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level 17
「寝撮られシチュエーションを楽しんでませんか?」
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あわただしくコトが終わると、今までのケンカが嘘のように、わたしたちは濡れ縁に腰をおろし、抱き合って指を絡めあっていた。
いっしょに過ごすひとときが、ふたたび、甘く愛しいものに変わっていく。
ヨシキさんの肩にもたれかかって、わたしは頭をくっつけてみる。
なんて満ち足りた、幸せなひととき。
時が経つのも忘れてしまう。
わたしの髪を優しく撫でながら、ヨシキさんは何度も何度も『愛してる』と、耳元でささやいてくれた。
「あと二ヶ月くらいで凛子ちゃんの誕生日だろ。またふたりで、どこかに泊まりで行きたいな」
「そうですね」
「凛子ちゃんは行きたいとこ、ある?」
「ん・・・・ だれとも行ったことのない所」
「だれとも?」
「元カノとかと・・・ ヨシキさんが行ったことのない所がいい」
「…そうだな。考えてみるよ」
「訊いていいですか?」
「なにを?」
「今までのカノジョって、どんなだったんですか?」
ヨシキさんの肩から頭を離すと、わたしは彼の方に向き直って訊いてみた。
考えたくないけど、やっぱり気になる。
知ったところで、どうせ気分悪くなるだけだろうけど、聞かずにはいられない。
「どんなって?」
「『今までのカノジョとはつまんない恋愛だった』って言うけど、ヨシキさんは何人くらいとつきあったんですか?
『自分のペースに巻き込んで相手は言いなり』って、どんなつきあい方なんですか?
美咲さん以外で、わたしの知っている人、いますか?」
「そんなこと。知らない方がいいよ」
「そりゃそうだけど、、」
「お互い、過去の恋の話なんてしないのが、恋愛のマナーだろ」
「ふうん・・・ なんか、ずるい」
「ずるい?」
「だって。わたしには話せるような『過去の恋』なんてないのに、ヨシキさんにはいくらでも『過去』があるんだもん。そんなの全然、フィフティ・フィフティじゃないです」
「それは仕方ないじゃん。凛子ちゃん、処女だったんだから」
「そうなんですよね~。わたしってなにもかも、ヨシキさんがはじめてなんですよねぇ~」
「光栄だよ」
「口惜しいです」
「そうなんだ、、」
そう言ったヨシキさんは、笑いを殺すかのように、口に手を当てた。
余計に悔しさがこみ上げてくる。
「撮影だってそうです。口惜しい」
「撮影?」
「ヨシキさんは他のレイヤーといろいろ個撮してるのに、わたしはヨシキさんとしかした事ないし・・・ それって不公平。全然フィフティ・フィフティじゃない」
「じゃあ、他のカメコと個撮してみる?」
「いいんですか? ヨシキさんは焼きもちとか、妬かないんですか?」
「まあね。時間のムダだから」
「どういう意味です?」
「凛子ちゃんが満足できるカメコなんて、オレ以外にいないよ。他のカメコとは、撮影するだけムダってこと」
「すごい自信ですね」
「…いや」
考えを巡らせる様に、ヨシキさんは少し黙った。
「案外、いいかも」
「え?」
「他の男に撮られてみれば、凛子ちゃんもオレのよさが、改めてわかるだろうから」
「そういうのって、なんか… ムカつく」
「ははは。なんか、寝撮られシチュエーションって感じで、それはそれでワクワクしてくるな」
「ヨシキさん、楽しんでないですか?!」
「はは。楽しみにしてるかも。他のカメコがどんなケッサク写真撮るのか」
「そうやって余裕で笑っていればいいんだわ。そのうちすごくイケてるカメラマンにすっごい写真撮ってもらって、思いっきり嫉妬させてやるから」
「凛子ちゃんはほんと、負けず嫌いだよな~。まあ、そんなとこに惚れたんだけど」
余裕たっぷりな笑みを浮かべて、ヨシキさんはキスをしてきた。
彼の腕に抱かれながら、わたしは安心すると同時に、口惜しくもなる。
この腕の感触を知っている女の人は、わたしの他にも大勢いる。
それだけは、どんなことがあっても、覆せない事実。
わたしは欲深い女なのかもしれない。
ヨシキさんの過去さえ、独り占めにしたいらしい。
つづく
いっしょに過ごすひとときが、ふたたび、甘く愛しいものに変わっていく。
ヨシキさんの肩にもたれかかって、わたしは頭をくっつけてみる。
なんて満ち足りた、幸せなひととき。
時が経つのも忘れてしまう。
わたしの髪を優しく撫でながら、ヨシキさんは何度も何度も『愛してる』と、耳元でささやいてくれた。
「あと二ヶ月くらいで凛子ちゃんの誕生日だろ。またふたりで、どこかに泊まりで行きたいな」
「そうですね」
「凛子ちゃんは行きたいとこ、ある?」
「ん・・・・ だれとも行ったことのない所」
「だれとも?」
「元カノとかと・・・ ヨシキさんが行ったことのない所がいい」
「…そうだな。考えてみるよ」
「訊いていいですか?」
「なにを?」
「今までのカノジョって、どんなだったんですか?」
ヨシキさんの肩から頭を離すと、わたしは彼の方に向き直って訊いてみた。
考えたくないけど、やっぱり気になる。
知ったところで、どうせ気分悪くなるだけだろうけど、聞かずにはいられない。
「どんなって?」
「『今までのカノジョとはつまんない恋愛だった』って言うけど、ヨシキさんは何人くらいとつきあったんですか?
『自分のペースに巻き込んで相手は言いなり』って、どんなつきあい方なんですか?
美咲さん以外で、わたしの知っている人、いますか?」
「そんなこと。知らない方がいいよ」
「そりゃそうだけど、、」
「お互い、過去の恋の話なんてしないのが、恋愛のマナーだろ」
「ふうん・・・ なんか、ずるい」
「ずるい?」
「だって。わたしには話せるような『過去の恋』なんてないのに、ヨシキさんにはいくらでも『過去』があるんだもん。そんなの全然、フィフティ・フィフティじゃないです」
「それは仕方ないじゃん。凛子ちゃん、処女だったんだから」
「そうなんですよね~。わたしってなにもかも、ヨシキさんがはじめてなんですよねぇ~」
「光栄だよ」
「口惜しいです」
「そうなんだ、、」
そう言ったヨシキさんは、笑いを殺すかのように、口に手を当てた。
余計に悔しさがこみ上げてくる。
「撮影だってそうです。口惜しい」
「撮影?」
「ヨシキさんは他のレイヤーといろいろ個撮してるのに、わたしはヨシキさんとしかした事ないし・・・ それって不公平。全然フィフティ・フィフティじゃない」
「じゃあ、他のカメコと個撮してみる?」
「いいんですか? ヨシキさんは焼きもちとか、妬かないんですか?」
「まあね。時間のムダだから」
「どういう意味です?」
「凛子ちゃんが満足できるカメコなんて、オレ以外にいないよ。他のカメコとは、撮影するだけムダってこと」
「すごい自信ですね」
「…いや」
考えを巡らせる様に、ヨシキさんは少し黙った。
「案外、いいかも」
「え?」
「他の男に撮られてみれば、凛子ちゃんもオレのよさが、改めてわかるだろうから」
「そういうのって、なんか… ムカつく」
「ははは。なんか、寝撮られシチュエーションって感じで、それはそれでワクワクしてくるな」
「ヨシキさん、楽しんでないですか?!」
「はは。楽しみにしてるかも。他のカメコがどんなケッサク写真撮るのか」
「そうやって余裕で笑っていればいいんだわ。そのうちすごくイケてるカメラマンにすっごい写真撮ってもらって、思いっきり嫉妬させてやるから」
「凛子ちゃんはほんと、負けず嫌いだよな~。まあ、そんなとこに惚れたんだけど」
余裕たっぷりな笑みを浮かべて、ヨシキさんはキスをしてきた。
彼の腕に抱かれながら、わたしは安心すると同時に、口惜しくもなる。
この腕の感触を知っている女の人は、わたしの他にも大勢いる。
それだけは、どんなことがあっても、覆せない事実。
わたしは欲深い女なのかもしれない。
ヨシキさんの過去さえ、独り占めにしたいらしい。
つづく
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