さんがわたしを見つけて、話しかけてきた。
しばらくの間、わたしたちは今日の衣装や、先週の撮影会のことを話した。
「そう言えば美月さん、森田美湖とのモデルレッスンはどう? 順調にやってる?」
撮影会のことからみっこさんの話題になり、恋子さんはモデルレッスンのことを訊いてきた。
先週も、彼女はみっこさんのことを熱心に訊いていたし、モデルにはだれよりも興味がある様子で、盛んにわたしのことを羨んでいたっけ。
「そ…」
返事をしかけて、わたしは口を噤み、一計を案じることにした。
つづく
ゲームではずっと『お市の方』キャラを使っていたし、ネットの解説動画もいろいろ見て、決めポーズも研究している。薙刀の扱いならお手のものだ。ポージングには自信があった。
「うっきゃぁあああ~~!!
そのポージング完璧お市の方ですぅ!
美月姫最高ですうっっ ((◎д◎ ))ゝ」
何度も歓声をあげ、狂喜乱舞といった感じで、桃李さんは写真を撮りまくっていた。
「すご~い! 『お市の方』じゃない?! 衣装すご~い!!」
「衣装のクオリテイ高~い! これコスパラ製ですか? 細かいとこまで質感出ててすごいです!」
「すごいです! よく似合ってて美しいです!!」
「きれ~い! すみません。写真撮らせてもらっていいですか?!」
「え~。わたしも撮りたい! お願いしますっ!」
「背も高いし、すっごい美人さんですよね。『お市の方』コスしてるレイヤーさんはいろいろ見たけど、美月さんが最高です!」
桃李さんの勢いに乗せられてか、他のレイヤーさんもどんどん集まってきて、口々にわたしのコスプレを褒め、写真を撮ってくれた。
一旦人だかりができると、あっという間に膨れ上がっていく。
カメコさんも次々と寄ってきて、ついには囲み撮影へとなだれ込んでいった。
意外な成り行きにびっくりしたけど、もう、以前のように動じることはない。
「そこ! あまりローアングルから撮らないで下さい!」
そう言いながらわたしは、目の前に座り込んでる黒い帽子を被ったカメコのレンズに、薙刀の切っ先を突きつけた。
この人はいつもローアングルで写真を撮る要注意人物で、前からいけ好かなかったんだ。
短い打ち掛けの下にはアンダースコートを穿いてガードしてはいるけど、それさえ撮られたくない。
「下がりなさい。でないと、薙刀の錆にしてくれますよ!」
『お市の方』の決めゼリフを真似ながら、わたしは薙刀を突き出し、彼の目の前で寸止めした。
驚いた黒帽カメコは、カメラを落とし、目をむいて尻もちをついたまま、必死に後ずさりする。
レイヤーさんやカメコさんたちの間からも、笑いが巻き起こった。
ふふん。いい気味。
気をよくしたわたしは、薙刀を上段に構えながら、ヒラリと翻り、腰を落として髪を振り乱す。
その拍子に、短いスカートがふわりとめくれ上がる。
瞬間、一斉にシャッター音が鳴り響くが、アンダースコートのおかげでパンチラは気にならない。
気分いい!
「もう終了で~す。カウントかけま~す! 3、2、1、はいっ。解散で~す!」
しばらくするとスタッフさんが制止に入ってくれた。
「もう終わりです。いつまでも撮っている方は、容赦なく串刺しにしてくれますよ!」
それでも撮影をやめないカメコに向かって、わたしは高らかに言い放った。
「うわ~っ。美月さん、その『散華転生』コス。新作? おっそろしく似合ってるわぁ」
桃李さんと別れてしばらく会場をうろついていると、今度は魔法戦士のコスチュームを纏った恋子さんがわたしを見つけて、話しかけてきた。
しばらくの間、わたしたちは今日の衣装や、先週の撮影会のことを話した。
「そう言えば美月さん、森田美湖とのモデルレッスンはどう? 順調にやってる?」
撮影会のことからみっこさんの話題になり、恋子さんはモデルレッスンのことを訊いてきた。
先週も、彼女はみっこさんのことを熱心に訊いていたし、モデルにはだれよりも興味がある様子で、盛んにわたしのことを羨んでいたっけ。
「そ…」
返事をしかけて、わたしは口を噤み、一計を案じることにした。
つづく
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