あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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「おとなの男の人には、なにをあげたら喜ばれますか?」

「おっ。今日はまた一段と可愛いな。その真っ赤なコートもいいよ。
黒のタイツが足許引き締めて、余計にスタイルよく見える。
髪の先にカールかけたんだな。エアリーでいいじゃん。
凛子ちゃんもどんどん、センスに磨きがかかっていってるな」

待ち合わせ場所で落ち合ったヨシキさんは、真っ先にわたしのコーデを褒めてくれる。細かいところまでわたしのことを見てくれるのは嬉しいし、おしゃれのしがいもある。
こうやって褒められて、女子は綺麗になっていくんだなと、実感。
そういえば、これまで個撮をしてくれたカメコで、こんな風に気持ちをあげるのが上手な人は、ほとんどいなかったな。
『可愛い』とか『いいね』とか、ありきたりな言葉で褒められるより、ちょっとした変化に気づいてくれることの方が、嬉しい。

やっぱり、ヨシキさんがいい。
この人と、ずっといっしょにいたい。

予約していたフレンチレストランの席に着きメニューをオーダーすると、ヨシキさんはバッグのなかからプレゼントを取り出し、わたしに差し出した。パールピンクのラッピングが可愛い。

「はい。メリークリスマス」
「え? ありがとうございます。
わたしもプレゼント、用意しました」
「ほんとに? 嬉しいよ」
「なにがいいか、わからなかったんですけど、、」

そう言って、わたしはショッパーを差し出す。
ヨシキさん、、、 というか、おとなの男の人には、なにをあげたら喜ばれるかわからない。
なので、いろんな用途に使えそうな、カメラポーチを選んでみた。

「おお、可愛くていいじゃん! さすがにオレのカメラはゴツくて入んないけど、小物とか入れるのに便利そうだな。ありがとな」

わたしのあげたシックなブルーのポーチを、ヨシキさんは嬉しそうにひっくり返したり、ファスナーを開け閉めしたりしている。
よかった。
喜んでもらえたみたいで。

「ヨシキさんから頂いたプレゼントも、開けていいですか?」

そう言いながら、わたしもラッピングを解いていった。

「ん、まあ、いいよ。ほんとは部屋で開けた方が盛り上がるんだけどな」
「部屋で?」
「まぁ、開けてみてよ」
「あ。はい」

なかから出てきたのは、ふわっとした手触りのいい生地でできた、ロング丈のナイティ。
ドレスみたいに裾の広がった綺麗なデザインだけど、肌が透けそうなうっすらとした生地に、華奢な肩紐と大きく開いた胸元が、ちょっぴりセクシー。
胸元には月や星の飾りが散りばめられてて、聖なる夜みたい。

「素敵です。可愛いっていうか、ちょっぴりおとなな感じで。ありがとうございます」
「はは。クリスマス限定のおしゃれなナイティがあったんで、似合うかなと思って買っといたんだけど、凛子ちゃんがそれを着た姿は、しばらく見れそうにないな」
「す、すみません」
「いいよいいよ。大学合格のあとのお楽しみにとっておくから」

やさしく微笑んだヨシキさんは、『そろそろ料理が来るから』と言って、テーブルの上に広げられたプレゼントを片づける。
テーブルがすっきりしたのを見計ったように、最初のオードブルとドリンクが運ばれてきた。

つづく
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