あいつに惚れるわけがない

茉莉 佳

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「そういうのは小悪魔発言じゃないですか!」

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「そういえば、掲示板に書かれていたんですよ」
「なにを?」
「ヨシキさんの噂です。
『某素敵レイヤーからこっぴどくフラれ連勝ストップ』って。
どうやらヨシキさん、高校の頃、だれかに大失恋したみたいなんですよね。
あのヨシキさんが本気で恋して、女性不信になるくらいの失恋するって、なんか信じられないけど。それが本当だとしたら、相手のひとがすごいってことですよね。いったいどんな人なんでしょうね」

掲示板の話を持ち出すと、みっこさんは困った顔をして、頬を赤らめた。

「ごめん… それ。あたしかも」
「ぇ、、、 ええ~~~っっ!!!」

あまりの驚きに、手にしていたグラスを落としそうになる。
慌ててグラスをテーブルに置くと、わたしはみっこさんに膝を詰めて訊いた。

「どっ、どういうことですか?!
まさか、みっこさんって、ヨシキさんとつきあっていたとか??」
「ん。今まで黙ってて、ごめん」
「それがさっき言ってた、『謝らなきゃいけないこと』ですか?」
「ん~。そう」
「どっ、どうしてみっこさんがヨシキさんと、、、」
「話せば長くなるんだけど…」
「長くていいですから、話してくださいっ!」
「そうね… そこまで言ったんだから、仕方ないわね」

ワイングラスを思い切りよく煽ると、みっこさんは話しはじめた。

「実は、ヨシキくんとはじめて会ったのは、今から6年くらい前。まだ彼が高2の頃なのよ」
「そんなに前なんですか?!」
「ドラマの役作りのためにコミックイベント会場に取材に行ったことがあってね。そこでコスプレイヤーさんを撮影してたヨシキくんを見つけて、声かけて、いろいろ話を聞いたの。ぶっちゃけ、好みのタイプだったしね。
そうしたら彼が、『撮らせてほしい』って、熱心に誘ってきて」
「みっこさん… ヨシキさんみたいなのが好みなんですか?!」
「外見は確かにいいじゃない。性格もワイルドだけど素直だったし、写真の腕もよかったし。
なにより、なりふり構わず情熱をぶつけてくる所が、若いっていうか。
その頃あたしも特に彼氏とかいなかったし。まあ、ちょっとした遊びのつもりだったけど、なりゆきで1年くらい、半同棲状態だったかなぁ」
「どっ、同棲っ?!」
「あ。ごめんね。今のカノジョにこんな話ししちゃって」
「あ、、、 あはははははは、、」
「凛子ちゃん?」
「す、すみません。でももう、笑うしかないです。
ヨシキさんとみっこさん、すごすぎ。
逆に尊敬します。
今のふたり見てても、全然そんな関係だったと思えませんから」
「今はもう、完全に終わってるのよ」
「でも、ヨシキさんは何気に引きずってますよ。『オレはだれも信じられない。恋愛なんて儚い夢だ』なんて、恋愛観すさんだままだし」
「あは。嬉しいわね」
「そういえば、『山口の角島でCM撮影した』って、ヨシキさんは言ってたけど、もしかしてモデルはみっこさんでしたか?」
「ああ。そんなお仕事もしたわね。近くの地中海風のホテルに泊まって、橋の上や海岸で撮影して」
「ヨシキさんと行った夏のバカンスは、そのリゾートホテルだったんです」
「ふぅん… そうだったんだ」
「ヨシキさん、妙にその場所にこだわってるなとは感じていましたけど、まさか、みっこさんとの思い出の場所だったなんて」
「あたしとの思い出を、凛子ちゃんで上書きしたかったのかもね。ヨシキくんもあれでいて、引きずるタイプなんだ」
「どうして別れたんですか?
ヨシキさんのこと、嫌いになったんですか?」
「そういうわけじゃないけど… 元々、ちょっとした好奇心からだったし、さすがに年齢差考えると、いつまでもいっしょにいるのも、悪いかなと思って」
「でもヨシキさんは、本気だったみたいです。みっこさんに失恋して、すっかり女性不信になっちゃったんですよ」
「そっか。ちょっと悪いことしちゃったかな」
「あ~。そういうのは小悪魔発言じゃないですか!」
「そう? ふふ…」

つづく
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