あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

文字の大きさ
163 / 259
level 17

「拒めないのを見透かされているのかもしれません」

「なんか… うまくはぐらかされちゃった感じ。結局、証拠も見せてもらえなかったし」

ぼんやりと、さっきまでヨシキさんとメールのやりとりをしていた、開けっ放しの窓を眺めながら、わたしはひとりつぶやいた。

ヨシキさんのいう『証拠』って、エッチすること?
求められるとわたしが拒めないのを、ヨシキさんには見透かされているのかもしれない。
エッチすることで、わたしを懐柔して。
結局わたしも、ヨシキさんのペースに巻き込まれて、『思いどおりにできる女』として、利用されているだけかもしれない。
所詮わたしも、ヨシキさんの『つまらない恋』の相手のひとり・・・

いったんエッチの効果が切れると、『クスリ』をする前よりも、不快感やイライラが募ってくる。
こうしてひとりになってしまうと、どうでもいいことばかり考えて、切なさと虚しさに翻弄されてしまう。

以前は、そんなことはなかった。
離れていても幸せを感じていた。
だけど、漠然といだいていたヨシキさんへの不信感が、こうして具体的なものになってしまうと、彼の『過去』が生々しい現実として、わたしの胸を掻きむしる。
『信じたい』という気持ちと、『信じられない』という気持ちが、ぶつかりあってせめぎあい、心を乱す。

「あ~~、もうっ!」

勢いよく起き上がると、わたしはパソコンの電源を入れた。
インターネットブラウザを立ち上げて、惰性に任せて掲示板に目を通す。

なにやってんだ、わたし?!
こんな悪口だらけの掲示板に依存したって、いいことなんてあるわけない。

ブラウザを閉じたわたしは、代わりにメールソフトを立ち上げる。
新しいメールが来ていた。
カメコのノマドさんからの、個撮の誘いだった。
そういえばこの人は、わたしがイベントに行きはじめた頃からずっと、熱心に誘ってくれる。
自慢している割にはたいした写真を撮るわけでもないし、本人の容姿や言動にもイタいところがあるので、適当な理由をつけて、個撮は断っていた。

『凛子ちゃんが満足できるカメコなんて、オレ以外にいないだろ。他のカメコとは撮影するだけムダ』
『他の男に撮られてみれば、凛子ちゃんもオレのよさが、改めてわかるだろう』

熱のこもったノマドさんの誘いのメールを読みながら、わたしはヨシキさんの言葉を思い出していた。
ヨシキさんは頭っから他のカメコさんをバカにしているみたいで、そういう自信たっぷりな態度も、なんだか鼻につく。

ほんとにそうだろうか?
わたしにとって、ヨシキさんが本当に最高のカメラマンなんだろうか?

他のカメラマンさんと個撮したことがないわたしには、ヨシキさんの良し悪しを測る『定規』がない。
ヨシキさん自身、他のカメコさんと撮影するのを止めなかったし、むしろ勧めるくらいだった。
ヤツばかりがいろいろなレイヤーと『個撮』と称して遊び回り、わたしひとりだけがこうやって悶々としているのも、割に合わない。

わたしもヨシキさん以外の人と、個撮、やってみようかな。
でも、ノマドさんだと今いち気分が乗らないし…

そう思いながら、メールの署名のURLをクリックする。
そこは、ノマドさんのホームページだった。
たくさんのコスプレイヤーを撮影した画像が、延々と並んでいる。
どれも、イベント会場で頂いたような、のっぺりと明るい、やたら色の派手な画像。
しかし、設置されていたアクセスカウンターを見て、わたしは驚いた。
軽く100万を超えている。

そういえばノマドさんは、『イベントカメラマンの大御所』と言われていたっけ。
こんなにたくさんのアクセスがあるのなら、きっと人気があるのだろうし、『派手すぎる』と思っている色作りも、実は今のコスプレ界の流行に合わせているのかもしれない。

「いいじゃん凛子。なにごとも経験よ。やってみれば?」

ひとりごちながらキーボードを叩き、わたしはメールを返した。
ノマドさんからの個撮を受けるメールを。

MODELSIDE END

7th Sep.2018 改稿
17th Feb 2021 改稿
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。