あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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level 25

「親友っていうのは、やっぱりいいものですか?」

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「いっしょに講義受けて、学校の帰りにカフェに寄ったり、買い物に行ったり、とか。
夜中に長電話して、恋の悩みを相談しあったり、とか。そんな日常。
すごく、ありきたりでしょ」
「でも、みっこさんには、それが特別な経験だったんですね」
「あは、そうね。
さつきとは心の底から打ち解けられて、お互いの悩みなんか話しあえたな。
最初のうちはあたしも壁を作ってたけど、彼女とつきあってるうちにだんだん、自分の弱いとこも、ダメなとこも、全部話せるようになっていったの。
さつきがいたから、あたしは自分のことを客観的に見ることができて、『もう一度モデルをやりたい』って思えるようになったのよ。さつきはあたしの恩人だった」
「わたしは… 親友なんてできたこと、ないです。親友っていうのは、やっぱりいいものですか?」
「『喜びは倍に、悲しみは半分に』って感じかな。月並みな言い方だけど。
あたしもその時までは、『友達なんかいなくても、ひとりでやっていける』って思ってたけど、やっぱりいいものよね。心を開ける相手がいるっていうのは」

そう言ってみっこさんは、懐かしそうに瞳を細めて、過去の想い出に浸るように、遠くを見つめた。
わたしと森田美湖さん、、、 ほんとうに似ているかもしれない。
まるで身につまされることばかりで、みっこさんの話は、わたしのなかにすんなりと染み込んできた。

「そうだ。その頃のアルバム、見る?」

思い立ったように、みっこさんは瞳を輝かせて言った。

「えっ。いいんですか? ぜひ拝見したいです」
「ちょっと待ってて。すぐ取ってくるから」

勢いよく立ち上がったみっこさんは自分の部屋に消え、すぐに数冊のアルバムを持って戻ってきた。
どれも昔のものとわかる、古っぽい装丁。所々にシミができてる。
楽しそうにみっこさんは、アルバムを開いた。
「これが、さつきとはじめて撮った写真。ふたりで海に行ったときのものよ。何年ぶりに見るかな。懐かしい~」

彼女の視線の先にいたのは、色白の可愛い感じの女の子。
栗色がかったふわふわのセミロングヘアに、くりっとした大きな瞳と、太目のぼんやりとした眉。
ふっくらとした頬と唇が、ちょっと子供っぽい。
体型も少しふくよかだけど、胸のボリュームがあるのは羨ましい。
そんなワンピースの水着姿の彼女は、信じられないほど美少女のみっこさんに海辺で肩を抱かれて、少しはにかんだような微笑みを浮かべながら、カメラに向かってピースしていた。

「あはは。なんかファッション古いわね~。服に肩パッドとか入ってるし。眉太っ! 見てこの髪型。バングが浅い!」
「ほんと、今と全然違いますね。これ、いつ頃の写真ですか?」
「ん~。90年頃だから、かれこれ20年以上前ね。まだ世の中バブルの余韻が残ってた頃」
「みっこさん、すっごい美少女です。今とあまり変わらないし」
「あはは。お世辞はいいって。あたしすっかりおばさんになっちゃたわね~。なんかショック」

『ショック』とか言いながらも愉快そうに、みっこさんはアルバムのページをめくる。
次々と現れる、みっこさんと親友のさつきさんの写真を見ながら、わたしはチラリと彼女の表情を覗き込んだ。
その瞳は、古ぼけた写真を通して、20年前の想い出を映しているみたい。
きっと彼女のなかでは、当時の光景が鮮やかに再生されているんだろうな。

「あ。この男の人は、もしかして?!」

途中から出てきた学生風の男の人を見て、わたしは思わず声を上げた。
この爽やかな笑顔を浮かべた、優しそうな男の人は、、、

つづく
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