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「暖炉の炎を見ていると、人恋しくなってきます」
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「すみません。突然押しかけてしまって」
忙しい彼女にアポもとらず、レッスン日でもないのに家に上がり込んで、みっこさんは迷惑してるかもしれない。
しかし、彼女は優しくかぶりを振った。
「ちょうどね、あたしも、だれかと話しがしたいなって、思ってたとこなの。
冬の夜って、ひとりでいるのは淋しいじゃない。特に、こんな雪の夜はね。
暖炉に火を入れてあったかい炎を見てると、なんだか人恋しくなってきちゃってね。
だから、凛子ちゃんが来てくれて、あたしも嬉しいわ」
「ありがとうございます。そんな風に言って下さって」
「いいのよ。紅茶のおかわり、いる?」
「みっこさん」
「ん?」
「わたし、どこで間違えたんでしょうか?」
「…話してみて?」
そう言いながら、みっこさんは紅茶カップとソーサーを手に持って、わたしのとなりに座り込む。
橙色に揺らめく暖炉の炎を見つめながら、この半年間のことを洗いざらい、わたしは打ち明けた。
はじめてコスプレイベントに参加した、去年の夏。
ヨシキさんに写真を撮られた日のこと。
桃李さんにイベント会場で声をかけられて、コスプレにハマっていったこと。
『神カメコ』と呼ばれ、女性レイヤーに絶大な人気のあるヨシキさんのこと。
そのヨシキさんから個撮に誘われ、夜の海辺でキスをされて、次の日には部屋に泊まり込み、すぐに深い仲になったこと。
家族に偽って、山口のリゾートホテルに泊まり旅行に行って、ヌード写真まで撮られたこと。
旅行の間中、朝から晩までいろんなところでエッチしていたこと。
翌日、母にバレてしまったこと。
そして、ヨシキさんの勤めるスタジオで撮ってもらって、川島社長やみっこさんに出会ったこと。
こんなに素直に、自分のことを人に話したのは、これがはじめてだった。
ふた回りも年が離れていて、いつも的確なアドバイスをくれるお姉さんのような存在だから、心が開けたのかもしれない。
じっと耳を傾けているみっこさんに、わたしは訊いてみた。
「みっこさん。ネット掲示板ってご存知ですか?」
「知ってるわよ。いろいろ社会問題にもなったしね。なかでも、モデル掲示板とかコスプレ掲示板は誹謗中傷の書き込みが多くて、荒れやすいって聞いたことあるわ」
「わたし、その掲示板を見させられたんです。おそらく、ヨシキさんが二股かけていたレイヤーから。
そこでヨシキさんの悪口雑言をイヤっていう程読まされて、彼がいろんな女性レイヤーとつきあってるのを知って、自分や桃李さんが掲示板に晒されて貶められてるのを見て、心が荒んで、、、
それが原因で、ヨシキさんとはいったん別れて。
元の鞘に収まったものの、わたしはどんどん自分を見失っていって、、、」
こうしてみっこさんに話してるだけでも、あのときの屈辱がビデオでも見るように、まざまざと甦ってくる。
あの日からがむしゃらに、わたしはコスプレに打ち込んだ。
わたしを嘲笑っていたヤツらを見返そうと、必死になった。
ヨシキさんの鼻をあかしてやろうと、意地になった。
片っ端から目につくコスプレをしまくって、ポージングを研究して。みっこさんの薦めるモデル事務所に入ったのも、不純な動機もあったかもしれない。
好きでもない、尊敬もしてないカメコと個撮したり、イベントで囲み撮影されたりするうちに、自分のなかの矛盾はどんどん大きくなっていった。
「わたし、みっこさんに謝らなくちゃいけないことがあるんです」
つづく
忙しい彼女にアポもとらず、レッスン日でもないのに家に上がり込んで、みっこさんは迷惑してるかもしれない。
しかし、彼女は優しくかぶりを振った。
「ちょうどね、あたしも、だれかと話しがしたいなって、思ってたとこなの。
冬の夜って、ひとりでいるのは淋しいじゃない。特に、こんな雪の夜はね。
暖炉に火を入れてあったかい炎を見てると、なんだか人恋しくなってきちゃってね。
だから、凛子ちゃんが来てくれて、あたしも嬉しいわ」
「ありがとうございます。そんな風に言って下さって」
「いいのよ。紅茶のおかわり、いる?」
「みっこさん」
「ん?」
「わたし、どこで間違えたんでしょうか?」
「…話してみて?」
そう言いながら、みっこさんは紅茶カップとソーサーを手に持って、わたしのとなりに座り込む。
橙色に揺らめく暖炉の炎を見つめながら、この半年間のことを洗いざらい、わたしは打ち明けた。
はじめてコスプレイベントに参加した、去年の夏。
ヨシキさんに写真を撮られた日のこと。
桃李さんにイベント会場で声をかけられて、コスプレにハマっていったこと。
『神カメコ』と呼ばれ、女性レイヤーに絶大な人気のあるヨシキさんのこと。
そのヨシキさんから個撮に誘われ、夜の海辺でキスをされて、次の日には部屋に泊まり込み、すぐに深い仲になったこと。
家族に偽って、山口のリゾートホテルに泊まり旅行に行って、ヌード写真まで撮られたこと。
旅行の間中、朝から晩までいろんなところでエッチしていたこと。
翌日、母にバレてしまったこと。
そして、ヨシキさんの勤めるスタジオで撮ってもらって、川島社長やみっこさんに出会ったこと。
こんなに素直に、自分のことを人に話したのは、これがはじめてだった。
ふた回りも年が離れていて、いつも的確なアドバイスをくれるお姉さんのような存在だから、心が開けたのかもしれない。
じっと耳を傾けているみっこさんに、わたしは訊いてみた。
「みっこさん。ネット掲示板ってご存知ですか?」
「知ってるわよ。いろいろ社会問題にもなったしね。なかでも、モデル掲示板とかコスプレ掲示板は誹謗中傷の書き込みが多くて、荒れやすいって聞いたことあるわ」
「わたし、その掲示板を見させられたんです。おそらく、ヨシキさんが二股かけていたレイヤーから。
そこでヨシキさんの悪口雑言をイヤっていう程読まされて、彼がいろんな女性レイヤーとつきあってるのを知って、自分や桃李さんが掲示板に晒されて貶められてるのを見て、心が荒んで、、、
それが原因で、ヨシキさんとはいったん別れて。
元の鞘に収まったものの、わたしはどんどん自分を見失っていって、、、」
こうしてみっこさんに話してるだけでも、あのときの屈辱がビデオでも見るように、まざまざと甦ってくる。
あの日からがむしゃらに、わたしはコスプレに打ち込んだ。
わたしを嘲笑っていたヤツらを見返そうと、必死になった。
ヨシキさんの鼻をあかしてやろうと、意地になった。
片っ端から目につくコスプレをしまくって、ポージングを研究して。みっこさんの薦めるモデル事務所に入ったのも、不純な動機もあったかもしれない。
好きでもない、尊敬もしてないカメコと個撮したり、イベントで囲み撮影されたりするうちに、自分のなかの矛盾はどんどん大きくなっていった。
「わたし、みっこさんに謝らなくちゃいけないことがあるんです」
つづく
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