あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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「まちぶせしてたってわけじゃないんですか?」

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 その数日後、優花さんはうちに来て、兄といっしょにわたしの両親に、懐妊の報告をした。

『よそのお嬢様になんということを』
と、最初は形式どおりに怒られたものの、兄と優花さんの結婚はすでに織り込み済みだったので、父も母も孫の顔が早々に見れることに、まんざらでもない様子。

その翌日、正式に結婚の許可を受けに、兄は大友家に赴いた。
向こうでもそれなりにスッタモンダはあったみたいだけど、結納の日取りや式場探し等、すぐに実務的な話し合いに入ったみたいで、両家はとたんに慌ただしくなっていった。
いずれ結婚する予定にしていたとはいえ、突然の挙式なので、わずか二ヶ月あまりで式場を手配したり新居を探したりと、結婚の準備に兄も優花さんも余裕がなさそう。

これじゃ、ヨシキさんの相談をするどころではない。
そうでなくても優花さんの頭のなかは、すでに新婚生活にトリップしてるみたいで、たまに顔を合わせるとすぐに、結婚式や新婚旅行、新居の話をたっぷり聞かされるハメになる。
挙げ句の果てには、
『ヨシキさんに前撮りと、披露宴のスナップ写真を撮ってもらおうかな。せっかく残すなら、最高の写真がいいし』
と、お気楽なことを言っていた。



 そんな、家の中が賑やかになってきた、センター試験まであと一週間という日の放課後。

その日も、寒い一日だった。
数日前からの寒波がようやく峠を越え、交通マヒを起こすほど降り積った雪も、少しづつ溶けてきたものの、まだ路肩に黒く残っている。
校舎をあとにしたわたしは、マフラーに首をすくめながら、雪に足をとられないように気をつけながら、家路を急いだ。
試験も近づいてきたので、そろそろ教科ごとの総仕上げに入らなくてはならない。
後回しにしていた苦手な教科にも、手をつけなきゃいけないし。

帰宅後の学習計画を練りながら、校庭のべちゃ雪を避け、校門をくぐり抜ける。
ゆるやかに下り坂になった道を駅の方に少し歩くと、交差点の角にひとりの女の子が佇んでいるのに気がついた。
信号待ちをしているでもなく、不安げにうつむいたまま、なにかを待っている様子。

え?
あれは、、、

ロリータ風の可愛いポンチョコートを羽織って、ミニスカートの下には真っ白なニーハイソックスをはき、ツインテールの髪を長く垂らしてうつむいている女の子は、、、
桃李さんだった。

「美月姫。こ、こんにちはです (*´∀`*)ノ」

わたしを見つけた桃李さんは、ペコリとお辞儀をしたが、まるで視線を合わせるのを避けるかのように、うつむいている。

「どうしたんですか? こんなところで」
「…べっ、別に、まっ、まちぶせしてたってわけじゃないんですけど、、
ただ、、、 はぁ~~」

大きなため息が、白いもやを作って漂う。
それが消えていくさまを見つめながら、桃李さんは小さな声で言った。

「少しお話しがあるんですけど、、、 お時間いただいてもいいですか?」

つづく
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