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「わたしとヨシキさんとの終わりのはじまりです」
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“ピロリロリロ…♪”
そのとき、ヨシキさんからメールが届いた。
気だるく携帯を掴み、メール画面を開く。
『今、家の前に来てる』
のっそりとベッドから起き上がり、わたしは窓を開けて、ヨシキさんがいつもクルマを止める場所を見た。
黒の『TOYOTA bB』にもたれかかったヨシキさんが、わたしを見上げて軽く手を振ってる。
一瞬、躊躇ったものの、ピシャリと窓を閉めたわたしは、なにも持たずに制服姿のままで部屋を出て、階段を下りた。
玄関を出てヨシキさんの方に歩み寄ると、助手席のドアを開け、クルマに乗り込みながら言った。
「出して下さい」
突然のわたしの行動に驚いたヨシキさんだったが、すぐに運転席に座ると、エンジンをかけてアクセルを踏む。
わたしは喋らなかった。
ヨシキさんも、わたしの様子がおかしいことに気づいているようで、無言のまま、ハンドルを握っている。
ふたつの沈黙を乗せて、黒の『TOYOTA bB』は、まだまだクルマの多い夕暮れの国道を走り抜けていった。
途中でコンビニに寄って、ふたり分の挽きたてホットコーヒーを買ったヨシキさんは、陽の沈んだ河川敷の端にクルマを止めた。
サイドブレーキを引いて、ぬるくなってきたコーヒーの入った紙コップにひとくち口をつけ、ヨシキさんはいきなり本題を口にした。
「…それで。桃李ちゃんと会ったんだろ?」
「もう知ってるんですか?」
「まあね」
「なんでも話すんですね、桃李さんとは」
コーヒーの入った紙コップを両手で握りしめたまま、皮肉を込めて返す。
「長文メールもらったんだ。オレからも『凛子ちゃんに謝っといてください』ってさ」
「どうしてヨシキさんが謝らなきゃいけないんです?」
「まあ、、、いろいろあったしな」
「いろいろ… そのいろいろを、わたしにも話して下さい」
「え?」
「ヨシキさんの過去のこととか、ご両親のこととか、どうしてひとり暮らししているかとか。どうして、愛が信じられないか。とか」
「…」
「話せませんか? わたしには」
「そんなことはないけど…」
「じゃあ、話して下さい。今すぐ。桃李さん伝でなく、ヨシキさんの口から直接聞きたいです」
「、、無理だよ」
「どうしてですか?」
「『オレのこと知れば知るほど、凛子ちゃんはオレを嫌いになる』って、以前言っただろ」
「それでもわたしは、話してほしいです」
「オレは凛子ちゃんに嫌われたくないし。凛子ちゃんの前では、いつだってカッコいい男でいたいんだ」
「つまんない見栄、張らなくていいんですよ」
「見栄とかじゃなく。オレはだれにも弱みを見せたくないんだ、特に凛子ちゃんには」
「…桃李さんになら。見せられるんですね。弱み」
「…」
「桃李さんが喋ってくれたヨシキさんの過去って、本当のことなんですか?」
「…」
口にした瞬間、後悔した。
『嘘だ』と答えられれば、そんな作り話をしてまで、桃李さんの同情を引こうとするヨシキさんのクズさ加減に、わたしは失望するだろう。
『本当だ』と答えられれば、完全にわたしの負けが決定。
どっちにしても、わたしとヨシキさんとの終わりのはじまり。
それを、ヨシキさんもわかっているのか、言葉を探しているようで、たっぷり1分間は返事をしなかった。
つづく
そのとき、ヨシキさんからメールが届いた。
気だるく携帯を掴み、メール画面を開く。
『今、家の前に来てる』
のっそりとベッドから起き上がり、わたしは窓を開けて、ヨシキさんがいつもクルマを止める場所を見た。
黒の『TOYOTA bB』にもたれかかったヨシキさんが、わたしを見上げて軽く手を振ってる。
一瞬、躊躇ったものの、ピシャリと窓を閉めたわたしは、なにも持たずに制服姿のままで部屋を出て、階段を下りた。
玄関を出てヨシキさんの方に歩み寄ると、助手席のドアを開け、クルマに乗り込みながら言った。
「出して下さい」
突然のわたしの行動に驚いたヨシキさんだったが、すぐに運転席に座ると、エンジンをかけてアクセルを踏む。
わたしは喋らなかった。
ヨシキさんも、わたしの様子がおかしいことに気づいているようで、無言のまま、ハンドルを握っている。
ふたつの沈黙を乗せて、黒の『TOYOTA bB』は、まだまだクルマの多い夕暮れの国道を走り抜けていった。
途中でコンビニに寄って、ふたり分の挽きたてホットコーヒーを買ったヨシキさんは、陽の沈んだ河川敷の端にクルマを止めた。
サイドブレーキを引いて、ぬるくなってきたコーヒーの入った紙コップにひとくち口をつけ、ヨシキさんはいきなり本題を口にした。
「…それで。桃李ちゃんと会ったんだろ?」
「もう知ってるんですか?」
「まあね」
「なんでも話すんですね、桃李さんとは」
コーヒーの入った紙コップを両手で握りしめたまま、皮肉を込めて返す。
「長文メールもらったんだ。オレからも『凛子ちゃんに謝っといてください』ってさ」
「どうしてヨシキさんが謝らなきゃいけないんです?」
「まあ、、、いろいろあったしな」
「いろいろ… そのいろいろを、わたしにも話して下さい」
「え?」
「ヨシキさんの過去のこととか、ご両親のこととか、どうしてひとり暮らししているかとか。どうして、愛が信じられないか。とか」
「…」
「話せませんか? わたしには」
「そんなことはないけど…」
「じゃあ、話して下さい。今すぐ。桃李さん伝でなく、ヨシキさんの口から直接聞きたいです」
「、、無理だよ」
「どうしてですか?」
「『オレのこと知れば知るほど、凛子ちゃんはオレを嫌いになる』って、以前言っただろ」
「それでもわたしは、話してほしいです」
「オレは凛子ちゃんに嫌われたくないし。凛子ちゃんの前では、いつだってカッコいい男でいたいんだ」
「つまんない見栄、張らなくていいんですよ」
「見栄とかじゃなく。オレはだれにも弱みを見せたくないんだ、特に凛子ちゃんには」
「…桃李さんになら。見せられるんですね。弱み」
「…」
「桃李さんが喋ってくれたヨシキさんの過去って、本当のことなんですか?」
「…」
口にした瞬間、後悔した。
『嘘だ』と答えられれば、そんな作り話をしてまで、桃李さんの同情を引こうとするヨシキさんのクズさ加減に、わたしは失望するだろう。
『本当だ』と答えられれば、完全にわたしの負けが決定。
どっちにしても、わたしとヨシキさんとの終わりのはじまり。
それを、ヨシキさんもわかっているのか、言葉を探しているようで、たっぷり1分間は返事をしなかった。
つづく
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