Campus91

茉莉 佳

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02 Fashion Plate

Fashion Plate 7

『友達との距離』、か。

あんなに好き勝手に、わがままいっぱいに振る舞っているように見えて、みっこには、他人に対する怯えみたいなものがある。
アンビバレンスっていうのかな。
出会った頃から感じていることだけど、みっこは陰と陽のコントラストがはっきりしている。
その『陰り』がなんなのか、いつかみっこの口から聞ける日はくるのかな?

「じゃあさつき。このワンピース着てみてくれない?
あなたにはこういう、シックでノスタルジックな服が似合うと思うの。それが理由よ。いいでしょ?」
そう言いながらみっこは改めて、服をわたしに差し出す。
「もう。みっこって意外としぶといのね」
「粘り強いって言ってよ」
「ん~。負けたわ」
そう言ってわたしは、みっこから服を受け取った。手にしてみると、それはとってもわたし好みの、素敵なものだった。
こんなブティックに来ることも、ブランドもののお洒落なワンピースを試着できることも、滅多にないことだし、綺麗な服を見るとやっぱり気分も浮き立つ。気分転換にちょっと着てみてもいいかも。


「へえ。とってもいいじゃない。思ったとおり、似合うわ!」
試着室から出てきたわたしを見て、彼女は嬉しそうに両手をポンと合わせた。

鏡の中の弥生さつき。
あなたは別の人みたい。

鏡に映ったその少女は、少し大人びた愁いをもって、わたしをじっと見つめている。
くすんだ紅色のアンティークなセミロングワンピースは、質素だけど、襟元や袖口、ボタンにあしらわれたレースが、繊細で落ち着いたよそゆきの雰囲気を醸し出している。胸元から腰にかけてのラインが、品よくボディのふくらみを見せて、コケティッシュ。
背中や肩に当たる生地の肌触りは、柔らかくて軽やかで、ほんのりと肌にまとわりつく感触がさらさらしていて心地よく、初めて着る服なのに、なぜか懐かしささえ感じてくる。
動きに合わせてふわふわ揺れるスカートが楽しくて、わたしは思わずからだを左右に振った。
「さつきって色白の可愛い系だから、こういうシックでふわっとした暖色系は馴染むわね。
モスリンのワンピースってわたしも初めて見たけど、ネルと違って軽くても張りがあって、あなたの雰囲気にとってもよく似合ってる感じで、素敵よ」
「ほんとに?」
「お世辞なんか言わないわよ」
「こんな大人っぽい服が、似合ってる? わたし」
返事のかわりに、みっこは微笑んだ。
そう言えばわたし、今日で19歳になったんだ。
大学生になって、いろんな体験をして、去年よりたくさんのことを知っている。周りの人も少しづつわたしを、大人の女として扱うようになっている。
わたしも成長しないとな。
いつまでも子供っぽい友情じゃ、みっこに愛想つかされるかもしれないしね。

「あら。素敵」
タイミングを見計らってやってきた伊藤さんが、嬉しそうに微笑んだ。
「さすが美湖ちゃん。このモスリンのワンピースをよく見つけましたね。これは東北地方で細々と生産を続けているメーカーさんから生地を取り寄せて、『大人になった赤毛のアン』のコンセプトで作った、私のお気に入りの一点ものなんですよ」
「お気に入りだから、2階の奥のわかりにくい所に仕舞ってたってわけ?」
みっこが茶化すように聞くと、伊藤さんも微笑んで答える。
「そう。お気に入りだから、本当に好いてくれる人に見つけてほしかったんですよ」
「伊藤さんらしいですね」
「美湖ちゃんが見つけてくれて、嬉しいわ」
「サイズもちょうどいいですよね?」
ワンピースのウエストをつまみながら、みっこは伊藤さんに訊く。
「そうね。腰の位置も合っているし、丈は少し長いけど、ヒールを履けばバランスとれそうですし。大きく補正するところもなさそうですね」
「ありがとう。伊藤さん」
「み… みっこ。どうして?」
わたしはあわてて彼女に訊ねた。なんでわたしに合わせてるの?
「さつきはこの服、気に入ってくれたんでしょう?」
「そりゃ、とっても素敵だと思うけど…」
「じゃ、決まりよ」
「決まりって」
彼女はニッコリ微笑む。
「『生意気でわがままな小娘』にも、こういうサプライズはさせて頂戴」
「サプライズ?」
「今日はさつきの誕生日だから」
「え?」
「これがあたしからのプレゼント。Happy Birthday」

END

26th Jan. 2011 初稿
21th May 2017 改稿
6th Nov.2019 改稿
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