あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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「そそり立った鼻をへし折ってやりたいです」

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「あんまりくずカメコとばかり撮影してると、凛子ちゃんまで安っぽいレイヤーに見られるぞ」
「それって、焼きもちですか?」
「まさか。オレがそこらのカメコに焼きもちなんか妬くはずないだろ」
「じゃあヨシキさんは口出さないで下さい。わたしは自分のやりたいようにしますから」

何度、ヨシキさんとそんな問答しただろう。
今やっていることに、自分でも納得してるわけじゃないけど、ヨシキさんから面と向かって言われると、イラッとしてしまう。
例えそれが、正論だとしても、余計にわたしの気持ちを逆撫でする。
挙げ句の果てには、そこからけんかにまで発展する始末。
ほんとにわたしが言ってほしいのは、そんな言葉じゃないのに、、、

『焼きもちだよ。他のカメコなんかに撮られるなよ。凛子はオレのものだ』

そう言ってくれればきっと、わたしはヨシキさん以外との個撮を、きっぱりとやめただろう。
やっぱりわたしは、ヨシキさんの撮る写真がいちばん好きだからだ。
だけどアイツは、いつでも余裕たっぷりな表情を浮かべて、他のカメコのサイトにアップされたわたしの画像を冷ややかに眺めて、上から目線で批評するだけだった。

なんか悔しい。
ヨシキさん以上の写真を撮られて、自信たっぷりにそそり立ったアイツの鼻を、へし折ってやりたい。

そう思い、『COSMODEL』や『レイヤーズ』といったコスプレ雑誌にも、わたしは積極的に、自分の画像を投稿してみた。
レイヤーやカメコに人気のある専門誌に掲載されれば、もっとたくさんの人から見てもらえるだろうし、もっと腕のいいカメラマンと出会えて、撮影することもできるはず。
実際、わたしの写真が雑誌に掲載されると、一気にカメコからのオファーが増え、そのレベルも上がった。
そのなかから、わたしは自分好みの写真を撮るカメコと連絡をとっては、撮影に出かけていった。
そうやって、ムキになってたくさんの個撮をこなし、次々と衣装を新調してイベントにも参加してるうちに、いつの間にかわたしは、『大物レイヤー』と呼ばれるようになっていた。

 それにつれて、わたしに関する話題も、ネットや掲示板の上で増えていく。
当然、悪口もたくさん書かれるようになったが、もう、耐性もついてきた。
そんなもの、いちいち気にしてちゃ、キリがない。
『出る杭は打たれる』っていうけど、出過ぎてしまえばこっちのもの。

そもそも、コスプレをはじめた頃こそ、『ヘタレイヤー』だの『着ただけレイヤー』だのと、実力のなさを貶めるカキコはあったが、今やコスプレの完成度も高く、メイクもファッションセンスもモデル事務所で鍛えられて、ポージングもできて表現力の増した『超絶美少女』のわたしを、容姿をネタに叩けるわけがない。
たいていの悪口は、雑誌に掲載されて、カメコからもたくさんの撮影依頼がきて、イベント会場では毎回のように囲み撮影されてるわたしに対する、嫉妬や羨望の裏返し。

くだらない。

人の足を引っ張るカキコでしか、自己を肯定できない奴らなんて、わたしにとってなんの存在意義もない。

つづく
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