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level 23
「わたしのコスプレを撮ってみたかったんですか?」
それは…
自分でも薄々感じていたことだった。
「凛子ちゃんがコスプレはじめたのって、『自分を変えたい』から。よね?」
「は、はい」
「なりたかった自分に、今、凛子ちゃんはなれてる?」
「…」
まっすぐな瞳で、みっこさんはわたしを見つめていた。
改まって訊かれると、答えに詰まる。
確かに、、、
最初の動機は純粋だった。
『自分を変えたい』
この想いで、わたしはコスプレに飛び込んでいった。
だけど、この世界に染まっていくにつれて、なにかを失っていったような気もする。
ヨシキさんへの当てつけもあって、ムキになって見境なく、いろんなカメコと個撮もしてきた。
そうして今になって、それを後悔してると感じる自分がいる。
やればやるほど虚しさが溜まっていくっていうか、自分がつまらない存在に落ちていくような気がしていたのだ。
だからこうして、『コスプレを卒業しろ』と言われても、なんの抵抗も未練もない。
むしろ、いいきっかけかもしれない。
大きく深呼吸して、わたしは晴れやかな声で、みっこさんに答えた。
「わかりました。コスプレはもう、卒業します。
わたしがイベントに参加しはじめたのは、コスプレで有名になるとか、周りからチヤホヤされるとかじゃなくて、自分の進む道を見つけることだったと思いますから」
「それはもう、達成できたってわけね」
「はい」
「よかった」
安堵するように、みっこさんはニッコリ微笑んだ。
「ん~… だけど残念」
となりに座って話を聞いていた川島さんが、いきなりオーバーなゼスチャーで口を挟んだ。
「実はぼくも、凛子ちゃんのコスプレ撮ってみたかったんだよ」
「ええっ? 川島さんがですか?」「えっ? 川島くんが?」
わたしとみっこさんの声がダブった。
そんなわたしたちを見ながら、川島さんはおどけた口調で言う。
「コスプレフォトには、未来を感じるんだ」
「未来?」
「話を聞いてぼくも、コスプレの画像とかを検索して、いろいろ見てみた。
確かにつまんない写真は多い。
だけど、ハッと息を飲む斬新なヤツもあったよ。
ぼくらみたいな、カメラでめし食ってる人間の常識を打ち破るようなヤツが」
「そうね。あのレタッチとか顔の加工とか、プロの世界じゃ考えられないものだしね」
「そうそう。意外といいじゃないか。あのプラスティッキーな肌の質感。
実在の女の子が、まるで作り物のフィギュアみたいに表現されてて、こういうのはアリかな」
「そうなんです! そういうのって、コスプレの世界観にハマってて、まるでゲームかアニメのキャラになったみたいに感じるんです」
「2.5次元みたいなものね」
川島さんの言葉に共感して応えたわたしに、みっこさんは茶化すように微笑んだ。
「ぼくらみたいな頭の古いクリエイターには、コスプレフォトは新しい刺激だよ。
凛子ちゃんの画像をぼくも見たけど、あのボーカロイドっていうやつ? キュートでちょっぴりセクシーでよかったよ。プリーツのミニスカートが凛子ちゃんの美脚にぴったりでさ。ぼくも撮りたいって思ったよ。
あと、甲冑にミニの振り袖を纏った、えっと…」
「『散華転生』の、お市の方ですか?」
「そう、それ! あの衣装はデザインも秀逸だし、手間がかかっててすごいよ」
「わかっていただけますか、川島さん。
わたしは衣装の手作りはできませんけど、すごい人になると、甲冑なんかをモールドで樹脂成形したりして、手作りしてるんですよ」
「そりゃすごいな。コスプレなんてしょせん素人の撮影ごっこだって、甜めてかかってたけど、浅はかだったよ。コスプレも、衣装も撮影も極めれば、ちゃんとした芸術にまで昇華できる可能性を秘めてるな」
つづく
自分でも薄々感じていたことだった。
「凛子ちゃんがコスプレはじめたのって、『自分を変えたい』から。よね?」
「は、はい」
「なりたかった自分に、今、凛子ちゃんはなれてる?」
「…」
まっすぐな瞳で、みっこさんはわたしを見つめていた。
改まって訊かれると、答えに詰まる。
確かに、、、
最初の動機は純粋だった。
『自分を変えたい』
この想いで、わたしはコスプレに飛び込んでいった。
だけど、この世界に染まっていくにつれて、なにかを失っていったような気もする。
ヨシキさんへの当てつけもあって、ムキになって見境なく、いろんなカメコと個撮もしてきた。
そうして今になって、それを後悔してると感じる自分がいる。
やればやるほど虚しさが溜まっていくっていうか、自分がつまらない存在に落ちていくような気がしていたのだ。
だからこうして、『コスプレを卒業しろ』と言われても、なんの抵抗も未練もない。
むしろ、いいきっかけかもしれない。
大きく深呼吸して、わたしは晴れやかな声で、みっこさんに答えた。
「わかりました。コスプレはもう、卒業します。
わたしがイベントに参加しはじめたのは、コスプレで有名になるとか、周りからチヤホヤされるとかじゃなくて、自分の進む道を見つけることだったと思いますから」
「それはもう、達成できたってわけね」
「はい」
「よかった」
安堵するように、みっこさんはニッコリ微笑んだ。
「ん~… だけど残念」
となりに座って話を聞いていた川島さんが、いきなりオーバーなゼスチャーで口を挟んだ。
「実はぼくも、凛子ちゃんのコスプレ撮ってみたかったんだよ」
「ええっ? 川島さんがですか?」「えっ? 川島くんが?」
わたしとみっこさんの声がダブった。
そんなわたしたちを見ながら、川島さんはおどけた口調で言う。
「コスプレフォトには、未来を感じるんだ」
「未来?」
「話を聞いてぼくも、コスプレの画像とかを検索して、いろいろ見てみた。
確かにつまんない写真は多い。
だけど、ハッと息を飲む斬新なヤツもあったよ。
ぼくらみたいな、カメラでめし食ってる人間の常識を打ち破るようなヤツが」
「そうね。あのレタッチとか顔の加工とか、プロの世界じゃ考えられないものだしね」
「そうそう。意外といいじゃないか。あのプラスティッキーな肌の質感。
実在の女の子が、まるで作り物のフィギュアみたいに表現されてて、こういうのはアリかな」
「そうなんです! そういうのって、コスプレの世界観にハマってて、まるでゲームかアニメのキャラになったみたいに感じるんです」
「2.5次元みたいなものね」
川島さんの言葉に共感して応えたわたしに、みっこさんは茶化すように微笑んだ。
「ぼくらみたいな頭の古いクリエイターには、コスプレフォトは新しい刺激だよ。
凛子ちゃんの画像をぼくも見たけど、あのボーカロイドっていうやつ? キュートでちょっぴりセクシーでよかったよ。プリーツのミニスカートが凛子ちゃんの美脚にぴったりでさ。ぼくも撮りたいって思ったよ。
あと、甲冑にミニの振り袖を纏った、えっと…」
「『散華転生』の、お市の方ですか?」
「そう、それ! あの衣装はデザインも秀逸だし、手間がかかっててすごいよ」
「わかっていただけますか、川島さん。
わたしは衣装の手作りはできませんけど、すごい人になると、甲冑なんかをモールドで樹脂成形したりして、手作りしてるんですよ」
「そりゃすごいな。コスプレなんてしょせん素人の撮影ごっこだって、甜めてかかってたけど、浅はかだったよ。コスプレも、衣装も撮影も極めれば、ちゃんとした芸術にまで昇華できる可能性を秘めてるな」
つづく
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