212 / 259
level 23
「わたしのコスプレを撮ってみたかったんですか?」
しおりを挟む
それは…
自分でも薄々感じていたことだった。
「凛子ちゃんがコスプレはじめたのって、『自分を変えたい』から。よね?」
「は、はい」
「なりたかった自分に、今、凛子ちゃんはなれてる?」
「…」
まっすぐな瞳で、みっこさんはわたしを見つめていた。
改まって訊かれると、答えに詰まる。
確かに、、、
最初の動機は純粋だった。
『自分を変えたい』
この想いで、わたしはコスプレに飛び込んでいった。
だけど、この世界に染まっていくにつれて、なにかを失っていったような気もする。
ヨシキさんへの当てつけもあって、ムキになって見境なく、いろんなカメコと個撮もしてきた。
そうして今になって、それを後悔してると感じる自分がいる。
やればやるほど虚しさが溜まっていくっていうか、自分がつまらない存在に落ちていくような気がしていたのだ。
だからこうして、『コスプレを卒業しろ』と言われても、なんの抵抗も未練もない。
むしろ、いいきっかけかもしれない。
大きく深呼吸して、わたしは晴れやかな声で、みっこさんに答えた。
「わかりました。コスプレはもう、卒業します。
わたしがイベントに参加しはじめたのは、コスプレで有名になるとか、周りからチヤホヤされるとかじゃなくて、自分の進む道を見つけることだったと思いますから」
「それはもう、達成できたってわけね」
「はい」
「よかった」
安堵するように、みっこさんはニッコリ微笑んだ。
「ん~… だけど残念」
となりに座って話を聞いていた川島さんが、いきなりオーバーなゼスチャーで口を挟んだ。
「実はぼくも、凛子ちゃんのコスプレ撮ってみたかったんだよ」
「ええっ? 川島さんがですか?」「えっ? 川島くんが?」
わたしとみっこさんの声がダブった。
そんなわたしたちを見ながら、川島さんはおどけた口調で言う。
「コスプレフォトには、未来を感じるんだ」
「未来?」
「話を聞いてぼくも、コスプレの画像とかを検索して、いろいろ見てみた。
確かにつまんない写真は多い。
だけど、ハッと息を飲む斬新なヤツもあったよ。
ぼくらみたいな、カメラでめし食ってる人間の常識を打ち破るようなヤツが」
「そうね。あのレタッチとか顔の加工とか、プロの世界じゃ考えられないものだしね」
「そうそう。意外といいじゃないか。あのプラスティッキーな肌の質感。
実在の女の子が、まるで作り物のフィギュアみたいに表現されてて、こういうのはアリかな」
「そうなんです! そういうのって、コスプレの世界観にハマってて、まるでゲームかアニメのキャラになったみたいに感じるんです」
「2.5次元みたいなものね」
川島さんの言葉に共感して応えたわたしに、みっこさんは茶化すように微笑んだ。
「ぼくらみたいな頭の古いクリエイターには、コスプレフォトは新しい刺激だよ。
凛子ちゃんの画像をぼくも見たけど、あのボーカロイドっていうやつ? キュートでちょっぴりセクシーでよかったよ。プリーツのミニスカートが凛子ちゃんの美脚にぴったりでさ。ぼくも撮りたいって思ったよ。
あと、甲冑にミニの振り袖を纏った、えっと…」
「『散華転生』の、お市の方ですか?」
「そう、それ! あの衣装はデザインも秀逸だし、手間がかかっててすごいよ」
「わかっていただけますか、川島さん。
わたしは衣装の手作りはできませんけど、すごい人になると、甲冑なんかをモールドで樹脂成形したりして、手作りしてるんですよ」
「そりゃすごいな。コスプレなんてしょせん素人の撮影ごっこだって、甜めてかかってたけど、浅はかだったよ。コスプレも、衣装も撮影も極めれば、ちゃんとした芸術にまで昇華できる可能性を秘めてるな」
つづく
自分でも薄々感じていたことだった。
「凛子ちゃんがコスプレはじめたのって、『自分を変えたい』から。よね?」
「は、はい」
「なりたかった自分に、今、凛子ちゃんはなれてる?」
「…」
まっすぐな瞳で、みっこさんはわたしを見つめていた。
改まって訊かれると、答えに詰まる。
確かに、、、
最初の動機は純粋だった。
『自分を変えたい』
この想いで、わたしはコスプレに飛び込んでいった。
だけど、この世界に染まっていくにつれて、なにかを失っていったような気もする。
ヨシキさんへの当てつけもあって、ムキになって見境なく、いろんなカメコと個撮もしてきた。
そうして今になって、それを後悔してると感じる自分がいる。
やればやるほど虚しさが溜まっていくっていうか、自分がつまらない存在に落ちていくような気がしていたのだ。
だからこうして、『コスプレを卒業しろ』と言われても、なんの抵抗も未練もない。
むしろ、いいきっかけかもしれない。
大きく深呼吸して、わたしは晴れやかな声で、みっこさんに答えた。
「わかりました。コスプレはもう、卒業します。
わたしがイベントに参加しはじめたのは、コスプレで有名になるとか、周りからチヤホヤされるとかじゃなくて、自分の進む道を見つけることだったと思いますから」
「それはもう、達成できたってわけね」
「はい」
「よかった」
安堵するように、みっこさんはニッコリ微笑んだ。
「ん~… だけど残念」
となりに座って話を聞いていた川島さんが、いきなりオーバーなゼスチャーで口を挟んだ。
「実はぼくも、凛子ちゃんのコスプレ撮ってみたかったんだよ」
「ええっ? 川島さんがですか?」「えっ? 川島くんが?」
わたしとみっこさんの声がダブった。
そんなわたしたちを見ながら、川島さんはおどけた口調で言う。
「コスプレフォトには、未来を感じるんだ」
「未来?」
「話を聞いてぼくも、コスプレの画像とかを検索して、いろいろ見てみた。
確かにつまんない写真は多い。
だけど、ハッと息を飲む斬新なヤツもあったよ。
ぼくらみたいな、カメラでめし食ってる人間の常識を打ち破るようなヤツが」
「そうね。あのレタッチとか顔の加工とか、プロの世界じゃ考えられないものだしね」
「そうそう。意外といいじゃないか。あのプラスティッキーな肌の質感。
実在の女の子が、まるで作り物のフィギュアみたいに表現されてて、こういうのはアリかな」
「そうなんです! そういうのって、コスプレの世界観にハマってて、まるでゲームかアニメのキャラになったみたいに感じるんです」
「2.5次元みたいなものね」
川島さんの言葉に共感して応えたわたしに、みっこさんは茶化すように微笑んだ。
「ぼくらみたいな頭の古いクリエイターには、コスプレフォトは新しい刺激だよ。
凛子ちゃんの画像をぼくも見たけど、あのボーカロイドっていうやつ? キュートでちょっぴりセクシーでよかったよ。プリーツのミニスカートが凛子ちゃんの美脚にぴったりでさ。ぼくも撮りたいって思ったよ。
あと、甲冑にミニの振り袖を纏った、えっと…」
「『散華転生』の、お市の方ですか?」
「そう、それ! あの衣装はデザインも秀逸だし、手間がかかっててすごいよ」
「わかっていただけますか、川島さん。
わたしは衣装の手作りはできませんけど、すごい人になると、甲冑なんかをモールドで樹脂成形したりして、手作りしてるんですよ」
「そりゃすごいな。コスプレなんてしょせん素人の撮影ごっこだって、甜めてかかってたけど、浅はかだったよ。コスプレも、衣装も撮影も極めれば、ちゃんとした芸術にまで昇華できる可能性を秘めてるな」
つづく
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる